韓国の昨年の合計特殊出生率(15?49歳の女性が一生に産む子供の平均数、以下「出生率」)は1.3人と見込まれ、11年ぶりに超少子化国から脱出するとの分析が発表された。一つの国の人口が現在の状態を維持するためには出生率が最低でも2.1人に達する必要があり、1.3人未満なら人口減少の速度が速まる「超低出生率」となる。
大統領直属の少子高齢化社会委員会は、韓国の出生率が2011年の1.24人から昨年は1.3人に上昇、出生児数も47万1265人から約1万5000人多い約48万6000人に増えると推計されることを25日、明らかにした。こうした見通しは、昨年11月までの出生児統計と最近3年間の12月の平均出生児数を合算したもの。出生率はアジア通貨危機(1997年)の後遺症が続いていた2001年の1.3人から05年には1.08人にまで落ち込んだが、11年ぶりに回復したことになる。しかし、それでもまだ十分とはいえない。出生児数は2001年の55万人に比べ毎年平均約8万5000人ずつ減少し、11年間で計93万人少なくなっていることも集計で分かった。一方、65歳以上の高齢者数は357万人から589万人へと232万人も増えた。将来の納税者数は減っているが、扶養すべき高齢者は急増しているということで、今後は成長潜在力の低下が懸念される。これを最小限にとどめるには、出生率の上昇ペースを今よりもさらに早めなければならない、と専門家は指摘する。
昨年の出生率が小幅ながら上昇したのは、昨年が「この年に生まれた子どもは立派な人物になる」と言われる「黒い辰(たつ)年(=壬辰〈みずのえたつ〉年)」だったことと、社会的に広まっていた出産控え現象が少しずつ緩み、結婚率が上がっていることが影響したからとみられている。しかし、出生率1.3人は現在の人口を維持できるとされる2.1人を大幅に下回っており、経済協力開発機構(OECD)加盟国の中でもまだ最下位圏だ。出生率1.3人を維持しても、17年からは働くことができる「生産人口」が減り始め、26年には5人に1人が高齢者という「超高齢化社会」に突入する。現状のままなら、活力のない高齢化国になる見通しだ。
海外の事例は「他山の石」だ。ドイツでは超少子化国の基準ラインである出生率1.3人を回復するのに5年(1991?96年)かかったが、イタリアは12年(1992?2004年)、ギリシャは9年(1995?2004年)かかった。これらの国は出生率を上げるため児童手当をはじめとする家族・子育て支援予算を大幅に増額した。ギリシャやイタリアはかなりの福祉予算を投入して出生率を1.3人にまで引き上げることに成功したが、過度の福祉予算支出が国の負債につながり、経済危機を招いた一因になったともいわれている。
こうした例を踏まえ、専門家らは「韓国は出生率をできるだけ早く人口置換水準(2.1人)に引き上げなければならない」と強調する。例えば、出生率が2014年に1.79人に上昇すれば、総人口の減少予想時点を2031年から2041年に遅らせることができる。
韓国保健社会研究院のイ・サムシク研究員は「出生率を上げるには、若者たちの就職を増やし、雇用不安定を解消しなければならない。女性や高齢者といった潜在的生産者がより長く働けるようにする雇用システムも整備すべきだ」と話している。
■少子化国・超少子化国
少子化国とは妊娠可能な女性(15?49歳)が一生の間に子供を産む平均数である合計特殊出生率が1.5未満の国をいう。緩少子化国とは人口を維持するのに必要な水準である2.1人よりも出生率が低い国で、ほとんどの先進国がこれに属する。韓国のように合計特殊出生率が1.3未満まで低下した国は超少子化国と呼ばれ、香港・台湾・日本などがこれに含まれる。