新・日曜炭焼き人の日記

炭遊舎のホームページで書いていた「日曜炭焼き人の日記」を引きついで書いていきます。

The Simple Truth

2021年11月18日 | 日記

 クリス・デ・バーグのThe Simple Truthを聴いている。

A child is born on a battlefield
A soldier boy falls to his knees
And a woman cries in joy and pain
When will we all live in peace again?
 戦場で子どもが産まれる。10代半ばで銃を持たされた男の子が奇跡に見入る。産んだ女性はうれし涙にむせびながらも、その子の行く末を思いやる。いつになったら平和が戻るのか、と。
A child is born where the wild wind blows
In a country torn from the south to the north
And a family runs from day to day
When will we see our home again?
 子どもが産まれる。吹きすさぶ風のなか。ズタズタに引き裂かれた国。逃げ惑う家族が家に戻れるのはいつのことか。

 70年代に流行った「花はどこへ行った」を思わせる歌詞だが、この曲は日本では話題にならなかった。いまはじめて聴いている。きっかけはジェフリー・アーチャーの伝記のなかの一章だった。
 1991年4月15日月曜日のジェフリー・アーチャー家。エリート教育で有名な全寮制イートン校で学んでいる息子ジェームズが帰宅し、家で妻メアリーと水入らずで夕食をとったあと、居間でテレビを観ていた。そのテレビにイラク北部の難民キャンプで苦しんでいるクルド人が映し出された。サダム・フセイン政権による大虐殺と家でのんびりくつろぐ自分たちとの彼我の差にジェフリーは衝撃を受ける。「クルド人を救うために、なにかできないか」「チャリティー・コンサートをしよう」。ジェフリーの決断は早かった。これまでの政治活動や各種のファンド・レイジングで培ってきた人脈が生きた。
 コンサートの実施日を5月12日に定めた。会場はウェンブリー・アリーナがよい。ところがMCハマーのコンサートがすでに予約されている。事情を話すと、ハマーは快くその日のコンサートを譲ってくれ、さらにチャリティー・コンサートの出演者にも名を列ねてくれた。
 次にジェフリーはかねてから知り合いの歌手クリス・デ・バーグに連絡をとった。デ・バーグもチャリティーの趣旨に賛同し、出演を快諾してくれたばかりか、その数週間まえに書いたばかりのみずからの曲「The Simple Truth」の印税をすべて寄付すると申し出てくれた。ジェフリーはその曲とデ・バーグの意気込みに感動し、チャリティー運動をSimple Truthと命名した。
 YouTubeで曲を検索すると、観客全員がデ・バーグとともに熱唱しているようすがうかがえる。