歴歩

歴歩 歴史は歩く。ゆっくりと歩く。それを追いかける。

重源の花押 米エール大に贈られた屏風に貼られた古文書の中から発見

2010年08月09日 | Weblog
 東京大史料編纂所が9日、東大寺を復興した僧・重源(ちょうげん)(1121-1206)が建久3年(1192)に花押(サイン)を記した文書がアメリカのエール大学(バイネッケ図書館所蔵)で確認されたと発表した。国内にあれば重文クラスの貴重なものという。
 1943年、欧米での日本史研究のために米エール大の朝河貫一教授(1873-1948)の呼び掛けに応じ、日本在住の同大卒業生や当時の東京帝国大・黒板勝美教授(1874-1946)が鎌倉時代初めから江戸時代中期までの貴重な古文書28通を集めて貼り、2曲1双の屏風(注1)に仕上げて贈った。
 その中の1枚から見つかった。兵庫県内に東大寺の荘園(注2)を立てるよう指示した建久3年(1192)の文書2通のうち、1通(8月23日)の裏側に重源の花押があり、2通目(8月15日)にも花押がある可能性が高いという。
 近藤成一・同大教授(日本中世史)によると、文書自体は別の人物が書いた行政文書で、のちに重源がこうした文書を集めてつなぎ合わせる際、継ぎ目に花押を書いたとしている。
 文書は現在、修復のため76年ぶりに日本に里帰りしており、2年後にエール大に戻される。

 注1: 1枚が高さ約170cm、幅約90cmの2枚(二曲)が対になった屏風で「古文書貼交屏風」が正式名称か。
 注2: 播磨国大部庄。浄土堂と薬師堂を建立した。浄土堂は現在も残り国宝に指定されている。浄土堂は『指定文化財総合目録建造物篇』(文化庁)によると建久3年(注3)であり、先の文書の年と同じである。
[参考:時事通信、読売新聞、the Todai-Yale Initiative HPより2008.3.26「バイネッケ図書館所蔵の日本中世古文書から」近藤成一]

注3: 2009.9.17、兵庫県立歴史博物館(姫路市)は、国宝・浄土寺浄土堂(小野市)の建築材の年輪年代測定を総合地球環境学研究所(京都市)の光谷拓実客員教授に依頼し、高精度デジタルカメラで調査した結果、建築材の伐採時期を特定し、文献「浄土寺縁起」に残る1197(建久8)年完成を裏付けたと発表した。部材のうち2点の年輪年代が確定でき、うち1点(大斗)は1195年、もう1点(肘木)は1192~96年に伐採されたことが判明。樹種はいずれも山口県周防産のヒノキ材。
[参考:2009.9.18神戸新聞、2009.9.19早稲田大学奈良美術研究所主催国際シンポジウム『文化財の解析と保存へのアプローチⅥ』より光谷拓実「国宝浄土寺浄土堂古材の年輪年代調査―年輪から重源の足跡をたどるー」]

珍しい古文書びょうぶ、里帰り=東大で修復、米国から―価値1000万円以上(時事通信) - goo ニュース
東大寺復興した僧・重源の花押、米で発見(読売新聞) - goo ニュース
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