新・日曜炭焼き人の日記

炭遊舎のホームページで書いていた「日曜炭焼き人の日記」を引きついで書いていきます。

ローザ・パークスの前の人

2021年11月25日 | 日記

 1955年3月2日、アラバマ州モンゴメリーでバスに乗っていた黒人女性がいた。白人女性が4人乗り込んできた瞬間、運転士は黒人女性に席を譲ることを求める。黒人女性はそれを拒否。警察が呼ばれ、黒人女性は逮捕される。公民権運動の発端になったとされるローザ・パークスではない。彼女の名前はクローデット・コルヴィン。
 それから9か月後、12月1日に同じような事件が同じ土地で起こる。これがローザ・パークス事件だった。ではなぜクローデット・コルヴィンは無視されたか。彼女は当時15歳、未婚でありながら妊娠していた。いかにも非行少女の風情で、皮膚の色は黒い。労働者階級の子を、中流階級の黒人たちが中心になって活動するACLU(全米自由人権協会)は敬遠した。白人が牛耳るメディアの恰好の餌食になってしまう。いっぽう、9か月後に同じ事件を起こしたローザ・パークスは当時41歳の学校教師、スコットランド、アイルランド系の血が混じり皮膚の色が少し明るい。こちらなら公民権運動のシンボルになりえる。ACLUの巧妙な打算が働いた。
 もうひとつ幸運が重なった。バプティスト教会の牧師マーティン・ルーサー・キング・ジュニアがその9か月のあいだに頭角を現しはじめたのだった。9か月早ければキング牧師は無名のままで終わったかもしれない。歴史のifを感じさせる一コマだ。
 クローデット・コルヴィンについてはwikipediaに詳しく掲載されている。私はこのことを某大学の英語入試問題を読んでいて知った。大学の入試問題は知識の宝庫になっている。
 余談だが、コルヴィンはローザ・パークスの勇気と勇敢さを尊敬し、世界的に有名になったことを悪く思っていない。いま82歳。