新・日曜炭焼き人の日記

炭遊舎のホームページで書いていた「日曜炭焼き人の日記」を引きついで書いていきます。

「食べ歩き」vs「歩き食べ」

2019年03月07日 | 日記

 まえに勤務していた高校で、校長が生徒たちに向かって「歩き食べをやめよう」と訴えた。始業式か終業式、なにかそのような場での式辞だった。校内や学校付近の通学路でものを食べながら歩く生徒たちがいるのを見て、マナーをよくしようという指導の一環だった。そのとき校長は、食べ歩きならよいけど、歩き食べはよくないともつけ加え、この二つが別ものであることを強調した。
 鎌倉で街中を食べながら歩く観光客が増え、「食べ歩きをやめよう」キャンペーンをしている、罰則のない条例をつくるなどと報道されている。「食べ歩き」でよいのか。
 広辞苑で「食べ歩き」を引くと、「土地の名物やうまい物を食べてまわること」と書いてある。「歩き食べ」という見出し語は採録されていない。「食べ歩き」は「食べながら歩く」ことを意味することばではない。新明解国語辞典(かなり古い版)には「食べ歩き」自体の見出し語がないし、もちろん「歩き食べ」も載っていない。「歩き食べ」ということばはまだ市民権を得ているとは言い難いが、「食べ歩き」と「歩き食べ」を区別する必要性はいま生じている。
 東京の戸越銀座などでは、歩きながら食べることを商店街を活気づける一方法として推し進めているとも聞く。報道番組では「歩き食い」なることばも使っていた。「食べ歩き」vs「歩き食べ」「歩き食い」、きちんと区別して使うようにしてはどうだろう。