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「天院と小夜子」21

2015年11月06日 | T.B.2017年

「さすが、東一族」

 その瞬間、一気に緊張が走る。

「早めに、ここを出ておこうかと思ったけれど、」

 この声は

「包囲網が早すぎて、出られなかった」

 ――砂一族。

 彼は振り返る。
 宗主と彼のすぐ近くに、砂一族がいる。

「何だ。……砂はひとりか」

 宗主が声を出す。

「砂一族が、何の用だ」

「お前を殺しに来たんだよ」
 砂一族が云う。
「そもそも、お前だって、供は、たったのひとりなのか?」
 笑う。
「東一族の宗主なら、もっと護衛を付けるべきだ」

 宗主が訊く。

「諦めたのか」

「そうだよ」

 砂一族が云う。

「ただ、……俺らもそれなりの訓練を受けているから」

 逃げられないと判ったら

「東の宗主と刺し違えろって」

 砂一族が笑う。

「その小さいのも、知ってるぞ」
 砂一族は、彼を指差す。
「よく、砂漠にいるやつだ。なかなかの腕の」

 彼は、弓を握る。

「お前のせいで、東の攻略が出来なくて困ってるんだよ」
「そうか」
 宗主が云う。
「うちの、大将だ」
「そうだと思ってた」

 砂一族が云う。

「名まえは知っているが、顔をよく見たのははじめてだ」
 砂一族が、宗主と彼に近付く。
「ん? 何だ。お前、宗主に似てるな」
「下がれ」

 宗主が云う。

「直に、東一族が集まってくる」
「だろうな」
「投降しろ」
「何でだよ」

 砂一族は、歩みを止めない。

「本当に、いいとこまで行ったんだけどなー」
 砂一族が云う。
「東の女を使って毒を運ばせたのに」

 彼は、目を細める。
 彼は、弓を握ったまま、宗主の前に出る。
 砂一族を見る。

 砂一族は、手を上げる。

「おい、やめろ。俺は、今日は宗主に用だ」

 彼は、何も云わない。

「何だ。お前を倒さなきゃ、だめだって?」

 砂一族は、さらに近付いてくる。

「下がれ」

 宗主が云う。

「天院」

 呼ばれて、彼は、振り返る。

「お前に下がれと云っている」

 彼は宗主を見る。

「何を」
「お前の手を借りる必要はない」
「宗主様」
「西一族の血が流れるやつの手を、借りようとは思わない」
「…………」
「今のお前は、役に立たない」
「判ってます」
「なら、下がれ」

「下がってもらった方が、俺は楽だなー」

 瞬間

 砂一族が、動く。
 宗主に向かって。

 早い。

 小刀。

 毒。

 彼は、宗主と砂一族の間に立ったまま。
 後目で、砂一族を見る。

 動かない。

「天院!」

 宗主は構える。
 紋章術。

「退けと云っている!」

 宗主の紋章術が、発動する。

 その発動の目の前に、彼がいる。

 けれども、



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