新・日曜炭焼き人の日記

炭遊舎のホームページで書いていた「日曜炭焼き人の日記」を引きついで書いていきます。

イン・カントリーとプラトーン

2015年08月04日 | 日記

 1日夕方、暑気払いに気のおけない仲間8人がメセナに集まった。国会前のデモに参加してきた人がいた。詭弁を弄して安保法案の成立をもくろむ安倍政権の行動を快く思わないのはみな同じだ。

「イン・カントリー」は1980年代後半に出版されたアメリカ人女性作家ボビー・アン・メイソンによる小説だ。ベトナム戦争に従軍し、その後遺症に苦しむ叔父を傍目に見ながら、当時のアメリカ社会を10代後半の少女の目で描いている。
 ベトナム戦争が終結したのは1975年で、アメリカはこの戦争に負けたことになっている。ただアメリカ本土が戦場になったわけではないので、アメリカ人にとっても私たちにとってもアメリカが負けたという感覚は乏しい。アメリカはいつも外へ出かけていって戦争をする。パナマのノリエガ将軍をやっつけたりリビアのカダフィ大佐の命を狙ったり、アフガニスタンやイラクを空爆したり・・。遠くの国へ出かけて攻撃を加えるだけなので戦争情報のなかでも都合が悪い部分をあえて公表しなくてもそのままですんでしまう傾向がある。ベトナム戦争の内実が小説や映画で告発されるのに10年あまりの歳月がかかったのはそのためだろう。
小説「イン・カントリー」に登場する女性主人公サムの叔父エメットは、徴兵され、ベトナム上空から枯れ葉剤エージェント・オレンジを散布する任務に従事した。枯れ葉剤をまかれたベトナム人側に奇形児が生まれたなどの被害は多く報告されているが、撒いた側でも後遺症に苦しむ人がいることはこの小説を読んではじめて知った。飛行機の上から枯れ葉剤を撒く側でも必然的に少量の粉を吸い込んでしまう。それがのちになって「ゲップが停まらない」という症状を引き起こす。ほかにもさまざまな症状があったはずだが、私の記憶に強く残っているのは「ゲップが停まらない」件だ。エメットは30代半ばになっても就職できず、廃人どうようの生活を強いられている。
 同じころ映画「プラトーン」が公開された。プラトーンとは小隊のこと、つまり軍隊内部の人間関係をテーマにした映画だった。ベトナムのジャングル内で敵と戦わなければならない小隊でも、極限状況に置かれるとその中での人間関係にひずみができ、敵と戦うどころではなくなってしまう。映画では結局、小隊長を敵に殺されたように見せかけて部下が射殺してしまう。
 本土が戦場にならなくても、戦争に荷担することの影響は想像もつかないところに及ぶものだ。