遺す言葉

つぶやき日記

遺す言葉(373) 小説 岬または不条理(2) 他 大谷選手と国民栄誉賞

2021-11-28 12:12:22 | 小説
          大谷選手と国民栄誉賞(2021.11.25日作)


 大谷選手 国民栄誉賞辞退
 賢明な選択
 大谷選手に限らず 過去
 イチロー選手 福本選手
 辞退している なぜ ?
 当然の事だ 彼等は
 栄誉を求めて 野球をしている訳ではない
 彼等が目指しているのは
 その道に於ける最高境地 かつて
 誰もが為し得なかった境地を目指しての 挑戦
 自身の技を磨き 心を磨き
 最高境地に挑戦する その
 最高境地 彼等が目指している境地に
 一歩 一足でも近付き得たと思えた時
 彼等の心には 真の喜び 達成感が生まれる
 自身としての満足感に満たされる はずだ その喜びは
 他者の与え得るものではない ましてや
 国家などが関与出来るものではない 国家による
 一つの栄誉 一つの勲章 その授与 彼等に取っては 
 心の自由 精神集中 行動の自由 自在な自身の動きを
 束縛する 一本の太いベルト 堅い帯 に 他ならない
 一本の 太いベルト 堅い帯 彼等が拒否するのは 当然
 一つの仕事を為し終えた 一つの成果を残し得て 今は引退
 静かな余生を生きている そんな人達 現役 現場を離れ
 功なり名を遂げた そんな人々への栄誉の賞 勲章なら いざ知らず
 今を 生きる 懸命に今を生きている その者達への授与など
 百害あって一利なし 余計なお世話 今はただ
 静かに 黙って じっと見守るべし
 下手な口出し 国家の売名行為 国家としての 権威付け 便乗行為
 そう 受け取られても仕方がない 国家 政治は
 極力 黙って静かに見守り 国民 一人一人 誰もが
 自由に生きられる そんな世界を目指して 無言の努力
 無言の援助に努めるべきだ 見えない所で真摯に生きる
 真摯に生きて 豊かな業績 成果を為し遂げ得たそんな人達
 隠れた人達 その人達への豊かな目配り それこそが
 国家の為すべき仕事 その人達の発掘 それこそが
 国家の仕事





          ----------------





          岬
            または
                不条理(2)


「いったい、あなたは、わたしにどうしろって言うんです。何をしろというんです。見ず知らずのわたしに。この前、ちゃんと断っているはずですよ」
 男は、三津田が明らかに激していると分かるにも係わらず、些かも取り乱した様子を見せなかった。
「いえ、別に大した事ではないんです。極めて簡単な事なんです」
 男は静かに言った。
「あなたに取っては大した事ではなくても、わたしに取っては迷惑至極な事ですよ。いい加減にして下さいよ」
 三津田はそう言い放すと男から顔を背けた。
「それは突然、こんな事を申し出るのは失礼で迷惑な事だとは分かっています。でも、わたし共としましては是非、社内でも優秀社員として通っているあなたのお力を借りたいと思った訳なんです」
「じゃあ、いったい、わたしに何をしろって言うんです。伺いましょう」 
 三津田は改めて腹をくくったように男を振り返ると強い口調で言った。
「そうですか。そう言って戴くと有り難いです」
「でも、話しを聞いたからと言って、わたしがそれを引き受けるとは限りませんよ」
 三津田は機先を制して言った。
「それは、あなたのお気持ち次第です。あなたが、どう御判断されようとわたし共には関係ありません」
 男は言った。
「ちょっと、待って下さいよ。わたしの気持ち次第と言うなら、わたしは、はっきりと断っているんですよ。それをあなたがしつこく言って来る。いったい、どういう事なんです」
 三津田には男の言う事の真意が測りかねて、改めて湧き起こる不穏な疑問と共に言った。
「どういう事でもありません。ただ、わたし共としましては、是非、あなたにお力を借りたいと思っているだけなんです」
 男は言った。
「やっぱり、お断りします。あなたの言ってる事は全く滅茶苦茶で、筋が通らないじゃないですか。そんな訳の分からない仕事になど、手を出したくはありません」
 三津田は言った。
「いえ、そうおっしゃらずに話しだけでも聞いて戴けませんか」
「いえ、お断りします。もう、二度とわたしには近付かないで下さい。こんな話しなど持ち込まないで下さい」
 三津田は怒りを含んだ声で男を突き放した。
 その時ちょうど、五、六人の賑やかな集団がドアを押し開けて店内に入って来た。
 店内は一気に賑わい、騒がしくなった。すると男は、まるで、その賑わいを避けるかのように、
「では、わたしは今日はこの辺で」
 と言って、慌しく会計を済ませると店を出て行った。
「今の方、お知り合い ?」
 ちょうどカウンター内に戻って来たママが三津田に聞いた。
「いや、知らない男だ」
 三津田はなんとなく昂ぶった気持ちのままに不機嫌に言った。それから何故、男がこの店にいたのか気になって聞いた。
「あの男、よくここへ来るの ?」 
「そうね、最近二、三度、来ていたかしら」
 ママは言った。
 三津田には全く、不可解な事だった。男が何故、これ程までにしつこく纏わり付いて来るのか ?
 或いは、ヤクザか何かの後ろ暗い組織が、目先をくらます為に何かの仕事で、全くその組織とは関係のない誰かを利用しようとしているのだろうか ?
 よく考えてみると、そうとしか思えなかった。その誰かが、たまたま、自分に当ってしまった。それ以外には考えられなかった。
 しかし、そう思ってみても三津田には、次にどうすべきなのかは、思いも浮かんで来なかった。警察沙汰にはするのにも、なんとなく厄介な事に巻き込まれそうな気がして、気が進まなかった。
 その夜以降、三津田の日々は再び、不穏な空気に包まれた。しかし、三津田は今度は妻の時子には話さなかった。総てが曖昧なままで、三津田自身、何をどのように判断したらいいのか分からなかった。ただ、ぼんやりした不安だけが三津田の日常を取り巻いていて、日々の中でのふとした小さな出来事に訳もなく怯えたりしていた。
 男からの電話が自宅へ掛かって来たのは、五日経ってからの夜だった。
「三津田さんでいらっしゃいますね」
 男は三津田の答えた言葉に対して改めて確認するようにそう言った。
「そうです」
 三津田は最初、それが男の声だとは気付かなかった。直接に聞く声とは少し違った、野太い声のように聞こえた。
「如何でしょう。この前のお願い、決心していただけませんか」
 やはり男は、静かな声で言った。
 三津田は息を呑んだ。男がまた現われた。
「いえ、お断りします。今、忙しいんです」
 三津田はそう言うと乱暴に受話器を置いた。
 居間には妻の時子も一緒にいた。三津田が緊張した声で乱暴に受話器を置くのを見て、
「どうしたの ?」
 と、心配顔で言った。
「この前、話したろう。あの男だ」
 三津田は下手な隠し立ては出来ないと思って率直に言った。
「何か用事を頼まれてくれって言った人 ?」
「うん」
「まだ、なんとか言って来るの ?」
 時子もさすがに不安げな顔になって眉を曇らせた。
「うん」
 三津田にはそれ以上に答える言葉が見つからなかった。妻や子供達には余計な心配をかけたくないという思いが強かった。
「しつこく言って来るの ?」
「うん」
「警察に電話をしてみたらどうかしら ?」
 時子は三津田の沈み込んだ顔を見て言った。
「うん」
 と三津田は言ったが、やはり、すぐには決断が着きかねた。
 なるべく、総てが穏便に収まってくれればいいという思いだけが強かった。
 取り合えず、今しばらくは様子を見てみようという事で話しは付いた。
 三津田は自身の身辺に気を配る事は勿論、怠らなかったが、妻にも子供達にも、日常、充分に気を突けるうに言っておいた。
「どうして ? 河原のグランドて野球をしても駄目なの ?」
 勝は不満気に言った。
「悪い人が子供をさらっていくのがはやってるんですって」
 妻の時子は子供達に言い聞かせていた。
 家庭内には厳しい雰囲気が漲っていた。子供達はさすがに、そこまでは知らなかったが妻の時子は三津田と同じように日々の暮らしに細心の注意を払うようになっていた。
 三津田自身、眠れない日もあった、このなんとも得体の知れない出来事がどのように進んで、どのような決着をみせるのか、相手の言っている事が皆目、理解出来ない事だけに、不安は増すばかりだった。そしてまた、電話があったのは、十日以上が過ぎた夜の事だった。受話器を取ったのは時子だった。
「どちら様ですか ?」
 と言った時子の声には鋭い棘が感じられた。
 夜の九時過ぎに知り合いからかかって来る電話はほとんど無かった。前回の事から察して時子は、あらかじめ相手を推測したらしかった。
 三津田は受話器を握った妻の姿を固唾を呑んで見守った。
「主人になんの御用でしょうか。はっきり、おっしゃって下さい」
 日頃の妻は、気丈には程遠い女性だった。どちらかと言えば、引っ込み思案な性格とも言えた。その妻が電話口で相手に向かって、食って掛かるような口調で話していた。少し離れた場所でテレビを見ていた三津田には無論、相手の言っている言葉など聞こえるはずはなかった。
「卑怯です。名前も用件もおっしゃらないで、まるで脅迫めいた電話を掛けて来るなんて、いったい、どんな心算なんですか。はっきり、おっしゃつて下さい」
 三津田はいつの間にか立ち上がって妻のそばに寄り添っていてた。
「名前もおっしゃれないんですか。名前と用件だけでもはっきりとおっしゃって下さい」
 強行に食い下がる妻から三津田は電話を取ると、
「いい加減にしろよ。何度、下らない電話を掛けて来ても駄目なものは駄目なんだ。警察に訴えるぞ」
 受話器に向かって怒鳴った。
「分かりました。これが最後ですので、どうか、はっきりとした御返事を下さい」
 相手の男は突然、三津田の声に変わった事にも驚いた様子はなかった。静かな声で言った。
「何度言っても同じ事だ、断る。訳も分からない仕事など、誰がするって言うんだ。人をバカにするにも程がある」
 三津田はそう言うと音をたてて受話器を置いた。
 三津田が電話を離れてソファーに戻った時、再び電話がなった鳴った。
 三津田は受話器を取らなかった。
 電話はまるで生き物でもあるかのように、暫くは鳴り続けていた。


          二


 時子はやはり、警察に訴えるべきだと言った。
 三津田にはそれでもためらうものがあった。
 警察がそれを犯罪として動いてくれるだろうか、という疑問が依然として、拭い去れなかった。確かに、悪戯電話というだけの犯罪なら動いてくれるかも知れない。だが、相手は嫌がらせの為に電話をして来ているだけではない事は明らかだった。何かの目的があるのだ。それが何も分からない、それが不気味だった。





          ------------------



          桂蓮様

          有難う御座います
          お写真拝見しました
          牛馬なみ 人間トラック
          でも なんとなく楽しそうな雰囲気が伝わって来ます
          さすがアメリカ 日本のようなちまちました庭とは
          格違い 作業の大変さが偲ばれますが でも また
          季節季節の移ろい 変化もより多く 楽しめるのでは
          ないでしょうか 是非また このようなお写真 掲載  
          して戴きたいものです
           二つの御文章拝見しました とても良い文章だと
          思います おっしゃるとおりです
           わたくしに取っては過去 思い出は苦痛の海です
          過去が美しいなどと わたくしにはとても言えません
          未熟な自分 傲慢だった自分の姿だけが思い出されて
          心が痛みます あの事 この事 過去に帰れるものなら   
          償いたいです
           人生 あまり無理をせずに 自分の心 身体に
          正直に それでも真摯に自身の人生に向き合って
          生きてゆければ それが最高ではないでしょうか
          とても良いブログを拝見させて戴きました
           有難う御座います



          takeziisan様

          有難う御座います
           今回も素晴らしい写真の数々 堪能しました
          並木の写真 どれもが秋そのもの 美しいです
          それにしても お近くにこのような自然があるのには
          羨望の思いです わが家の近くにもそれなりの公園が
          ありますが このように見事な景色は現出されません
           ダイサギの写真もいいですね
           キウイ 畑作業 羨ましい限りですが もう 
          わが身には無理な仕事と思います それにしても
          お元気 水泳のせいですかね
           車の運転 気を付けて下さい わたくしは車の
          運転が出来ません もっぱら他人任せです
           秋 随分 詩を書いていらっしゃいますね
          お若い頃のロマンティックな御様子が偲ばれます
          前回 詩を拝見して 書こうと思ったのですが 
          失念してしまいました
           毎回 数々の美しいお写真 堪能させて戴いて
          おります 
           有難う御座いました   
         

コメント (1)
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遺す言葉(372) 小説 岬または不条理(1) 他 何処へ

2021-11-21 12:48:52 | つぶやき
          何処へ(2021.11.17日作)


 昨日は あの人が逝った
 今日は この人が逝った
 若かりし頃 未だ 青春 壮年 の日々
 眼に耳に親しかった 
 あの人 この人が 次々と 永遠の地 
 永遠の彼方へと去ってゆく
 今年 今現在 八十三歳七ヶ月
 わたしの人生 まだ若かりし頃
 わたしを取り囲み わたしの日々を彩った
 あの巨大 華やかだった空間が 次々と
 蝕まれ 失われてゆく
 後に残るものは 名も知らぬ花のように
 わたしの人生の 失われてゆく空間を埋め尽くす
 若き人々の名前と顔 その存在が
 わたしの空間 今現在 わたしが生きている 
 時間 その中へ 侵入して来る
 わたしは見つめる ただ じっと 失われ
 狭められてゆく空間の中で この
 細りゆく空間 時間の中で
 わたしは いったい
 何処へ・・・・・?



         

           -----------------





          
          岬
            または
                不条理 (1)

            この世界は 不条理に満ちたものだ 
             「なぜ ? 今でもまだ信じられない」
               と いう事がしばしば 起り得る


             一


 穏やかな秋晴れの、休日の一日だった。
 大きな流れの川に沿った広々とした河原には、休日を楽しむ数多くの家族や、野球、サッカーなどを楽しむ人々の姿があった。時刻は午後三時を少し過ぎていた。三津田明夫は腕時計に眼をやると、少し西に傾き始めた陽の光りを気にして、そろそろ帰ろうか、と思った。
「おい、勝、もう帰ろう。三時を過ぎたぞ」
 と、草地に腰を降ろしてハゼ釣りの糸を垂らしていた小学四年生の息子に声をかけた。
 勝のそばには妹の小学二年生の真紀が、今日の釣果のハゼの入った小さなポリバケツに手を入れて頻りに掻き廻していた。
「うん、あと一匹釣ったら」
 勝は釣竿の先を見詰めたまま答えた。
 勝が最後の一匹を釣り上げて、二十数匹のハゼの入ったポリバケツにそれを放すと親子はようやく、竿を巻きにかかった。
「今日はずいぶん釣れたね」
 真紀がバケツの中を覗き込みながら嬉しそうに言った。
「うん、ずいぶん釣れたね。早く帰ってお母さんに天ぷらにして貰おう」
 三津田は応じた。
 三人は川の傍を離れると野球をしている少年達の近くを通って緩やかな斜面の堤防を登っていった。
 堤防を登りきってゆったりと開けたサイクリングロードに出た時、その車道で膝を折り、煙草を吹かしながら河原を見詰めていた男が不意に立ち上がると三津田親子に近付いて来た。
 五十代半ばと思われる男は三津田の前へ来ると軽く頭を下げながら、
「三津田明夫さんでしょうか ?」
 と言った。
「はい、そうです」
 三津田はなんの疑問も抱かずに答えた。
「実は、ちょっとお話ししたい事がありまして」
 男は静かな口調で言った。
「なんでしょう ?」
 三津田は軽い懸念と共に答えた。
「お頼みしたい事がありまして」
「わたしに ?」 
 三津田は不意を突かれる思いで答えた。
「はい」
 男はやはり静かな口調で言った。
「なんですか ?」
 三津田は初めて軽い疑念に捉われて言った。
「詳しい事はまた後でゆっくり、お話ししたいと思うんですが、ただ、承知して戴けるかどうか、お返事を戴きたいと思いまして」
 三津田は困惑した。
「お話ししたいって、いきなり、そんな事を言われても困りますよ。なんの話しか訳も分からずに」
 三津田は些か機嫌を損ねてぶっきら棒に答えた。
「それは承知しています。失礼だとは重々承知の上で、あえてお頼みしたいと思いまして」
 男は依然として静かな口調で丁寧に言った。
「お断りします。訳も分からないそんな話し、お断りします」
 三津田はきっばりと言うと、真紀の手を取って歩き始めた。
「よく考えて戴けませんか。また後日、改めてゆっくりとお話しさせて戴きたいと思いますので」
 男は三津田達の後に付いて来ながら言った。
「いえ、お断りします」
 三津田は後ろを見もせずに答えた。
「そうですか。ちょっと残念ですが、でも、今日はこれで失礼します」
 男はそう言うと三津田の後に従うのをやめて足を止めた。
 三津田には気配でそれが分かった。
 少し歩いて三津田が後ろを振り返った時、男は堤防の上に出ていて、三津田に背を向けて遠ざかって行った。
「何処のおじさん ?」
 手を繋いで歩いている真紀が無邪気に三津田を見上げて聞いた。
「何処のおじさんか、パパも知らない人だよ」
 三津田は不機嫌な気分の払拭出来ないままに、それでも真紀には優しく答えた。
「変な人だね」
 勝が釣竿を肩に、手にはハゼの入ったポリバケツを提げて三津田の脇を歩きながら言った。
「うん、全く変な人だよ」
 三津田は吐き出すような口調で言った。
「何をしいる人なんだろうね」
 勝は言った。
「何をしている人かなあ」
 三津田自身、理解出来ないままに重い口調で答えた。
 その夜、三津田は子供達が布団に入った後で、妻の時子に昼間の出来事を話した。
「まったく知らない男なんだ。顔も見た事がない」
「その人が、頼みたい事があるって言ったの ?」 
 時子も不安げな様子で問い返した。
「うん」
「何かしら ?」
 時子は言った。
「なんだか分からない」
 三津田には、そう答える事しか出来なかった。
「何処かで会っている人じゃないの ?」
 時子は言った。
「いや、会った事はない。全く覚えがないよ」
 それは確信出来た。
「それで、後日、また会いたいって言ったの ?」
「うん」
「嫌だわ。何もなければいいけど」
 時子は心底恐れるように顔を強張らせた。

 三津田が心配した男からはそれ以後、なんの連絡もなかった。最初の二、三日は出勤途中の電車の中でも、街中を歩いている時でも、絶えず、男が何処からか自分の様子を窺っていのではないかと気になって仕方がなかった。しかし、それが一週間も過ぎる頃になると、何事もないその状態に馴れて来て、男は、ああ言ったが、きっぱりと断られた事で諦めたに違いないと思うようになっていた。妻の時子も、「あれからなんの連絡もない ?」と聞いて来たりしたが、三津田は晴れやかな気分でいる事が出来た。
 現在、三津田は四十二歳で働き盛りだった。都内にある清涼飲料水メーカーに勤務していて、課長という立場にあった。一家は三歳違いの妻と二人の子供の四人暮らしだった。大きな川を隔てて東京に隣接する市に住んでいて、生活は順調そのものだった。これといって何一つ、心配の種になるようなものはなく、唯一、住宅ローンだけが重荷だったが、それも苦にする程のものではなかった。直属の上司は将来の社長候補といわれる人で、三津田はその人の信頼も得ていた。言ってみれば三津田の人生は輝ける未来に満ちている、とも言えた。

 三津田は社用でも個人的にもよくそのバー、「茜」を利用した。東京駅に近い彼の会社からさして離れていない距離にあって、五十歳前後と思われる品の良い、少し太り気味のママと三人のホステス、それに六十歳代のバーテンダー、アルバイトのバーテン見習いとも言える大学生のいる店だった。カウンター席と四つの椅子席があって、こじんまりとして落ち着いた雰囲気が特長だった。
 その夜、三津田が商談を済ませた取引先を送って「茜」入ったのは、午後八時を少し過ぎていた。店内には二つの椅子席とカウンターに着いている七、八人の先客があった。三津田は緩やかに馬蹄形を描いているカウンターの先客とは少し離れた入り口に近い場所に席を取った。
 ママが三津田の前に来た。
「何時ものにします ?」
 ママが聞いた。
「うん」
 と三津田は答えた。
 三津田に取っては、習慣とも言えるママとの応答だった。
「今日は、お連れは ?」
 ママは言った。
「いや、今、取引先を送って来たんで、ちょっと、寄ってみた」
 三津田は言った。
「相変わらず、お忙しそうね」
 ママは言った。社交辞令ではなかった。
「うん、ちょっとね」
 三津田も満足感と共に答えた。
 一組の三人連れの客が入って来て、椅子席に向かった。
 ママは「ちょっと失礼」と言うと、三津田の前を離れて、椅子席に着いた客達の方へ向かった。
 カウンターの中にはバーテンダーの吉野さんとアルバイトの宗ちゃんがいた。
 三津田が一人でグラスを口にしていると、一人の男が影のように三津田に近寄って来ていた。男はウイスキーのグラスを片手に、三津田に身体を摺り寄せるようにしてスツールに腰を下ろした。
「先だっては、失礼しました」
 三津田が身構える間も置かずに男は、耳元で囁くようにして言った。
 三津田はギョッとして男を見た。
 紛れもなく、あの男だった。
 三津田が言葉を失っていると男は、
「ここには、よくお見えになるようですね」
 と言った。
 三津田は黙っていた。
「如何でしょう。あの件は考えて戴けたでしょうか」
 と、男は言った。
「いい加減にして下さいよ」
 三津田は激しい怒りに捉われたが、店内の雰囲気を慮って腹の底から搾り出すような声に批難を込めて強く言った。
「わたしの方でもそうしたいのですが、この事にはいろいろ、複雑な事情が絡み合っていまして、なかなかそれが出来ないんですよ」
 と男は言った。





          ------------------




          takeziisan様

          コメント 有難う御座います
           一人の画家の絵に魅せられ 取り憑かれた 
          男の悲劇 芸術が人の心にもたらす影響に付いて
          書いてみました 芸術に限らず 何か一つのものに
          魅せられ それに打ち込む姿勢は なかなか 他人には
          理解出来ないものがあります あいつは何々気狂いだ
          と言われるのがそれで その人に取ってはそれが
          人生の生き甲斐ともなって それが無くなれば 生きる
          価値そのものが無くなってしまう そのために自分の命    
          までも賭ける羽目なる 画家で言えばゴッホなどがその
          例ではないでしょうか その為に無意識のうちに
          命までも削ってしまう ただし この文章の中で 
          それが描き切れているかどうかはまた 別問題ですが
           シャコバサボテン 早いですね なんだかわが家では
          花芽もないです 
           ラテン 当時 流行りましたね ブログ内で懐かしい
          音楽の数々に出会え 当時の思い出と共に心和む一時
          を過ごしています
           その他 紅葉 様々な花の写真 眼の保養です
          昨夜も NHKで京都の紅葉を写していましたが この
          季節 色とりどりの見事な景色を見るのは 毎年の
          楽しみになっています それにしても 豊かな色彩に
          恵まれた国土だと思います 政治もせめて この国土に
          匹敵するような彩豊かなものを見せてくれると
          いいのですが まずは儚い夢にしか過ぎないようです
           水泳 気力がある限り まだまだいけます
          お互い 歳の事は嘆かず 頑張って否 頑張らずに
          元気に行こうではありませんか
           それから忘れました うどん わが家でも昔 つくり
          団子のようになってしまって 大笑いしながら食べた
          記憶があります
           何時も お眼をお通し戴き 有難う御座います
           




          桂蓮様

          有難う御座います
          コメント とても楽しく読ませて戴きました
          落ち葉集め 去年も書いたように思いますが
          改めて良い環境にあればあるなりに御苦労が
          あるのですね それにしても この コメント
          傑作です 状況がよく浮かびます 牛 馬 思わず
          笑ってしまいました 御夫婦仲睦まじい御様子
          ほのぼのとした気持ちになります 拝見していて
          楽しくなりました 身体は鍛えれば鍛えるだけ 
          期待に応えてくれるものですね 読んでいるだけで
          柔軟さを増したお体の様子が見えて来ます
           再読ブログ 人を読む 
           人が見せない部分を読めるようになって やっと
          その人のありのままが見えてくる
           隠している部分を読み取り その隠している部分を    
          尊重する 大事な事ですね 正に正論 深い言葉です
          それもこれも 人を尊重する その気持ちの無い人には
          無理な事ですね 人の気持ちはどんな人の気持ちであれ
          それが他者を傷付けるものでない限り 
          尊重したいものです
           御作品の再読 英文との合わせ読みのせいか
          その都度、面白く拝見ざさて戴いております
           いつも詰まらない文章にお眼をお通し戴き
          感謝申し上げます
           有難う御座いました          
          
            
    

 
 
 
 
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遺す言葉(371) 小説 十三枚の絵(完) 他 雑感十題

2021-11-14 12:36:32 | つぶやき
          雑感十台(2020~2021年作)


 1 最初は理想を実現するために結成された組織も
   組織が肥大化する事により しばしば 理想の実現を離れて
   組織維持のために腐敗の道を辿ってゆく

 2 宗教組織は大半以上が 権力維持のための集団組織だ
   真の宗教家になる為には 雑念 雑事を振り払い
   自身の道を極める
   集団組織はそれ自体 道にとっての雑念 雑事

 3 幽霊は存在する
   人間に想念がある限り 幽霊は
   想念の中に生まれて 出現する

 4 悟りとは直覚だ そこにあるけど
   証明は出来ない
   実体 形がないからだ
   実体 形はないが 確かに在る
   それが直覚であり 悟りだ

 5 「生きているから 楽しい事や 嬉しい事に出会えるんだよ」
   相次ぐ病気で苦闘中 ふと
  「生きるっていうのは 辛い事だなあ」と洩らした時
   五歳の孫の男の子が答えたという

 6 わたしとは何か ?
   わたしである
   そのわたしとは何か ?
   わたしではない わたしである
   わたしではない わたしとは何か ?
   わたしである

 7 空は空であり
   空もまた空である
   空が空である事によって
   空は有になり 有になった空は 空である事によって
   空である

 8 詩とは何か ?
   心の動き 躍動を直接 言葉に置き換え 伝えるもの
   散文は心の動きを説明する

 9 人間存在は風船の上に成り立つ存在
   風船が壊れる時 人間存在は消えて無くなる
   風船を造り出した世界は 偶然のうちに成り立ち
   偶然こそが 人間社会を形造る根源

 10 それがどうした ?
   だからどうなんだ ?
   究極 突き詰めればゼロ ゼロの世界
   この世は無 すべて無 世の中 世界は蜃気楼
   何時かは消えて無くなる  





          ---------------



          十三枚の絵(完)



「それにしても、意外に小さな沼だなあ」
 森本が言った。
「ああに、あの沼の絵は、幻覚の中で拡大されたもんだっぺよ」
 辰っあんが言った。
「あの女や小舟も、幻覚だったのかなあ」
 わたしは言った。
「どういうもんだろう」
 森本が言った。それから森本は考え込むように続けた。
「あるいは、この沼の美しさに魅せられた結城さんが心の裡を沼に託して、あのように表現したのかも知れないなあ」
「うん、そういう事も、あるかも知れないよな」
 わたしも、その考えには同意出来た。
「まあ、どっちにしても、結城さんが絵さ描いでるみでえにキジば追っ掛げで、こごまで来だこどは間違えねえな」
 辰っあんが断定的に言った。
「うん、そうだろうな。それで帰ろうとした時には体力を消耗してしまっていたんだよ。きっと」
 森本が言った。
 それは確かに間違いのない事のように思えた。それでなければ、如何な結城さんでも、この奥深い山の中に沼があるなどとは想像出来なかったのではないだろか ?
 その沼は縁をたどって降りてゆくのにはかなりの危険を伴った。密生した熊笹が水際近くにまで生い茂っていて、足の置き場も分かりかねた。水面までの距離は人の背の高さ以上、恐らくは二メートルを越える程にあるのではないかと思えた。
「でも、何故、こんな山の中にポツンと、こんな沼があるんだろう」
 わたしは不思議な感覚と共に言っていた。
「さあ、なあ」
 辰っあんにも分かりかねるようだった。
「思いのほか、平凡だとも言えるが、考えようによってはかなり神秘的だとも言えるよな」
 森本が言った。
「神秘的だよ。あの水の色を見てみろよ。あの深い緑を帯びた水の色を、神秘的と言わなくてなんて言うんだよ。それに、こんな小高い山の上に湧き水がある訳でもないのに、こんな沼があるなんて、不思議な気がするよ」
 わたしは軽い興奮口調で言った。
「噴火があって、その噴火口に水が溜まったって言うんなら、話しも分かるけどなあ。こんな所に噴火などあるはずもないし」
 森本が言った。
「雨なんかが地面の凹んだとごさ溜まって、いづんまにがこんな風になってしまったつうこったぺなあ」
「それにしても、可なりの深さがあるようだ」
 わたしは言った。
「うん」
 森本は言って、熊笹の中から身を乗り出すようにして覗き込んだ。
 出来る事なら、沼の上に小舟を浮かべてみたい気がしないでもなかった。
 無論、そんな小舟もなくて、時間もないままにわたし達は沼を後にする事にした。
 時刻は午後の三時を過ぎていた。秋の日暮れの早い季節であれば、とっくにわたし達が辿って来た山の中は暗闇に覆われていただろう。
「早く帰ろう。それこそ暗くなってしまったら大変だ」
 森本が腕時計を見て言った。
 わたし達が帰路を辿り始めたその時だった。今まで、わたし達から離れて興奮気味に山の中を走り回っていた三頭の犬たちが一斉に激しく吠え立て始めた。
「あんだ ?」
 辰っあんが素早くその声に反応して耳を澄ませた。
 犬たちは三頭が競い合うかのように激しく声を揃えて吠え立てていた。
「あにが、めっけだな」
 辰っあんは言った。
「うん、そうらしい。行ってみよう」
 森本はそう言うより早く犬たちの声のする方へ向かって歩き出していた。
 わたし達が犬たちの吠え立てている場所に到着した時、森本の家にいる二頭がわたし達の方へ近付いて来たが、結城さんに飼われていたメリーだけは、その場を離れようともせずになおも激しく吠え立てていた。
 わたし達がその場所に到着してみると、そこには一羽の大きな鳥の白骨化した死骸が転がっていて、傍には結城さんが愛用していた二連発の猟銃が汚れたままに放り出されてあった。
「ああ、結城さんは何処かでこの撃ったキジを捕まえて、此処まで持って来ていたんだ」
 森本が言った。
「うん、そうだっぺえ」
 辰っあんはそう言うと身をかがめて、熊笹をへし折り横たわっている、かなり大きな鳥の白骨死骸を取り上げた。
「これはやっぱりキジだよ。それに、かなりでっけえど」
 と言った。
 よく見るとその周囲にはキジの羽毛や、尾の欠けらなどが散乱していた。
「何かに食い荒らされたのかね」
 森本がその羽毛の一部を手に取って見詰めながら言った。
「そうだ。狸がイダチだっぺえ」
 辰っあんは言った。
 わたしは放り出されたままになっていた、二連の猟銃を手にした。雨風に晒された銃はすつかり錆び付いていた。
「いずれにしても、結城さんは此処まで来て疲れ果ててしまって、銃も獲物も手放してしまったという事なんだろうか ?」
 わたしは言った。
「そういう事だろうな。何処でこのキジを撃ったのか分からないけど、この場所までは持って来ていた事は確かだよな」
 森本が言った。
「それにしても、かなり大きなキジだなあ」
 森本は辰っあんが手にしている白骨体を見て、改めて感嘆の声を上げた。
「うん、大きい」
 わたしも言った。
「この骨格だど、羽ば広げだとごろは優に一間はあっぺえ」
 辰っあんは言った。
「これだけ大きいとなると、さぞかし見事なキジだったろうな」
 森本が言った。
「そりゃあ、見事なもんだべえ」
 辰っあんも言った。
「だけど、結城さんはこのキジを持ったまま、あの沼の方へ行ったんだろうか」
 わたしは言った。
「そうじゅないのか。キジを捕まえて、帰ろうとした時に方角を見失ってしまったんじゃないのか。掴まえる前に沼に出会っていれば、改めてキジを追う事などしなかったと思うよ。あの沼の見事さには誰だって感動するもの」
 森本は言った。
「そうだよな。そう考える方が自然だよな」
 わたしは言った。
「それにしても、結城さんは銃や獲物を手放さなければならない程に、体力を消耗していたという事は、以前から、何処か悪かったのかね。それじゃなければ、帰って来た時のあの様子から判断しても理解出来ないものな」
「うん、どうなんだろう。結構、悪かったんじゃないのか。医者は結城さんを診察した時、あちこちが傷んでいると言ってたもの」
 森本は言った。
「ああに、体は相当、悪がっただよ。そっでなげればいぐらあんでも、体力ば消耗したっつうだけで、一晩のうぢにあんなに年寄りみでえになってしまうもんでねえ」
 辰っあんは言った。
「そうだよなあ」
 と、森本は当時を思い出すように言った。
「すると結城さんは、その時、暗闇の中で、あの十三枚の絵に描かれているような幻覚に捉われていたのかなあ。それとも帰って来て、画架に向かった時、当時を思い出しながら想像を膨らませて、ああいう絵を描いたんだろうか」
 わたしは言った。
「それは素人の俺なんかには分かんないけど、いずれにしても結城さんは、あの時の体験を通して何かを掴んでいたんだよ。それで、その思いを絵にする事に夢中で、いくら俺が医者に行ってよく診察して貰わなければ駄目だって勧めても聞かないまま、なお、悪くしてしまったんだ」
 森本は悔しそうに言った。
「もどもど、俺なんかには、結城さんのすっこどはよぐ分がんねがった。芸術家っつうのは、俺だぢなんがどはまだべづの世界にいっだよ。俺なんが、結城さんの絵ば見でもまったぐ分かんねえし、俺が貰った三枚のあの絵は、あんなにきれえに描がれでいで、みんなが喜ぶど思うのに、十三枚に描がれでる絵はあにがあんだが分がんねえ」
 辰っあんは言った。
「そうだよな。俺もあのきれいな絵は二枚貰ったけど、結城さんは、そんなきれいな絵を描く事は始めから考えていなかったんだよ。何時だったか、俺に言った事があったもの。売れる絵を描こうとは思わないんだって。売れる絵を描くくらいなら、実家の商売をしていた方が、はるかに効率的だって」
 森本は黙って頷いた。
 わたしは森本や辰っあんの言った言葉からふと、思った。
 結城さんは多分、あの道に迷った夜に体力を失ってゆく中で、何か、自分自身の絵に対するヒントを掴んでいたに違いない。結城さんがその時、どのような心境にあったのかは、知る由も無かったが、幻覚に近いものは確かに見ていたに違いないのだ。それでなければ、あの十三枚、正確に言うと十二枚だが、あのような絵は描かれていないはずだ。それは、それまでに結城さんが描いていた絵とは全く趣の異なる絵で、結城さんが最初にひと目見た時、魅了されたというルドンの絵に近いものがあった。幻想に満ちた絵だった。結城さんはそこに自分の絵の本領を見ていたのだ。そして、その自分自身の絵を見い出した喜びの中で結城さんは、自身の体力の衰えている事も自覚せずに無我夢中という状態の中で描いていたに違いない。その証拠にそれらの絵は三日に一枚、四日に一枚という速さで描かれている。これまでに無い速さだった。だが、結城さんの体力は森本が心配していたように、既に十三枚の絵を描き切るまでには持たない状態になっていたのだ。その証拠には、それまでの絵が何処と無く自分の世界を発見した喜びに彩られるように明るい色彩の多かったものが突然、十二枚目の「小舟」の絵では一変して、空白と虚無の色に彩られた絵肌に変わっている。この時すでに結城さんの体力は限界に来ていたに違いないのだ。それで結城さんは、その白い小舟の上に描き加える喜びを見い出せずに、白い小舟に自身の人生の空白をそのまま映し出すように残していたのだ。
 それからわたしはまた、ふと思った。
 或いは結城さんは、自身の体調を自覚していて、自分の人生の長くはない事を覚り、自身の絵の道を見つけ得たその喜びの中で、必死にこれ等十三枚の絵を描いていた。もう、自分に残された時間は少ない、その自覚が結城さんの気持ちを急き立てていて、これまでに無い速さでこれ等の絵を完成させたーー。そして、最後の小舟の絵は、最早、これ以上、筆を持つ体力も失われてしまったその空白感、空虚感がこの絵として残された。最後に画架に張り付けられたままになっていた白い画布は、そのまま、結城さんが自身の死を象徴するものとして故意に遺したのではないのか ? 
 或いは結城さんの死は、結城さん自身によるなし崩し的自死ではなかったのか ? と、わたしは思った。何故なら、結城さんになんとしても生きようとする強い意志があれば、森本が頻りに勧めたように医師の診察を受け、体調を整える事も可能だったはずではないか。だが、結城さんは自分の絵の本領を見つけ得た喜びの中で、その興奮の冷め遣らぬままに絵の方に自分の命を賭けたーー。
 いずれにしても、結城さんの居ない今となっては分かるはずのものではなかっが、わたしは、芸術、或いは一つの何か、自身にとっての掛け替えの無いものに出会った人の、その人生の壮絶さを思わずにはいられなかった。
 ーーいつの間にか、わたし達の立っている樹々の間から射し込む太陽の光りが傾き始めていた。わたし達はそれに気付くと慌ててその場を離れて帰路に着いた。


              完





          ----------------



          桂蓮様

          有難う御座います
          身体知能 頭脳知能
          拝見しました 全く同感です
          頭で覚えただけでは すぐに忘れて
          しまいます 身体で覚えたものは何年経っても
          忘れません 身体で覚える事の大切さ
          同感です
           コメント 本当にこんな狭い処に
          閉じ込めて置くのは勿体無いです 楽しい文章
          気取りがなくて自然で 情景が自ずと眼に
          浮かんで来ます 
           " いつか "を楽しみに期待しています
          それにしても 人生を楽しんでいる御様子
          ほのぼのとした気持ちになります 人様の事でも
          楽しい記事を拝見するのは気持ちの良いものです
          近頃は日本でも嫌な出来事ばかりが多くて
          ニュースを見聞きするのも気が進みません
          嫌な陰険なニュースの時には 思わず
          テレビのスイッチを切ってしまったりします
           どうぞ これからも楽しい記事 お寄せ下さいませ
          何時も 有難う御座います



          takeziisan様

          何時も お眼をお通し戴き 有難う御座います
           今回もブログ 楽しませて戴きました
           鈴懸の径 懐かしい曲ですね
          当時が甦ります わたくしは当時 池袋
          立教大学の近くに住んでいました 池袋駅から
          少し歩くと三叉路で大学へ向かう道には
          プラタナスの並木がありました 鈴懸の径は
          この道を唄ったものだと聞いた記憶があります
          或いは 何かの間違いかも知れませんが 何故か
          得意に思えた記憶があります
           モンタン 懐かしいです 何時聴いてもいい曲です
          後年のモンタンは俳優としての活躍が目立ちますが
          映画 恐怖の報酬 のモンタンが一番強く印象に
          残っています
           小学校教室での映画 当時は何処も状況が
          一緒ですね 三益愛子 母物映画の看板女優 これも
          懐かしいです
           リンゴ園の少女 当時の懐かしい俳優が悉く 
          亡くなってしまいました わたくしは映画は
          見ていないのですが 確か ラジオ東京 と
          言ったと思いますが そこで放送された
          ラジオドラマを記憶しています
          それが好評で 映画化されたものはずです
          当時はまずラジオドラマがあって 後に映画化される
          そんなケースが多かったですね 島倉千代子の
          この世の花 もそうだったと思います 
          君の名は 等々
           イチゴ 植え付け 写真見事です
          その他 遠くに見える山なみ あれは御当地から
          見えるものですか 環境の素晴らしさ 羨望です
           てばらせた 方言ですね 初めて知ります 
          方言には地方の温もりが感じられます 何時聞いても
          何を聞いても ほのぼのとした気分になります
           何時も 有難う御座います
          


          


 


 













































 



 

 
   
   
   
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遺す言葉(370) 小説 十三枚の絵(7) 他 名経営者の言葉

2021-11-07 12:44:40 | つぶやき
          名経営者の言葉(2021.10.20日作)



 「 オムロン(旧 立石電気)創業者 立石一真さん
  京セラ創業者 稲森和夫さん
  二人に 経営の教えを乞うたが
  教えてくれなかった
  立石さんには
  まず 君の考えを言ってみろ 
  と言われた
  経営は理屈だけでは出来ない
  現場でいろいろ困難にぶち当たり
  答えを出してゆくしかない 」

  あばら屋工場から出発して
  一代で売り上げ高 1兆6千億
  世界一の総合モーターメーカーに育てた
  日本電産会長 永守重信氏の言葉
  禅の極意に通じる言葉
  禅は理屈ではない
  直覚だ と言う
  感覚 自分の感じるがままに行う
  理論 理屈は後から付いて来る
  理論 理屈より まず行動
  自身の体で知る 体得する それが
  何事に於いても肝要 肝心 最も 大切 重要な事





          ----------------





          十三枚の絵(7)


 結城さんが亡くなってから森本が飼うようになったメリーも、森本の二頭の猟犬と一緒にわたし達に付いて来た。
 猟犬たちは久方振りの山歩きに興奮ぎみで、盛んに走り廻ってはキジやウズラなどを追い出した。
 北山は様々な雑木の密生した原生林と思われた。一面に繁茂した熊笹の中に野茨や蔓草、藤づるなどが絡み合っていて、歩行は困難を極めた。辰っあんの持参した樫の棒や大型ナイフが功を奏した。時折り、太陽の光りが樹々の間から洩れて来たが、全体的に鬱蒼とした感じで暗かった。
 道筋は緩やかな勾配を描いていた。一足進むごとに高みを辿っているという感覚だったが、わたしと森本は辰っあんが樫の棒やナイフを振るっては切り開いてゆく、その後に従って歩いていた。
「いったい、結城さんは本当に、こんな所にまで入って来たんだろうかね」
 森本が行程の困難さに辟易した様子で、思わずといった調子で呟いた。
 わたし達に背中を見せて歩いていた辰っあんは、
「さあ、なあ」就いて
 と言ったがその声も、さすがに息切れの色を滲ませて上ずっていた。
「この奥にその沼っていうのは、本当にあるのかね」
 わたしは汗にまみれながら、信じかねる思いで言った。
「あるっていうのが、村の中で信じられている噂なんだ」
 森本が息を切らしながら言った。
「どんな沼なんだろう」 
 疲労感に辟易しながらもわたしの興味は尽きなかった。
「いや、村ん中の年寄りでせえ、実際(じっせい)にはよぐ知んねえだよ」
 辰っあんは言った。
「昔、精米所の爺さんが、沼さ行って帰(けえ)らねがったこどがあったつうけっど、いぐら山ん中(なが)ば探しでもめっかんねえがったつう話しだ」
「今の親父の親父かい ?」
 森本が聞いた。
「そうだ。今の親父がまだ十二か十三の頃だっつうこった。今の親父だって六十にはなっぺえ。だもん、はあ、五十年近ぐも昔(むがし)のこった」
「その間、誰も沼に行かなかったのかね」
 森本が聞いた。
「行ったつう話しは聞いでねえ。第一、こんな山ん中(なが)、わざわざ苦労して来る事はあんめえ。沼の主が住むとがあんだとが噂ばする人間もいるもんでなあ」
「迷信なんだろう」
 わたしは言った。
「迷信だよ、迷信。そんなもん、居るわげあんめえ」
 辰っあんは明快だった。
 小高い山の頂に登るまでには一時間以上かかった。
 頂上に上ると暫くは平坦な地形が続いた。
 雑木の密生や熊笹の中に蔓草や野茨などが絡み合うのは、此処でも変わらなかった。積年の枯れ草や落ち葉の堆積で、足元が厚手の絨毯を踏締めるようにふわふわした。
 この山の中の何処に沼があるのか ?
 密生した樹々に覆われた視界の中ではすぐには信じ兼ねる思いがした。
 わたし達は長い時間の困難な歩行の後での疲れと共に口数も少なくなっていた。ただ、何時かは現われると思われる沼を脳裡に描いて歩き続けた。
「沼があるっつうんなら、そごだけは明かりいはずだがら、すぐ分かっぺえ」 
 辰っあんは迷いを見せなかった。
「そうだよな。樹々がないんだから、太陽の光りが見られるはずだもんな」
 森本が応じた。
 この北山が何処まで続き、その果てがどうなっているのかは、辰っあんにも分からないらしかった。
 わたし達は平坦な地形に出てからも三十分近くも歩き続けた。
 わたしは辰っあんとは違って、些かの疲労感と共になんとはない不安な感覚に捉われ始めていた。
「このまま歩いて行ってもいいのかね。それこそ結城さんじゃないけど、迷ってしまうんじゃないの ?」
「うん、そうだなあ」
 森本も頼り無げだった。
「ああに、大丈夫だよ。陽の光りの差し込みぐえば見れば、方角が分がっから、心配(しんぺえ)ねえよ」
 辰っあんは樹々の間から差し込む光りを仰いで言った。
「今、何時だ ?」
 辰っあんが森本に聞いた。
「一時三十分を少し過ぎた」
 森本が答えた。
 確かにこの巨大な樹々に覆われた西も東も判別し兼ねる空間では、唯一、太陽の光りだけが頼りに違いなかった。
 それから暫く歩いた時だった。
「ほれ、見ろ ! あすこだ」
 突然、辰っあんが指差して、わたしと森本を促すように言った。
 わたしと森本はその唐突さに思わず足を止め、辰っあんの指差す方角を見た。
 確かに、樹木の間に微かに透けて見える明るい空間があった。
「本当だ ! 」 
 わたしも森本も思わず言っていた。
「あれが沼だっぺえ」
 辰っあんは言った。
「そうだよ。沼だよ」
 森本が確信したように声を弾ませて言った。
「早く行ってみよう」
 わたしは急に湧き上がる元気な気分と共に言っていた。
 明るさはわたし達がいる場所から四、五十メートル程先かと思われる、やや左寄りの位置にあった。
 辰っあんは、今までより一層乱暴に野茨や蔓草などを切り払い、なぎ倒しながらどんどん進んだ。わたしと森本が後に続いた。
 ようやくの事で辿り着いた沼はだが、わたし達が想像していた程に立派な沼でも、大きな沼でもなかった。ごくありふれた平凡な佇まいを見せた沼だった。結城さんの絵からは想像も出来ない平凡さだった。
「なあんだ、思いの外、小さな沼なんだなあ」 
 森本が期待はずれの気持ちを露骨に滲ませて言った。
「うん、もっと大きいかと思ったよなあ」
 わたしも言った。
 沼は恐らく、直径五十メートルか六十メートルと思われる程の水面を見せて、ほぼ歪みのない円形に広がっていた。そして、わたし達はその淵辺に立って水面を見下ろした時、だが、思わず誰もが眼を見張ると思われるような驚きに捉われていた。
 さざ波一つない水面には沼の縁を彩る緑が、そのまま水の中に移動したかのように鮮明に映し出されていた。陸の上の景色がそのまま水の中にあるかのように見えた。わたしも森本も辰っあんもその鮮やかさにはしばし、言葉を失って見入っていた。
 暫くしてから辰っあんが、
「これは凄え。底まで見えるみてえだ」
 と、水底を覗き込むようにして言った。
「うん、凄い !」
 と、森本も言った。
「でも、どうして、こんな所にポツンと、こんな沼が出来たんだろう」
 わたしは言った。
「うん、そうだなあ」
 森本も言った。
「結城さんは、この沼を見て幻覚に襲われたんだろうか ?」
 わたしは理解出来ないままに言った。
「多分、そうだっぺえ」
 辰っあんが水面に視線を落としたまま呟くように言った。





          ---------------



          桂蓮様
 
          有難う御座います
          新作のない時の何時もの逍遙 今回は
          未来の幸せ 過去の思い出 を
          拝見しました 以前にも拝見した記憶がありますが
          英文との合わせ読み 英文の素養がないため
          改めて 新鮮に感じられるのです
           それにしても 人との出会い 大切ですね
          良き人との出会い これに勝る人生の宝物は
          ないと思います 冒頭の写真 背後の人は人形
          ではないでしょうね ほのぼのとした気持ちで
          拝見しました 人の幸せな姿を見るのは 見る側も
          幸せな気分で包まれます
           バレーの練習 何事も無理は禁物 まず下準備
          大切な事ですね それにしても こうして打ち込める
          物があるのは好い事だと思います 何もする事のない
          人生ほど詰まらないものはありません どうぞ
          何時までも若々しく 頑張って下さい 人生
          頑張りばかりでも辛いですが 頑張る事の無い人生も
          また 辛いものです
           お忙しい中 わざわざお言葉を御寄せ下さり 
          御礼申し上げます 有難う御座いました



          takeziisan様

          有難う御座います 今回もブログ
          楽しませて戴きました
          鳴子温泉 今朝(11.7日)NHK 小さな旅で 鳴子温泉
          放送していました コケシ作りなども紹介しながら
          それにしても紅葉 見事です また 日光 ここも
          思い出深い場所です 昭和二十八年 修学旅行は日光で
          中禅寺湖を背景に全員で記念写真を撮りました また
          2010年10月には家族旅行もして 改めて当時を
          思い出し 懐かしさを覚えました 湖畔に一本の桂の樹
          があって 修学旅行時に校長先生が これが映画
         「愛染かつら」で有名な 桂という木だと教えてくれた事  
          を覚えていて 家族旅行で行った時 たまたまその木を
          眼にし 改めて感慨にひたりました 当時は細い木だっ
          たのですが 見上げる程の木になっていました なお
          わたくしのブログにも 中禅寺湖畔 桂の木 と題して  
          当時の事を NO157に掲載しました 
           ジャニ ギター 良いですね この曲 大好きです
          ペギー リー この気だるさ 甘さ ぞくぞくします
          この曲 ジャニ ギター と題されているので 初め
          旅のギター という意味かと思っていました それが
          何年か前 初めて映画 大砂塵 を見て 主人公
          ジョニーをテーマにした唄なのだと納得しました
          ジョニ ギターなんですよね ペギー リーの歌を
          聞いてもなんとなく ジャニ ギターと聞こえるので
          ああ そうか と思ったわけなんです 映画は
          ペギー リーの歌ほどの魅力はありません 
          わたくしには平凡な西部劇のようにか思えませんでした
           十三夜 榎本美佐江 久し振りにあの細い声 
          聴く事が出来ました わたくしの母などはこの人の
          大ファンで 末の妹の名前を美佐江とした程です
           その他 後追い三味線 の写真も出ていましたが
          この歌 あまり歌われませんでしたが 好きな歌の一つ
          です 都都逸 昔の風情はすっかり 消えて
          しまいました せめて公共放送のNHKは やたらに   
          民放番組の真似などせずに 地道にこういうもの
          薄れ 消えてゆく日本の文化の紹介 保持などに努めて
          貰いたいものです
           川柳はいいですね ユーモアに交えて皮肉が言える
          いいです
           人生 上り坂下り坂 悲喜交々 連れ添う人のいる
          幸せ 今 この時を大事にしたいものです
           様々なお写真 今回も楽しませて戴きました
           有難う御座いました     

        

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遺す言葉(369) 小説 十三枚の絵(6) 他 言葉は心の鏡

2021-10-31 13:08:50 | つぶやき
          言葉は心の鏡(2021.10.10日作)


 言葉を残そう
 書き留めた言葉を 残そう
 言葉は 人の心 心の中を
 映す鏡 写真 一枚の写真が
 あなたの心の中を 写す事はない
 それは 出来ない 不可能
 言葉 一つの言葉は
 あなたの心 心の内を
 後に残った あなたの子供
 あなたの孫 またその子供 達にも 伝える
 それが 出来る
 人は心 心は人
 言葉だけがあなたの心
 あなたの 人となり それを あなたの
 後を生きる人々に 伝える事が
 出来る
 心を伝える言葉 
 一つの言葉には それが出来る
 書き残された言葉 一つの言葉が
 あなたの心を 後に生きる人々に
 伝える 
 人は心 心は人





          --------------------





          十三枚の絵(6)


「でも、そこに至るまでには、過程を描いた絵があってもいいんじゃないかなあ。それが一枚もない。それにこの " 生活 "という、最後から二番目に描かれた絵を含めて、女と結城さんの二人が描かれている絵にはどれも明るい色調が混じっている」
「これだけ何か、突然変異っていう感じだよなあ」
 わたしも言った。
「あるいはこの絵には、何かの意味が隠されているのかも知れないよ」
 森本が言った。
「うーん。だけど、考えてみると変だよなあ。たった一夜のうちには収まらないだけの内容が、この数々の絵の中にはある。それに、結城さんはいったい、どの時点で病気の発作に見舞われたんだろう。ここに書かれた数々の絵で見る限り、帰る途中でとしか考えられない」
 わたしは言った。
「こりゃあ、事実ば描いたもんではねえだよ」
 辰っあんが言った。
「えっ ?」
 わたしは辰っあんの顔を見た。
「おそらぐ結城さんは、山ん中で体力ば消耗しちゃって、幻覚に見舞われだに違えねえだよ」
 辰っあんは言った。
「幻覚 ?」
 わたしは言った。
「うん」
「どういう訳で ?_」
 森本が聞いた。
「ひでえショックば受けだ人間は、一晩で頭の毛が真っ白になっちまうって言うよ。おそらぐ結城さんは、あにが精神的なショックば受けで、幻覚の中ば彷徨っていだに違えねえだ。そうでなげれば、一晩であんなにも変わるもんではねえよ」
「なる程、そう言われればそうだよなあ」
 わたしは言った。
「ここにあるのは、その幻覚を絵にしたっていう事か」
 森本が言った。
「多分、そういう事だっぺえ」
 辰っあんは言った。
「なる程ね。そう考えれば考えられるよな。いずれにしても結城さんは、肉体的には相当困憊していた事は事実だよな。帰って来た時のあの様子からして」
 森本は言った。
「それは言えべえ。だけっど、一晩であんなふうに変わってしまうなんて事あ、そうあるもんでねえど」
「それはそうだよなあ。あんなふうに変わってしまうなんて」
 わたしも言った。
 結城さんは絵に生涯を懸けた絵描きらしく、絵の中には何一つ言葉を残していなかった。その為、総てをわたし達の勝手な推測に頼る事しか出来なかった。
「この絵の "沼 "っていうのは、あの北山にあるっていう沼の事なのかなあ」
 最後に森本が信じかねるようにポツリと言った。
「そうだっぺえ」
 辰っあんが迷いもなく言った。
「すると結城さんは、あんな所まで行ったという事なのか」
「迷い込んでしまったっていう事じゃないのか」
 わたしは言った。
「そういう事ったぺなあ。事によると元気な頃に行ってたつう事も考げえられるしな」
「どうだい、暖かくなったら一度、その沼へ行ってみないか ?」
 森本が興味深げに言った。
「いいね、行ってみたいね。伝説の沼っていうのが、どんな沼なのか見てみたいよ」
 わたしも大いに乗り気になって言った。
「どうだい、辰っあん ?」
 森本は言った。
「よがっぺえ。ああに、行ぐ気になれば行がれねえ事もねえよ」
 辰っあんは泰然自若だった。
 わたしには大いに興味のあるところだった。その沼が結城さんが描いた絵の通りの沼なのか、あるいは、結城さんの幻覚が描き出した沼なのか。その沼を見る事によって、結城さんが描いた絵の謎も解けて来るような気がするのだった。


          四



 わたしは東京へ帰ると予定を組んでみた。
 三月の彼岸の連休には都合が付けられた。
 森本に電話をすると、いいだろう、という事だった。
 結城さんの遺骨は東京の森本家の墓地に納められた。
 墓参は出来なかったが、結城さんが住んでいた家の玄関先に花と線香だけでも、供えようという事になった。
 三月の連休、わたしは土曜日の午後、東京駅を発った。
 その夜、辰っあんも森本の家へ来た。
 三人で酒を酌み交わした。
 翌朝、わたし達は辰っあんの忠告に従って、雑木や野茨の繁みに入る事の出来る服装に身を固めた。手には厚い手袋をした。
 辰っあんは木刀のような樫の棒を持ち、上着のうちポケットには大きなナイフを入れていた。
「何するの、それ ?」
 わたしは理由が分からなくて聞いた。
「ああに、木の蔓ば搔っ切るのにいいど思ってよ」
 わたし達は結城さんの住んでいた家に寄って線香や花を手向けたあと、十時過ぎに山に入った。
 北山と呼ばれる小高い山が見える所まで行くのに、杉林の中を三十分も歩いた。
 杉林の中にも丈高い芒の繁茂が見られた。それでも此処は、猟場でもあり、勝手知った場所だっただけに、さほどの困難は覚えなかった。
 その杉林を抜けるといったん、芒の一面に生い茂った窪地へ出た。
 そこからは遠く彼方に、なだらかな勾配を見せた北山の姿が望めた。
 その北山を望みながらわたし達はまた、胸元にまで迫る芒の中を歩いた。
「結城さんがキジを撃ったというのは、この平地だったのかなあ」
 わたしは辰っあんに聞いた。
「多分、そうだっぺえ。地理的に見でも」
 辰っあんは先頭に立って歩いていた。
「傷付いたキジを追って、あの山の中へ入って行ったのかなあ」
「そういう事だろうな」
 わたしの前を歩いていた森本が言った。
 わたし達の胸元までも覆う芒は一冬の名残を留めて、まだ黄色かった。
 わたし達は手袋をした手で、その芒を掻き分けて進んだ。





          ----------------


          桂蓮様

          有難う御座います
           新作拝見致しました
          何も考えていない と書かれています
          ちょっと否定的に取られているように伺えますが
          これはとても良い事ではないのですか
          座禅の真髄に達する 最高の境地 無の世界ですよね
          座禅が求める世界がここに有るのではないですか
          無になる
           なーんだ 一つの考えにずっと意識を向けている
          事さえも出来なかったのか 雑念を切るのも 負う
          のも出来なかった ーーそれこそ無の世界ですよ
          座禅の求める世界です 何事にも捉われず
          無になってそこから 新しい自分の人生を見詰める
          死んだように生きられたら 真の生に
          辿り着けるかもしれない 禅の境地です
          貴重な体験ではないでしょうか
           コメント 有難う御座います このコメント
          こんな狭い世界に閉じ込めて置くのは勿体無いです
          とても面白く拝見しています 是非 このような御文章
          をブログに載せて下さい 肩の力が抜けてコミカルで
          とても楽しく拝見出来ます わたくし以外 他の方々に  
          も読んで戴きたく思いますし 受けるのでは
          ないでしょうか 桂蓮様の日常が垣間見え アメリカで
          生活する という事の実態が透けて見えて来ます
          是非 このような御文章を発信して下さい
           何時も有難う御座います



          takeziisan様

          有難う御座います
          今回も素晴らしいお写真の数々 堪能させて
          戴きました それにしても よく旅行をなさっています
          引退後 これらの美しい写真のアルバム 眺めるのも
          人生の良い思い出になるのではないでしょうか
           君子欄 わが家では放りっぱなしです それでも
          毎年 見事な花を咲かせて それが実となり落ちて
          今では無数の芽が出て 育っています
           わが家でも餅を搗きますが 正月だけです 兄妹
          みんなが集まりひと時を過ごします ただ今年の正月は
          例のコロナで出来ませんでした 餅だけは搗きましたが
          もう五十年近くの習慣で 餅つき器は今も健在です 
           秋の歌 昨夜 就寝前の一時 軽くウイスキーを口に 
          しながらフランスの詩集を開いていて ヴェルレーヌや
          ボードレーヌなど眼にしていました 偶然にちょっと
          驚いていますが 外国の詩は訳す人に寄って違いますの       
          で原文で読めたらとしみじみ思います
           この並木道の写真 去年 拝見した記憶があります
          確か 奈良光枝の 白いランプの灯る道 という歌を
          思い浮かべる と書いたと思います
           すずらん 実になるのですね
           柚子 毎年 田舎の実家へ取りに行った事を
          思い出します 今ではその土地も太陽光発電の
          施設になっています 兄妹 みな歳を取り 行く事も
          面倒になりましたので
           雪国に帰る 良い御文章ですね 文にして残して
          置いたからこそ こうして当時を偲ぶ事が出来ます
          今回 冒頭に文にして残そうという短文を載せましたが
          これもまた 偶然です
           妹さんの死 確か以前にも伺っていましたが
          こうしてお写真で見ると 一層 胸に迫るものが
          あります 肉親にしてみればなお更の事で 何時までも
          忘れる事は出来ないと思い出います それが幼い
          子供であっただけになお更の事と思います 
          幸い わたくしの兄妹は六人ですが皆 今のところは
          元気にしております
           大雪山の景色 三 四日前にNHKの番組で見て 
          なんて素晴らしい景色だと感動したばかりでした
          このような景色を実際に眼に出来るなんて 実に
          幸せな事だと思います それにしても 何度も言うよう
          ですが この国の国土は宝石のような国土だと思います
           その他 いろいろ楽しませて戴きましたが 余り
          長くなりますので
           何時も有難う御座います

 






         
 
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遺す言葉(368) 小説 十三枚の絵(5) 他 最終幕を生きる ほか

2021-10-24 12:43:18 | つぶやき
         最終幕を生きる(2021.10.20日作)


 人生の最終幕を生きる人間には
 現実の世界の遠い未来に思いを馳せ
 そこに 夢を描く事は出来ない
 もはや 自身に取っては現実ではない
 自身のいない後の世界に 今この時点で
 どのように係わってゆけるのか
 そこに思いを致し 残り少ない
 最終幕の時間の中で 
 最善 最良の努力をする事こそが
 賢明 最良の道だ

 人生の最終幕を生きる人間には
 過ぎ去った時間の中にこそ
 真の人生が宿る
 過去の人生を耕し 育み
 その中で育てた芽を 
 世の中 社会に植え付ける
 人生の最終幕を生きる意義も
 安らぎも そこに生まれる





          ----------------



          十三枚の絵(5)


 初めて見る結城さんの八畳の部屋は、無数の絵で埋もれていた。
 立てられた画架には、筆の跡のない白い画布が張り付けられたままになっていて、それが、奇妙に鮮烈にわたしの眼を射た。
「通夜は今夜という事か ?」
 わたしは森本に聞いた。
「うん。さっきまで、妹さんの御主人がいたんだけど、車で帰って、御両親や家族を連れて来るって言ってた」
 辰っあんが地元の慣習に馴れた者らしく、近所の二、三の主婦と一緒に、てきぱきと動き廻っていた。
 通夜は内輪で、ごく簡素に行われた。
 結城さんの御両親も妹さん夫婦も、結城さんを深く心に掛けていた事がそれぞれ、一つ一つの動作からはっきりと読み取れた。
 わたしは、そんな人達の姿を見ていて、なんという事もなく、救われるような安堵にも似た気持ちを覚えていた。



               三



 結城さんの肉体は、肝硬変と胃潰瘍によって激しく蝕まれていた。直接の死因は窒息死ではあったが、放って置けば遠からず死に至った、と解剖に当った医師は言った。
 結城さんは、森本の再三の勧めにも係わらず、医師の診断を受ける事がなかった。
「何度も勧めたんだけどなあ」
 森本は如何にも心残りな様子で言った。
「結城さん自身、自覚していたのかも知れないよ」
 わたしは言った。
「うん」
 森本は言葉少なに呟くだけだった。
 結城さんの亡くなった後の身辺は妹さんが整理をし、遺品を持ち帰った。
 おびただしい絵のうちから何点かが森本の所に残された。
 年が明けた二月の初め、森本から電話があった。
 結城さんが残した絵を見に来い、と言うのだった。
「実に不思議な絵なんだ。結城さんが絵の中で何か言ってるような気がする」
 わたしは時間を遣り繰りして一週間後に行った。
 辰っあんも来ていた。
 森本の所に残された絵は二十点あった。
 七点が風景や花を描いた絵だったが、あとの十三点はまるで異なる奇妙な絵だった。
「結城さんが死の間際に描いた絵だよ」
 森本は絵の具の跡も生々しい絵を示して言った。
「妹さんが好きな絵を取ってくれって言うので、貰っておいたんだが」
 森本が座敷に並べた十三枚の絵は、思わず見る者の心を引き摺り込まずにはおかないような、暗く重い色調の絵だった。
「何が描いてあるんだ ?」
 わたしはその絵に描かれている情景がよく分からずに森本に聞いた。
「分からない」
 森本も憮然とした様子で言った。
 風景や花を描いた絵は、素人目にもきれいに正確に描かれていた。
 辰っあんなどは、此処はあそこだ、これは此処だ、と、いちいち指摘出来るほど精密、詳細に描かれていた。
「よぐ、まあ、こうやって一本一本、そっくりそのままに描げるもんだなあ」
 辰っあんは感心して言った。
「それに比べてこっちの絵は、まるで違う。絵に付いては素人でよく分からないけど、それでも、こっちの絵には結城さんが込た気迫のようなものが見た瞬間に伝わって来る」
 森本は座敷に並べられた十三枚の絵を見渡して言った。
「おい、見てみろよ ! これはキジだよ。キジが撃たれて血を流しながら飛んでゆくところだよ !」
 わたしは、灰色の渦巻きが描かれた一枚の絵を見て初めて気付き、指差して言った。
 絵の左上には暗緑色と赤の入り混じった塊りのようなものが、鳥状に描かれていた。
 森本がわたしの指差した画面を覗き込んだ。
「ああ、そうだ。で、これが銃を持った結城さんっていう事か ?」
 画面の右下、人の上半身とも見えれるような黒い陰を指して森本は言った。
「うん、そうじゃないかなあ」
「あんだが、よぐ分がんねえけっど、そう言われれば、そうみでえだなあ」
 辰っあんも覗き込んで言った。
「そうだよ。そうに間違いないよ」
 森本は確信に満ちた声で力強く言った。
「ほら、ここに  "キジを撃つ" って書いてあるよ。" 63 11 13。これは絵を書き上げた時の日付だ」
 わたしは手に取った絵の裏を見てその数字を発見した。
 わたしが差し出した絵を手にした森本も、
「本当だ」
 と言った。
 わたし達は次々と一枚一枚の絵を裏返し、数字を確かめていった。
 絵には数字と一緒に題名も添えられていた。
「 "沼 " これは沼の近ぐに家がある絵だなあ。" 63 11 16」
 辰っあんが言った。
 わたし達はそれぞれが手にした絵の題名を読み上げていった。
「美しい女」「二人」 「小舟」「魚を獲る」「闇」「迷う」「追跡」 「灯」 「生活」 「途方にくれる」
 そのあと、改めて三人で一枚一枚の絵を仔細に眺めていった。
 するとそこには、自ずと一つの筋道が見えて来るように思えて来た。そして、わたし達三人が導き出した筋道は次のようなものだった。
 結城さんは夕暮れの草原でキジを撃ち、そのキジを追っているうちに山の中で方角を見失い、道に迷ってしまった。
 途方にくれて歩いているうちに、明かりを見付け、近付いてみると家があった。
 その家には女が住んでいた。
 女はどうやら、一人で住んでいるらしかった。
 何故なら、絵には結城さんと女の他には描かれていないからだ。
 その女の家は沼のほとりにあった。
 女はそこで漁をしながら生活している。
 結城さんはその家で一夜を過ごし、翌日には沼の上に小舟を浮かべて漁をした。
「大体、こんな所じゃないのかなあ」
 わたし達は結論に達した。
 そしてわたしは、そう結論を下しながらも、ふと、一つの事が気になって、思わず言っていた。
「だけど、この " 小舟 "っていう最後に描かれた絵は何を表わしているんだろう。沼の上に空っぽの白い小舟がポツンと浮かんでいるだけだ。他の絵とはまるで雰囲気が違うし、それに筋道からもはみ出ている」
「うん、そうだな。言われてみればそうだ。女の姿も描かれていないしな」
 森本も言った。
 「女が死んだっつうこっではねえのが ?」
 辰っあんが言った。
「結城さんが殺したのかい ?」
 わたしは賛成しかねる口調で言った。
「いや、そんな事はないよ。この" 二人 "っていう絵を見てみろよ。暗い絵肌のの中で、この二人はだけはバラ色に描かれている」
 森本が即座に否定した。
「感情の行き違えっつう事もあっべえ」
 辰っあんが言った。





          ----------------


          takeziisan様

          有難う御座います
          今回も楽しませて戴きました
          セイタカアワダチソウ 昭和四十年
          現在地に家を建てた時には周囲は丈高い
          アワダチソウで一杯でした 今は何処にも
          見られません 今更ながらに時の経過と
          世の中の移り変わりが実感されます
           サギですか 寒そう
          季節の移り変わりの速さ 慌しさ
           随分 難しい字の並んだ校歌ですね それにしても
          何から何まで わたくしの居た学校とは格段の差が
          あります 無論 良い意味での差です 進んでいます
          わたくしの居た学校などは ほとんど 野放しの状態
          でした それだけに生徒達ものびのびしていた記憶は
          ありますが
           十三夜 わたくしも見ました 見事でした
          十三夜というと自然に榎本美佐江を思い出します
          「十三夜」を唄っていますね 元々は戦前の唄で 
          リバイバル曲ですが 小笠原美都子としいう歌手が
          唄っていました
           山の写真 じっくり拝見させて戴きました
          このような美しい自然に包まれる 
          至福の時ですね 豊富な体験 羨ましい限りです 
          わたくしなどは当時 街中をほっつき歩くのが
          せいぜいでした
           弥彦神社の事故 覚えています 無論
          映像を見るのは初めてですが 当時 大事件として
          報道されましたね
           お若い頃 随分 ロマンテックだったのですね
          勿論 今もお気持ちにお変わりはない事と思いますが
          それにしても数多くの詩 詩集が編めるのでは
          このコーナーでも是非 一つに御纏めに
          なって下さい
           何時もお眼お通し戴き 感謝しております
          有難う御座います

          

          桂蓮様

          有難う御座います
          桂蓮様のブログを拝見していて
          論理的に組み立てられた御文章 
          安易に書いているとは思えません
          御謙遜とは思いますが どうぞ自信を持って
          これからも良い文章をお書き下さい
           一人だけのレッスン ちよっと淋しいですね
          仲間が居て ワイワイやりながらの練習なら
          楽しいでしょうがーープロを目差すのでないなら
          やはり 楽しさに包まれたレッスンの方がいいですよね
          写真付き記事 期待しています 百八十度 ちょっと
          無理 と門外漢は思います でも実際 バレリーナーは
          行っていますものね
           またかよおー 思わず笑いました
          どうぞ うっぷん晴らし 存分にやって下さい
          悪意の無い悪口 うっぷん晴らし 歓迎です
          楽しいです
           ブログでも何でも 必ず 中だるみ と
          いう状態が訪れます でも その時期を乗り切れば
          大した苦労も無く 自然のままに物事が進む時期が
          来るのではないでしょうか どうぞ 焦らず 
          これからも良い文章を書き続けて下さい 桂蓮様の
          ブログが消えてしまいますと寂しくなりますのでーー 
          アメリカ便りが楽しいです              
           言語の無意識化 分かり易く 明快な御文章
          いちいち 頷けます 良い御文章です
           英語 やっぱり御苦労がお有りだったのでしょうか 
          アメリカで生活なさる程ですから そんな御苦労は
          ないものとばかり思っていました 
          習うより馴れろ という事でしょうか
           何時も 有難う御座います これからも どうぞ
          辛口の御批評 宜しくお願い致します

          


 
 

 
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遺す言葉(367) 小説 十三枚の絵(4) 他 寡黙な人

2021-10-17 12:25:31 | つぶやき
          寡黙な人(2021.10.12日作)


 物事の本質を知る者は
 言葉を失い
 寡黙になるものだ
 安易 安直に
 言葉を口にする人間には
 得てして「夜郎の本箱」ー物知り顔でいても 本質を理解していない人間ー的
 人間が多い


 世の中は 愚者の絡まり合い で
 成立している その中で 自己は
 どのようにして 真摯に 誠実に
 この世を生きられるか
 そこが 問題だ

 
 大木(いぼく)は デンと構えて
 蚊帳の外

 山百合の 香り懐かし 奥信濃

 榛名湖の 湖畔に一人 秋深く

 陽炎の 燃え立つ海辺 夏の村

 コスモスの 揺れるその中
 君の顔 あれは幻
 還らぬ日





          ----------------




          十三枚の絵(4)


 わたし達はしばらく、夜の中にものの動きを探るように黙っていた。
 二頭の猟犬の吠える声は激しさを増しこそすれ、鎮まる気配はなかった。
 森本は不審気な顔で席を立った。
 ガラス戸を開けて縁側に出ると、一枚の雨戸を繰った。
「誰だ !」
 外の闇に向かって怒鳴った。
 森本の声の鎮まった夜の闇の中に返事はなかった。
 猟犬たちは森本の声を聞いて吠え立てるのをやめた。
「あじょうした ?」
 森本の不審気な様子の背中を見て辰っあんが声を掛けた。
「誰かいる」
 森本は言った。
「結城さんじゃないのか ?」
 一呼吸置いてからわたしは言った。
 辰つあんが腰を上げた。
 わたしも辰っあんに続いた。
 わたし達は縁側から踏み石に降りると下駄を突っ掛け外へ出た。
 闇の中を庭を抜け、門の近くへ来ると御影石の門柱に因り掛かるようにして、蹲っている人の黒い影が見えた。
 傍へ行ってみると、やはり結城さんだった。結城さんが衰弱し切った体でそこに崩折れていた。
「結城さん ! 結城さん !」
 森本は抱え起こして声を掛けた。
 結城さんは森本の声に反応したが、答えるだけの力はなかった。
 猟銃は持っていなかった。
 森本は結城さんを背負うと座敷へ運んだ。
 頭髪が半分以上も白くなっていた。
 顔中に深い皴が刻まれ、一夜のうちに歳を取ってしまった、としか思えなかった。
 結城さんの意識は朦朧としていた。
 森本は好江さんを呼ぶと、床を取らせた。
 わたし達が居た座敷に結城さんを寝かせた。
「最上医院に電話をして、すぐに来て貰った方がいいかも知れないな」
 結城さんの血の気の失せた顔を見て森本が言った。 
「最上は年寄りだがら、こんな夜中には来ねがっぺえ」
 辰っあんが言った。
「今、何時 ?」
 森本が好江さんに聞いた。
「もう、十時過ぎよ」
 好江さんが言った。
「一応、電話をしてみてくれないか。急病人だから、なんとかして来てくれって。車で迎えに行くからって」
 " 医師(せんせい)は寝てしまったから、明日にして欲しい "
 電話に出た医院の者は言った。
 森本は電話を代わると、強引に頼み込んで医師の来る事を承諾させた。
 森本が車で迎えに行き、二十分程すると最上医師が来た。
 品の良い、穏やかな感じの老人だった。パジャマの上に白衣を着ていた。
 夜中にも係わらず、薄くなった銀髪をきれいに七三に分けていた。
「応急処置として、注射ば一本打っておぐけっど、こりぁ、大きな病院でよぐ検査ばして貰わねえど駄目だ」
 医師は老人のせいか、まだるっこい程、落ち着いていた。
 眼鏡の上側からわたし達を見て話しをした。
 注射の後、血の気の失せた結城さんの顔に幾分かの生気が戻った。
「何かあったんですかね。たった一晩のうちに、十歳も歳を取ったみたいになってしまった」 
 森本が言った。
「内臓が大分、傷んでる。胃も悪いし、肝臓もいげねえ」
 最上医師は、洗面器の水で手を洗いながら言った。
「明日もまた、来て貰えますか」
 森本は言った。
「うん、来てんべえ」
 翌日、十時頃、医師は来た。
「このまま、そっと寝かせでおいで、体力の回復ば待づこったね。消化のいい、栄養になるもんば食べさせでな。そっで、体力が回復したら、町の病院さ入れで精密検査ばして貰わねえど駄目だ」
 わたしはその日の午後、東京へ帰った。
 結城さんは暫くは森本の所で世話をする事になった。
 結城さんが死んだ、という森本からの電話が入ったのは、五十二日目の事だった。胃に穴が開き、吐血した血を喉に詰まらせての窒息死だった。
 自分の家での事だった。
 結城さんは五日目に、まだ、体力の回復もないままに自分の家へ帰った。森本が 引き止めるのも聞かなかった。
 その後、結城さんはなんとか体力を回復したが、なぜか、山で起こった事に付いては詳しい話しをしなかった。日没近くにキジを撃って、そのキジを追っているうちに方角を見失い、迫り来る闇の中で何も分からなくなるのと共に、気を失っていたという事だった。
 森本は結城さんが自分の家へ帰ってからも、一日に一度は結城さんを見舞った。
「最上医師(せんせい)が、精密検査を受けなければ駄目だって言ってましたよ」
 何度勧めても結城さんは、
「なあに、もう、大丈夫ですよ」
 と言って、森本の言葉を受け入れようとはしなかった。
 そんな結城さんだったが、森本が何時行ってもカンバスに向かい、絵を描いていた。写生に出る事はなくて、家にこもったきりだった。森本はその姿を見て、自分が思っている以上に結城さんは体力を回復しているのかも知れない、と思った。事実、カンバスに向かっている時の結城さんの気迫には圧倒されるものがあって、何度も声を掛けるのをためらった事があった、と森本は言った。
「やせ細ってはいたが、カンバスを見詰める眼だけはギラギラしていて、怖いぐらいだったよ」
 森本の知らせを受けて、仕事も放り出してわたしが掛け付けた時には午後四時を過ぎていた。辰っあんも来ていた。
 結城さんの妹だという、四十歳がらみの、細面のきれいな女性がいた。眼を真っ赤に泣き腫らしていたが、取り乱たところはなくて、しっかりした人のように見えた。
 わたしは結城さんの死が喀血による窒息死だと聞かされて、凄惨な遺体の状態を想像していたが、森本が白い布を取って見せてくれた結城さんの死顔は、穏やかで綺麗なものだった。
「明日、遺体を町の病院へ運んで解剖する」
 森本はわたしの耳元で言った。





          ----------------





          桂蓮差様

          何時も応援 有難う御座います
          新作がなく 過去の作品を逍遥してるうちに
          グランビーの初秋 写真 出会いました
          一度 拝見した記憶がありますが 改めて
          この環境 羨ましく思います 人嫌いの傾向のある
          わたくしには憧憬の環境です
           自意識の強弱
          寒い時に熱くなる事を願わず
          熱い時に寒くなる事を願わない
          季節が移ってゆく 気流にのって
          ただ その気流を眺め 
          その気流に乗ってゆくだけの事
           いい言葉です ここに人の生きる道の
          基本があります また これは禅の世界
          あるがままに受け容れる 
          有って良し 無くて良し 悟る
          そういう事です 坐禅の世界
           それにしてもグランビーの人口
          なんとまあ わたくしに取っては
          夢見る世界です 羨ましい世界です
           何時も有難う御座います
           感謝致します


         takeziisan様


         何時も詰まらない文章にお眼をお通し戴き
         有難う御座います
          今回もブログ拝見 楽しい時間を過ごさせて
         戴きました
          ブログ歴 やる事があるのは良い事ですね
        それにしても毎回 充実した内容を創るのは
        大変な御苦労だと想像致します
         野菜畑が羨ましい 好みのままに作れる野菜
        いいですね 収穫時が楽しいのではないでしょうか
         名人 栃錦 懐かしい名前
        時の過ぎ行くままに MJQ これも懐かしい
        MJQ アートブレイキー モンク ソニーロリンズ
        いろいろ レコード持ってます
         随分 詩を書いてますね お若い頃 何か
        文芸誌などに係わりましたか ?
         曽野綾子 クリスチャンですね
        神の教えは禅の教えと似た部分があります
        いずれにしても 人間は何かに頼らなければ  
        生きてゆけない存在でしょうか でも その神が
        人間を縛る どう考えたら良いのでしょう
         人間 結局は孤独な存在 無の世界を人は
        それぞれに生きてゆく それが
        わたくしの立場です
         不具合ありとの事 わたくしは幸い 不具合は
        有りません 血圧の低いのだけが難点です でも 医師は
        百歳まで生きられますよ と言ってます
         いずれにしても お互い 体に気を付け 何時までも
        こうして 元気な御様子が拝見出来たら と思っています 
         有難う御座います
        
  

        
 
 



 
 
  
 
コメント (2)
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遺す言葉(366) 小説 十三枚の絵(3) 他 歌謡詞 夜のブランコ 他

2021-10-10 12:38:27 | 小説
          夜のブランコ(2021.10.4日作)


 揺れろ 揺れろ 夜のブランコ
 わたしの恋の 哀しみのせて
 あの人は 遠い街
 愛は短い 幻でした
 揺れろ 揺れろ 夜のブランコ

 揺れろ 揺れろ 夜のブランコ
 消えない胸の 傷あとのせて
 口づけに ふるえた日
 あれもはかない 幻でした
 揺れろ 揺れろ 夜のブランコ

 揺れろ 揺れろ 夜のブランコ
 流れる時の 過ぎ行く中に
 今はもう 帰らない 
 夏の短い 幸せでした
 揺れろ 揺れろ 夜のブランコ



     人の世は 
     片道切符の旅衣
     いつの日にかと
     夢を追いつつ幾歳月

     では またと
     誓いし人の今日逝きて
     愁いは深し 彼岸花





         -----------------ー





         十三枚の絵(3)


 一日の働きを終えた猟犬達が、空腹を訴えるように忙しく庭先を動き廻っていた。
「メリーはどうした ?」
 森本が聞いた。
「帰(けえ)ってるよ」
 辰っあんが言った。
「メリーが帰っていて、結城さんはどうしたんだろう ?」
 森本が初めて心配気な表情をみせた。
「メリー、結城さんはどうした ?」
 森本は結城さんが飼っているセッター種のメリーを掴まえ、首に手を掛けて聞いた。
 メリーはいかにもバツが悪そうに首をすくめると、森本の手をすり抜けていった。
「おかしいな。まさか、家に帰ったわけじゃないだろうな」
 森本は手をすり抜けていったメリーを呆然と見つめたまま不安気に言った。
「家に帰ったのなら、メリーだって一緒に行くだろう」
 わたしは言った。
「そうだよなあ」
 森本は言った。
「ああに、風呂さ入(へえ)ってるうじには帰って来べえよ」
 辰っあんは、たいして気にもしていない様子だった。
 わたし達は縁先に腰を掛け靴を脱いだ。
 森本の奥さんが四頭の猟犬に大きなボールに入った食事を与えた。
 わたし達が風呂から上がっても、結城さんは帰らなかった。
「好江。誰か、結城さんの所へやって、帰っているかどうか見て来て貰ってくれないか」
 森本が言った。
 使いは戻って来ると、結城さんは帰っていない、と言った。
 夜の食事は、何時もなら酒を酌み交わし、それぞれの自慢話しに夜の更けるのも忘れるのが常だったが、その夜は、結城さんの帰らない事への気懸かりを抱えたまま、酒も進まなかった。
「何か、あったのかなあ」
 森本はしきりに気にした。
「ああに、土地勘のねえ者(もん)ではねえし、戻りそびれて、山ん中(なが)で一晩、過ごす気になる事もあっべえよ」
 辰っあんは、あくまでも大らかだった。
「明日の朝になれば,、帰って来るかも知れないな」
 わたしも辰っあんの言葉に同意するように言った。
「でも、メリーが戻って来てるっていうのが、おかしいじゃないか」
 森本はなお、気懸かりを拭い切れないように言った。
「結城さんとはぐれてしまったんじゃないのか ?」
 わたしは言った。
「そういう事なんだろうけど、猟犬が主人とはぐれてしまうなんて、考えられるだろうかね。まして、利口なメリーの事だ」
 森本が辰っあんに問い掛けた。
「そういう事(こど)も、あっがも知んねえよ」
 辰っあんは、大きな箸で鍋の中のものを小皿に取り分けながら言った。
 その夜、辰っあんは十時過ぎに,自分の家へ帰った。
 わたしは森本の所に宿を取っていた。翌日の午後、東京へ帰る予定だった。
 結城さんは翌日も、午前中一杯待っても帰らなかった。
 その朝、メリーの姿が見えないので、わたしと森本は結城さんが帰っているかと思い、住まいに行ってみた。
 結城さんの家は雨戸が閉ざされたままだった。
 メリーが玄関先に、しょんぼりとした様子でうずくまっていた。
 メリーはわたし達の姿を見るといかにも心細気な様子で傍へ寄って来た。
「やっぱり、帰っていないよ」
 森本がわたしの顔を見て言った。
 わたし達が森本旅館に戻ると辰っあんが来ていた。
「あじょうだった。結城さんは帰ってだがい ?」
 辰っあんは言った。
「いや、帰っていない」
 森本は重い口調で呟くように言った。
「昼前(めえ)まで待ってんべえよ。そっで帰らねがったら、探しに行ってんべえ」 
「そうだなあ。ーー午後、帰るのか ?」
 森本がわたしを返り見て言った。
「ああに、俺と公ちゃんだけで、いいでねえがよお」
 辰っあんが言った。
「いや、大丈夫だ。一日二日帰るのが遅れたって電話で連絡しておけばいいんだから」
 その日の午後、わたし達は三頭の猟犬を連れて山へ入った。猟銃は持たなかった。
 わたし達はメリーを先頭に立てて、おおよその見当が付けられる場所という場所を探した。
 手掛かりは何一つ得られなかった。
 日没と共に森本旅館に戻った。
「この辺に危険な場所っていうのは、あるのかね」
 わたしは辰っあんに聞いた。
「いや、危険な場所っつうのはねえな」
 辰っあんは地形に思いを巡らす風にして言った。
「北山の奥に、伝説みたいに語り継がれている沼があるっていう事は聞いているけど」
 森本が言った。
「だけっど、あんな所(とご)さは行ぎやしねえよ。ちょっくらちょんと行げるもんでねえ。俺(お)らあ、何回が近ぐまで行った事があっけど、いろんな木が絡み合ってで、ながなが入(へえ)れるもんでねえ」
「どんな沼なんだい ?」
 わたしは聞いた。
「ああに、村の者(もん)だって、よぐは知りゃしねえだよお。ただ、沼みでえな物(もん)があるっつう事(こど)は、昔(むがし)がら言われでっだあ」
 わたし達は昨夜の雉鍋の残り物を突きながら酒を酌み交わした。
「それにしても一体、結城さんはどうしてしまったんだろう ? 全く手掛かりが掴めないなんて・・・・。明日、その沼の辺りまで行ってみようか ?」
 森本がわたしと辰っあん二人に問い掛けた。
「うん。でも誰れか、消防団にでも、助太刀を頼んだ方がいいんじゃないか ?」
 わたしは言った。
「そんな大袈裟な事(こど)なんがする事あねえよ。きっと、帰ってくるよ」
 幼い頃からこの地に根を張って生きて来た辰っあんには、山も自分の家の庭先程にしか思えないらしかった。そしてこの場合、山と言っても険しい高山などとはまるで違っていた。平地に続くなだらかな丘陵としか呼べないような山で、杉の巨木や様々な雑木が生い繁っていて暗さは深かったが、直接的に生命の危険を感じさせるような山ではなかった。
「ただ、考えられるのは、転んで足でも折って、動けないでいるんじゃないかっていう事だよな」
 森本が言った。
「それぐれえは、あっがも知んねえ」
 辰っあんが言ったその時だった。森本の二頭の猟犬が突然、けたたましく吠え立て始めた。その異常さは、普段、二頭の猟犬を知り尽くしているわたし達にも明らかに何かの異変を感じさせる異様さだった。
 わたし達は無言のまま、ただ、その吠え声に耳をそばだてていた。
「あんだべえ ?」
 最初に口を開いたのは辰っあんだった。山の中での危険に精通している者らしい敏感さだった。
「どうしたんだろう ?」
 続いて森本も言った。
 二頭の猟犬が何かに怯え、その怯えさせるものに向かって必死に立ち向かってゆく、という、そんな気配が感じ取れた。





          ----------------



          桂蓮様

          お忙しい中 何時もお眼をお通し戴き
          有難う御座います
           新作 拝見させて戴きました
          自分の姿は自分では分からないものですね
          千分の一ミリも狂いのない体 多分 それは
          無理だと思います 思いますが そこに向かって
          努力をする その姿勢が貴重なんですね 人間
          努力を失くしたら死んだも同然です 努力する
          その姿勢が 結局 肉体的には多少の歪みを
          持っていようが 人を美しく見せるのでは・・・
           行き着くところは結局 心では
          ないのでしょうか それにしても 桂蓮様の
          何事に対しても真摯に向き合う姿 感服致します
          その姿こそが人を美しく見せ 尊敬を集める素に
          なるのではないでしょうか 
           人に頼らない孤独の世界 それは純粋な世界かも
          知れませんが 人は結局 他人なしでは生きては
          行けない 他人なしでは生きては行けない が 
          人は畢竟 孤独な存在 最終的には誰にも頼れない
           難しい問題ですね 
          どんなに深い愛情で結ばれていてもやがて人間は
          一人の世界に還ってゆく 淋しい存在です 故に
          人は人を愛せる環境にある時こそ それを大切にして
          生きてゆきたいものです その点 桂蓮様は今現在
          最高の世界に生きていらっしゃるのでは と
          お思い致します 御主人様との御幸せそうなお姿
          羨ましく思います どうぞ 何時も言うようですが
          この時を大切にしていって下さい
          人生の良い時は決して長くはないものです
           韓国でのお写真 期待してお待ちしております
           コロナ この厄介な疫病神 いつになったら
          終わる事やら 普段 マスクをしないわたくしでさえも
          今はマスクをしています 他人に白い眼で見られる事も
          嫌ですが 自身の防衛のためにと思って一生懸命 努力      
          して マスク着用に励んでいます



         takeziisan様


         何時も詰まらない文章に
         お眼をお通し戴き 有難う御座います
          今回もブログ 楽しく拝見させて戴きました
          思い出の紅葉山旅 自然がこんなに懐かしく感じられる  
         のは 九年間とはいえ 一番物事に敏感な時代に地方の
         自然の中で暮らした その事のせいでしょうか
         自然の美しさは 何時見ても飽きませんし 心打たれます
          このコロナ下 何処へも出られず 兄妹などで電話の
         折りには また みんなで旅行に行きたいねなんて
         話しています
          うずくまる白鷺 見事な写真 
         栴檀は九年間を過ごした我が家の門の傍に二本あった
         懐かしい木です 黄色いあの実が懐かしいです
          停電 ローソク アカギレ シモヤケ 懐かしく
         思い出します それにしても 日頃 北陸の山暮らし
         と謙遜していらっしゃいますが わたくしの居た地方より
         学校など はるかに進んでいたように思います
          ジャンケン娘 わたくしは東京で観ました 日劇で
         二葉あき子や淡谷のり子 灰田勝彦などのショウと
         合わせて上映されました
          踊り子の唄声 文学青年だったのですね
         いろいろ お持ちのようですが是非 ブログに遺す事を
         お勧めします 貴重な記録です
          京都 永遠の都であり続けて欲しいものです
          歩く事はいい運動 この間 嵐模様の日に 近くに
         行かなければならない事があって 長靴を履き
         外出 歩いて行きました 普段 朝 土曜を除く毎日
         一時間半程 柔軟体操や 筋肉体操をしていますが
         歩く事は余りないので ほんの短い距離でしたが
         ああ 歩くのはこんなにいい運動になるのだ と
         改めて 認識しました わが家のすぐ傍にある 大きな  
         公園でも歩く人の姿を数多く見かけます
          川柳 含み笑いの中 楽しませて戴きました
         次回 期待は 御負担でしょうか・・・・
          何時も有難う御座います


         
           
 
 
 
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遺す言葉(365) 小説 十三枚の絵(2) 他 NHKの不見識

2021-10-03 12:11:18 | つぶやき
          NHKの不見識(2021.9.30日作)


 日本放送協会 NHK
 国民からの受信料により 成り立つ組織
 その組織が 個人の名を喧伝する 
 許されるか ?
 日本放送協会 NHK 総ての国民
 一人 一人のもの 特定人物 個人のもの
 ではない そのNHKが 最近 と言っても 
 かなり以前から 個人の名を冠した番組を
 しきりに 放送している
 如何なものか ?
 個人の人気への肩入れーー 等しい 行為
 ではないか ?
 同じ業種に属する 同業者は
 受信料を払い 競争相手を
 国民の前に披瀝 応援する その行為と
 同じ結果に なりはしないか ?
 以前 一昔前のNHKには 
 なかった事だ 以前のNHK 
 一昔前のNHKは
 特定個人に偏る番組など
 厳しく規制していた 番組名に
 特定個人の名を冠する事など
 皆無だった だが 最近のNHK まるで
 商業放送 民間放送局
 何時から こうなってしまったのか ?
 民法番組と変わらぬ番組構成 放送内容
 かつてのNHKの見識 品性 品位 品格 
 無い
 おそらく現在のNHK
 番組制作者達は 幼い頃 四六時中 放送される
 民放番組 その画面を観て 育った人間達に違いない
 無意識裡に 植え付けられた常識 それが
 NHK 日本放送協会の番組制作 その
 制作現場で露出してしまうーー 多分
 そうに違いない 民放局と
 同類番組を制作しても恥じない 人間達を
 造って来たに違いない
 NHK 日本放送協会 番組制作者達よ 
 民放番組と同類番組を制作するのなら 
 あなた達が存在する意義はない
 料金を徴収する資格はない 料金徴収 
 民放放送では無い事だ NHK 番組制作者達よ 
 その 民放放送と同類番組を作っていて 恥ずかしくはないか
 心は痛まないか ? NHK 日本放送協会番組制作者達よ 
 あなた達は民間放送には求め得ない 公正 平等 誇張 の
 無い 真実の姿を伝える その事にこそ 
 存在意義がある
 NHK 日本放送協会 国民の放送 その番組内容は
 他国から見た時 その国の民度を測る 尺度 ともなる
 どうか 軽々しい 軽薄な 視聴率狙いの番組制作だけは しないで
 欲しい





          ----------------





          十三枚の絵(2)



 結城さんの心の裡には常に、自分の生活が仮のものだ、という意識があった。本当の生活は、ルドンの絵が象徴するように、深い精神性に根を下ろしている。その世界を見つめ、表現してゆく事が自分にとっては、生きる上での欠かせない基本だと考えていた。
 その世界に比べ、現実の世界は余りに雑駁、醜悪に思えた。常に他者の存在を頭の隅に置き、気遣い、配慮して、何事もない平穏無事をひたすら願う。時には、自己の欲望さえも抑制して、不満を抱えたままに妥協の世界を生きる。     
 常に利益が優先される商いの世界は、結城さんに取っては対極の地にあった。結城さんの溶け込んでゆける世界ではなかった。結果として、結城さんは何時も両親の期待を裏切り続けた。
 家業や結婚だけではなかった。絵に於いてもそうだった。何時までも芽の出ない結城さんに両親は、格別、批難の眼を向ける事もなかった。それでも結城さん本人にしてみれば、日々、年老いてゆく両親の姿を見るのは、商家の長男としては、気の休まらない思いだった。
 絵の道さえ開ければ・・・・、焦りは日毎に深まったが、現実は如何にも動かし難かった。
 両親も既に八十歳に近い年齢になっていた。体力の衰えは隠しようもなかった。壮健な頃には、千里先を読む、と言われた父も年齢と共に次第に、目配りの利かない場面が目立つようになって来ていた。店には、九人の店員が居たとはいえ、絵を描く合い間に父の手伝いをするような立場の結城さんではあっても、長男としての結城さんの肩には父の衰えの分だけ、その比重が掛かって来た。その上、悪い事には、家事の一切を切り盛りしていた母の上に、思い掛けない物忘れの症状が現われるようになっていた。結城さんの焦りは一層、深まった。
 このままでは、家業も自分の絵も、行き詰まりになってしまう。
 結城さんは、恐怖にも似た強い感情の中で不安に突き動かされ、最終の決断を下さなければならない場面の近付いている事を実感した。
 絵を取るか、家業を取るか ?
 結局、結城さんの下した判断は、自分の絵を選ぶ事だった。
 一切の家督を妹夫婦に譲り、自分は絵の道を選ぶ。
 強い決意の下に結城さんはそう決めた。
 妹夫婦は結城さんの判断に、敢えて、反対はしなかった。もともとが、妹の夫は計理士として株式会社「結い」の経理担当をしていた。妹が社長になる事に、なんの不都合の生じる事もなかった。
 結城さんはそうした事の一切と共に、東京の地を捨てて、かつて、何度も足を運んだ事のある房総の地を自分の新しい旅立ちの地として、選択したのだった。



          二



 結城良介さんと房総の地の繋がりは、もう、十年以上にもなる。この地へ来る度に結城さんは、森本旅館を宿にして、常連になっていた。
 わたしはある年、上京した森本から、森本自身の房総の地での生活ぶりを聞かされた。
 森本は幸福そうで、如何にも人生を楽しんでいる風に見えた。
「殊に、秋から冬にかけての季節の中での狩猟の醍醐味は、何ものにも代え難いね」
 森本は如何にも楽しげに言った。
 わたしはそんな森本に誘導されたように、
「一度、連れて行ってくれよ」
 と、言っていた。
「今年の秋、来いよ」
 と、森本は言った。
 わたしは東京でスーパーマーケットを経営していた。趣味と言えば、下手な ゴルフを除いて、他には何もなかった。それでも、戦時中、群馬の田舎に疎開していた事があって、その時、近所の人達がするのを見ていて、狩猟には憧れに近い気持ちを持っていた。それだけに、森本の一度の案内でわたしはすっかり、その虜になっていた。翌年には早速、狩猟免許の取得に励んでいた。
 結城さんとの出会いは、七年前の秋だった。
 その時、結城さんは猟には行かなかった。夜、森本旅館で、獲物を肴にわたし達と酒を酌み交わした。
 翌年、結城さんもわたし達と山へ入った。
 その翌年に結城さんは、辰っあんの土地を借りて移り住んだ。
 結城さんは、そこで絵を描いて暮らした。
 無論、金の入る手立てはなかったので、食べるだけの野菜などは自分で作った。
 外にも、鶏や山羊などを飼ったりして、卵や山羊の乳などを自給した。
 米だけは作る事が出来なかったので、辰つあんの仕事を手伝い、分けて貰ったり、手間賃として得た金で、絵の具を買い、必要な物などを揃えたりなどしていた。
 そうして、結城さんが房総の地で絵を描いて暮らす生活は、一応の安定をみせた。無論、東京の実家に頼る事もなかった。東京へ行く事さえ、ほとんどなかった。
 結城さんには、二十年かけても、絵の道を全うする事が出来なかったーー。常に、その思いがあって、自分を人生の敗北者だと見なしていた。
 そんな結城さんだっただけに、何時ごろから体調を崩していたのか、仲間内の誰も知らなかった。日頃から寡黙な結城さんは、自分の事など話題にする事はなくて、ひどく疲れたように見える時でもみんなは、結城さんが昨夜も夜明かしで絵を描いていたに違いない、などと推測していたりなどしていた。

 その日、わたし達は例年通り、朝、暗いうちに森本旅館を出た。
 三十分程かけて山へ入った。
 山へ入るとわたし達は、成果を競い合うために、それぞれが各自の穴場を目差して別々の行動を取った。
 わたし達は一日中、山の中を歩き廻った。
 その日のわたしの成果は、自慢出来るものではなかった。
 山鳩三羽と鶉二羽だった。
 一日中歩いてこれだけだった。
 わたしは些かの疲労感に辟易しながら、森本旅館へ戻った。
 辺りは既に暗くなっていた。
 森本も辰っあんも帰っていた。
 結城さんはまだだった。
 わたし達は、結城さんもその内、帰って来るだろうと思い、庭先でそれぞれの収穫成果を披露し合った。
 森本はカルガモ二羽、山鳥二羽、山鳩五羽、鶉一羽の成果だった。
 辰っあんはが一番の成果で、雉子一羽、山鳥五羽、山鳩七羽、鶉三羽だった。
 わたし達は、座敷からの明かりが洩れる庭先でそれぞれの獲物を籠に入れると、とにかく、一風呂浴びよう、という事になった。
「それにしても、結城さんは遅いなあ」
 森本が改めて、結城さんのまだ,戻らない事に気付いて心配気に言った。
「そうだなあ。まさか、道に迷ったんじゃないだろうな」
 わたしも心配になって言った。
「しょっちゅう絵を描きに山の中へ入ってる結城さんだ。そんな事はないよ」
 森本は問題にもしないように言った。





          -----------------

      

          takeziisan様

          コメント 有難う御座います
           どうか あれだけの数のブログを
          こなしていらっしゃる時間の中 お気遣い
          なさらないで下さるよう お願いします わたくしの
          方が楽しませて戴いているような訳ですので
           今回もいろいろ 楽しませて戴きました
          稲刈り 懐かしい風景です 今では大型機械が
          一気に仕事を進めてしまいますが 子供の頃の
          全く 似たような体験です
           農作業 至福の時間ですね ですが あっちが痛い
          こっちが痛い いずこも同じ秋の空 ご同感です
           那須 姥が原の景色 良き思い出ですね わたくしも
          東北に旅した折り 紅葉 黄葉の林の中を車で
          走りぬけた その時の感動が今でも鮮明に
          思い出されます それにしても この国は 
          狭いながらに 美しさを持った国土だと思います
          また 尾瀬の景色 わたくしは尾瀬へ行った事は  
          無いのですが なぜか 尾瀬には「夏の思い出」の
          歌と共にあの景色を見ると郷愁を誘われます
           郷愁と言えば「石廊崎の少女」 御自身 今
          読み返してみても 懐かしいのではありませんか
          情景が見事に浮かびあがります いい詩です
           ペレス プラード 「ピーナツ ベンダー」 
          これも懐かしいですね 前にも書きましたが
          この時代には いい楽団が揃っていました
           その他 花々 野鳥 景色 いろいろ 楽しく
          懐かしい時間を過ごさせて戴きました
          余り 時間の取れない身には 貴重なひと時です
           有難う 御座いました




          桂蓮様

          有難う御座います
          アマデウス わたくしも観ました
          ちょっと昔なので 詳しくは覚えていませんが
          確か モーツアルトが悪戯小僧のように
          描かれていた気がします
           モーツアルトにしてみれば 凡人の愚鈍さを
          笑わずにはいられなかったのではないかと思ったり
          しています でも あるいは わたくしの記憶違い
          かも知れません
           わたくしは日本で言えば 美空ひばりは
          紛れも無く 天才だったと思います
           映画 東京キッド の中で歌うひばりの歌を聴き
          観て 実感しました 十歳かそこいらの子供が
          完全に大人の歌を唄っています メルボルン交響楽団や   
          NHK交響楽団などの指揮者を勤めた 
          故 岩城宏之さんも天才の一人に数えています
          その他 画家のピカソ ダリに天才を感じます
          古い時代のミケランジェロなど 天才は数多くいますが
           波乱の一年 読ませて戴きました
          桂蓮様の大筋が書かれていて とても参考になりました
          簡潔に書かれていて 読み易かったです
           それにしても 頭脳の優れた 良い方と
          巡り合いましたね どうぞ これからも御幸せに
           ブログ開設 1000日も拝見しました
          常に御自分の内面に心を向けている 御立派です
          自省のない所に 人格の進歩なんて ありませんものね
          日本の政治家達にも欲しいものです
           結婚式写真でしょうか ? なぜ 純日本風に?
          ブログ開設 の冒頭写真も良い写真ですね 
          広々とした風景 アメリカ映画などでよく見る
          広々とした風景には つい 憧れてしまいます
           いつも 御丁寧なコメント 有難う御座います

           
  
 
 
 

 

 
 
 
 
 
コメント (1)
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遺す言葉(364) 小説 十三枚の絵(1) 他 天才 パラリンピック

2021-09-26 12:31:03 | つぶやき
          天才(20210,9.12日作)


 天才がしばしば 孤高の境地に住したり
 奇行に走る と 思われたりするのは
 天才という存在が 並みの人間の思考
 あるいは 
 感情能力の世界を超えた 
 一段高い境地にいる 為に 
 他ならない
 天才は 自身の能力からすれば 極
 自然の世界を生きている それが
 並みの人間には 理解を超えた
 別世界の出来事 に思え 奇人 変人 奇行の人 と
 見られるのだ
 天才 孤高の人に取っては 極めて
 迷惑な話しに違いない



         パラリンピック

 
 パラリンピックが醸し出す感動は
 人間は意志さえあれば 
 不可能はない その自覚を目覚めさせてくれる 
 その事の中にある
 手が不自由 足が不自由 眼が 耳が不自由 等々
 それでも その障害を持った人々は 自分の意志で
 見事 困難を克服して見せてくれる
 そこに生まれる感動 並みの感動では捉え得ない
 一段と高く 深い感動 が ある
 諦めるな 人間に出来ない事はない
 総ては意思の問題 気持ちの問題
 やれば出来る !





          ----------------





          十三枚の絵(1)



 わたし達は狩猟解禁日を迎えると、十一月三日「文化の日」の前後、毎年、猟に出かけた。既に六年続くわたし達の慣習で、最近では年中行事のようになっていた。メンバーはわたしの他に、旅館を経営する森本浩三、地元の農家の辰っあん、そして、絵を描いている結城良介さんの四人だった。
 わたしと森本浩三は昭和三十五年卒業の大学同期生だった。辰っあんと結城さんは、わたし達より二つか、三つ年上のはずだった。
 森本浩三は大学を出てしばらくは、東京で商社勤めをしていたが、旅館を経営する父が亡くなると実家に戻り、跡を継いだ。
 地元に戻った森本は初め、辰っあんと二人、ライフル銃を担いで山の中を歩いていたが.そこにわたし達が加わり、結城さんが加わりして、四人になった。
 わたしは最初、免許もないままに森本に誘われ、後を付いて歩いていた。だが、そうしているうちに次第にその魅力に魅せられ、虜になっていた。
 結城さんがメンバーに加わったのは、わたしに遅れる事二年だった。
 結城良介さんは、日本橋で老舗を誇る乾物商の長男だった。絵を描く事が好きで、四年前に年老いた両親の世話を条件に、家督の一切を妹夫婦に譲ると、自分は房総の地に住むようになっていた。
 結城さんは一度も結婚した事がなかった。大学で経済学を学んだあと、本来なら家督を継いで家業を切り盛りしてゆく身だった。結城さん自身、そのつもりでいたらしかったが、大学四年、卒業の年に見たルドンの絵が決定的な影響を結城さんに与えていて、その運命を思い掛けない方向へ導いていた。一人の画家の絵が二十歳を越えた人間に決定的な影響を与える・・・、芸術には疎いわたしには分からない事だったがーー。
 無論、芸術に限らず、思い掛けない一瞬が人間に、決定的な影響を与えるのは、よくある事ではある。
 結城さんは寡黙な人だった。わたしが出会った最初から、悲しみを裡に秘めたような表情をしていた。わたしは初め、その表情が芸術家といわれる人に特有のものかと思っていたが、そのうちわたしは、芸術家の総てが総て、結城さんのような表情をしている訳ではなく、それが結城さん特有の表情である事をすぐに理解した。結城さんは思い通りに自分の絵が描けない事に悩んでいたのだ。
 結城さんの絵はわたしなどから見ると、いかにもきれいな絵肌で描かれていて美しかった。結城さんに言わせると、その美しいのがいけないのだ、という事だった。
「なぜ、美しいのがいけないんです ?」
「魂がない、という事なんですよ。美しさは美しさでも、魂のこもった美しさでなければならないんです」
「わたしなどから見れば、充分、心のこもった美しい絵に見えますけど、これ以上、どうすればいいんですかね」
 わたしは、お世辞ではなく言った。
「煎じ詰めれば、才能の問題でしょうね。才能のない人間が、いくら努力しても、結局は、才能以上のものは出来ないという事でしょうかね」
 結城さんは自嘲気味に言った。
「世間的に画家の名で通っている人の中にも、結城さんの絵よりよっぽど下手だと思うような絵がありますけど、難しいものですね」
 わたしは言った。
「わたしは、売るための絵は描きたくないんですよ。あくまでも、自分の魂のこもった絵を描きたいと思ってるんです。金儲けなら、実家の商売を継いだ方がはるかに効率的ですからね。でも、わたしは継がなかった。大学四年の時にルドンの絵を見て、魂を揺さぶられるような感動を覚えたんです。それで、もともと絵を描くのが好きだったものですから、道を踏み外してしまったという訳なんです。今では、ルドンの絵を見た事を後悔しています」
「どうしてです ?」
「だって、そうでしょう。ルドンの絵を見なかったら、実家の商売をしていて、こんな絵の描けない苦しみを味わう事もなかったはずです。平凡な商店の親父として、そこそこの生活が出来ていたでしょう」
「芸術って、怖いものですねえ」
「いや、もともと、わたしが向こう見ずだったんですよ。ルドンの絵に感動しただけで、自分の才能も考えずに絵描きになろうなんて思ったんですから」
 結城さんは大学卒業と同時に絵画教室に出席したりして、絵の勉強に打ち込んでいた。
「幼い頃からきっちりと、基礎を勉強しておけばよかったんでしょうけど、なにしろ、にわか仕込みの我流ですから、いい絵なんか、描けるはずがありませんよ。天才ならいざ知らず、わたしのような凡才ではね」
「そんなに苦しみながら、絵をやめようと思った事はないんですか」
「ええ、ありません」
 結城さんはきっぱりと言った。
「自分の世界を創り出す事の魔力とでも言いますかね。実業の世界でそれを実現する人もいるのでしょうけど」
「それにしも、結城さんの絵は、ルドンの絵とは随分、趣がちがいますね」
 わたしは結城さんが、ルドン、ルドン、と言うのを聞いて、ルドンの絵を見た事がある。花が人の顔をしていたりして、薄気味悪い奇妙な絵だった。
 結城さんの絵は、それとは対照的に明るい色彩て、花や風景が精密に描写されている絵だった。
「わたしも最初は、ルドンばりの絵を志していたんですけど、結局は、真似以上のものは出来ないと思って、ぜんぜん、別の方向へ舵を切ったんです。そうして方向は変えてみたものの、相変わらず、何処かで見たような、ありふれた絵の世界から抜け出る事が出来なくて、今日まで、だらだらとやって来てしまったような訳なんです。結局、これが才能の問題、という事なんでしょうね」
 結城さんは達観したような声で静かに言った。
 結城さんは絵を志した当初から、絵に没頭出来る生活を望んでいた。
 父は物分りの良い人で、
「おまえがそれで生活出来るのなら、それで構わないさ」
 と言った。
 だが、その父も結城さんの絵が何度も大きな展覧会で落選し、全く売れない事を知ると、さすがに痺れを切らして、そろそろ身を固め、家業を継ぐ事も考えるようにと勧めるようになっていた。何度も見合いの話しも持ち込んで来て、その度に、
「如才はないし、気持ちもしっかりしていて、商売向きの娘だよ」
 と言った。
 結城さんもそんな父の度重なる勧めを無下に断る事も出来ずに何度か見合いをした。だが、どれも旨くゆかなかった。結城さんの気持ちの定まらない事が原因だった。





          ---------------



          桂蓮様

          お気遣い 有難う御座います
          日本もようやく秋めいて来ました それでも最近
          何かと天候は不順です まるで世界中の
          シッチヤカメッチャカに 呼応しているようです
           心の洗剤 つくづく あればいいな と思います
          過去は美しい などと言う人もいますが 
          わたくしにとっては 過去は苦痛の海です
          若くて不遜だった当時の出来事のあれこれが
          心に痛く突き刺さって来ます 過去を洗剤で
          洗い流す事が出来たら どんなに楽な事でしょう
           縁 アメリカとの違いがあるとの事 認識の仕方の    
          違いでしょうが 面白く拝見しました アメリカは
          もっと軽く受け止める という事でしょうか ?
           筋トレ 読書 坐禅 まあ なんて忙しい事
          その合い間の家事 「欲張り桂蓮」 日常が
          眼に浮かぶようで思わず笑みがもれます 
          お元気な証拠 どうぞ この日常を大切にして下さい
           エホバ アメリカにもあるのですか エホバ
          よく知りませんが 変な宗教団体ですよね
          御主人様 御立腹との事 良識ある人なら こんな
          怪しげな団体 誰でも腹が立ちます
           日常の何気ない事 お書き下さっているのを
          大変 楽しく拝見させて戴いています
           それにしても ボタン一つでこうして海を越えた
          国の出来事が拝見出来るなど 便利な世になりました
          同時に、思わぬ出来事に巻き込まれる怖さも
          ありますけど
           何時も 有難う御座います



          takeziisan様


          何時も応援戴き 有難う御座います
          ブログ 今回も楽しく 拝見させて戴きました
           従兄弟のタツコ 中学生日記 いい御文章と 
          写真 当時がまざまざと甦ります 当時はこの国自体      
          貧しかったですが 人の心は穏やかに 優しかった
          そんな気がします 殊に 地方ではそうだった気が     
          します それにしてもタッコさん 早すぎますね
          善人は早く亡くなり 悪人 世に蔓延る でしょうか
           クリは剥くのが大変ですね でも 豊かな里の秋
          その象徴ですね 里の秋と言えばブログ内の「里の秋」         
          この童謡の作詞者は わたくしの故郷の隣りの隣り町の
          出身者です ですから この歌を聴く度に ああ この  
          歌は この地方の情景を歌っているんだなあ と
          思いながら いつも故郷を懐かしんで聴いています
           よく詩をお書きになっていますね 是非
          ブログに遺しておいて下さい 当時の世の中の状況が
          分かります
           サルビアは赤が好きです 群生で咲き誇っている 
          その景色に魅せられます ですので 「海辺の宿」にも
          一情景として取り入れました 
           農作業 大変なお仕事を続けられる 水泳のせい で
          しょうか お元気です                   
           季節季節の畑の様子 懐かしい風景で
          楽しませて戴いております
           何時も お眼をお通し戴き 有難う御座います 
    
          

 
 
 
 

 
 
 
 
コメント (2)
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遺す言葉(363) 小説 荒れた海辺(完) 他 神 及び バチカン

2021-09-19 12:26:14 | つぶやき
          神 及び バチカン(2021.9.10日作)



 宗教 神 主義 等の名の下
 人間の可能性を奪い  拘束する
 愚かな事だ 人間は 人間が生きる
 基本条件の下 総ての面に於いて
 自由 平等でなければならない
 宗教 神 主義主張 イデオロギーより
 人の命 人の生きる権利の保持が大切 第一


 神はいったい 人間に対して 
 何をしてくれた ?
 神を信じよ そう 言うなら 神はなぜ
 この世の中で飢えに苦しみ 
 明日の生活もままならない人々を
 放置 見捨てて置くのだ この世に
 神など存在しない 人を救えるのは 人
 人という存在 人以外 ない
 空虚な概念 神などという存在に 囚われ
 踊らされるな 惑わされるな


 バチカン 何をしている ?
 ただ 祈るだけ 祈る事しか出来ない
 それなら要らない 人は 行動すべし
 貧しき人を救う 人としての評価を決定付けるのは
 その行動力 実行力 神 宗教の総本山 自負するなら
 バチカンに住する人々よ せめて
 貧しい人々への贈り物 救済用として 財宝に囲まれ 造られた
 金ピカ装飾品の一部でも 飢える人 貧しき人々への
 贈り物 救済費用として使い 施す事は出来ないのか ?
 ただ 祈るだけ 空虚な権力 空虚な威厳など
 必要ない





          ------------------




          荒れた海辺(完)


 翌日、斎木は午前十時に宿を出た。
 女将達三人が門の外で見送ってくれた。
「その橋を渡って右へ折れる道路を少し行きますと、バスの停留所がありますから、そちらへ行った方が近道ですよ」
 斎木が昨日、来た道を戻ろうとすると女将が、川に掛かった橋を指差して言った。
「でも、急ぎませんから、ゆっくり歩いて行きます」
 斎木は言った。
「お若いから、少しぐらい歩いても大丈夫だ」
 老人が笑顔で言った。
 少し歩くとすぐに汗が滲んで来た。
 八月下旬とはいえ、夏の太陽が照りつける砂利の敷かれただけの県道は白く乾いて埃っぽかった。
 斎木はそれでも、歩いている事が少しも苦にならなかった。心の中では、何かがふくらんでいた。来る時とは違って、周囲の景色が生き生きと輝いて見えるのが不思議だった。生きている事が輝いて見える事は斎木に取っては初めての経験だった。人の心の優しさに触れた喜びが、斎木の心を昂揚させていた。



          五



 松林の中の、斎木が昔、辿った道はなくなっていた。
 腰の辺りまでも覆いつくす芒や萱の群れが荒れ放題に繁茂していた。
 松の木の幹は太く、枝は大きく伸びて鬱蒼とした暗さをつくっていた。
「この松林の向こうへ行くって言ったって、これじゃあ、どうやって行くのよ」
 奈津子は困惑顔で言った。
「堤防へ出て、そっちの方から行ってみようか。昔は、道があったんだけどなあ」
 斎木は言って、奈津子の先に立ち、橋のたもとの方へ戻った。
 堤防へ出ると、左への道を辿った。
 堤防には人が通る事もないのか、雑草が繁茂していた。
 川の流れの半分を埋めて、両岸には葦が一面に生い茂っていた。かつては何艘もの小型漁船が碇泊していた面影は見る事も出来なかった。
 ゆっくりと迂回した堤防を辿って行くと、松林の向こうに海と川口の一部が見えて来た。
 更に歩いて行くと、川口が現れた。
 川口には大きなコンクリートの防波堤が築かれていた。
 テトラポットがその根元を埋め尽くして海に突き出ていた。
 斎木が昔、足を踏み入れ、波が寄せて来る度に小さな魚影が群れを成して走り抜けた浅瀬は何処にもなかった。
 辺りを圧倒する巨大なコンクリートの塊の防波堤だけが、整然とした姿で海に突き出ていて、打ち寄せる波を押しとどけめながら激しい飛沫を巻き上げていた。
 斎木は防波堤の手前で堤防の斜面を下り降りると、松林の中へと入って行った。
「昔は、こんなコンクリートの防波堤なんかなくて、きれいな浅瀬が広がっていたんだけどなあ」
 昔を惜しむように斎木は言った。
「だって、結婚する前の事でしょう。何年、昔になるの ?」
 斎木の後に続いて歩いていた奈津子が言った。
「それはそうだけど、ずいぶん、変わっちゃったよ」
「変わらない方がおかしいわよ」
 奈津子は言った。
 松林を抜けると眼の前に雄大な海の景色が広がった。
 斎木はだが、その海を前にして呆然と佇んでいた。
「どうしたの ?」 
 すぐに追い着いて来た奈津子が、斎木の浮かない様子の顔を見て言った。
「砂浜がこんなに狭くなっちゃってる」
 斎木は言った。
「もっと、広かったの ?」 
 斎木と並んで立った奈津子は言った。
「そうだよ。こんなものじゃなかった」
 斎木は呟くように言った。
 心が解放されるように広々とした砂浜の景色は何処にもなかった。その侵食された砂浜の景色に斎木は、思わず息苦しさにも似た感覚を覚えていて、胸の塞がれるな思いがした。悪夢を見ているようだった。
「でも、昔、見た事だから、広かったように思えるんじゃない ? ほら、よくあるじゃない。子供の頃には随分、大きく感じられたものが、大人になってから見ると、こんなに小ちゃかったのかって」
「うん。でも、やっぱり、 こんなものじゃなかった」
 斎木にはやはり、納得出来なかった。
 二人の前には松林によって遮られた砂浜の砂が小高く盛り上がり、小さな砂丘をつくっていた。靴を履いた足ではその砂丘を下って行く事は出来なかった。
 斎木は松林に沿って、砂地に生えた雑草を踏みしめながら、墓地のあった方角へ向かって歩き出した。
「こんな所へ連れて来られるんだもの、スラックスで来てよかったわ」
 と、奈津子は服に絡まり付いて来る雑草を払い除けながら言った。
 秋の気配が濃い砂浜にはやはり、人影はなかった。
「あれっ、何かしら ? 船じゃない ?」
 奈津子が遠くの砂浜の中程を指差して言った。
 斎木が奈津子の指差す方を見ると、外枠だけを残した漁船が半分、砂に埋もれるようにして、傾き、放置されていた。
「うん。漁船の壊れたのだ」
 斎木は言った。
「随分、砂に埋もれてるわね」
 奈津子は言った。
 妙に淋しい光景だった。
「もっと歩くの」
 奈津子が辟易したように言った。
「うん、墓地があるはずなんだが」
 斎木は松林の中と前方に眼を凝らしながら言った。
 海を見下ろすようにして小高い丘の上にあった墓地は何処にも見当たらなかった。
 砂浜の至る所で吹き寄せられたゴミや、砂に埋もれかけたコーヒーなどの空き缶が眼に付いた。
 海水浴シーズンの人出が連想された。
 斎木には記憶に残る砂浜の美しさの失われた事を惜しむ気持ちだけが強かった。
 周囲をトタンで囲った粗末な建物が眼に入って来た。
 近付いてみると、錆びたトタンで覆われた建物の中には何もなかった。
 周囲にはあちこち、掘り返された跡らしきものが残っていた。
「墓地なんか、ないじゃない」
 それを見て奈津子が、改めて、疲れたように言った。
「そうだなあ、無くなってしまったのかなあ」
 斎木は言った。
「でも、墓地が無くなるなんて、ないんじゃない ?」
「そうだよなあ」
 と、斎木も言ったが、諦めの気持ちが強くなっていた。
 斎木はようやく、引き返すつもりになって微かな疲労感と共に、遠い海の広がりに眼を向けた。
 果てしなく続く海の広がりはそれでも昔のままだった。渚には相変わらず打ち寄せては引いてゆく波の繰り返しがあった。
 斎木はふと、昔の自分を思い出して涙ぐんだ。
「もう、帰ろうか。余り遅くなってもいけないから」
 斎木は言った。
「そうね」
 奈津子も言った。
 何故か狭苦しく思える砂浜と墓地を見つけ出す事の出来なかった失望感だけが斎木には深かった。
 斎木が戻りかけたその時、
「あら、あれじゃない ?」
 と、奈津子が斎木の背後で突然、弾んだ声で言った。
 斎木がその声に振り返ると、奈津子は松林の中に見え隠れする墓石の数々とも見えるものの方を指差していた。
 斎木には息を呑む思いがした。
「そうだ。あれだ」
 斎木も思わず弾んだ声で言っていた。
 二人は何時の間にかその場所を通り過ぎていた。
 墓地は昔には想像も出来なかったような松の巨木に囲まれて、前方に迫り出している枝の陰になっていた。
「ほら、やっぱり、砂浜は狭くなっているんだよ。昔は、あの墓地と砂浜との距離はこんなものじゃなかったんだから」
 斎木は改めて確信した。
 二人は歩きづらい松林の中を通って、その場所に辿り着いた。
 墓地には歩くのもままならない程に、墓石と卒塔婆が林立していた。その光景に斎木は圧倒された。
「髄分、墓石が増えちゃったなあ」
 斎木は思わず言った。
「どれがそうなのか、分かる ?」
 奈津子が言った。
「どうだろう。ちょっと、分からないかも知れないなあ」
 斎木は言った。
「名前を見れば分かるんじゃない ?」
「名前ももう、忘れてしまったよ」
 斎木は言ったが、ふと、東京大空襲の時に亡くなった三人の名前が書かれていた事を思い出した。確か、墓地の中程にあったはずだ。
 斎木はその中程に向かって、一つ一つの名前を確認しながら歩いて行った。
 新しく、はっきりと文字の読める墓石には、それらしい名前は見当たらなかった。今更ながらに斎木は、歳月の経過を思わずにはいられなかった。
 それにしても、今、現在、あの場所に宿がない、という事は、女将も既に、亡くなっているという事ではないのか、と思いながら斎木は、改めて注意を凝らして探してみた。
 やはり、見当たらなかった。
 女将がもし、亡くなっているとすれば、当然、あの老人も亡くなっているのでは、と斎木は思った。老人は、奥さんと一緒の墓に埋めてくれと、女将さんに頼んであるんですよ、と言っていたがーー。
 斎木は老人の言葉を思い出しながら、その墓地に付いても思いを巡らした。
 だが、名前も場所も知る事のなかった老人の墓地など、なお更に分かるものではなかった。ただ、時間だけが過ぎていた。
「どうしても、その墓地を探さなければいけないの ?」
 奈津子が言った。
「いや、そんな事はない」
 斎木は言った。
「じゃあ、もう、そろそろ、行きましょうか。余り遅くなっても困るから」
「そうだな」
 斎木は言った。不満はなかった。
 あるいは、土地の人に聞けば分かるかもしれないが、と斎木は思ったが、そこまでする気にはならなかった。
 過ぎて逝く歳月の中で、失われたものが返る訳ではない。
 斎木はただ、心に焼き付いている人達の優しさに満ちた思い出だけを、これからも大切にして生きてゆきたい、と思った。
 あの時斎木は、東京へ帰ってから自分でも驚く程の心の変化をみせていた。
あの、海辺の宿で触れた人達の心の優しさが無意識のうちに、斎木の心の凍り付いた凍えを溶かしていた。工場内でもそれまでほとんど無口で、誰とも話す事のなかった自分が、何時の間にか積極的に先輩工員達に話し掛けるようになっていた。自ら進んで仕事も手伝うようにもなっていて、もともと真面目だっただけに、その仕事ぶりが誰からも好意を持って受け入れられた。今では斎木は二十三人の工員達を統括する工場長の地位に就いていた。
「ほら、ここに道があるわよ」
 奈津子がほとんど消えかけたような小さな道を、大きな木々の間に見つけて言った。場所から見て、かつて女将が歩いて行った道に違いなかった。
 斎木はその道を確認すると奈津子の後に従って、車の置いてある、今ではすっかり舗装のされている県道へ向かって歩いて行った。



          完





         -----------------




         桂蓮様

         有難う御座います
         旧作 縁の原点とめぐり逢い
          それらの縁は一体全体何によってうごかされて
         いるのだろうか
          縁とは不思議なものですね 良い縁 悪い縁
         この縁の不思議さ 理解出来ません それで人間は
         神を創ったのではないでしょうか すべては
         神の思し召し 神を持ち出さなければ この世は
         理解出来ないような不思議な事ばかり 悪知恵の
         働く者たちはそれを利用して 神の名の下 自分達の
         利益を図る 人を支配しようとする 眼には見えない
         縁 この恐さ
          私の肉体の使用期限の切れるところか
         縁からの解放 それまでは逃げたくても逃げられない
         縁の虜 奴隷 それが人間なんですかね
          もたもた そろりそろりの合わせ読み
         楽しませて戴きました 
          今回 偶然にも神に付いて投稿しました
         これも何か不思議な縁ですかね
          人が気にならなくなる
          私にも脳があるかー
         いいですねえ 笑えますねえ その自然体
         人は自然のままが一番美しく見えます
         つくったものは何処か不自然 必ず ボロが出ます
         悟りを持った人達は自分をつくったりなどしません
          いつもお眼をお通し戴き お忙しい中コメントまで
         有難う御座います



         takeziisan様

         有難う御座います
         二つの詩 読ませて戴きました
         文才が無いなどと御謙遜ですが
         御立派なものです 是非これからも
         埋もれているものを掲載して下さいませ
         勿体ないです
          小野 山中 古川 笹原 懐かしい名前ですね
         金メダルを取り あるいは優勝するなど その度に
         自分の事のように誇らしく思ったものでした
          トンボ捕り 夏の夕暮れ 田圃の上一面を覆いつくす
         本やんまの群れを思い出します 
         ヤンマ ヤンマかえれ 鬼ヤンマかえれ と言いながら
         竹ざおの先に繋いだ囮のヤンマを振り廻していたあの頃が
         甦ります
          アームストロング ダニー ケイ 芸達者が揃って
         いました わが青春と共に良き時代でした
          様々な写真 川柳  今回も楽しませて戴きました
          何時も愚にも付かない文章にお眼をお通し下さる事に
         感謝いたします 有難う御座います
          
  
    

 

 
 

 
 
 
  
        
コメント (2)
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遺す言葉(362小説 荒れた海辺(6) 他 選良としての国会議員

2021-09-12 13:28:12 | つぶやき
          選良としての国会議員(2021.10.7日作)


 国会議員は
 選良 エリート で なければ
 ならない しかし 国会議員は
 国民 市民 の 下僕 その立場を
 忘れては ならない
 国民 市民の下僕
 その意識の上に立ち 国民 市民の
 最善 を 考え 行動する
 真のエリート 選良は それの 出来る人
 国会議員・・・ 国民 市民より
 高い地位 位置に居る そんな 人間 存在
 では ない あくまでも 国民 市民に 選ばれた
 国民 市民の為に働く 下僕
 国民 市民の支持なくして その存在は
 あり得ない



      幸せの 香り運んで 金木犀
      
      わが思い 届けて香れ 金木犀

        金木犀が匂って来ました





          ----------------





          荒れた海辺(6)



 墓地は松林を背にして、海を見下ろす小高い丘の上にあった。
 古びた卒塔婆や墓石が並び、夏の強い陽射しの中でひっそりとした佇まいを見せていた。
 斎木は再び足を運ぶと、その墓地に向かって歩いて行った。
 歩き始めて間もなかった。斎木はまた、思わず立ち止まっていた。墓地の中程にある墓石を前にしてうずくまる人の姿を見たのだった。
 その場所と斎木との間にはまだ、かなりの距離があった。それでも斎木にはすぐにそれが、宿の女将だと分かった。
 女将は手を合わせる事もなく、ただ、何かをじっと見ていた。
 しばらくしてから女将は立ち上がった。
 斎木は女将が自分の方へ来るのかと思い、一瞬、狼狽し、慌てて芒の繁みの中に身を隠した。
 女将はだが、斎木に背中を見せると別の道を辿って、やがて松林の中へ消えていった。
 斎木は女将が再び戻って来ない事を確認すると、墓地へ向かって歩いて行った。
 墓地では海辺に特有の雑草が砂地を覆っていた。
 女将がうずくまっていた場所に辿り着くと、まだ新しい墓石の前には花が活けられてあった。線香の炊かれた跡も新しかった。
 斎木は墓石の上に女性のものと思われる名前を確認した。裏側に廻ってみると、そこには幾つもの名前が刻まれていた。
 昭和二十年三月十日没
 田村有三 享年五十六歳
   加代 享年五十歳
   春子 享年二十一歳
 そして一人だけ
 昭和三十一年八月二十一日没
   由紀子 享年二十六歳
 と、記されてあった。
 斎木には多分それが、女将の肉親に違いないだろう事はすぐに察しがついた。そして、昭和二十年三月十日というのは、あの、太平洋戦争の時の東京大空襲、その時、亡くなったという事なのだろうか、と、思いを馳せた。
 ただ一人、昭和三十一年に亡くなった人の存在が斎木には理解出来なかったが、女将はこの人の供養の為にここに来ていたのに違いないとは推測出来た。
 斎木はしばらく、墓地の中を歩いて墓石に刻まれた名前をあれこれ読んでいたが、それにも飽きると墓地を出て、再び、砂浜の方へ戻った。
 松林を抜けると海は相変わらず、激しく砕ける波のしぶきを見せて遠く水平線の彼方にまで、遮るものの何一つ無い青の広がりを見せ、続いていた。砂浜にも人の影一つなかった。その人影のない砂浜は昨日と同じ様に波の寄せる渚の黒と水には濡れない白い砂の対比とを見せてやがて、陽炎の中に溶け込んで見えなくなっていた。ただ、斎木がふと、右側に視線を向けた時、その陽炎の中に影のように揺れて黒く見えるものがあった。斎木は、おやっ、と思った。
 黒く揺れ動くものの影は海の中にまで延びているように見えた。
 斎木は興味をひかれるままに、宿の下駄を履いた足が砂の中にめり込むのも厭わずに墓地を形作る砂の斜面を駆け下りると、渚の方へ歩いてゆき、目指す方へ向かって歩いて行った。



          四



 陽炎の中に黒く揺れていた影は、川口に沿って木組みを連ねた護岸だった。
 それが海の中にまで延びていた。
 激しく砕ける波がその木組みに当っては、あちこちに幾つもの小さな渦巻きを作っていた。そこだけが一際、荒々しく見えた。
 斎木が足を止めたその場所は、護岸の際とは違って浅瀬になっていた。透明な水が下の砂地を透かして見せていた。小魚の群れが幾つも、その透明な水の中を泳ぎ廻っていた。
 何艘もの小型の漁船が川口から少し上がった松林の下の岸辺に繋がれていた。
 時刻は午後二時を過ぎていた。
 斎木は砂浜から川岸へ出るとそこを辿って宿へ戻った。
 自分の部屋に落ち着くと途端に、昼食抜きの空腹を覚えてすぐに食堂へ降りて行った。
 食堂では、調理人の老人が一人、テーブルの一つに向かい、椅子に掛けて頭を垂れ、居眠りをしていた。斎木の珠すだれを掻き分ける音に気付いて老人は素早く、眼を覚ました。
「ああ、いらっしゃい」
 居眠りをしていた事を取り繕うかのように老人は、曖昧な笑顔を見せて言った。
 斎木は何か食べられますかと聞いてから、メニューの中からそうめんと西瓜をを頼んだ。
「海へでも行ったんですか ?」
 斎木の陽焼けした顔を見て老人は言った。
「はい」
 斎木は素直な気持ちになっていた。
「水が冷たかったでしょう」
 老人は笑顔で言った。
「いえ、泳がなかったんです」
「そうですか」
 老人は満足気に言ってから、
「八月も半ば過ぎになると、クラゲが出て波も高くなるし、泳ぐのにはあんまり良くないんですよ」
 と言った。
 斎木は黙って頷く事で老人の言葉に答えた。
「もう、海辺には人もいなかったでしょう」
 老人は言った。
「墓地があったので、見て来ました」
 斎木は言った。
「ああ、あの墓地ね」
 老人は心得顔で言った。
「小高い丘の上に海を見下ろすようにして、墓石や卒塔婆が建っていたでしょう」
「はい」
 と、斎木は言ったが、女将を見掛けた事を言おうかどうか、迷った。すると老人が、
「女将さんの姿を見ませんでしたか」
 と聞いて来た。
「はい、見ました。花と線香を上げていました」
 今度は素直に言えた。
「そうですか」
 老人は言ってから、
「今日は、妹さんの三回忌なんですよ。それで女将さんは今、お寺へ行ってるんですがね、妹さんのお墓へは毎朝、ああしてお参りをしているんですよ」
 斎木はようやく納得出来た思いで頷いた。
 老人は言葉を続けた。
「あのお墓にはわたしの女房も眠っていて、わたしも間もなく行くところなんですがね」
 と言って、楽しそうに笑った。
 斎木は老人の言葉になんと答えたらいいのか分からなくて黙っていた。
 老人は斎木が黙っている事も気に掛けずに、何故か満足げな表情で茹で上がったそうめんを水に晒し、ザルに載せて水を切ると、薬味のネギを刻み始めた。
 間もなく、老人は四角い黒塗りのお盆に一切れの西瓜とそうめんを載せて運んで来た。相変わらずゆっくりとした動作だった。
 老人は調理場の中へ戻ると、水音を響かせながら洗い物を始めた。
 老人は話し好きらしかった。それとも、この人気の乏しい田舎の宿にいて、話し相手が欲しかったのか ? 自分から言葉を続けた。
「わたしもこの宿へ来てから長いんですがね、歳も八十に近くなるし、今では一日も早く、女房の傍へ行く事を楽しみにしてるんですよ」
 と、半分冗談のように言って笑った。
「子供さんはいないんですか 」
 斎木は思わず聞いていた。
 斎木が自ら進んで人に問い掛ける事など、これまでにない事だった。自分でも驚いた。
「いえ、いますよ。三人いるんですよ。それぞれ東京でなんとかやっていて、年寄りを一人にしておくのは心配だから来るようにって、言ってくれてるんですがね、でも、わたしは、女房の墓を守ってここに居たいと思ってるんです。それで、女将さんにも頼んであるんですがね。わたしが死んだら、女房と一緒の墓に埋めてくれってね」
 老人は静かに言った。言葉に揺らぎはなかった。
 斎木はそうめんを口に運ぶ箸を動かしながら、その話しを聞いていた。
 老人は洗い物を済ませるとカウンターの中の椅子に腰を降ろして、白い半そでシャッの胸ポケットから煙草を取り出し、一本を抜き取ると口にくわえて火を付けた。襟元には赤い蝶ネクタイがあった。
「お兄さんは煙草は ?」
 その時には斎木も食事を済ませていた。
「いえ、吸いません」
 斎木は言った。
「そうですか。煙草など、やらない方がいい」
 老人はそう言ってから、いかにも旨そうに煙りを吐き出した。それからまた、自ら進んで言葉を続けた。
「ここは、わたしの女房の生まれ故郷なんですよ。女房は自分の命がもう長くはないと知った時、この、生まれた村へ帰りたいって言ったんです。それでわたしも、勤めていた東京のホテルの仕事を辞めてここへ来たんですが、女房はここへ来ると満足したのか、程なくして死んでしまいました」
 亡くなった人へ思いを馳せるのか、老人の眼には涙が浮かんでいた。
 斎木はそんな老人の話しを聞きながら、それが少しも苦にならなかった。むしろ、心の柔らかくほどけてゆくような心地よさを覚えていた。
 その心地よさに誘われて斎木は自分からも老人に話し掛けていた。
「さっき、お墓を見た時、その石に亡くなった人の名前が書かれていて、昭和二十年三月十日って書いてあったんですけど、あれは東京大空襲で亡くなった人なんですか ?」
 老人は「そうです」と言った。
「女将さんのお父さんと、お母さん、それに五歳違いの妹さんだって言う事です。あと一人、別の日付で名前が書かれていたでしょう。その人が今日、三回忌をしている妹さんなんです」
 と、老人は言った。それから一息入れるように間を置いて、
「女将さんも終戦直後は大分、苦労したようです。一番下の妹さんが脊髄カリエスになって、その病院代を払うのにどんな仕事でもした、って言ってましたから。でも、ここへ来てからの女将さんは、たとえ、病気の妹さんを抱えていても、幸せだったのでは、と思いますよ。金銭的に苦労する事もないし」
 と言って、静かに煙草の煙りを吐き出した。それからまた、何かを考えるかのように一呼吸置いてから、
「妹さんは亡くなる直前に、それまで閉じていた眼を開いて、お姉さん、長い間、有難う、と静かに言って微笑みを見せると、また眼を閉じて、そのまま、眠るように亡くなってゆきました。妹さんは床に就き切りだったんですが、仲の良い姉妹だったんですよ」
 老人は女将姉妹に思いを馳せるように静かな口調で言った。
  老人と斎木の二人だけの食堂には、開け放された窓々から吹き込む心地よい海からの風があった。波の音が聞こえていた。その波の音に溶け込むように、喧しく鳴き立てていたセミの声が一瞬、突然に途切れた。
「ああ、女将さん達が帰って来たようだ」
 と、老人は何かの気配を察したかのように言った。
 間もなくして、再び騒がしくセミたちの鳴き立てる声が起こった。
 その時、珠スダレを別けて覗く女将の顔が見えた。
「只今。いま帰りました」
 と、老人に言ってから、斎木の姿を認めて、
「いらっしゃいませ」
 と、柔らかい笑顔で言った。
 斎木は黙って頭を下げた。
 その時、女将さん、と呼ぶ若い女の声がした。昨日、最初に姿を見せた女性に違いなかった。
「あの若い女の人は ?」
 斎木はなんとなく聞いていた。
「ああ、あれは近所の娘(こ)でね。手伝いとして働いて貰ってるんですよ。あの娘は昨日、玄関先にあなたを迎えた時、あなたが余り疲れたような顔をしていたもので、自殺するんじゃないかって、びっくりして、女将の所に駆け込んだんですよ」
 と言って、笑った。
 斎木も思わず顔を崩したが、昨日の自分の姿では、そう見えても不思議はないと思った。
「さきちゃん !」
 何処かで誰かを呼ぶ女将の声がした。
 斎木はそれを潮に席を立った。
「じゃあ、僕はこれで」
 斎木は老人に頭を下げて言った。
「そうですか。いろいろ、詰まらない話しをしてしまって退屈だったでしょう」
 老人はそう言ってから、
「明日、帰るんですか」
 と聞いた。
「はい」
「そうですか。来年でもまた、気が向いたら来て下さい。こんな、何も無い所ですが釣りぐらいは出来るので」
 老人は言った。
「はい」
 斎木は答えた。
「最も、来年まで、わたし自身が生きているかどうかは分かりませんがね」
 老人は楽しそうに言って笑った。

 その夜、老人が帰ったのは午後十一時過ぎだった。斎木が眠れないままに布団に横になっていると、玄関のガラス戸の開く音がした。気になってカーテンの透き間から覗いてみると、庭の踏み石伝いに門の方へ歩いて行く老人の姿が見えた。
 老人は門の傍で立ち止まると何かを探って、門燈を消した。
 老人の姿はそのまま、夜の闇の中に消えていった。
 この宿から三百メートル程離れた所ろに家があると老人は言っていた。




         ----------------





         桂蓮様

         有難う御座います
         新作 拝見しました
         自信過剰 自信不足 どちらも困ったものです
         でも 自信過剰 これは不足より 困った状態
         なのではないでしょうか 不足は何かを
         やり損なう 機会を逃す そういう場合が多く
         たとえ機会を逃しても自分に与えるダメージは
         小さくて済みますが 過剰がもたらす失敗は
         痛手がより大きくなるのではないでしょか
          今はどちらの状態でもない 中立 これは
         良い事なのではないですか その時 その時で
         判断する 自信 過剰でもなく 不足でもない
         冷静な判断が出来ます 桂蓮様が行う坐禅 結局
         その坐禅も 何事にも捉われない自分を造る そこに
         あるのだと思います 自身お歳の事を述べていますが
         結局 年齢と共の人間としての成長がそこに 見られる
         そういう事ではないかと思います 中立 何事も
         決めて掛からない これは良い事ではないかと思います
          いつも 何事も深く考察する 桂蓮様の
         習性のようすですね でも 是非 禅の無の心 これも
         大事にして下さい
          雑談 楽しいですね 桂蓮様の素顔が垣間見えて
         ふふんと笑ってしまいます 人間 あれも失敗
         これも失敗 それでいいのではないでしょうか
         完璧な人間なんて何処にも居ません どうぞまた
         楽しい雑談 気が向いたらお書き下さい
          有難う御座います



         takeziisan様

         有難う御座います
          今回も楽しませて戴きました
         松虫草の花咲く 喝采
         花に寄せる思い よく伝わって来ます
         お見事
          川柳 入選作より ゆるやか ゆるーい 他   
         はるかに楽しめます 思わず笑っています
         入選作なんてなんでしょうね
          彼岸花 わたくしの好きな花の一つです
         自然の無い街中に暮らしていますとーもっとも
         わたくしはコロナに係わらず 余り外へ出ませんがー
         彼岸花など滅多に眼にする機会はなく 幼い頃 日常 眼      
         にしていた田圃などの畦道に咲く彼岸花の
         あの美しい光景が懐かしく思い出されます
          今ではそれも夢の中の光景のように
         遠いものになってしまいました
          今回も美しい花の数々 蝶の姿 楽しませて戴きました
         有難う御座いました
   


 
 

 
 
 

 
 
 
 

  
 
コメント (1)
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遺す言葉(361) 小説 荒れた海辺(5) 他 逝くものは 他 一篇

2021-09-05 12:45:14 | つぶやき
          人は逝く(2021.8.20日作)


 人は逝く
 わたしは残る

 時は逝く
 わたしは残る

 総て逝く
 記憶が残る

 年老いた時間

 わたしは見つめる
 遠く過ぎ去る総てのもの

 迫り来るもの
 無


          過ぎ逝く時の中で

 人生は
 過ぎ逝く時の中で見る
 束の間の夢
 目覚めた時の中で見る 幻
 あの事 この事 そんな事
 過ぎ逝く時の中での 数々
 その数々の 過ぎ逝く時の中
 再び 戻る事はない 人はただ
 過ぎ逝く時の中 
 総ての過去を抱きつつ
 迫り来る崖 永遠の闇 無に向かい
 歩いて行く 過ぎ逝く時の中 今を
 過去の夢 幻としながら





          ------------------





          荒れた海辺(5)


 沖の彼方で時折り砕ける波が、蒼一色の広がりの中で白く小さく陽に輝いていた。
 八月も終わりの季節を思わせて、海の上には思い掛けない暗さがあった。それが、午後の時間の深まりと共に、一段と増して来るようだった。
「お風呂が出来ましたから、どうぞ」
 女将が迎えに来た。
 夕食が出る頃には建物全体に明かりが入っていた。
 遠い海が夕闇の中で次第に見えなくなっていった。
「食堂が午後十一時まで開いていますので、御用が御座いましたら、どうぞ、御利用下さい」
 夕食の膳を下げに来た女将が言った。
 入れ替わりに斎木を玄関に迎えた年若い女性が床を取りに来た。
 窓の外はまったくの闇になっていた。
 星空が鮮やかにその闇を彩っていた。
 昼間は気にする事もなかった波の音が、窓の下に押し寄せるように聞こえて来た。
 二階の窓から見下ろす庭先には、門灯が二つ、闇に向かって明かりを投げ掛けていた。
 その向こう、砂利道の県道を越えてすぐに、松林が黒い群れとなって砂浜に続いていた。
 斎木は布団に入ってもすぐには眠る事が出来なかった。
「午後十一時まで食堂が開いています」
 女将の言葉を思い出した。
 浴室に向かい合って、その食堂はあった。
 薄くなった白髪をきれいに撫で付けた老人が一人、カウンターの奥にいたのを斎木も眼にしていた。
 あの老人が板前なのだろうか、斎木は眠れないままにそんな事を考えていた。
 波の音が枕の下に迫って来るように聞こえていた。
 女将たちはもう、やすんだのだろうか、家の中に聞こえてくる物音はなかった。

 いつの間にか、斎木は眠りに就いていた。
 翌朝、眼を醒ました時には午前七時を過ぎていた。
 一瞬、雨の音かと思ったのは、波の音だった。
 カーテンを透かして朝の光りが感じられた。
 そのカーテンを開けると、外は陽光に満ちていた。
 青い海の広がりが松林越しに見えた。
 昨日の午後の思い掛けない暗さは、その青の中にはまだ、なかった。
 斎木は浴衣を脱いで自分の服に着替えた。
 洗面のために廊下を通って、階段を降りて行った。
 女将が襷がけで階段の下の拭き掃除をしていた。斎木に気付くと、
「お早う御座います」と、優しい気遣いの笑顔で言って、「よく、お寝みになれましたか」
 と聞いた。
「はい」
 斎木は、女将の優しい言葉掛けに戸惑いながらも、素直に答えた。
 斎木にとっては、他人から優しい笑顔の言葉掛けを受けるなど、これまでに無い事だった。
「お食事はどのように致しましょうか。お部屋へお運び致しますか、それとも、食堂でお取りになりますか」
 女将は続けて言った。
「食堂で取ります」
 斎木は迷いもなく、咄嗟に答えていた。昨夜、ちらっと見た、どこか穏やかな感じの品のいい老人の姿が この時、斎木の頭の中には浮かんでいた。
「そうですか、それでは、そのように準備して置きますので、いつでもどうぞ」
 女将の表情には相変わらず優しい微笑みがあった。
「それから、もう一晩、泊めて貰いたいんですけど」
 斎木は何故か、突然、そんな事を言っていた。自分でも意外に思える言葉だった。
「はい、それは構いませんけど」
 女将に、ためらう様子はなかった。
 斎木は安堵する自分の胸の裡を意識していた。

 斎木が食堂の珠すだれを分けて入ってゆくと、カウンターに向かい、俯いて何かの仕事をしていた老人が顔を上げた。
 斎木の姿を見ると、
「いらっしゃいませ」
 と、穏やかな、斎木を労わるような笑顔で言った。
 地肌の透けて見える白髪は、昨夜、眼にしたのと同じように、きれいに七三に別けられていた。白いシャッの襟元には赤い蝶ネクタイが結ばれていた。顔には深い皴が見られて、すでに七十歳を越えていると思えた。
 斎木は 五脚あるテーブルの一つに向かい、椅子に腰を降ろすと、早速、メニューを開いた。
「食材の準備がなかったものですから、大した物がお出し出来ません」
 老人は謝罪するかのよう言った。
 斎木は御飯に味噌汁、目玉焼きなどの定食を頼んだ。
 老人がお茶を運んで来た。年齢を感じさせるゆっくりとした足取りだった。
 だが、カウンターに戻って、フライパンを握るその手の動きには熟練を感じさせる確かなものがあった。
 老人の仕事は速かった。待つ、という程の間もなく、定食が運ばれて来た。
 老人は再び、カウンターの中へ戻ると、洗い物をしながら斎木に声を掛けて来た。
「お一人で旅行してるんですか」
「はい」
 斎木は素直に答えた。
「お若いのに、こんな、何もない所へ来ても面白くないでしょう」
 老人は言った。
 斎木は答えに窮したが、咄嗟に、
「友達を訪ねた帰りなんです」
 と、取り繕っていた。
「そうですか」
 斎木の言葉を聞くと老人は何故か満足気に頷いて、
「もう、夏も終わりで、泳ぐのには水もちっょと冷たいしね」
 と言った。
 斎木は、そうした老人との言葉の遣り取りのうちに食事を済ませると部屋へ戻った。
 しばらくは窓枠に腰掛けて庭や、辺りの景色を見つめていた。その位置からは海は見えなかった。
 庭では芝生を縁取るサルビアの赤が一際、鮮やかだった。
 陽射しが暑さを増して来た。
 斎木は海辺へ出てみようかと考えた。
 宿の下駄を履き、玄関から踏み石伝いに芝生の庭を抜けて門を出た。
 粗い砂利を敷いただけの県道が、早くも埃っぽさを感じさせて白く乾いていた。
 その県道を横切り、斎木は松林の中へ足を踏み入れた。
 芒や萱に覆われて細い道が通っていた。足元を邪魔されながら、その道を辿って行った。
 両手に収まるぐらいの幹を揃えて、松の木が視界を遮っていた。
 やがて、海がその間から見えて来た。
 その道を歩いて行って斎木は、思わず足を止めた。
 行く手に墓地が見えていた。
 道はそこに通じていた。





         ----------------





          takeziisan様

          コメント 有難う御座います
           読み上手のtakeziisan様に そう仰って戴けると
          励みになります 有難う御座います
           いつまでこの暮らしが出来るのやら
          実感です でも 諦めたら終わり と思って
          毎日を精一杯生きています 八十代 今の時代
          まだ 若造 そんな気もします テレビの映像などで
          九十代 百歳に近い年齢の人達が 元気に
          動き廻っている姿を見ると まだまだ 老け込む歳
          ではないという気もします
           稲刈り 富山の常備薬 昔 懐かしい響きです
          あの当時は それが当たり前の事でしたね 
          懐かしい言葉の響きです 
           期外収縮 わたくしも時々 起こります
          血圧が低いものですか 低気圧が来たり 高温などに
          なったりします 今でも心臓の鼓動に異変を覚え
          慌てて 血圧を測ってみたりしますと 必ず 極端に
          低かったりします 毎年 健康診断を受ける医師は
          長生きが出来ますよ と軽く言いますが 低いのも
          楽では有りません 幸い その他 何処にも悪い所は
          なく 百点満点です と医師は言いますが
           タマスダレ 屋上にも咲いています 放って置く    
          だけなのですが 毎年 この時期になると白いきれいな
          花を咲かせてくれます
           月下美人 わが家では七月終わりに一度 
          咲いたのですが 今また 三 四 個の蕾を付けて
          います この不安定な天候の中で 旨く咲いてくれるか
          危惧しているところです ところで この月下美人
          この花に見せられて以前 このブログにも
           月下美人は艶な花 香りと姿で魅惑する
           だけど おまえは淋しい花 夜更けにひとり
           そっと咲く
          と 投稿した事があります
           今回もいろいろ 楽しい写真を見せて戴きました
          有難う御座います お互い 年齢を考え 慎重に
          でも 元気に生きてゆきたいものです  



        

                           桂蓮様

         有難う御座います
         ハリケーン お住まいに近い辺りだったのでしょうか
         大変だったようですね 日本のテレビでも映像を流して    
         いました 
          実際 世界中の気候の大荒れ 先が思い遣られます
          わたくしのコメントが何かのお役に立てば
         嬉しいのですが どうぞ お世辞 おべっかとは
         受け取らないで下さい わたくしは真実を常に
         心掛けるようにしています それに 人を批判するのは
         その人の行為や言葉が他者を著しく痛めたり 傷付けたり
         する以外 必要ではないと思っています むやみに人の
         欠点や弱みをさらけ出し 批判するのは百害あって一利
         なしです 誰もが欠点や弱みを持っています 他者に
         害を及ぼさない限り それを あえて騒ぎ立てる必要は
         ないのではないでしょうか 人は褒めて育てろ と
         言います 人の気持ちを豊かにするのは批判では
         ありません 良い所があれば褒める それで人の気持ちも
         育ち 心も豊かになります
          今回 新作が無かったので 旧作の回遊をした結果 
         私たちの物語「相対性理論」を拝見しました
         この理論はわたくしには全く分かりませんが 
         御主人様との出会いの原点 面白く拝見しました
         壮大なる宇宙に関する理論から 極 小さな人間同士の
         愛が芽生える 素敵な話しではありませんか 人の縁
         ですね それにあれは「絵」なのですか 写真のように
         見えます 見事なものです
          縁と言えば その下にありました 
         縁の原点と巡り会い 人の世は人知の及ばない所で
         構成されているのですね 相対性理論 人の縁
         人間存在など 極々 小さなものに思えて来ます
          いつも御感想をお書き戴き 有難う御座います
         

        
          
 

 

 
 



 
 
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遺す言葉(360) 小説 荒れた海辺(4) 他 禅五題

2021-08-29 12:22:00 | つぶやき
         禅五題(2020.5月)


 坐禅の意味
 坐禅は坐って 心を空にする
 心を空にする訓練 その  
 空になった心を 日常 生活の中に 活かし
 何事にも捉われない心 空 無 の 心で
 物事に対処し 処理をする
 何事にも捉われない心で その場 その場 での
 真実の道を探す 日常生活に於ける
 仕事 家事 交際 様々な面に於いて
 世間 一般的な 道徳 風習に 捉われる事なく
 人が人として生きる為の 最高 最善の道を
 その時 その時 その場で 見極め 対処
 処理をする その 空の心 それを
 養う為の訓練が 坐禅 坐っただけで
 体験を日常に活かす事がなければ
 いくら坐っても 無意味 意味が無い
 禅家 白隠の言う
 " 老いぼれ狸が 穴の中で居眠りをしているようなもの " に
 なってしまう

 目覚めた意識での真実の修行(仕事)に取り組む事は不断の坐禅ーー白隠

 農民は畑仕事 大工は大工仕事 女性は機織り仕事 それぞれ
 目覚めた意識で努力すれば それが直ちに 深い禅定ーー白隠

 生産の仕事は総て 真実の道と 相違するものではないーー法華経

 禅に於いては 知的解釈 概念的理解 は
 虚偽
 禅は 体験的理解 直感的理解 のみを
 真実とする ーー悟る 
 悟りのみを 真実とする





          ----------------





          荒れた海辺(4)

 
 二階建ての木造家屋の小ぶりな旅館は、海からの風をいっぱいに取り入れて、窓という窓が開け放たれてあった。
 < 白浪荘 > と金色の文字で書かれた一枚ガラスの引き戸は開いたままになっていた。
 八月の陽射しに馴れた斎木の眼には、建物の内部は暗くて見えなかった。
「ごめん下さい」
 斎木は玄関先から暗い奥に向かって声を掛けた。
 静まり返った家の中からは返事がなかった。
 斎木は更に、二度、三度と声を掛けた。
「はあい、只今」
 ようやく返事があった。
 家の中の暗さに馴れた眼に、奥に向かって真っ直ぐに延びた廊下が見えた。
 若い女性が、その廊下を小走りに走って来た。
 女性は玄関先に立つ斎木を見ると、一瞬、虚を突かれたように足を止めた。
「あのう・・・、部屋は空いてますか」
 斎木は女性が、ちょうど自分と同じ歳ごろに見える事に少しの戸惑いと気恥ずかしさを覚えながら、それと共に、自身の身なりの貧しさを恥じる気持ちでしどろもどろに聞いていた。
「はい」
 女性はそう答えたが、なおも信じ難いものを見るような眼で斎木を見つめていた。それからようやく、自分の立場を思い出したらしく、
「ちょっとお待ち下さい。女将さんが参りますから」
 と言うと、逃げるようにして再び、廊下の奥へ走って行った。

 若い女性の取り次ぎを受けて姿を見せた女将は、田舎宿の女将とは思えない品の良さを備えていた。
 その女将の斎木に向けた視線にも、やはり、若い女性が見せたのと同じような一瞬のたじろぎの色が見て取れた。
 斎木は膝の抜けた長ズボンに、汗の染み付いた白の開襟シャツを着ていた。手には布製のボストンバッグがあった。踵のすり減った古靴は埃にまみれて汚れていた。
 額に汗を浮かべて、暗い表情を宿したそんな若者に宿の女性達は、不吉な予感を抱いたのに違いなかった。
「お泊りでいらっしゃいますか ?」
 ようやく問い掛けた女将の言葉には戸惑いの色があった。
「はい」 
 斎木は自分が歓迎されていない事を意識した。
 自ずと声が小さくなっていた。
「でも、うちは、お泊りには予約を戴く事になっておりますので、突然のお客様はお断りしているので御座いますよ。突然のお客様ですと、お出しするものを揃える事が出来ませんので」
 女将の口調にはそれでも、得体の知れない若者を気遣うかのような柔らかさがあった。
 斎木はその口調の柔らかさに救われる思いを抱くと共に、微かな期待をも繋いでいだ。
「ただ、泊めて貰えるだけでいいんですけど」
 と、おずおずと言った。
 女将はなお、戸惑いの表情を見せていたが、強い否定色までは読み取れなかった。
「お一人でいらっしゃいますか ?」
 何かを警戒する気分は払拭出来ない様子のままに女将は、それでも静かに聞いた。
「はい」
 斎木は女将の静かな口調にすがる思いで素直に答えた。
 女将のためらいは依然、消えないようだったが、やがて気持ちを固めたように、
「何もお出しする事が出来ませんが、宜しいでしょうか」
 と言った。

 その日の朝、斎木は東京を発って総武本線を走る汽車に乗っていた。
 海の季節も終わりに近い八月下旬は、海水浴場へ向かう人の姿もなくて、下りの列車は空いていた。
 斎木には何時もの事で、当てなどなかった。工場の機械の入れ替えで、思い掛けない三連休になっていた。心の中の鬱屈した思いに押し出されるように斎木はアパートの部屋を出ていた。
 昔のままに見える、しなびた佇まいに惹かれて降りた小さな横芝駅は、屋根の無いホームが夏の陽射しを浴びて、ひっそりとして静まりかえっていた。斎木は汽車が発車したあと、線路の上を渡って改札口へ向かった。
 荒い玉砂利の敷かれた駅前広場には、数少ない乗客を乗せたバスが発車の時刻を待っていた。
 「木戸浜方面」と書かれた字幕を見て斎木はそのまま、訳もなく乗り込んでいた。
「木戸浜へお出での方はここで降りて下さい」
 若い女性車掌の声に促されるように斎木はバスを降りた。
 駅からは二十分程の行程だった。海辺へ出るにはそれからまた、一キロ程の砂利道を歩かなければならなかった。
 最初から、海へ行くという予定のあった訳ではなかった。行き当たりばったりの行動だった。
 舗装もされていない、砂利を敷いただけの県道は、八月の陽射しの中で埃っぽく、白く続いていた。自分が何処へ行くのかも分からないままに斎木は、ただ、その乾いた道を当てもなく歩き続けていた。
 荒い砂利石が靴底に当って痛かった。周囲には田圃や畑だけが続く景色が開けていた。その合い間、合い間に時折り、槙塀に囲まれた家々が姿を見せた。
 遠く開けた田園風景は東京にはない景色で、斎木の眼を和ませたがそれはまた、幼い頃の斎木がそこで育った景色にも似ていた。
 やがて前方に海の広がりを予感させて、空の明るさが見えて来た。粗い松林の中に人家が点在していた。
 その向こうに砂浜が見えて来た。更に歩いて行くと、時折り、白く砕ける波を遠く彼方に見せて、海の一部が見えて来た。
 斎木は人家が点在する松林の間の道を通って、砂浜の方へ歩いて行った。
 松林を抜けると眼の前に広々とした砂浜と、その向こうに開けた海が見えた。
 海は荒々しく砕ける波を幾重にも幾重にも連ねて沖合いに続いていた。夏の陽射しの中で、深い海の青と砕ける波の白とが眩しく眼に映った。
 砂浜は二百メートルに近い広がりを見せて、渚に続いていた。
 その砂浜を歩いて行くと、砂にめり込む靴の中に砂が入り込んで来て熱かった。
 砂浜を抜けて辿り着いた渚には人影一つなかった。八月の焼け付くような陽射しの中で海はただ、飽きる事の無い波の繰り返しを続けていた。
 斎木は暫くは熱砂に熱くなった靴の底を冷やすように、砕けた波の寄せては退いて行く渚を、遠く開けた視界に眼を向けながら歩いた。
 砂の白一色の砂浜は、所々に風で吹き寄せられた小さな砂丘を幾つも作って、浜昼顔を群生させながら、やがて、八月の陽射しが描き出す陽炎の中に溶け込んで見えなくなっていた。
 靴の底が濡れて来て不快感を覚えると斎木は、ようやく渚を後にした。
 再び、砂浜に戻ると砂の中を浜昼顔の群生する小高い砂丘へ向かって歩いた。
 浜昼顔の群生が砂の熱気をさえぎるその場所に腰を降ろすと斎木は初めて、強烈な陽射しの中に身をさらしていた事の微かな疲労感を覚えて、ボストンバッグから手拭を取り出し、汗に濡れた顔や首筋、胸などを拭った。
 依然として砂浜には、人の影一つ見えなかった。見渡す限りの海と砂の広がる景色だけが何処までも続いていて、やがてそれは、陽炎の中にかすんで見えなくなっていた。
 そして、そんな無人の景色は何故か、斎木の心を和ませた。今日まで自分が抱き締めて来た孤独感とその景色が完全に溶け合い、斎木自身と同化する思いだった。砂の上に坐っている、それだけで心が満たされた。
 斎木がようやくその砂の丘から腰を上げた時には、既に午後三時を過ぎていた。   
 斎木は当てもないままに松林の間の道を戻った。
 小さな十字路へ出た時、来る時は気付かなかった左側、向こう角に雑貨店がある事に初めて気が付いた。炎天下の中、何も飲まず、食べもせずにいた事の、のどの渇きと空腹とを途端に意識して、アンパンとサイダーを求めた。それを口にしながら再び、当てもないまま歩き続けた。自分が何処へ行くのかも分からなかった。
 いつの間にか、川岸近くに来ていた。その時、< 旅館 白浪荘 >と書かれた白塗りの看板が橋の袂近くにあるのが眼に入って来た。咄嗟に斎木は、なんの思いも無く、今夜はここに泊まろう、と考えていた。


          三


 二階の部屋からは松林越しに海が見えた。





          ---------------





          桂蓮様

          有難う御座います
          桂蓮様も大分 御苦労なされた御様子
          でも、現在の桂蓮様からはそんな御様子は
          微塵も見えて来ません 韓国 日本 アメリカ
          三ヶ国語を自在に繰る 見事な現在のお姿では
          ありませんか 敬服致します それに現在が
          御幸せとの事 なによりそれが一番です
          今がよければ それで良し それに越した事はない
          どうぞ 良き理解者でいらっしゃるらしい御主人様と
          これからも末永く 御幸せでいらっしゃいますよう
          今と時を大事にして下さい
           体性知覚
           自分の肉体がそれを悟った時 それは自然に
          出来るようになる そんなものではないでしょうか
           今回の御文章 誰もが感じる事がそのまま表現されて
          います 誰もが そうだ そうだ と
          思うのではないでしょうか 共感出来る御文章です
           今回も苦労しながら 辞書片手 英文も拝読
          致しました 楽しい時間でした
           何時もお眼をお通し戴き 有難う御座います



          takeziisan様

          有難う御座います
          それにしても 猛暑の中 よく
          お歩きですね どうぞ 熱中症にはくれぐれも
          御用心を もっとも よく歩くからこそ 楽しく
          美しい写真が撮れるのでしょうけれども
           遠くへゆきたい 懐かしい言葉の響きですが
          実はわたくしは この番組 一度も見ていないんです
          ですが当時から 永六輔初め、出演者の名前は知って   
          いました 人気番組でしたから それにしても
          当時の出演者の多くが亡くなっていますね この間も
          中島弘子さんが亡くなって 総てが遠い昔の事
          そんな感じですね
           アッチッチ 面白い写真 状況がよく分かります
          それにしても昆虫の元気な事 驚くばかりです
          先だっても小さな虫を見ながら こんな虫には
          熱中症は無いんだろうか などと詰まらない事を
          考えていたばかりです
           ニラは性が強いですね 屋上菜園でもひと夏に何度も
          収穫出来ます 
           北陸 山村言葉 美しいです それに優しい
          概して東北方面 北の言葉には優しい響きが
          感じられます それに比して 関東 海辺の言葉は
          粗っぽい つくづく思います わたくしは何故か
          東北地方の総てに惹かれます 或いは 無いものねだり   
          なのかも知れません
           見るたび羨ましく思う自然写真の数々 眼の保養です
           何時も 有難う御座います
          
 
 

 
 
 

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遺す言葉(359) 小説 荒れた海辺(3) 他 雑感 六題

2021-08-22 11:32:06 | つぶやき
          雑感五題(2021.5~6月作)


 1 幸福とは 心の充実度を言う
   どんな環境にいても 心が満たされている時 人は
   幸福感を抱く事が出来る
   辺境に生きる人達を 単純に不幸だ などと言う事は出来ない
   そこには現代的生活がないから 不便であり それを知らないから
   不幸だと見るのは そう見る者達の思い上がりであり
   思い込みでしかない 物が有っても無くても
   幸福そのものには変わりはない
   認識されないものは無だ それを知らなければ
   それが有っても無くても 関係ない

 2 冒険家が独り 極地や広い海原を横断する事を 単純に
   孤独だ などとは言えない
   新聞社やテレビ局 或いは諸々の
   マスコミ関係者の眼が向けられている限り 孤独とは
   言えない
   絶対的孤独とは 都会の真ん中に居ても
   絶え間のない人々の行き交いの中に居ても生まれ 誰にも
   心の内を理解されない時に言う言葉だ

 3 時代の流れの速度と 人間の焦燥感の度合いは
   比例する
   人は常に時代の波に乗り 時代に追い掛けられている 故に
   それに抗するには 自己の立ち位置を明確にする事
   自己の確立されていない人間は
   時代の波に翻弄されるだけだ

 4 芸術に於ける 反社会的とも思える行動は
   人間社会に新しい何かを付加し得た時にのみ 許容される
   凡百の愚行愚作が批難を浴びるのは仕方のない事だ

 5 芸術とは 感動に繋がるものである
   美しいものがそのまま 芸術になるとは限らない
   感動とは 意思に繋がるものである
   ある意思の下に創出されたものは 醜悪に見えても
   人の心に働き掛ける力を持つ限り 芸術に なり得る
   意思とは人間及び 人間社会を肯定し
   人間社会に働き掛ける力だ 

 6 神と一人の人間の命と
   どちらが大切か ?
   一人の人間の命である
   一人の人間の命を守れない存在など
   神と呼ぶ事は出来ない



           ------------------





           荒れた海辺(3)


 それが白塗りの看板だという事はすぐに分かった。
 松の木の幹に寄せ掛けるようにして放置されていた。
 斎木は、ズボンに絡み付く茨などを手で払い除けながら、松林の中へ入って行った。
 看板のそばへ歩み寄ると奈津子を振り返った。
「やっぱり、ここに間違いないよ」
< 白浪荘 > と書かれた黒い文字が薄れかけて読めた。
 奈津子も松林に入って来た。
「何 ? 看板じゃない」
 斎木のそばに来ると言った。
「そうだよ。門の脇に掛かっていた宿の看板だよ」
 斎木は看板に眼を落としたままで言った。
「じゃあ、旅館はやっぱり、ここにあったという事 ?」
 奈津子は言った。
「ここじゃないよ。道路の向こう側にあったんだ。俺はこの松林の中を通って海辺へ行った記憶があるんだから」
「今、畑になっている所 ?」
「うん」
「それにしても、随分、この看板もボロボロね。何年ぐらい前に旅館はなくなったのかしら ?」 
「相当前に壊されたんだな。この腐り具合からみると」
 斎木が靴の先で少し力を加えると看板はぼろぼろと崩れ落ちた。
「畑の方へ行ってみれば、旅館が建っていた跡が分かるかしら ?」
 松林の間から透かし見るようにして奈津子は言った。
「どうだろう。行ってみようか」
 斎木もその気になった。
 奈津子は先に県道に戻ると、道路際まで耕されてある畑のあちこちに視線を向けてしきりにそれらしい跡を探っていた。
「すっかり耕されていて、何も分からないわ」
 斎木がそばへ行くと奈津子は言った。
 斎木も奈津子に習ってあちこち、それらしい跡を探したが、やはり、何も記憶に通じるものは探し出せなかった。
「だけど、昔、ここに旅館があったにしても、こんな人気のない所で、よく、経営が出来たわね」
 奈津子は不思議そうに言った。
「釣り客が来たんだ。それで営業出来たらしいよ」
 斎木はそう答えながら、その事を教えてくれた老人の板前を思い浮かべていた。
「今は、川の水もあんなに汚くなっているけど、昔はもっとずっときれいで透き通っていたんだ。川口ではいろんな魚が釣れたらしい」
 奈津子は斎木の言葉に無言のまま頷いていた。
 斎木は更に、老人が、自分も女将も、毎朝、墓参を欠かさないのだ、と言った言葉を懐かしく思い出していた。
 あの墓地は今、どうなっているんだろう ?
 改めてその事が気になって斎木は、ひと目、その墓地を見てみたいという衝動に突き動かされた。或いは、そこへ行けば、女将や老人の消息も何か、手掛かりが得られるのではないか・・・・
「銚子まで行くのに、時間はまだ、大丈夫だろう」
 奈津子に訊ねた。
「ええ、時間は大丈夫だけど、まだ、見る所があるの ?」
 奈津子は何もないこの場の風景の中で不思議そうに聞いた。
「この松林の向こうに墓地があるんだ。そこへ行ってみたいんだ」
「墓地 ?」
  奈津子は怪訝な顔をして斎木を見詰めた。
「うん」
「墓地なんか見て、どうするの ?」
 奈津子は言った。
「いや、昔、女将の家の墓地があったんだ」
 斎木は言葉少なにそれだけを言った。



          二



 昭和三十三年の事であった。
 斎木は東京へ出て来てから三年目を過ごしていた。
 深川にあった木造アパートの四畳半の部屋に住みながら、近くの町工場で働いていた。 
 斎木にとっては毎日が、暗く、孤独な日々であった。
 工場では使い走りが斎木の主な仕事だった。
 機械の金型を造る五人の工員達は皆、四十代から五十代の男性ばかりだった。斎木は話し相手もないままに、工場とアパートを往復するだけの毎日を過ごしていた。
 斎木の実家は山形県にあった。中学を卒業すると斎木は逃げるようにして、その実家を出ていた。継母との折り合いが悪かったせいだった。実母は斎木が四歳の時に亡くなっていた。
 父は大きな農家の長男だったが、頼りにならない人間だった。斎木の前でも気の強い継母に、何かに付けて遣り込められていた。
 継母は実母の三回忌が済むと半年後に父の元へ来た。
 その半年後に男の子を出産した。
 それから一年おきに二人の子供が生まれた。
 斎木は弟や妹が生まれる度に、露骨に邪魔者扱いをされるようになっていた。斎木の心に人間への嫌悪と不信感を植え付けたのは、この継母だった。父は継母の前では斎木を擁護する事さえ出来なかった。
 斎木はそんな父を憎んだ。心に凍えたものを抱え込んだまま斎木は、次第に孤独の中に閉じこもるようになっていた。
 学校でも斎木は友達をつくる事が出来なかった。自分から進んで友達から離れるように距離を取っていた。中学を卒業したら、誰も知る人のいない東京へ行くんだ、それが斎木に取っての唯一の希望だった。斎木の学力を惜しんで、しきりに進学を勧める先生達の言葉にも斎木は耳を貸さなかった。
 そうして上京し、始めた東京での生活だったが、しかし、それ程、容易いものではなかった。暗い性格の無口な少年は、工場でも可愛がられる事がなかった。真面目だけが取り得で邪険にされるという事こそなかったが、押し付けられるのは雑用ばかりだった。午前八時から午後九時の残業が終わるまでの間、煙草を買いに走り、汗まみれのシャッやタオルを選択させられて息をつく暇もなかった。眠るためだけにアパートへ帰るという毎日だった。
 そんな斎木に取って、日曜日に映画を観る、その事だけが唯一の楽しみとなっていた。また、心の慰めにもなっていた。それでも、その日曜日の夕刻がまた、斎木に取っては、耐えられない程の苦痛に満ちた哀しく、切ない時間でもあった。一日の終わりが近付く夕刻時、繁華街には灯りが点り、人々の動きも一際、華やいで見える中で斎木が抱き締めるのは何時も、自身の孤独だけだった。自分の周りを取り囲む周囲の華やぎも、笑いさざめきも、斎木に取っては無縁の、遠い世界のものだった。斎木を見て、声を掛けてくれる人は誰もいない。自分の周囲を取り囲む人の数が多い分だけ、街の華やぎの増す分だけ、斎木の孤独は一層、深まった。そして斎木は何時からか、その寂しさから逃れるように、当てもなく放浪の旅に出るようになっていた。自分の落ち着き場所を探すかのように、都会の雑踏を離れて見知らぬ寂れた場所を歩いている時、斎木の心は休まった。そこでは、自分の孤独があぶり出される事もなく、周囲の寂しい景色の中に溶け込んでゆく事が出来た。と同時にそんな時、斎木の心に深く寄り添っていたのは、何時も、死への思いだった。この寂しい景色の中では自分の望みのままに心の中の死の意識が同化出来る、という思いがあった。そしてそれは斎木に取っては、一つの救いになっていた。

 <白浪荘>は、八月も終わりの午後の陽射しの中で、ひっそりとした佇まいを見せていた。
 槙の塀に囲まれた屋敷の門を入ると、芝生の庭を縁取って、真っ赤なサルビアが見事な花を咲かせていた。
 斎木は強烈な色彩のその鮮やかさに眼を見張りながら、芝生の庭を踏み石づたいに玄関へ向かって歩いた。





          -----------------





          桂蓮様

          有難う御座います
          蚊にやられっぱなし
          笑い声と共に拝見しました
          蚊はやっぱり殺さないと・・・
          わたくしもなるべく 生き物は殺さないよう
          気を付けていますが でも植物を食い荒らす
          人に危害を加える 殺さないわけにはゆきません
          わたくしの所では 最近 蚊の発生が少ない気が
          します 蚊取り線香なども今は不要で
          この猛暑の中 ボウフラも発生しないのでは
          と思ったりなどしています
           体の真実
          体の真実は体でしか証明出来ない
          まったくその通りですね ドリンク剤など
          わたくしも信用していません ただし
          栄養には充分 気を付けています
           体に奇跡はない 良い言葉です
          何事も理屈よりはまず実行 これが大切なのでは
          ないでしょうか 最近の御文章 とても砕けた感じで
          面白く拝見させて戴いております 素顔が垣間見えて
          好感が持てます いつも 楽しい御文章共々
          有難う御座います



          takeziisan様

          有難う御座います
           シオカラトンボ 全く同じ景色でした
          当時が鮮やかに甦ります
          郷愁かも知れませんが 当時は貧しくても
          心豊かな時代だったような気がします
          現在のように毎日毎日 追い立てられているような
          慌しさがなかった気がします
           終戦の日 この日の事はわたくしも文章にして
          このブログにも掲載しました 何時まで経っても
          記憶から消え去る事のない日です
           運動会等 当時は今より 確かに活発 荒々しかった     
          気がします それでも大過なく過ごせたのは
          何故でしょう 今は全体的にこの国は
          ひ弱になっているような気がします
           遅すぎる事はない 今を生きる この心
          大事な事だと思います 禅などでもしきりに
          その事を言っています 捉われるな 今を生きる
           これだけの畑仕事が出来るのは御丈夫な証拠では
          ないのでしょうか どうか御無理をせず何時までも
          楽しいブログ報告 お寄せ下さい
           数々の写真 川柳 相変わらず楽しませて
          戴きました 有難う御座います 
           
 
   
   
   
   

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