goo blog サービス終了のお知らせ 

たけじいの気まぐれブログ

記憶力減退爺さんの日記風備忘雑記録&フォト

藤原緋沙子著 「冬萌え」

2025年05月18日 18時10分01秒 | 読書記

図書館から借りていた、藤原緋沙子著 「冬萌え」 (祥伝社文庫)を読み終えた。
本書は、著者の長編時代小説、「橋廻り同心・平七郎控・シリーズ」の第5弾の作品で、「第一話 菊一輪」「第二話 白い朝」「第三話 風が哭く」「第四話 冬萌え」の、連作短編4篇が収録されている。

「橋廻り同心・平七郎控・シリーズ」は、江戸北町奉行所の「橋廻り同心(はしまわりどうしん)」となり、北町奉行榊原主計頭忠之(さかきばらかずえのかみただゆき)から、「歩く目安箱」としての特命を受けた立花平七郎が、新人同心平塚秀太、読売屋(瓦版)「一文字屋」の女主人おこう、その使用人辰吉、元船宿「おふく」のお抱え船頭源治等と共に、橋にまつわる様々な事件に対して、その事情を探り、絡み合う悪事や謎を解明、愛憎乱れる深い闇を、剣と人情で解決していくという、悲喜こもごもの長編時代小説である。
「橋廻り同心」とは、正式には、「定橋掛の同心」のこと。
「定橋掛(じょうばしがかり)」とは、縦横に水路が張り巡らされ、125余の橋が存在した江戸で、その橋や下の川を点検管理をする、南、北奉行所の一部門で、それぞれの奉行所で、与力一名、同心2名が担当していたのだという。
「橋廻り同心」の仕事も重要な仕事だったはずだが、奉行所内では、十手をかざして華々しく事件捜査をする部門「定町廻り同心」に比して、十手ではなく、木槌を手にして橋桁や欄干等を叩いて回り点検管理する姿は、侮蔑の目で見られ、年老いたり、問題を抱えた、与力、同心が就く、閑職と認識されていたのだという。
生前、「大鷹」と異名をとった「定町廻り同心」の父親の後を継ぎ、北辰一刀流免許皆伝で、かって、「黒鷹」と呼ばれる程、活躍していた平七郎が、曰く、事情が有って、「橋廻り同心」に左遷されてしまうが、持ち前の正義感、人情で、「橋廻り同心」の職掌を越えて、多くの事件を解決していくという痛快物語であり、ヒロインとも言えるおこうとの恋模様が織り込まれた物語である。


読んでも読んでも、そのそばから忘れてしまう老脳。
読んだことの有る本を、うっかりまた借りてくるような失態を繰り返さないためにも、
その都度、備忘録として、ブログ・カテゴリー「読書記」に、書き留め置くことにしている。


「第一話 菊一輪」
・主な登場人物
 岩五・おみつ、
 岡村金之助(筑前国秋月藩御用掛岡村孫太夫の嫡男)・綾瀬、
 いたちの儀蔵、伊之助、
・あらすじ等
 吾妻橋を行ったり来たりする男岩五、実は、以前奉公した主君への忠義を全うせんと
 して、惚れた女房おみつを飯盛女にし、泥棒を企てようとするが・・・。
 意外な展開となり・・・。
 「へい、いたちのとっつぁんに貰った命大切に致しやす」

「第二話 白い朝」
・主な登場人物
 お愛・太一、緒方勇之進、
 上村左馬助、妙、
 高田屋治兵衛、
 山路屋益之助、北山一馬、
・あらすじ等
 平七郎の無二の親友で、剣術道場主上村左馬助の様子がおかしい?、妙が失踪?、
 一方、弁慶橋の竹森稲荷で、親とも慕っていた治兵衛殺害現場を目撃してしまった
 少年太一は堅く口を閉ざしてしまい・・・、その理由は?、
 「平七郎様、おいら、クロを待つよ」、哀しげに太一は言った。

「第三話 風が哭く」
・主な登場人物
 新八・弥兵衛
 お咲、善七、
 富蔵、平助、
 松屋庄兵衛・お美津、林格之進、
・あらすじ等
 凶悪犯捕縛に協力したお咲は奉行者からの褒美を拒み、暦売りに脅迫されている
 との情報有り、平七郎、お香、辰吉等が真相探索・・、
 蓬莱橋・・お美津の「二年間待って」という約束を胸に、罪を肩代わりしながら
 懸命に待ち続けるお咲。その心と体を解放してやらないと・・・・。
 「お咲・・・」、平七郎が声をかけると、お咲が振り向き・・、
 「風が哭いてます・・・、お役人様、風が・・・」
 
「第四話 冬萌え」(表題作)
・主な登場人物
 淡路屋徳三郎、与之助、
 治助・お文・お小夜、
 茂助・おさん、
 総兵衛(おこうの亡父)、辰五郎(辰吉の父親)、
・あらすじ等
 世間では仏の徳三郎と呼ばれている両替商の淡路屋徳三郎だが・・・、
 お小夜に言い寄る淡路屋の番頭与之助、真相が暴かれ・・・、
 古川橋(麁朶(そだ)橋)・・亡き父親総兵衛の秘密を追い、父の深い愛情を知る
 おこうの切ない思い・・、
 「冬萌え・・・」「ええ・・・、私、それを見て涙が出ました。それでここに
 来たのです」

「解説」ー「見えない絆」を描く橋物語  小梛治宣


(つづく)

弊ブログの「コメント欄」は、
2025年4月20日をもって、閉じることに致しました。

以後、弊ブログにコメントをお寄せいただく場合は、
引っ越し先ブログ ⇨ 「たけじいの残日雑記懐古控」
上記と同記事の最下段、
「コメントを書く」をクリック、入力、「投稿する」で

お願い申し上げます。

(ネットから拝借フリーイラストGIF)


追記

引っ越し先のHatenaBlog「たけじいの残日雑記懐古録」の方では、
「設定」→「コメントの許可」→「誰でもコメントを書き投稿出来る」、
に、しています。
先日、HatenaBlogユーザー以外の方に、
テストしていただきましたところ、

特に問題無く、コメントすることが出来るようです。

今のところ、
goo blogが、終了するまで、
古屋、新居、2つのブログを、管理していきたいと
思っております。
昨年までは、夢にも思っていなかった2つのブログ管理、
初体験であり、これも、脳トレの一つ?・・と
決め込んで・・・。


 


藤原緋沙子著 「夕立ち」

2025年05月08日 19時13分58秒 | 読書記

図書館から借りていた、藤原緋沙子著 「夕立ち(ゆだち)」 (祥伝社文庫)を読み終えた。
本書は、著者の長編時代小説、「橋廻り同心・平七郎控・シリーズ」の第4弾の作品で、「第一話 優しい雨」「第二話 螢舟」「第三話 夢の女」「第四話 泣き虫密使」の、連作短編4篇が収録されている。

「橋廻り同心・平七郎控・シリーズ」は、江戸北町奉行所の「橋廻り同心(はしまわりどうしん)」となり、北町奉行榊原主計頭忠之(さかきばらかずえのかみただゆき)から、「歩く目安箱」としての特命を受けた立花平七郎が、新人同心平塚秀太、読売屋(瓦版)「一文字屋(いちもんじや)」の女主人おこう、その使用人辰吉、元船宿「おふく」のお抱え船頭源治等と共に、橋にまつわる様々な事件に対して、その事情を探り、絡み合う悪事や謎を解明、愛憎乱れる深い闇を、剣と人情で解決していくという、悲喜こもごもの長編時代小説である。
「橋廻り同心」とは、正式には、「定橋掛の同心」のこと。
「定橋掛(じょうばしがかり)」とは、縦横に水路が張り巡らされ、125余の橋が存在した江戸で、その橋や下の川を点検管理をする、南、北奉行所の一部門、南、北奉行所それぞれで、与力一名、同心2名が担当していたのだという。
「橋廻り同心」の仕事も重要な仕事だったはずだが、奉行所内では、十手をかざして華々しく事件捜査をする部門「定町廻り同心」に比して、十手ではなく、木槌を手にして橋桁や欄干等を叩いて回り点検管理する姿は、侮蔑の目で見られ、年老いたり、問題を抱えた、与力、同心が就く、閑職と認識されていたのだという。
生前、「大鷹」と異名をとった「定町廻り同心」の父親の後を継ぎ、北辰一刀流免許皆伝で、かって、「黒鷹」と呼ばれる程、活躍していた平七郎が、曰く、事情が有って、「橋廻り同心」に左遷されてしまうが、持ち前の正義感、人情で、「橋廻り同心」の職掌を越えて、多くの事件を解決していくという痛快物語であり、ヒロインとも言えるおこうとの恋模様が織り込まれた物語である。


読んでも読んでも、そのそばから忘れてしまう老脳。
読んだことの有る本を、うっかりまた借りてくるような失態を繰り返さないためにも、
その都度、備忘録として、ブログ・カテゴリー「読書記」に、書き留め置くことにしている。


「第一話 優しい雨」
・主な登場人物
 富蔵、宗助、
 土佐屋平左ェ門
 おきち・おはる、
 井筒屋善右衛門、
・あらすじ等
 新大橋・・逢瀬を重ねた男に裏切られた女を包む涙雨。

「第二話 螢舟」
・主な登場人物
 三河屋徳兵衛・丈太郎・お美代、
 お力、新太郎(山城屋の息子)、
 矢次郎、
・あらすじ等
 赤羽橋・・捨て子と知った少女。水面を舞う初蛍に母の面影が。 

「第三話 夢の女」
・主な登場人物
 与五郎、
 おいし・おらく
 岩井彦次郎、峰吉、
 上村左之助、
 白蛾、お加代、おきん、
・あらすじ等
 今川橋・・愛するがゆえに女の前から姿を消した男の決意。
 
「第四話 泣き虫密使」
・主な登場人物
 倉橋恭之介(備中松田藩藩士)・倉橋成一郎・久美、
 倉橋助左衛門・美崎、
 丸田屋仁兵衛、お滝、銀次、
 宗太郎(天野屋の息子)
 一柳瀬左衛門(備中松田藩江戸御留守居番)、神山善四郎、
 野々村外記(備中松田藩国家老)、犬塚彦左衛門、黒田十四郎、
 日野屋吉右衛門(米問屋)・お豊・おさよ、 
・あらすじ等
 水車橋・・藩危急の蜜書と共に江戸の土を踏んだ若侍を待ち受けていたものは。

「解説」縄田一男

(つづく)


弊ブログの「コメント欄」は、
2025年4月20日をもって、閉じることに致しました。

以後、弊ブログにコメントをお寄せいただく場合は、
引っ越し先ブログ ⇨ 「たけじいの残日雑記懐古控」
上記と同記事の最下段、
「コメントを書く」をクリック、入力、「投稿する」で

お願い申し上げます。

(ネットから拝借フリーイラストGIF)


追記

引っ越し先のHatenaBlog「たけじいの残日雑記懐古録」の方では、
「設定」→「コメントの許可」→「誰でもコメントを書き投稿出来る」、
に、しています。
先日、HatenaBlogユーザー以外の方に、
テストしていただきましたところ、

特に問題無く、コメントすることが出来るようです。

今のところ、
goo blogが、終了するまで、
古屋、新居、2つのブログを、管理していきたいと
思っております。
昨年までは、夢にも思っていなかった2つのブログ管理、
初体験であり、これも、脳トレの一つ?・・と
決め込んで・・・。


 


葉室麟著 「この君なくば」

2025年04月28日 16時29分03秒 | 読書記

正直な話、つい数年前までは、まるで「読書」の習慣等は無く、まさか、図書館通いする暮らしになるなんて、全く想像もしていなかった爺さんである。
それが、数年前のこと、相互フォロワー登録しているある方から、コメントで、藤沢周平の時代小説ををすすめられ、その気になり、それこそ生まれて初めて、最寄りの図書館に出掛けたのだったが、それがきっかけになり、少-しずつ「読書」の習慣が身に付き始めて、今に至っている。
「読書」の習慣も、やはり、ブログをやっていたからこそ起こった「自分の大きな変化」の一つだと思っている。
ただ、何分、「読書」初心者、作家や作品の情報にも疎く、視力、記憶力、減退、根気力無し、気まぐれな爺さんのこと、これまでのところは、主に、読破し易い、肩が凝らない、「時代小説」に手を伸ばし、読んできたような気がしている。
さらに、読んでも読んでも、そのそばから、表題名も、作者名も、内容も忘れてしまう老脳、読んだことの有る本を、うっかりまた図書館から借りてくるような失態を繰り返さないためにも(最初の内、そんなことが数回有った)、その都度、備忘録として、ブログ・カテゴリー「読書記」に、書き留め置くことにしている次第だ。


図書館から借りていた、葉室麟著、「この君なくば」(朝日新聞出版 )を読み終えた。
本書は、著者が描く、激動の幕末維新を背景に、懸命に生きる男女の清冽な想いを描いた感動長篇時代小説だった。

▢目次
 (一)~(十七)

▢主な登場人物
楠瀬譲(くすせゆずる、幼名=武蔵)・栞(しおり、檜垣鉄斎の娘)・志穂(譲の先妻由里の娘)・鉄太郎・弥生(譲の母親)
檜垣鉄斎(ひがきてっさい、此君堂)・房(栞の母親)、豊後屋嘉右衛門(栞の母方の叔父)
伍代忠継(伍代藩藩主)・五十鈴(杉浦英之進の娘、由里の妹)
佐竹甚内・いち子、
羽賀道世、真木和泉、今井栄、水野正名、
佐倉健吾、高田源兵衛(河上彦斎(げんさい)、人斬彦斎)、大楽源太郎、榎本武揚、大島圭介、
西郷隆盛、大久保一蔵(利通)、木戸孝允、

▢あらすじ等
幕末から明治維新に掛けて、尊王攘夷、佐幕で揺れ動き、国中が混乱する中、著者仮想の九州日向の小藩伍代藩が舞台。
主人公は、軽格の家に生まれた楠瀬譲と、譲の恩師檜垣鉄斎の娘栞。互いに惹かれあう仲であり、蘭学に秀でた譲は、藩主忠継に重用され、密命を受け藩政に携わるが・・、
賢明な藩主忠継を助けるために手となり足となり情報入手に駆け回る譲の活躍する姿が描かれている。実在人物の久留米藩の今井栄との交流の話も大変興味深い。
一方で、栞の前に、譲に想いを寄せる気丈な娘(先妻由里の妹五十鈴)が現れるが・・・。
檜垣鉄斎の私塾「此君堂(しくんどう)」の名は、、「晋書(しんじょ)」王義之伝にある、竹を愛でた言葉の「何ぞ一日も此の君無かるべけんや」からとったもので、「此君」とは竹の異称。
譲が、「先生は、誠に竹がお好きでしたな」とつぶやくと、栞はうなずいて、
「この君なくば、一日もあらじが口癖でしたから」と・・・・。
栞と五十鈴、賢明で美しい二人の女性の生きざまが見事に描かれている。
   やがて、竹林を抜けて譲が近づいてくるのが見えた。
   引き締まった体に洋服がよく似合っていた。
   栞は微笑み、胸の中でつぶやいた。
   ・・・・この君なくば一日もあらじ。


弊ブログの「コメント欄」は、
2025年4月20日をもって、閉じることに致しました。

以後、弊ブログにコメントをお寄せいただく場合は、
引っ越し先ブログ ⇨ 「たけじいの残日雑記懐古控」
上記と同記事の最下段、
「コメントを書く」をクリック、入力、「投稿する」で

お願い申し上げます。

(ネットから拝借フリーイラストGIF)


 


藤原緋沙子著 「雪舞い」

2025年04月19日 11時44分26秒 | 読書記

図書館から借りていた、藤原緋沙子著 「雪舞い」 (祥伝社文庫)を読み終えた。
本書は、著者の長編時代小説、「橋廻り同心・平七郎控・シリーズ」第3弾の作品で、「第一話 道連れ」「第二話 木守柿(きまもりがき)」「第三話 絆」「第四話 雷鳥」の、連作短編4篇が収録されている。

「橋廻り同心・平七郎控・シリーズ」は、江戸北町奉行所の「橋廻り同心(はしまわりどうしん)」となり、北町奉行榊原主計頭忠之(さかきばらかずえのかみただゆき)から、「歩く目安箱」としての特命を受けた立花平七郎が、新人同心平塚秀太、読売屋(瓦版)「一文字屋(いちもんじや)」の女主人おこう、その使用人辰吉、元船宿「おふく」のお抱え船頭源治等と共に、橋にまつわる様々な事件に対して、その事情を探り、絡み合う悪事や謎を解明、愛憎乱れる深い闇を、剣と人情で解決していくという、悲喜こもごもの長編時代小説である。
「橋廻り同心」とは、正式には、「定橋掛の同心」のこと。
「定橋掛(じょうばしがかり)とは、縦横に水路が張り巡らされ、125余の橋が存在した江戸で、その橋や下の川を点検管理をする、南、北奉行所の一部門、南、北奉行所それぞれで、与力一名、同心2名が担当していたのだという。
「橋廻り同心」の仕事も重要な仕事だったはずだが、奉行所内では、十手をかざして華々しく事件捜査をする部門「定町廻り同心」に比して、十手ではなく、木槌を手にして橋桁や欄干等を叩いて回り点検管理する姿は、侮蔑の目で見られ、年老いたり、問題を抱えた、与力、同心が就く、閑職と認識されていたのだという。
生前、「大鷹」と異名をとった「定町廻り同心」の父親の後を継ぎ、北辰一刀流免許皆伝で、かって、「黒鷹」と呼ばれる程、活躍していた平七郎が、曰く、事情が有って、「橋廻り同心」に左遷されてしまうが、持ち前の正義感、人情で、「橋廻り同心」の職掌を越えて、多くの事件を解決していくという痛快物語であり、ヒロインとも言えるおこうとの恋模様が織り込まれた物語である。


読んでも読んでも、そのそばから忘れてしまう老脳。
読んだことの有る本を、うっかりまた借りてくるような失態を繰り返さないためにも、
その都度、備忘録として、ブログ・カテゴリー「読書記」に、書き留め置くことにしている。


「第一話 道連れ」
▢主な登場人物
 阿久津一学(あくついちがく、旗本)・八重、井田(阿久津家用人
 加賀屋与兵衛(小間物屋)、勝三(加賀屋手代)、松吉(加賀屋丁稚)、里絵(平七郎の母親
 お玉(船宿梅よし女将)、おみき、
 おこう(読売屋一文字堂店主)、辰吉、
 おふく、源吉、
▢あらすじ等
 冒頭に、相対死(心中)で生き残った女の晒刑、主従の関係で死罪となる場面が登場する。
 本篇の本筋とは無関係でありながら、返済能力を超えた500両の借金に苦しみ、
 婿養子で正直を通す旗本、阿久津一学の悲劇が、重なってくる物語になっている。

 
「第二話 木守柿」
▢主な登場人物
 上村左馬助(かむむらさまのすけ、道場主)、お妙、
 万蔵(雪駄屋)、お信、
 スズメバチの銀八(岡っ引き)、亀井市之進(定町廻り同心)、工藤豊次郎(定町廻り同心)、
 日野屋長兵衛・おむら・お初、おはま、
 大村虎之助(平七郎の上司)、
▢あらすじ等
 千鳥橋の西詰の袂にある柿の木をめぐって争っていた子供達の仲裁をした平七郎、
 雪駄の鼻緒が切れ、露天の雪駄屋万蔵に直してもらうところから物語が始まるが、
 その万蔵が、高松屋押し込み事件
 関与の疑いで、スズメバチの銀八(岡っ引き)に、連行され・・・。

   紋付袴の長兵衛と女房おむら、そしてその後に、婿を先にしてしずしずと白無垢のお初が
   近づいてくるのが見えた。

   ・・・・あの履き物が・・・・、
   お初は、万蔵がつくった履き物を履いていた。
   ・・・・
   平七郎は、ふっと万蔵のいる辺り、橋の東の袂を見た。
   万蔵は二の腕を目に当てて泣いていた。側でお信が臆面もなく涙を流していた。

   しっかり見ないか、万蔵、お前の娘を・・・、
   平七郎は、心の中で、万蔵に叫んでいた。

「第三話 絆」
▢主な登場人物
 亀次郎(本舗万亀堂主)・お菊
 万太郎(元祖万亀堂主)・お梅、
 与助・おつま・新助、

 三崎常次郎、百蔵、捨蔵、
▢あらすじ等

 東堀留川に架かる思案橋の見回りを終えた平七郎と秀太は、思案橋北側の本舗万亀堂に立ち寄るが、
 思案橋の南側の元祖万亀堂との兄弟の争い問題が抜き差しならないことを知る。
 元祖万亀堂の主、万太郎が拐かされ・・・、
   お梅は、亀次郎に手をついた。
   「やめろ、お梅、他人じゃないんだ」
   亀次郎は、不機嫌な言い方をしたが、照れくささを隠すためだと平七郎には分かった。

「第四話 雷鳥」
▢主な登場人物
 桑山孫左衛門(孫さん、船宿東屋の船頭)・芳野、友田太一郎、
 但馬彦四郎(亀井藩江戸用人、孫左衛門の竹馬の友)、市岡盛之助、
 おまき(船宿勝田屋女将
 省吾・おみよ、
▢あらすじ等
 隅田川の今戸橋の見回りを終えた平七郎と秀太は、橋の下で都鳥にさかんに餌をやっている
 船頭姿の初老の男を見掛け声を掛けたが、その時、「助けて・・、孫さん、お助け下さい」と、
 女が叫びながら走ってきた。 

 一方で、新大橋の上では、父親を捜し歩いているという若い武士、亀井藩の友田太一郎が、
 3人の覆面の武士に襲われ、平四郎が駆けつけたが、左腕を斬られた。
 孫さんとは?、太一郎とは?、
 孫さんは、元々船頭では無く、亀井藩の下級武士桑山孫左衛門、
 国元を追放になった暗い心の闇が有り・・・。

 そのすべての始まりは、市岡盛之助の横恋慕からだったことが明らかになり・・・。
   「あっ、平さん、飛びましたよ」
   秀太が叫んだ。
   白い羽を広げて、都鳥の親子が飛んだ。


(つづく)


藤原緋沙子著 「火の華」

2025年04月17日 11時22分27秒 | 読書記

図書館から借りていた、藤原緋沙子著 「火の華(ひのはな)(祥伝社文庫)を、読み終えた。
本書は、著者の長編時代小説「橋廻り同心・平七郎控・シリーズ」第2弾の作品で、第一話「菊枕」、第二話「蘆火(あしび)」、第三話「忍び花」、第四話「呼子鳥(よぶこどり)」の連作短編4篇が収録されている。
「橋廻り同心・平七郎控・シリーズ」は、江戸北町奉行所の「橋廻り同心(はしまわりどうしん)」となり、北町奉行榊原主計頭忠之(さかきばらかずえのかみただゆき)から、「歩く目安箱」としての特命を受けた立花平七郎が、新人同心平塚秀太、読売屋(瓦版)「一文字屋(いちもんじや)」の女主人おこう、その使用人辰吉、元船宿「おふく」のお抱え船頭源治等と共に、橋にまつわる様々な事件に対して、その事情を探り、絡み合う悪事や謎を解明、愛憎乱れる深い闇を、剣と人情で解決していくという、悲喜こもごもの長編時代小説である。
「橋廻り同心」とは、正式には、「定橋掛の同心」のこと。
「定橋掛(じょうばしがかり)」とは、
縦横に水路が張り巡らされ、125余の橋が存在した江戸で、その橋や下の川を点検管理をする、南、北奉行所の一部門、南、北奉行所それぞれで、与力一名、同心2名が担当していたのだという。
「橋廻り同心」の仕事も重要な仕事だったはずだが、奉行所内では、十手をかざして華々しく事件捜査をする部門「定町廻り同心」に比して、十手ではなく、木槌を手にして橋桁や欄干等を叩いて回り点検管理する姿は、侮蔑の目で見られ、年老いたり、問題を抱えた、与力、同心が就く、閑職と認識されていたのだという。
生前、「大鷹」と異名をとった「定町廻り同心」の父親の後を継ぎ、北辰一刀流免許皆伝で、かって、「黒鷹」と呼ばれる程、活躍していた平七郎が、曰く、事情が有って、「橋廻り同心」に左遷されてしまうが、持ち前の正義感、人情で、「橋廻り同心」の職掌を越えて、多くの事件を解決していくという痛快物語であり、ヒロインとも言えるおこうとの恋模様が織り込まれた物語である。


読んでも読んでも、そのそばから忘れてしまう老脳。
読んだことの有る本を、うっかりまた借りてくるような失態を繰り返さないためにも、
その都度、備忘録として、ブログ・カテゴリー「読書記」に、書き留め置くことにしている。


「第一話 菊枕」
▢主な登場人物
 おみの(美野、油問屋「河内屋」の娘・養女)・宗次郎(おみのの義兄)
 おまき(河内屋の女中)、吾助(河内屋の下男)
 八田力蔵(臨時定町町廻り同心)・登美(力蔵の娘)・多喜(力蔵の母親)
 妻八(力蔵の配下、岡っ引き)・およし(妻八の女房、飲み屋「よしの」の女将)
 仁兵衛(古着屋「利倉屋」の主)、弥市、
 珍念(小坊主、10歳)
▢あらすじ等
 楓川に架かる弾正橋の修繕打ち合わせを終えた平七郎、秀太は、小坊主珍念の托鉢にお布施する
 美貌の女に注目する。
橋の袂の昔油問屋だった「河内屋」の主おみのだったが・・・・。
 一方で、平七郎は、榊原奉行から、臨時定町廻り同心八田力蔵の不審な動向の真相を内密に探索
 するよう命じられ・・・。力蔵が、弥市殺しに関与?、下手人が自主?、珍念が目撃?
 力蔵の娘登美の、生き別れになった母への切ない慕情、心の荒み、父親への不信・・・、
   登美が風呂敷包みを抱き締めて、橋を渡ってきた。
   何度も後ろを振り返っておみのの姿を確かめては渡って来る。
   菊の香がほのかの残った。

   「珍念、おみのさんが河内屋にいなくなったら寂しいな」
   「寂しくないや・・・」
   そう言うと、廃寺に向かって駆けていった。
   平七郎は、色あせた墨染めの小さな姿が、遠くなるのを見詰めた。

「第二話 蘆火」
▢主な登場人物
 和助、桔梗、
 矢次郎(鬼烏、おにがらす)
 九兵衛(千住宿旅籠「武蔵屋」の主)
 喜平(材木問屋「相模屋」の番頭)、勘八(相模屋お抱え大工)
 利八(呉服屋「伊勢屋」の番頭)
▢あらすじ等
 野分(台風)で、江戸の北の玄関口千住大橋が被害、渡船も禁止で、旅人は足止めとなり、
 平七郎、秀太が、国元大田原に強引に帰ろうとしている一組の男女和助、桔梗と出会う。
 その二人、下流の大川橋で水死体で発見されるが、定町廻り同心達は、検視もせず、
 心中として処理。殺し事件の疑い濃厚、納得出来ない平七郎、秀太、おこう、辰吉、源治と共に
 探索、真相究明に乗り出す。
  「やめろ、やめてくれ」・・・・。
  「許せぬ」
  平七郎の拳が飛んだ。・・・・・、
  ふっと、平七郎の胸に蘆火が上がった。怒りの火のように思えたがそうではなかった。
  和助と桔梗を送る切ない炎だった。
  平七郎は、月夜に浮かぶ千住の橋のその先にある奥州路に思いを馳せた。

「第三話 忍び花」
▢主な登場人物
 おそで(海苔乾物屋「日吉屋」の娘)・勘太(おそでの弟)
 佐七(心天流免許皆伝)
 彦六、為次郎(紙屋「大和屋」の次男坊)
 小野寺左京(旗本一千五百石)・千之助(左京の嫡男)
 おくま(桶川淑飯屋「さとむら」女将)・おその(おくまの娘)
 一色弥太郎(北町奉行所筆頭与力)
▢あらすじ等
 野良犬に襲われた男の子勘太を助けた男とは?、
 彦六、為次郎殺害の下手人は?、共に、首の骨が砕けており、曼殊沙華が?、
 一方で、平七郎は、与力一色の口利きで、旗本の嫡男千之助の用心棒を命じられ、不審感?、
 辰吉が中山道桶川宿へ急行、探索。真相が明らかに・・・。
 許嫁を殺害された男の無念、復讐劇、哀れな結末に・・・。
  その日、おそでは、ずっと和泉橋で佐七を待っていたとおこうから聞いた平七郎。
  その時のおそでの姿を思い出すたびに、切ない思いに襲われ、同時に自分の無力を
  腹立たしく、
この空しさから当分免れることは出来まい・・・。
  平七郎は深い溜め息をついた。

「第四話 呼子鳥」
▢主な登場人物
 おとみ(醤油問屋「上総屋」忠兵衛の女房)・蔵之助、文七、友吉、
 金蔵・おてる、
 黒田半右衛門・久栄・順之助、壷井、
 木島宗海(木島金之助)、直次郎、時蔵、笠井、庄太郎、
 徳太郎(薪炭問屋「飯田屋」の主)
▢あらすじ等
 「子捨て塾」等と呼ばれる「論学堂」を脱出した文七と順之助、
 旗本の順之助は殺害されてしまい、表沙汰にされず、うやむやに・・・。
 文七は行方をくらまし・・・。何故、不可解、
 平七郎、秀太、おこう、辰吉が、下手人を探索。真相が明らかに・・。
 蔵之助は、稲荷橋の袂で文七に鑿で襲われるが・・・。
 義父蔵之助と文七の絆を結び直す平七郎。
   文七の肩をポンと叩いて踵を返した平七郎を、文七はまた、「あのー・・・」と呼び止めた。
   「でも、このこと、親父にはけっして言わないで下さい・・・・」
   文七は、子供らしい悪戯っぽい眼を向けた。


藤原緋沙子著の「橋廻り同心・平七郎控・シリーズ」は、
現時点で、11巻まで発刊されているようであり、
引き続き、読んでみたくなっているところだ。

(つづく)

コメント (1)

藤原緋沙子著 「恋椿」

2025年04月15日 13時24分28秒 | 読書記

図書館から借りていた、藤原緋沙子著 「恋椿」(祥伝社文庫)を、読み終えた。
本書は、著者の長編時代小説「橋廻り同心・平七郎控・シリーズ」第1弾の作品で、第一話「桜散る」、第二話「迷子札」、第三話「闇の風」、第四話「朝霧」の連作短編4篇が収録されている。
「橋廻り同心・平七郎控・シリーズ」は、江戸北町奉行所の「橋廻り同心(はしまわりどうしん)」となり、北町奉行榊原主計頭忠之(さかきばらかずえのかみただゆき)から、「歩く目安箱」としての特命を受けた立花平七郎が、新人同心平塚秀太、読売屋(瓦版)「一文字屋(いちもんじや)」の女主人おこう、その使用人辰吉、元船宿「おふく」のお抱え船頭源治等と共に、橋にまつわる様々な事件に対して、その事情を探り、絡み合う悪事や謎を解明、愛憎乱れる深い闇を、剣と人情で解決していくという、悲喜こもごもの長編時代小説である。
「橋廻り同心」とは、正式には、「定橋掛の同心」のこと。
「定橋掛(じょうばしがかり)とは、
縦横に水路が張り巡らされ、125余の橋が存在した江戸で、その橋や下の川を点検管理をする、南、北奉行所の一部門、南、北奉行所それぞれで、与力一名、同心2名が担当していたのだという。
「橋廻り同心」の仕事も重要な仕事のはずだったはずが、奉行所内では、十手をかざして華々しく事件捜査をする部門「定町廻り同心」に比して、十手ではなく、木槌を手にして橋桁や欄干等を叩いて回り点検管理する姿は、侮蔑の目で見られ、年老いたり、問題を抱えた、与力、同心が就く、閑職と認識されていたのだという。
生前、「大鷹」と異名をとった「定町廻り同心」の父親の後を継ぎ、北辰一刀流免許皆伝で、かって、「黒鷹」と呼ばれる程、活躍していた平七郎が、曰く、事情が有って、「橋廻り同心」に左遷されてしまうが、持ち前の正義感、人情で、「橋廻り同心」の職掌を越えて、多くの事件を解決していくという痛快物語であり、ヒロインとも言えるおこうとの恋模様が織り込まれた物語である。


読んでも読んでも、そのそばから忘れてしまう老脳。
読んだことの有る本を、うっかりまた借りてくるような失態を繰り返さないためにも、
その都度、備忘録として、ブログ・カテゴリー「読書記」に、書き留め置くことにしている。


「第一話 桜散る」
▢主な登場人物
 立花平七郎(たちばなへいしちろう、北町奉行所橋廻り同心、28歳、主人公、北辰一刀流免許皆伝)
 里絵(平七郎の継母、40歳半ば)
 平塚秀太(ひらつかしゅうた、北町奉行所橋廻り同心、23歳、深川の材木商「相模屋」の三男坊、仕事熱心、
 几帳面、記録魔)

 大村虎之助(北町奉行所定橋掛与力、60歳過ぎ、平四郎、秀太の上司)
 一色弥太郎(いっしきやたろう、北町奉行所吟味方筆頭与力、元平四郎の上司)
 榊原主計頭忠之(さかきばらかずえのかみただゆき、北町奉行)、内藤孫十郎(榊原奉行の内与力)
 おこう(読売屋(瓦版)「一文字屋」の女主人、本作のヒロイン)、辰吉(「一文字屋」の使用人)
 おふく(永代橋西詰の船宿「おふく」の女将)、源治(元船宿「おふく」のお抱え船頭)
 上村左馬助(平七郎と剣術の同門、北辰一刀流千葉道場の三羽烏の一人)
 おちせ(足袋屋「京福屋」の娘)・徳右衛門(おとせの父親)
 奥村鉄之進(旗本の次男坊)、奥村太一郎(鉄之進の兄)
 九鬼縫之助、
 おみつ(小料理屋「水月」の仲居)
▢あらすじ等
 親父橋点検で異常有り、橋管理者の大阪屋に厳しい態度をとる秀太をなだめた平七郎、
 直後、「何、死人だと」・・・、川べりに死体。番屋に運ぶが・・・、
 定町廻り同心達からは余計なことに首を突っ込むなと追い払われる。
 死人の名はおみつ、殺しに疑い有り。男に騙されていたのではないか?
 定橋掛上司大村虎之助からは、「見ざる、言わざる、聞かざる」と通せと言い渡されている
 平七郎、秀太ではあるが、納得いかず、探索開始。
 一方、永代橋で、愛しい男を待って橋の袂に佇む美貌な女おちせの姿。
 男たちに襲われ、平七郎が助けるが・・・。
 待ち人は奥村鉄之進?、平七郎、秀太が探索開始。
 おみつ殺害事件とおちせの相手探索から、浮上した男、九鬼縫之助とは?
   「九鬼縫之助、兄の敵、尋常に勝負しろ」
   「おとせ殿が、・・・、身投げを・・・」
   「許せぬ」

「第二話 迷子札」
▢主な登場人物
 音蔵(まむしの音次郎)・おつや・初太郎(瀬戸物屋日吉屋主)
 おきよ・おたま、
 千成益五郎、粂蔵、彦助、
 一色弥太郎(北町奉行所吟味方筆頭与力)
▢あらすじ等
 秀太の案で、一石橋(いっこくばし)の南詰に「御知らせ柱」を立てたが、
 毎日、「まいごおたずね」の張り紙をしにきている老人がおり・・・。
 平七郎、秀太が声を掛ける。病い持ちの一人暮らし、名は、音蔵?。
   「まいごおたずね、もと大工町じんろく店(だな)。おきよむすめおたま五歳」
 生きる希望を与えてくれた、同じ長屋に住む母子おきよ、おたまのために、
 音蔵が、命をなげうつ物語。
 音蔵の素性は?、「音蔵を死なせてはならぬ・・・」
   音蔵、お前が作ったおたまの迷子札、今もおたまの胸で揺れているぞ。

「第三話 闇の風」
▢主な登場人物
 仙吉・おまつ

 幸吉(京菓子屋「浪速屋」主、仙吉、おまつと幼馴染)
 岩五郎(鬼瓦職人親方)、竜次
 友蔵、
 忠兵衛(廻船問屋「武蔵屋」主)
▢あらすじ等

 紀伊国橋の点家を終えた平七郎は、見覚えの有る女の後ろ姿に釘付けになる。
 それは、島送りになった夫仙吉のために春をひさぐおまつだった。何故だ?。
   「暮六ツ、きのくにはし、五両」
 騙され続けてきたおまつ、
   「幸吉、おまつを頼むぞ」
 平七郎は、二人を残し、秀太と紀伊国橋を後にした。


「第四話 朝霧」
▢主な登場人物
 島岡甚左衛門(陸奥上松藩勘定方組頭)・妙(たえ、甚左衛門の娘)
 棚橋玄蕃(たなはしげんば、陸奥上松藩勘定奉行)、土肥守昌(どいもりまさ、陸奥上松藩江戸家老)
 格助(橋本格之進)・おしの(志乃)

 上村左馬助(かみむらさまのすけ)、内藤孫十郎(北町奉行榊原主計頭忠之の内与力)
▢あらすじ等
 平四郎、秀太は、元柳橋の袂で屋台を構えて団子を売っていた訳け有り夫婦の姿が無いことが
 気掛かりとなり、聞き込み開始、
 一方、両国橋で、父親甚左衛門の敵討ち一途に走る妙と出会い・・・、
 仇と追われながらも清冽な愛を貫く格之進、志乃とは・、
  「これで、いい・・・志乃が・・・待っている・・・」
  「ああ・・・・」
  妙はそこに泣き崩れた。
 真に憎むべきは、勘定奉行?、平七郎は、上松藩江戸上屋敷へ乗り込み・・・、
 平四郎は、奉行榊原主計頭忠之に呼び出され・・・、
  お奉行はなにもかも、ご存じか・・・、
  「励めよ平四郎・・・、弱い者たちのために励んでくれ」
  平四郎は、深々頭を下げた。


藤原緋沙子著の「橋廻り同心・平七郎控・シリーズ」は、
現時点で、11巻まで発刊されているようであり、
引き続き、読んでみたくなっているところだ。

(つづく)




コメント (1)

藤原緋沙子著 「永代橋」

2025年04月10日 20時36分18秒 | 読書記

図書館から借りていた、藤原緋沙子著 「永代橋」(光文社文庫)を、読み終えた。
本書は、著者の長編時代小説、「隅田川御用帳(すみだがわごようちょう)シリーズ」完結の後に続く新シリーズ「隅田川御用日記(ごようにっき)シリーズ」第2弾の作品で、「第一話 永代橋」「第二話 米屋の女房」の、連作短編2篇が収録されている。

「隅田川御用帳シリーズ」は、縁切り寺「慶光寺」の御用宿「橘屋」の女主人お登勢(おとせ)に雇われた、元築山藩藩士の浪人塙十四郎(はなわじゅうしろう)が、「慶光寺」の寺役人近藤金吾や、橘屋の番頭藤七(とうしち)等と共に、縁切りを求めて「橘屋」に駆け込んでくるいろいろな女達の様々な事情を探り、絡み合う悪事や謎を解明、愛憎乱れる 女と男の深い闇を、人情と剣とで見事に解決していく、悲喜こもごもの物語だったが、「隅田川御用日記シリーズ」は、十四郎とお登勢が結婚し、十四郎は橘屋の主となり、前シリーズと同様、駆け込み事案解決に心血を注ぐ一方で、楽翁に目をかけられ白河藩の藩士でもあり、白河藩お抱え道場「一心館」の道場主として、さらに、楽翁(元老中首座松平定信)の側近としての立場もあって、多忙な日々を送り、前シリーズから5年が経過したところから始まっている。
主な登場人物に大きな変化はないが、それぞれが成長したり、新しく加わったりして、回り舞台が一回転したごとくの新鮮さが感じられる。


読んでも読んでも、そのそばから忘れてしまう老脳。
読んだことの有る本を、うっかりまた借りてくるような失態を繰り返さないためにも、
その都度、備忘録として、ブログ・カテゴリー「読書記」に、書き留め置くことにしている。


「第一話 永代橋」(表題作)
▢目次
  (一)~(十一)
▢主な登場人物
 おかね(大和屋宗兵衛の内儀)・大和屋宗兵衛(上方の酒問屋)
 おとよ(豊次)・おいと、
 おなつ、吾一(長次郎)
 鎮目道之進(北町奉行所同心)、達蔵(岡っ引き)
 遠州屋喜兵衛、
 まむしの法雲
▢あらすじ等
 縁切り寺「慶光寺」の御用宿「橘屋」に、上方から出てきた酒問屋大和屋宗兵衛の内儀おかねが
 駆け込んできた。離縁を望む理由とは?
 一方、その翌日、橘屋の主・塙十四郎は、永代寺門前町で絡まれていた若い女
 おなつを救うが、おなつは、下総から江戸に出てきて、つてもあても無し、金も無し、
 想い人吾一を探し回っていることが分かり、橘屋に連れてくる。

 同心の鎮目道之進が、押し込み強盗法雲一味探索中に襲われて瀕死の重傷を負い・・・、
 3件、4件の事件が重なり合い、絡まり合い・・・、
 十四郎、藤七、七之助、鶴吉、万吉、橘屋総動員で探索、活躍、奉行所の仕事に加勢・・・、
   「法雲だな、悪あがきは止せ!」
   法雲一味の処罰が決まり・・・、
   おなつは、お登勢と一緒に、石川島に送られる吾一を見送り、
   「吾一さんが御赦免になる日を待っています」

   「ほんまに、これでほっとして大坂に戻れます」
   おかねは、自分が離縁を望んで駆け込んできたことなどすっかり忘れているようだ。
 
「第二話 米屋の女房」
▢目次
 (一)~(十)
▢主な登場人物
 おみさ(新兵衛の後妻、美冴)・新兵衛(米屋神田屋主)・仙太郎(新兵衛の先妻の子)
 おきの(新兵衛の母親・おみさの姑)

 永井市之進(美冴の長兄)、永井圭次郎(美冴の次兄)
 宗拓(山崎郡兵衛)
 鎮目道之進(北町奉行所定町廻り同心)、達蔵(岡っ引き)、
 野江(佐久間藩奥女中)
 おはな(かりんとう売り、老婆)、おれん(万字屋)
▢あらすじ等
 米屋「神田屋」の内儀おみさが、夫新兵衛と離縁したいと橘屋に駆け込んできたが、
 その理由が判然とせず・・・・、何か隠している?。
 おみさが、元武家の娘で、長兄、次兄の敵討ちをするために、離縁を覚悟したことが
 分かり、その真相解明に、十四郎、藤七、七之助、鶴吉、万吉、橘屋総出で探索。
 一方で、小間物屋八兵衛殺し事件発生、その下手人は?、
 北町奉行所の捜査と連携、
怪しげな祈祷師宗拓とは?
   おみさは泣き崩れる。
   「おみささん、これでいいんだ。兄上二人が喜ぶのは、敵を討つことじゃない。
   そなたが幸せに暮らすことだ。

   十四郎は、おみさの肩に手を遣った。


(追記)

藤原緋沙子著、「隅田川御用日記シリーズ」は、
今後まだまだ続くと思われるが、
2025年4月の時点では、
上記、第2弾「永代橋」までが、刊行されているようで、
第3弾以降の刊行が待たれる。


 


藤原緋沙子著 「雁もどる」

2025年03月31日 14時24分38秒 | 読書記

図書館から借りていた、藤原緋沙子著 「雁(かり)もどる」(光文社文庫)を、読み終えた。
本書は、著者の長編時代小説、「隅田川御用帳(すみだがわごようちょう)シリーズ」完結の後に続く新シリーズ「隅田川御用日記(ごようにっき)シリーズ」第1弾の作品で、「第一話 五年目の秋」「第二話 雁もどる」の、連作短編2篇が収録されている。

「隅田川御用帳シリーズ」は、縁切り寺「慶光寺」の御用宿「橘屋」の女主人お登勢(おとせ)に雇われた、元築山藩藩士の浪人塙十四郎(はなわじゅうしろう)が、「慶光寺」の寺役人近藤金吾や、橘屋の番頭藤七(とうしち)等と共に、縁切りを求めて「橘屋」に駆け込んでくるいろいろな女達の様々な事情を探り、絡み合う悪事や謎を解明、愛憎乱れる 女と男の深い闇を、人情と剣とで見事に解決していく、悲喜こもごもの物語だったが、「隅田川御用日記シリーズ」は、十四郎とお登勢が結婚し、十四郎は橘屋の主となり、前シリーズと同様、駆け込み事案解決に心血を注ぐ一方で、楽翁に目をかけられ白河藩の藩士でもあり、白河藩お抱え道場「一心館」の道場主として、さらに、楽翁(元老中首座松平定信)の側近としての立場もあって、多忙な日々を送り、前シリーズから5年が経過したところから始まっている。
主な登場人物に大きな変化はないが、それぞれが成長したり、新しく加わったりして、回り舞台が一回転したごとくの新鮮さが感じられる。


読んでも読んでも、そのそばから忘れてしまう老脳。
読んだことの有る本を、うっかりまた借りてくるような失態を繰り返さないためにも、
その都度、備忘録として、ブログ・カテゴリー「読書記」に、書き留め置くことにしている。


「第一話 五年目の秋」
▢目次
 (一)~(十一)
▢主な登場人物
 工藤鹿之助(元松倉藩藩士)・美帆(元築山藩賄い方瀬野作左衛門の娘)
 浪川玄蕃(松倉藩国元中老)、八代内蔵助(松倉藩江戸家老)
 常吉・おとよ、イノ(伊之助)
 お幸(おさち、十四郎・お登勢の娘)
 藤七(とうしち、橘屋番頭)、七之助(橘屋手代、岡っ引き文吉の倅)、鶴吉(橘屋手代)、万吉(17歳)
 おたか(橘屋仲居頭)、お民(橘屋女中、25歳)、お松(三ツ屋仲居頭)
 れん(よみうり万字堂店主)
 古賀小一郎(白河藩藩士)、梅之助(八百屋松屋の倅)、大内彦左衛門(一心館用人)
 鎮目道之進(しずめみちのしん、定町町廻り同心)、達蔵(岡っ引き)
▢あらすじ等
 縁切寺「慶光寺」の御用宿「橘屋」に、浪人工藤鹿之助の妻・美帆が、夫が悪に手を染めて
 おり、吐いてはならぬ一言を放ったことで離縁したいと駆け込んできたが、面談した瞬間、
 橘屋の主である十四郎と美帆は、お互いに驚きの声を発してしまう。
 美帆は、十四郎がかって仕えていて、お家断絶となった築山藩の賄い方の娘で、顔見知り
 だったのだ。

 さっそく、鹿之助の行状探索を開始する橘屋の面々、前シリーズとは異なり、
 すっかり成長した七之助、鶴吉、万吉も加わり活躍、連携プレーを発揮、
 十四郎、藤七にとっては、力強いメンバーが揃ってきた。

   美帆は、慶光寺の寺務所にいた近藤金五に礼を述べると、鹿之助と橘屋を後にした。
   十四郎とお登勢は、二人の背を見送りながら、秋の雨が去ったあとの、清々しい道に、
   二人の幸せな未来を見ていた。


「第二話 雁もどる」
▢目次
 (一)~(十)
▢主な登場人物
 半兵衛・おこん・おはる・おきた、
 丹兵衛、
 多岐蔵、桑名健吾(南町奉行所定町廻り同心)、喜之助(岡っ引き)
 柳庵、
▢あらすじ等
 まだお登勢が御用宿「橘屋」の仕事をし始める前の8年前に、姑が原因で離縁し、慶光寺で
 修行、三ツ屋で働いていたことが有るおこん、見事に自立、蕎麦屋の女将となったが、
 大きな悩み事を抱え込んでいると知ったお登勢、十四郎が、その原因や事情の探索に
 乗り出す。
 人の心は複雑、一筋縄ではいかない・・・。離縁してお終い・・・、では無かった。
 元の亭主半兵衛は?、娘おはるは?、離縁から始まった家庭崩壊とは・・、
  「何言ってんだ。みんな家族のようなもんじゃねえか」
  「これからだよ、半兵衛さん」
  「一緒に頑張ろうよ」
  長屋の者たちが口々に言って半兵衛に歩み寄る。
  「すまねえ、すまねえ・・・・」
  「おとっつぁん、おかえり・・・」
  「おはる・・・・」
  「あたし、今日からここに住むと決めたから・・・・」


 


葉室麟著 「影踏み鬼」

2025年03月23日 21時03分42秒 | 読書記

図書館から借りていた、葉室麟著 新選組 篠原泰之進 日録 「影踏み(かげふみおに)」(文芸春秋)を読み終えた。本書は、伊東甲子太郎(いとうかしたろうを慕い新撰組に入隊した、久留米藩脱藩士、篠原泰之進(しのはらたいのしんの目を通じて見た新撰組の隆盛と凋落、幕末の動乱を生き抜いた篠原泰之進の疾風怒濤の半生を描いた長編時代小説だった。


読んでも読んでも、そのそばから忘れてしまう老脳。
読んだことの有る本を、うっかりまた借りてくるような失態を繰り返さないためにも、
その都度、備忘録として、ブログ・カテゴリー「読書記」に、書き留め置くことにしている。


▢目次
 (一)~(二十三)

▢主な登場人物
 篠原泰之進(秦林親(はたしげちか))・チマ、
 萩野(はぎの)・松之助(篠原庄太郎
 伊藤甲子太郎、
 相良総三、鈴木
 近藤勇(新選組局長)、土方歳三(新選組副長)、
 沖田総司(新撰組一番隊長)、永倉新八(新撰組二番隊長)、斎藤一(新撰組三番隊長藤田五郎)、
 松原忠司(新撰組四番隊長)、武田観柳斎(新選組五番隊長)、井上源三郎(新選組六番隊長)、
 谷三十郎(新選組七番隊長)、原田左之助(新選組八番隊長)、山南敬助、
 坂本龍馬・おりょう、中岡慎太郎、後藤象二郎、大久保一蔵(利通)、西郷隆盛、
 藤田和三郎(三井両替店
 徳川家茂、徳川慶喜、
 孝明天皇、睦仁親王(明治天皇)、岩倉具視、

▢あらすじ等
 「新撰組」を描いた時代小説の類は、多分、数え切れない程有るに違いないと
 思われるが、概して、近藤勇、土方歳三、沖田総司、斎藤一、等を主役にする
 作品が多いような気がする。
 本書は、ややマイナーな感じのする「篠原泰之進」という男を中心に据えて、
 彼の視点から見た「新撰組」を描いた作品になっている。
 さらに、抒情性が満ち満ちている時代小説が多い葉室麟の作品にあって、
 本書はやや趣が異にしており、「新選組」を、殺人集団として捉え、
 近藤勇も、土方歳三も、斎藤一も、永倉信八も、新撰組幹部おのおのが
 殺戮者として描かれ、非情、凄惨なシーンが目立つ作品になっている。
 生きている限り、人は何事かをなすことができる。
 本書では、斉藤一だけが、篠原泰之進と心を通じる男として描かれており、
 二人共、明治維新という激動の時代を潜り抜け、明治の世まで生き抜いている。
   二十余年の歳月が過ぎた。
   明治二十五年四月・・・、
   (中略)
   泰之進が物珍しげに歩いていると
   「これは珍しいひとがいる」
   と背後から男の声がした。
   振り向くと、着物姿の眼光が鋭く痩せた壮年の男が立っている。
   「斎藤一、生きていたのか」
   泰之進はぼう然として言った。
 篠原泰之進の妻となり、維新動乱中、別れ別れになってしまう「萩野」という
 女性について、著者は、殺戮集団である「新撰組」の中に有って、篠原が
 「自分を失わないでいられた」のは、「ある意味では、萩野という女性の存在が
 あったからこそであり」「萩野、松之助との家庭があったからこそ、
 バランスがとれて」、 生き抜いたのだと、述べていたそうだ。
 その「萩野」と「松之助」は、最終章にまで登場する。
 こうした実在の女性を描くことによって、英雄である土方歳三とは異なる、
 普通の人である篠原泰之進を描こうとしたようだ。
  ・・・・・あいらぶきゅう、
  (中略)
  泰之進は鬼となって追いかけねばならない影が消えていくのを見た。

コメント (2)

藤原緋沙子著 「秋の蟬」

2025年03月14日 16時04分02秒 | 読書記

図書館から借りていた、藤原緋沙子著 「秋の蟬(あきのせみ)」(廣済堂文庫)を、読み終えた。
本書は、著者の長編時代小説、「隅田川御用帳(すみだがわごようちょう)シリーズ」第18弾(シリーズ最終巻)の作品で、「第一話 ほととぎす」「第二話 秋の蟬」の、連作短編2篇が収録されている。
「隅田川御用帳シリーズ」は、縁切り寺「慶光寺」の御用宿「橘屋」の女主人お登勢(おとせに雇われた、元築山藩藩士の浪人塙十四郎(はなわじゅうしろうが、「慶光寺」の寺役人近藤金吾や、橘屋の番頭藤七(とうしち等と共に、縁切りを求めて「橘屋」に駆け込んでくるいろいろな女達の様々な事情を探り、絡み合う悪事や謎を解明、愛憎乱れる 女と男の深い闇を、人情と剣とで見事に解決していく、悲喜こもごもの物語である。


読んでも読んでも、そのそばから忘れてしまう老脳。
読んだことの有る本を、うっかりまた借りてくるような失態を繰り返さないためにも、
その都度、備忘録として、ブログ・カテゴリー「読書記」に、書き留め置くことにしている。


                  

「第一話 ほととぎす」
▢目次
 (一)~(九)
▢主な登場人物
 島田禎次郎・加奈・おいわ、
 斉藤兵庫(本)・八江、おちよ、神崎十兵衛・神崎敬四郎、
 お民、万吉、
 お花(丹後屋の娘)伝蔵(口入屋
▢あらすじ等
 楽翁(元老中首座松平定信)の命で越後へ出張、難事件を解決して江戸に戻り、
 お登勢と一緒になってから6ケ月経った十四郎は、充実感をひしひしと感じていたが・・。

 たまたま渡り掛けた中ノ橋で身投げしようとしていた島田加奈を助け、
 橘屋に連れてきて、事情を訊くと・・・・、

 元々は、旗本島田家の姫?,姑おいわの嫁いびり?、「嵌められた?」
   「私をお寺に入れて下さい。お願いします」
 女中のお民が旗本斎藤家の屋敷へ出掛け、女中頭おたかに叱りつけられるが、
 謎解きの糸口が・・・・、

   読経が止み春月尼が捧げた小刀で加奈は髪を落とした。
   万寿院が加奈に数珠を授ける。
   「精進するように・・・」
   加奈は改めて、残っていた十四郎やお登勢たちに、深々と頭を下げた。
   敬四郎が、「ご健勝をお祈りしております」と言ったその時、
   「キョッ、キョッ、キョ、キョ、キョ、キョ」
   ほととぎすの鳴き声が聞こえてきた。
   加奈は、敬四郎を見た。敬四郎が頷いた。

「第二話 秋の蟬」
▢目次
 (一)~(九)
▢主な登場人物
 紀州屋喜兵衛・おてい(喜兵衛の先妻)・扇太郎(喜兵衛・おていの倅)・おたき(喜兵衛の母親)、
 治助(紀州屋番頭)、おみな(紀州屋女中)、

 おきよ(喜兵衛の後妻)・吉次郎(喜兵衛・おきよの倅)、
 力蔵(岡っ引き)、世之介、
 猫目の宇兵衛(与兵衛)、
 万吉、
▢あらすじ等
 醤油問屋紀州屋の番頭治助が、橘屋にやってきて、10年前に橘屋に駆け込み、離縁した、
 紀州屋主喜兵衛の内儀おきよを捜してほしいと懇願され、困惑するお登勢だったが・・。
 橘屋総出で、行方不明になっているおきよの足取りをたどり、捜索、
 ようやく捜し当てたおきよは悪行に利用され窮地に陥っており、悪党を一気に捕縛するため、
 北町奉行所与力松波孫一郎配下の捕り方、十四郎、金吾、千草、藤七、七之助、亀吉、等々、
 本書の主な登場人物すべてが「紀州屋」に集結。十四郎の剣も唸り・・・・。

  「御用だ!、御用だ!、神妙にしろ!」
    慶光寺にやってきた楽翁に呼び出された十四郎とお登勢に、万寿院が言う。
  「良い知らせですよ。十四郎殿」、
   十四郎は、俯いたまま涙を流していた。・・・・お登勢・・・・・。
 感涙の最終巻である。

(完)


▢あとがき・藤原緋沙子
 2002年12月に第1巻「雁の宿」を出版してから16年、本編18巻「秋の蟬」で、
 この物語は完結といたします。

 思えばこの「隅田川御用帳」は、私にとって意義深い作品となりました。
 小説家としての処女作が、この「隅田川御用帳」の「雁の宿」でした。

 (中略)
 「隅田川御用帳」では、かなり辛辣に、歯に衣着せぬ言葉を夫婦双方がぶつけ合って
 いますが・・・・・・、決して離縁を促す本ではありません(笑)。

 ・・・・・・。
 私もここで離縁話から卒業します。新たな一歩を他の作品に書き綴ることにしました。
 ・・・・・・。


著者・藤原緋沙子 プロフィール


1947年、高知県生まれ、本名・藤原千津子、
2001年、立命館大学文学部史学科を卒業、
小松左京が主宰する創翔塾で学び、脚本家を経て、
2002年、「隅田川御用帳シリーズ」の第一巻「雁の宿」で小説家デビュー。
同シリーズで、2013年第二回歴史時代小説作家クラブのシリーズ賞を受賞。
人情時代小説の名手として、リアリティあふれる物語空間の創出、
意外性に満ちたストーリー、魅力的な人物造形などが高く評価されている。
文庫書下ろし時代小説で絶大な人気を得る。

主な作品に、「茶筅の旗」「番神の梅」「龍の袖」等、
また代表的なシリーズに、「藍染袴お匙帖」「隅田川御用帳」
「橋廻り同心・平七郎控」「見届け人秋月伊織事件帖」「浄瑠璃長屋春秋記」
「渡り用人片桐弦一郎控」「人情江戸彩時記」「千成屋お吟」
「切り絵図屋清七」「秘め事おたつ」「へんろ宿」等がある。


ブログ・カテゴリー「読書記」
隅田川御用帳シリーズ」     
            ブログ記事

  1  雁の宿   ⇨ 2024.04.26
  2  花の闇   ⇨ 2024.05.12
  3  蛍籠    ⇨ 2024.05.21
  4  宵しぐれ  ⇨ 2024.06.05
  5  おぼろ舟  ⇨ 2024.06.17
  6  冬桜    ⇨ 2024.06.30
  7  春雷    ⇨ 2024.08.05
  8  夏の霧   ⇨ 2024.08.30
  9  紅椿    ⇨ 2024.09.08
10  風蘭    ⇨ 2024.09.20
11  雪見船   ⇨ 2024.12.14
12  鹿鳴の声  ⇨ 2024.12.16
13  さくら道  ⇨ 2025.01.05
14  日の名残り ⇨ 2025.01.20
15  鳴き砂   ⇨ 2025.01.29
16  花野    ⇨ 2025.02.20
17  寒梅    ⇨ 2025.03.08
18  秋の蟬   ⇨ 2025.03.14


「隅田川御用帳シリーズ」は、全18巻で完結となったが、
すでに、その続編として、「隅田川御用日記シリーズ」が、発刊されており、
引き続き、読んでみたいと思っているところだ。
浪人、用心棒の身分から、白河藩藩士となり、橘屋の主となった十四郎、
お登勢と共に、果たして、どのような物語仕立てになっていくのだろうか。