新・日曜炭焼き人の日記

炭遊舎のホームページで書いていた「日曜炭焼き人の日記」を引きついで書いていきます。

うすくち醤油のふるさと

2019年07月06日 | 日記

 幼少のころ、醤油といえば「うすくち」だった。「こいくち」にはめったにお目にかからなかった。しかも醤油は東丸と決まっていた。いまはヒガシマルとカタカナ表記している。刺身につける醤油はうすくちにかぎる。脂ののったブリの刺身をこいくち醤油にひたすとその透き通るほど白いブリの色が台無しになりそうな気がする。うすくち醤油には気品がある。どす黒いこいくちにはない透明感がある。もちろん、うどん、そばのおつゆにもうすくち醤油を使うことで、色合いのよさと同時に、なんともいえない風味を醸し出す。関東地方に多いうどん、そばのおつゆのどす黒さはどうもいただけない。
 うすくち醤油の国内シェアの80パーセントを占めるのが兵庫県龍野にあるヒガシマルだ。龍野旧市街のどまんなかに誕生したヒガシマルの工場はいま揖保川の東へ移転し、発祥の地にはうすくち龍野醤油資料館が建っている。明治2年浅井家が官から払い下げを受け、醤油醸造を代々受け継いできた。展示された資料によれば、うすくち醤油はこいくち醤油をつくる過程の最後に甘酒を加えることによって造られるという。醤油醸造のおもな原料は、小麦、大豆、塩だが、うすくち醤油の醸造にはさらに米が必要だ。小麦、大豆、米はみな播州平野で豊かに獲れるし、塩は近隣の町、赤穂の特産品だ。加えて千種高原から流れてくる揖保川が龍野の町を潤している。
 うまいものを食いたいと飽くなき美食探求をする人が、醤油の種類に無頓着なのは解せないところだ。うすくち醤油の気になる塩分濃度は18から19パーセントで、こいくち醤油の16パーセントから18パーセントに比べると若干高い。もうすこし減塩できないものだろうか。