新・日曜炭焼き人の日記

炭遊舎のホームページで書いていた「日曜炭焼き人の日記」を引きついで書いていきます。

失態とごまかし

2020年04月10日 | 日記

 ダンスパーティーのあと、道路沿いの酒場へ出かけた。フロッシーと彼氏がコンバーチブルの前の席に乗り、アーサーとレンタル彼女が後部座席を埋めた。酒場ではハンバーガーとミルクシェーキを注文した。食べ終わり、勘定を払う段になる。みな自分の分をテーブルに置く。黙ってグラスを見つめるアーサー。払うお金がない。だれかがお金を置いてくれた。憤るフロッシー、恥ずかしい思いをするレンタル彼女。宿泊所YMCAに戻るさい、車にあったウィスキーボトルを1本、アーサーはくすねた。

 翌土曜日、海軍入隊受付事務所は郵便局内にあった。入隊には親のサインがいる。自分の実の父はけっして許してくれないだろうが、アーサーには秘策があった。町で酔っ払った浮浪者を見つけて声をかける。「うまくやってくれれば、ウィスキーをごちそうするよ」と誘い、入隊受付まで連れていく。係官には父が病気で手がうまく動かせないと偽り、ペンを握らせた浮浪者の手を自分で上から動かしてサインさせる。まんまと父のサインを偽造してしまった。めでたく海軍入隊を勝ち得たのだった。
 バスで海軍訓練所があるパリス・アイランドへ向かうことをフロッシーに電話で告げる。フロッシーは「きのうは悲しい思いをしたし、それにあなたウィスキーを盗んだでしょ。もう二度と会いたくない」といわれてしまう。それでもひょっとして「あなたを待っているわ」といいながら、バスを追いかけてくれるフロッシーを期待して、アーサーはバスの窓から後ろを振り返った。だれも追いかけてくれる人はいなかった。(つづく)