鐘の音が、鳴り響く。
「火だ!」
「火が上がっているぞ!!」
叫び声。
山一族は散り散りに走る。
「落ち着いて移動しろ!」
山一族の村内で、火が燃え上がる。
「落ち着いて!」
メグミは、一族の者を村外へ誘導する。
村外に、避難場所が備えられているのだ。
火は、収まる気配がない。
燃え続ける。
このままでは、村すべてが焼けてしまいかねない。
「どうしてこんな時期に火が!?」
メグミは村内に残る者がいないか探す。
同時に、火元を探る。
けれども、燃えさかる火が行く手を阻む。
熱い。
メグミは空を飛ぶ鳥たちに合図をする。
山一族の上空にいた鳥たちは、火の気のない方へ飛び去る。
「メグミ!」
ヒロノとハラ家の者がやって来る。
「結界を張って火を抑えるぞ!」
「逃げ遅れた者は?」
「もういないはずだ」
ハラ家の者が、呪文を唱える。
「お前も避難しろ」
メグミがヒロノを見る。
「おかしいわ」
「何が」
「火よ」
「どう云う」
「広がり方」
メグミは空を見る。
曇り空。
そう
ずっと、雨が降り続いていたのだ。
一族の村は、常に家屋も草木も濡れていた。
なのに
「こんなにも上手いこと、火が広がる?」
「つまり?」
「これは何者かが、」
と
突然、大きな音を立てて、近くの建物が崩れる。
「後回しだ!」
ヒロノも呪文を唱える。
メグミは反対方向へ、走り出す。
村外の避難場所へ。
そこには、一族の者が集まっている。
女、子ども、年配の者。
男たちは、消火に当たっている。
メグミはその者たちを見る。
見て、
再度、歩き出す。
一族の村から離れ、人気のない山中。
メグミは立ち止まる。
前を見る。
「誰!」
声を出す。
「そこにいるあなたは、誰!」
何者かがちらりとメグミを見る。
「なぜ、山一族の格好をしている!」
山一族の格好をした何者かは、走り去る。
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