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「山一族と海一族」24

2017年08月18日 | T.B.1998年

 鐘の音が、鳴り響く。

「火だ!」
「火が上がっているぞ!!」

 叫び声。

 山一族は散り散りに走る。

「落ち着いて移動しろ!」

 山一族の村内で、火が燃え上がる。

「落ち着いて!」

 メグミは、一族の者を村外へ誘導する。
 村外に、避難場所が備えられているのだ。

 火は、収まる気配がない。
 燃え続ける。

 このままでは、村すべてが焼けてしまいかねない。

「どうしてこんな時期に火が!?」

 メグミは村内に残る者がいないか探す。
 同時に、火元を探る。

 けれども、燃えさかる火が行く手を阻む。

 熱い。

 メグミは空を飛ぶ鳥たちに合図をする。
 山一族の上空にいた鳥たちは、火の気のない方へ飛び去る。

「メグミ!」

 ヒロノとハラ家の者がやって来る。

「結界を張って火を抑えるぞ!」
「逃げ遅れた者は?」
「もういないはずだ」

 ハラ家の者が、呪文を唱える。

「お前も避難しろ」

 メグミがヒロノを見る。

「おかしいわ」
「何が」
「火よ」
「どう云う」
「広がり方」

 メグミは空を見る。

 曇り空。

 そう

 ずっと、雨が降り続いていたのだ。
 一族の村は、常に家屋も草木も濡れていた。

 なのに

「こんなにも上手いこと、火が広がる?」

「つまり?」

「これは何者かが、」

 と

 突然、大きな音を立てて、近くの建物が崩れる。

「後回しだ!」

 ヒロノも呪文を唱える。

 メグミは反対方向へ、走り出す。
 村外の避難場所へ。

 そこには、一族の者が集まっている。
 女、子ども、年配の者。

 男たちは、消火に当たっている。

 メグミはその者たちを見る。

 見て、

 再度、歩き出す。

 一族の村から離れ、人気のない山中。

 メグミは立ち止まる。
 前を見る。

「誰!」

 声を出す。

「そこにいるあなたは、誰!」

 何者かがちらりとメグミを見る。

「なぜ、山一族の格好をしている!」

 山一族の格好をした何者かは、走り去る。



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