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「宮廷 花の交遊録」・まんがゼミナール「枕草子」その17

2021年08月23日 11時32分17秒 | 読書記

足腰大丈夫な内に出来る限り、不要雑物処分・身辺片付け整理をしよう等と思い込んでからすでに久しいが、正直なかなか進んでいない。それでもここ2~3年には、押し入れや天袋、物置、書棚等に詰まっていた古い書籍類等をかなり大胆に処分してきた。ただ、中には「これ、面白そう・・」等と目が止まり、残してしまった書籍もまだまだ結構有る。その中に 漫画家赤塚不二夫著、元東京学芸大学附属高等学校教諭石井秀夫指導の古典入門まんがゼミナール「枕草子」(学研)が有る。多分、長男か次男かが、受験勉強中に使っていた「枕草子」の解説本・参考書の一つのようだが、錆びついた老脳でもなんとか読めそうな、まんがで描いたくだけた内容、その内いつか目を通してみよう等と仕舞い込んでいたものだ。ながびく新型コロナ禍、不要不急の外出自粛中、ふっと思い出して、やおら引っ張りだしてみた。当然のこと、本格的な「枕草子」解説本、参考書とは異なり、限られたサワリの部分に絞ったものであるが、学生時代に多かれ少なかれ齧っていたはずの日本の代表的な古典、清少納言の「枕草子」も、ほとんど覚えていないし、「古典」に疎く、苦手な人間には、十分楽しめそうで、御の字の書である。(以上 過去記事コピペ文)


「宮廷 花の交遊録」・まんがゼミナール「枕草子」その17

第106段 「二月つごもりごろに・・・」
学者として、歌壇の第一人者として、最高の教養人として、女官のあこがれの人だった藤原公任から、「少し春ある 心地こそすれ」という和歌の下の句がもたらされ、上の句をつけよと言ってきたが、それに対して、清少納言が、「空寒み花にまがへて散る雪に」と付けて返したことを描いている段。その評価を気にする清少納言の本音も出ている。

清少納言「もう春やゆうのに、おお寒!」
使いの者(毎度お騒がせのメッセンジャー・ボーイ!)「これ、公任の宰相の・・」
清少納言「・・・少し春ある 心地こそすれ・・・ほんまに今日の景色をよう描写してはる」
「白氏文集」から少しひねったこの歌に、上の句を付けろということやけど・・・」
同席されてはるのは、どのような殿方たちや」
使いの者「句を付けるのも、相手次第ということでおますな。ちょいとうるさい風流士がそろっておますで」
清少納言「えーえ、平凡な返歌はでけまへん・・・」
使いの者「早く、早く、短いところでやってえな・・・」
清少納言「うるさいねン。ええ、ままよ、おかあさんと・・・」
「空寒み花にまがへて散る雪に・・」
使いの者「ああ、忙しこっちゃ」
清少納言「でも、それっきり、それっきりで、批評もなしに春の盛りが来てしもた。ワテの返歌、評判良ければ聞きたいけど、けなされてんのやったら、聞きとない」
「あら、左兵衛の督。ワテの評判、どないや、どないや」
左兵衛の督「ヘイ、ヘイ、ヘイ、何考えこんどるねん。近ごろまた、評判はいいで」
「俊賢の宰相なんぞは、えらい感心しよってな、天皇に申し上げて、そなたを秘書にもらいたいと言うてたデ」
清少納言「ほんまどす?、うれしいわあ」


原文だよーん

二月(きさらぎ)つごもりごろに、風いたう吹きて空いみじう黒きに、雪少しうち散りたる程、黒戸に主殿司(とのもづか)来て、「かうて候ふ」と言へば、寄りたるに、「これ、公任(きんたふ)の宰相殿の」とてあるを、見れば、懐紙(ふところがみ)に、「少し春ある 心地こそすれ」とあるは、げに。今日のけしきにいとようあひたるも、これが本(もと)はいかでかつくべからっむと、思ひわづらひぬ。「誰々(たれたれ)か」と問へば、「それぞれ」と言ふ。みないと恥づかしきなかに、宰相の御(おほん)いらへを、いかでか事なしびに言ひ出でむと、心一つに苦しきを、御前(おまえ)に御覧ぜさせむとすれど、上のおはしまして、大殿ごもりたり。主殿司は「疾く(とく)、疾く」と言う。


(注釈)

2月の末頃に、風がひどく吹いて空がとても黒いのに、雪が少し散ら付く頃、黒戸に主殿司が来て、「ごめんください」と言うので、そばに寄ったところ、「これ、公任の宰相殿の文です」と言って差し出したので、見ると、懐紙に「少し春ある 心地こそすれ」(少し春があるような気がする)と書いてあるのは、本当に、今日の空模様にとてもぴったりであるが、この句の上の句をどのように付けたらよかろうかと、思案にくれてしまう。「そこにいるのは、どなた達ですか」と尋ねると「これこれの方です」と言う。皆とても立派な方々の中に、宰相の中将への御返事を、どうしていい加減に言い出せようかと自分の心一つに苦しい思いがするので、中宮様にお目にかけようと(相談しようと)思うが、主上があそばし、もうおやすみになっている、「早く、早く」と催促する。


藤原公任から、上の句を付けるように言ってきた句「少し春ある 心地こそすれ」には 白居易の詩、「南秦の雪」の「二月山寒うして春あること少し」が形を変えて隠されており、それを知らずに上の句を付ければ、笑われてしまうし、意識的に白居易の詩を利用すれば、嫌味になると 思いあぐねた清少納言。白居易の詩を巧みに入れて、詩には無い「花」を出して、「空寒み花にまがへて散る雪に」と付けた。打てば響くような清少納言の学識と才知に、おそらく藤原公任も驚嘆し脱帽したのでないかと想像されるエピソードである。


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