TOBA-BLOG 別館

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オリジナル水辺ノ世界の作品を掲載

「琴葉と紅葉」16

2017年04月07日 | T.B.2019年

 日が高くなる。

 琴葉は北一族の村の広場にやって来る。
 そこには、いろんな一族があふれている。

 琴葉は、適当な場所に坐る。

 先ほど買った果物を食べる。

 食べ終わると、しばらくそのまま動かない。

「……疲れた」

 坐ったまま、目をつむる。

 父親はどこにいるのだろう。
 ただ歩き回っても、見つからないことは判っている。

 北一族の村は、想像以上に広い。

 誰か、詳しい者に声をかけるしかない。

 けれども、

 琴葉はそれが苦手だった。

「どう、しよっかな……」

 ふと、琴葉は気付く。

 少し、眠ってしまったらしい。

 何かの気配を感じ、

 思わず、それを振り払う。

「何!?」

「あ、あぁ、ごめん」

 はっきりしない頭で、琴葉は目の前を見る。

 ひとりの男。

「……誰?」

 琴葉は目を細める。
 男は、人のよい笑みを浮かべる。

「何かあったのかと思って」
「何もないわよ!」
「ひとり?」
「そうよ!」
「西一族がこんなところで?」

 琴葉は、男をよく見る。
 北一族の格好をしている。

「ひとりで遊びに来ることだってあるわよ」
「そう?」

 男は、琴葉をのぞき込む。

「誰か探している?」
「……何でよ」
「雰囲気見れば判るよ」
「…………」
「北一族の村に、そうやって人捜しに来る人が多いから」

 琴葉は何も云わない。

「誰を探しているの?」
「…………」
「俺、人捜しの手伝いをしているんだ」
「手伝い?」
「そう」
「でも、」
「お金はいらないよ」

 男が云う。

「北一族の村での困りごとを解決したいから、さ」

「…………」

 琴葉は再度、男を見る。

 云う。

「父さん、なんだけど……」

「お父さん? 君の?」

 琴葉は頷く。

「村の外で働いていて」
「そうか」

 男は口元に手をやる。

「北は、他一族での商売も多いからね」

 男は手を出す。

「西一族が多く店を出しているところへ、連れて行ってあげる」

 琴葉はその手を見る。

「きっと、君のお父さんいると思うよ」

 ほら、

 促されて、琴葉はその手を取る。



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