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オリジナル水辺ノ世界の作品を掲載

「タロウとマジダとジロウ」8

2017年04月04日 | T.B.2001年

「おはよう、タロウ」
「来てやったぞ」

作業小屋の入り口で
マジダとジロウがタロウを呼ぶ。

小屋の中にはタロウが仕事で使う物が多い。
危ない物もあるので
タロウが良いよ、と言ってから入るのが決まり。

「おはよう2人とも」

す、とタロウが顔を出す。

「今日は何して遊ぶ?」
「……申し訳ないけれど、
 今は作業が立て込んでいるから」
「そうしたら、明日はどう?
 あのね」
「しばらくは無理かな」

すまない、とタロウは言う。

「マジダ?」

返事を返さないマジダに
タロウがうん?と顔を覗き込む。

「………わかった」

「仕方ないじゃん。行こうぜ、マジダ」

渋々付き添って来たジロウは
ほら、とマジダの手を引く。

「じゃあな」
「ああ」

タロウは手を振って2人を見送る。

ジロウはマジダと歩く。
村の広場が近づいて、何して遊ぶ?俺ん家くる?と
問いかけるも、マジダは神妙な顔つきのまま。

「なぁ、マジダってば」

「ねぇ
 タロウ、怒ってた?」

マジダの問いかけに
は?とジロウは言葉を漏らす。

「仕事が忙しいだけだろ。
 あいつ、ニコニコしてたじゃんか」
「うん、笑ってた」
「だろう?」

「でも、何かやだ。
 ピリピリしてる」
「う……ん」

笑顔だったけれど、少し違う。

それに、タロウは2人にはすまない、とは言わない。
ごめんね、と言う人。

「何かあったんじゃないのか。
 別に、マジダに怒っている訳じゃないと思うぞ」
「わかってる」
「そのうち落ち着くって」

放っておけばいいと、ジロウは言う。

「あれ、最初と同じ」
「最初?」
「村に来たばかりの時も
 あんなだったの」

と、マジダに言われるも
村に来たばかりの頃のタロウを
ジロウはよく知らない。

「タロウ、またねって言わなかった」

マジダがジロウに言う。

「どうしよう。
 タロウが……どこかに行っちゃう!!」
「どこに?」
「わかんない、でも
 居なくなっちゃう」

「………」

ジロウは、
もう遠くに見える
タロウの作業小屋を睨み付ける。

振り返ると、マジダに言う。


「マジダ。
 明日は予定通りだ!!」


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