草むしりしながら

読書・料理・野菜つくりなど日々の想いをしたためます

取り(鳥)込む

2019-10-15 21:28:05 | 猫自慢
取り(鳥)込む
 
 姉の家は同じ敷地内にある。家が新しいからだろうか、この頃私の飼い猫のハナコは、姉の家に入り浸っている。その朝ハナコは、姉の毛布の上にゲボをしたと言う。ハナコにすれば姉の方が新参者なのだろう。使っているパソコンの上を占領したり、下っ腹に噛みついたりと、姉の家ではやりたい放題ある。

 しかし毛布の上にゲボとは困ったものだ。飼い主として悪いとは思いながらも、ここは黙ってやり過ごすしかない。気まずい雰囲気の中で、二人で朝ドラなどを見ていた。「この妹役の子役、うまいね」などと話題を微妙にそらしながら……。

 そこにトントンと階段を下りる音がして、当のハナコが2階から降りて来た。姉の手前ひとこと言わなければ。ハナコを見ると、何かを咥えている。
 
 「ネズミ」と思った瞬間だった。口の開いたままの私のバックの中に、咥えていた物をポイと放り込んでしまった。普段だったらネズミを見ただけで大騒ぎするのだが、今度ばかりは姉と二人で手を叩いて大笑いをしてしまった。おかげで先程までの気まずい雰囲気も消えてしまった。

 毛布にゲボとバックにネズミ。お互いに恨みっこ無しの痛み分け。それにしてもなんて空気の読める猫だ。しばらくは感心していた。

 しかし毛布にゲボは洗えば済むが、バックにネズミは洗っても済まされない。しかもバックはくたびれてはいるが私のお気に入りのヴィトンだ。捨てるには惜しいし、使うのは気持ちが悪い。

 とんでもないことをしてくれたものだ。家に常備しているネズミ専用の火箸を持って、恐る恐るバックの中を捜したが、ネズミなど入っていなかった。

 おかしい、さっき確かに放り込んだのを見たのに……。辺りを見回す私の目の前を、スズメがさっと飛び立ち、ハナコが後を追いかけて行った。なんだ、鳥だったのか。ネズミでなくてよかった。

 それにしても朝からバックに鳥が入るとは、縁起がいい。取り(鳥)込む。お金がどんどん儲かりそうだ。ありがとうね、ハナコ。その日は朝から気分が良かった。
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「林家たけ平」落語会にて

2019-10-14 21:49:45 | 日記
林家たけ平落語会にて

 抜けるような青空の下、市内の生涯学習センターに「林家たけ平」さんの落語会に行ってまいりました。林やたけ平さん、昨年に引き続き、当市での2度目の落語会です。 

 平成の大合併で同じ市になったものの、会場の生涯学習センターのある所は、私の家から三十キロ以上も離れております。それでも昨年の面白さが忘れられずに、イソイソと車を走らせて行ってまいりました。

 落語会は二部に分かれており、最初の演目は「源平合戦」。講談風の語り口調で、衣装も袴で登場。落語初心者のために落ちの説明やなにやらを加えて、三〇分以上の熱演でした。流れ出る汗が目に染みるのでしょうが、それを拭いもせず、正座して手をついた袴の両膝が汗で濡れておりました。
 
 さて十分の休憩の後の第二部、演目は「子は鎹」夫婦別れした男女が子どもの仲立ちで元の鞘に収まるという話です。

 当市は以前から落語会を開いておりました。私が初めて生の落語を聴いたのも、この市主催の落語会でした。かれこれ十五年くらい前のことで、招待された落語家はなんと二代目桂ざこば師匠でした。初めて聴く落語が桂ざこばとは、なんとも恵まれたものです。
 
 その時の演目がやはり「子は鎹」でした。聴きながらクス、クスっと笑い途中でほろりとさせられ、最後の落ちでまたクスリと笑いました。それから帰りに車の中でクスクスと思い出し笑いをして、翌日またアハハと笑い、三日後は、手を叩いて大笑いしました。

 一方若い林家たけ平さんの「子は鎹」もまた、素晴らしかったです。別れた女房を前にして、よりを戻したいとは素直に言えない。困って煙草を飲む場面はありました。懐から取り出した煙管に火を点け、思い切り吸い込む。目じりの下からすぼめた口もとにかけて、斜めに太い皺がキューと入って、困った男の表情がこれでもかってくらいに表現されていました。
 
 残念ながら二人の落語を比べるほど、私の耳は肥えてはいません。しかしどちらの落語家さんにも言えることは、観客が申し訳ないほど少ないということです。もっとくればいいのにと、落語会の度に思います。
 
 林家たけ平さん。遠路はるばる当市にお越しいただきありがとうございました。またのお越しをお待ちいたしております。

◎当草むしりブログに訪問いただきありがとうございます。只今松本清張「点と線」のあらすじ書いております。十月二十五日より投稿を開始いたします。ご期待下さい。
                       草むしり
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草むしり作「ヨモちゃんと僕」後編のご案内

2019-09-25 05:56:40 | 草むしり作「ヨモちゃんと僕」
 草むしり作「ヨモちゃんと僕」後編の御案内

◎当草むしりブログにご訪問いただき、ありがとうございます。
さて当ブログは明日よりしばらくの間、お休みいたします。なお草むしり作「ヨモちゃんと僕」後編を投稿いたしましたので、読んでいただければ幸いです。
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草むしり作「ヨモちゃんと僕」後1

2019-09-25 05:55:52 | 草むしり作「ヨモちゃんと僕」
草むしり作「ヨモちゃんと僕」後1

(夏)ネコは何かを我慢している①

 台風はぼく代わりに、停滞していた梅雨前線を連れ行ったようです。翌日は朝から青空が広がり、家中の窓が開け放されました。乾いた風が湿った部屋の中を吹きぬけ、夏がやってきました。

 久しぶりの青空に喜んだのもつかの間でした。お母さんがたまっていた洗濯物を干し終った頃には、寒暖計の針はグングンと上昇して、今年一番の暑さになりました。梅雨の雨空に慣れてしまった体は早くも悲鳴をあげ、雲一つない夏空をうんざりと見上げる始末です。

 梅雨明けと同時にハウスみかんの収穫が始まり、お父さんとお母さんは毎日忙しく働いています。まだ夜が明けきらない朝の涼しいうちに、みかんの摘み取り作業を始めて、午後からは出荷のための箱詰作業。それでなくても暑い夏場、ハウスの中の温度は四〇度を軽く超えます。その暑さの中で、みかんを一つひとつ手作業で収穫していく、きつい仕事です。

 真冬に加湿器で温めて、ハウスの中を春の状態にして花を咲かせます。ハウスの中で温度や水やりを調節して、春から夏そして秋へと、季節を先取りしてみかんを実らせます。収穫は一年間の仕事の集大成です。お父さんもお母さんも毎日忙しそうです。
 
 そんな中、ぼくたちも大忙しです……。ああ、ごめんなさい。嘘をついてしまいました。大忙しなのは、ヨモちゃんだけです。
 ヨモちゃんは夜になると倉庫の見回りにいきます。甘いハウスミカンは人間だけではなく、ネズミも大好きなのでしょう。ハウスミカンの収穫が始まって以来、ヨモちゃんは二日に一度くらいの割でネズミを捕ってくるようになりました。

「こんなに居るのか」
 お父さんは、ヨモちゃんがたくさんネズミを捕って来るのに驚いています。もしヨモちゃんがいなくなったら、家はネズミであふれてしまうのではないかと心配もしています。
「お前もヨモギみたいにネズミを捕っておいで」
 離れの仏壇の前で大の字になって昼寝をしているぼくに、お父さんが言いました。

 人間は汗をかくことにより体温を調節していますが、ぼくたちネコは汗が出ないので体を舐めて体温の調節をします。しかし唾液で体を濡らしたくらいでは、真夏の昼下がりの暑さを乗り切ることはできません。涼しい所に避難して、仰向けになって手足を大きく広げて、体内に籠った熱を発散させるのです。

ぼくの知る限り家の中で一番涼しい場所は、離れのお仏壇のある部屋です。だからお仏壇の前で一番涼しくなる恰好で寝ていただけなのですが、お父さんにはどんな風に見えたのかなぁ。
「………」
 ぐっすり眠っていたものだから頭がボーっとして、声を出すのもおっくうです。こんな時にはなにか食べるのに限ります。
「どうしたフサオ、黙ったままで。なんだ、お腹が空いたのか」
食べ残しのカリカリを食べているぼくに、お父さんが声をかけました。たぶんぼくが黙ったまま仏壇の部屋から出て行ったので、気になってようすを見に来たのでしょう。

「そうか、お前。ストレスを何か食べて発散するタイプかぁ」
「やっと頭がすっきりした」
「そうか、そうか。ネズミが捕れないこと気にしていたのか」
「あっ、お父さん何しているの」
「悪かったな、お前がそんなに気にしているとは思わなかったよ。そのうち捕れるようになるからな、今聞いたことは忘れろよ」
「うん。なんのことだが分からないけど、忘れるよ」

 その日以来お父さんは、ぼくにネズミを捕ってこいとは言わなくなりました。それから毎日暑い日が続き、お父さんとお母さんは相変わらず忙しそうにしています。その間ぼくはすっとお仏壇の前で、大の字になって寝て過ごしました。
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草むしり作「ヨモちゃんと僕」後2

2019-09-25 05:54:38 | 草むしり作「ヨモちゃんと僕」
草むしり作「ヨモちゃんと僕」後2

(夏)ネコは何かを我慢している⓶

  そんな日ある朝、お父さんが家中のカレンダーを破き始めました。実は七月はとっくに終わっていたのですが、カレンダーが七月のままだったのです。二人ともハウスの仕事が忙しくて、とてもカレンダーまでは気が回らなかったのです。

「今日でハウスも終わりだ」 
  八月のカレンダーを見ているお父さんはなんだかとても嬉しそうです。その日は二人とも夜明け前に出かけていき、帰って来たのはすっかり暗くなってからでした。

「遅くなってごめんね。今日が最後だから、後片付けしていたのよ」
 お母さんは慌ててぼく達のお皿に、カリカリを入れてくれました。
「これ、フサオ。もう少しゆっくり食べなさい。」
 お母さんがぼくに言いました。
「フサオたら、またこんなにこぼして。慌てて食べるからよ」
 ぼくは普通に食べているのですが、お母さんには慌てて食べているように見えるようです。ぼくはお皿に入ったカリカリを食べるのが下手で、半分はお皿の外にこぼしてしまいます。

「ほらそんなにこぼすと『お行儀が悪い』って弓子に怒られるわよ」
「ユミコ」
「そんなこと言ったってなぁ、しょうがないよ。小さい時からの癖だからな。親がかっぱらってきた食い物を、地面の上で大急ぎで食っていたンじゃないのか。皿ン中の物を上品に食うような躾は受けていないよ」
「それもそうだけど、お皿の中の半分はこぼしているわよ」
お母さんはこぼれたカリカリを拾ってぼくのお皿に入れてくれました。

「大変だ、フサオ。弓子に怒られるぞ。あいつは自分に甘く、人には厳しいからな。『こんなにこぼして、もっとお行儀よく食べなさい』ってな」
「うん、ユミコ……。誰のこと」
「大丈夫、気にするな。お前はお皿のカリカリはこぼすけれど、仏壇の湯飲みの中のお茶はこぼさずに上手に飲めるじゃないか」
「そんな、悪いことが上手に出来たからって、誉めてどうするのよ」
「いやいや、お茶なんか飲む猫めったにいないぞ。その上一滴もこぼさずに飲むンだから、たいしたものだ。いいかフサオ、弓子の言うことなんか気にしないでいいからな。それよりも問題は時生だよ。あいつは本当にやんちゃ坊主だからな」
「やんちゃで困るって。弓子がこぼしていたわ」
「だから心配なンだよ。あいつフサオの髭を切ったりしないかって。」

 心配だなんて言っている割には、お父さんはちっとも心配そうな顔はしていません。むしろ嬉しそうにも見えます。
「そんなことするわけ無いでしょう。フサオ、フサオって今から楽しみにしているそうよ」
「トキオかぁ」
「それなら安心だな…。あれっフサオお前もう食べないのかい。まだカリカリが残っているのに……。あいつ今の話、本気にしたのかな」

 ユミコは口うるさくてぼくを叱りつける。トキオはぼくの髭を切ってしまう。ぼくはどっちも嫌だなぁと思いました。そんなぼくの気持ちが天に通じたのか、翌日は朝から雨が降りました。
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