たけじいの気まぐれブログ

記憶力減退爺さんの日記風備忘雑記録&フォト

藤原緋沙子著 「風蘭」

2024年09月20日 17時56分56秒 | 読書記

図書館から借りていた、藤原緋沙子著 「風蘭(ふうらん)」(廣済堂文庫)を、読み終えた。
本書は、著者の長編時代小説、「隅田川御用帳(すみだがわごようちょう)シリーズ」第10弾の作品で、「第一話 羽根の実」「第二話 龍の涙」「第三話 紅紐」「第四話 雨の萩」の連作短編4篇が収録されている。
「隅田川御用帳シリーズ」は、縁切り寺「慶光寺」の御用宿「橘屋」の女主人お登勢(おとせ)に雇われた、元築山藩藩士の浪人塙十四郎(はなわじゅうしろう)が、「慶光寺」の寺役人近藤金吾や、橘屋の番頭藤七等と共に、縁切りを求めて「橘屋」に駆け込んでくるいろいろな女達の様々な事情を探り、絡み合う悪事や謎を解明、愛憎乱れる 女と男の深い闇を、人情と剣とで見事に解決していく、悲喜こもごもの物語である。


読んでも読んでも、そのそばから忘れてしまう老脳。
読んだことの有る本を、うっかりまた借りてくるような失態を繰り返さないためにも、
その都度、備忘録として、ブログ・カテゴリー「読書記」に、書き留め置くことにしている。


「第一話 羽根の実」
▢主な登場人物
 おまき・新蔵、
 伊佐次(岡っ引き、伊佐の旦那
 直蔵(出会茶屋小松屋奉公人)、お久(出会茶屋小松屋女中
 政之助(庭木職人)・おみつ、源八、
 野瀬修理(無役旗本)、清松(渡り中間
 松波孫一郎(北町奉行所吟味方与力

▢あらすじ等
 駆け込み寺慶光寺で修行中のおまきが外出したまま帰らず、元の亭主新蔵殺しの疑いで
 捕縛された。

 外出禁止規則を破って外出させた寺役人近藤金五の責任は重大、免職の危機に立たされるが、
 十四郎、藤七等が懸命に、事件の真相、謎を解いて行き、ついに・・・。
   「おのれ」、修理が顔をひきつらせた時、
   「金五、そこまでだ。鶴の羽が見つかったぞ」
   清松は 雑木林を抜けると、門に走った。
   「待て」、修理も刀をぶらさげたまま、表に飛び出し、立ちすくんだ。
   火事羽織、野袴、陣笠を被った松波孫一郎が配下の同心、小者を従えて待ち受けて
   いたのだった。


「第二話 龍の涙」
▢主な登場人物
 お楽・辰造(石工)・おひろ、おきの、
 山城屋宗兵衛(太物商)、嘉助、
 お稲、弥兵衛(鬼火小僧)、お朝、
 松島大膳(旗本)、櫻痴(おうち、松島大膳の隠居)、
 松波孫一郎(北町奉行所吟味方与力)、

▢あらすじ等
 3年前に、前妻と娘を亡くしていた石工の辰造と世帯を持ったお楽だったが、
 夫婦の愛情等最初から無かったと、慶光寺に駆け込んできた。
 二人の馴れ初めを語るお楽、十四郎は笑うに笑えず、お楽の顔を見た。
 辰蔵の身の振り方に不審?、十四郎、藤七等が探索していくと、そこに見えてきたものは・・・。

 盗賊鬼火小僧の陰?、病的異常な数寄屋老人の陰が・・・・。
   「旦那、・・・よくわかりました。あっしが馬鹿でございやした」
   辰蔵は頭を下げた。


「第三話 紅紐」
▢主な登場人物
 おとよ、勝三、おあい、お吟、平助、
 留吉、与助、伊助、
 佐々木恭之助、政蔵、染次、
 庄兵衛、柳庵、
▢あらすじ等
 元結城屋の女房おとよは、不実な夫勝三と離縁、慶光寺を出た後、組紐師として懸命に
 暮らしていたが・・・・。結城屋は潰れ・・・。
 結城屋を潰したのはおとよのせいと決めつけていた義母お吟に対して・・・。
 一方で、佐々木恭之助に騙されて落ちるとことろまで落ちた勝三は、命を狙われ、
 おとよは人質に・・・・。最早これまでか。
   目を醒まして、男としてけじめをつけておくれ・・・」
   厳しい口調で、お吟は、勝三に迫った。
   十四郎は、静かに声をかけた。
   「お前は、お吟の子ではないか。お吟が育てた息子なら、もう駄目だなどという言葉は
   ない筈だと俺は思うぞ」

 
「第四話 雨の萩」
▢主な登場人物
 お妙・七之助・おたつ、お光、
 美樹・勇也・初音・
 芦沢伊三郎、猫目の玄蔵、為五郎、
 佐吉(呉服屋加賀屋手代
▢あらすじ等
 元仏具屋勝田屋の七之助と離縁し、慶光寺を出て普通の暮らしに戻っていたはずのお妙が、
 生きていく希望を失い、まさかの火付けの罪で捕縛され・・・。
 火付けは、重罪。お妙を救えなかったことに失意、消沈するお登勢、
 一方で、十四郎と清楚で儚げな未亡人美樹との関係は?、
 千々に乱れるお登勢の心・・・。
 十四郎との間に隙間風が吹き荒れ、孤独感に苛まれるお登勢、
 二人に最大の危機が?。

  「おっ、萩が咲いたか」
  「この萩は、俺が植えたのだ」
  お登勢はびっくりした目をしてみせたが、「うそ、うそ、、知りません」、
  すぐに咎めるような声を上げるとそこにしゃがみこんだ。
  だがその声音にも白い襟足にも、隠し切れない喜びが溢れていた。


「隅田川御用帳」ゆかりの地図

本書で初めて、「隅田川御用帳」ゆかりの地図が、巻頭で紹介されており、
地図で位置や方角を確認しながら、物語の展開を、楽しめるようになった。






葉室麟著 「草雲雀」

2024年09月13日 10時31分10秒 | 読書記

図書館から借りていた、葉室麟著の長編時代小説、「草雲雀(くさひばり)」(実業之日本社)を、読み終えた。


読んでも読んでも、そのそばから忘れてしまう老脳。
読んだことの有る本を、うっかりまた借りてくるような失態を繰り返さないためにも、
その都度、備忘録として、ブログ・カテゴリー「読書記」に、書き留め置くことにしている。


▢目次
(一)~(三十)

▢主な登場人物
栗屋清吾(媛野藩馬廻り役栗屋十郎左衛門の三男(部屋住み)、28歳、片山流秘技磯之波遣い手)、みつ、
栗屋十郎左衛門、栗屋嘉一郎(栗屋家当主、栗屋清吾の長兄)、
国東武左衛門(元媛野藩筆頭家老)、国東彦右衛門(国東武左衛門の嫡男)、
国東伊八郎(国東武左衛門の五男、妾腹の子、山倉家養子山倉伊八郎、栗屋清吾の幼馴染)、
樋口半右衛門(国東家親戚)、佳江(国東家親戚)、
菅野新右衛門(書院番、菅野刑部の妾腹の子)、しほ(菅野新右衛門の妹、湖蓮尼)、菅野刑部、
山倉兵蔵(伊八郎の養父)、山倉弥兵衛(山倉兵蔵の嫡男)、
大久保眞秀(おおくぼまさひで、媛野藩藩主
三岡政右衛門(三岡派派閥領袖、側用人)、山辺監物(国東派派閥領袖)、花田昇平(一刀流遣い手)、
菖庵(茶道頭)、梶尾(奥女中取締、黒錘組(くろおもりぐみ)頭領)、小萩(黒錘組(くろおもりぐみ)小頭)、
白木屋四郎兵衛(酒造業、金貸し業

▢あらすじ等
主人公の栗屋清吾は、剣の腕前には自信を持っているものの、正直者、小心者で、うだつが上がらない、部屋住みの身分、将来への夢もなく、少禄の栗屋家にとっては厄介者だった。百姓出の女中みつを妻帯したが、子を生すことさえも夢。
一方で、同じ部屋住み身分の幼馴染、山倉伊八郎は、実は、元藩の筆頭家老国東武左衛門の隠し子だったことがわかり、家老職につく道筋が開け、その幸運を生かそうとする伊八郎に、無理やり用心棒にさせられ、戸惑い、おびえながらも、伊八郎に尻を叩かれ、次第に藩内に渦巻く派閥闘争に巻き込まれ、暗闘で剣を振るうことになる。清吾が願っていたのは、みつとの小さな幸福な家庭、それだけだったが、そのためには、伊八郎を取り巻く敵を、命懸けで倒さねばならず・・・・、
あたかも、草雲雀が懸命に鳴くように・・・。
伊八郎が、国東家に呼び戻された本当の理由は、したたかな国東武左衛門の企てだった。
20年前の菅野刑部殺害事件の根深い恨みとの対決?
城内で試問を受け、無事くぐり抜けた伊八郎、清吾に、襲いかかる刺客・・、
首取り廊下で、決着・・、
  伊八郎は、清吾を睨んだ。
  「わかったら、さっさと行ってみつ殿を取り戻してこい」
  「まったく手のかかる男だ」
  梶尾が銚子を持って伊八郎に酒を注いだ。

  草雲雀は、美しい相手を思って一晩中、りり、りり、と鳴くのだという。
  「わたしもみつも草雲雀だ」
  清吾は、みつを背負う腕に力を込めると、草雲雀の鳴き声に合わせて
  しっかりと夜道を歩いていった。(完)


表題の「草雲雀」とは、何?・・・・、
無知な爺さん、これまで聞いたことも無い言葉だったが、
作品中で、昆虫であることが分かり、
さらにネットで調べてみると・・・。

「草雲雀(クサヒバリ)」とは、
「フィリリリリリ・・・・」と、
雲雀のような美しく澄んだ声で鳴く、
コオロギ科の昆虫のことだった。
別名「朝鈴(アサスズ)」
俳句では、「秋」の季語。

(ネットから拝借、草雲雀の画像)


へー!、知らなかった・・・、
目から鱗・・・である。


 


藤原緋沙子著 「紅椿」

2024年09月08日 20時37分05秒 | 読書記

図書館から借りていた、藤原緋沙子著 「紅椿」(廣済堂文庫)を、読み終えた。
本書は、著者の長編時代小説、「隅田川御用帳(すみだがわごようちょう)シリーズ」第9弾の作品で、「第一話 雪の朝」「第二話 弦の声」「第三話 東風よ吹け」「第四話 残る雁」の連作短編4篇が収録されている。
「隅田川御用帳シリーズ」は、縁切り寺「慶光寺」の御用宿「橘屋」の女主人お登勢(おとせ)に雇われた、元築山藩藩士の浪人塙十四郎(はなわじゅうしろう)が、「慶光寺」の寺役人近藤金吾や、橘屋の番頭藤七等と共に、縁切りを求めて「橘屋」に駆け込んでくるいろいろな女達の様々な事情を探り、絡み合う悪事や謎を解明、愛憎乱れる 女と男の深い闇を、人情と剣とで見事に解決していく、悲喜こもごもの物語である。


読んでも読んでも、そのそばから忘れてしまう老脳。
読んだことの有る本を、うっかりまた借りてくるような失態を繰り返さないためにも、
その都度、備忘録として、ブログ・カテゴリー「読書記」に、書き留め置くことにしている。


「第一話 雪の朝」
▢主な登場人物
 万寿院(松代)、春月尼、
 楽翁(八代将軍徳川吉宗の孫、元老中筆頭、元白河藩藩主、松平定信)、
 坂巻武太夫・坂巻武一郎・坂巻勇之進(英慧)、
 永井主水(旗本、無役)、増之助、
 佐兵衛・お仲
 栗田徳之進(寺社奉行所徒目付)、千草、

▢あらすじ等
 縁切り寺慶光寺主万寿院は、遠い日に交わした約束を果たしに、お忍びで玉王寺を訪れ、
 英慧と対面するが・・。英慧とは何者?、
 誰もその謎が解けない内に、万寿院の命を狙う事件発生。下手人は?、
 十四郎、藤七等が真相究明に乗り出すが、意外な事実が・・・、
 万寿院がかって旗本坂巻武太夫の養女だった頃の出来事に繋がり、
 増之助が白状、楽翁への逆恨みも明るみになる。
   十四郎は、英慧の最期を思い出していた。万寿院に手をとられて、血の涙をながした英慧の
   姿を・・・。

   あの時、十四郎は、自分の姿を見ているような気がしていたのである

「第二話 弦の声」
▢主な登場人物
 おまつ、
 長吉・お常、伊之助、
 蟹蔵(岡っ引き)、松波孫一郎
▢あらすじ等
 祝言を挙げる寸前に行方不明になった男を探しに江戸に出てきたおまつが爪弾く哀切と
 激しさが迫る津軽三味線の音色に、十四郎の足が止まった。ならず者に囲まれたおまつを
 救った十四郎はおまつを橘屋に連れてきたが、お登勢がテキパキと対応してくれ・・・、

 一方で、橘屋に駆け込んできたお常、不審だらけで、
 十四郎、藤七が真相究明中に、殺害され・・、

 伊之助とは?、長吉とは?
 お登勢、北町奉行所吟味方与力松波孫一郎の計らいで・・・、
   おまつの目も長吉をとらえていた。長吉をとらえたまま、おまつは三味線を引く。
   弦は切れても心の糸は切れぬと言ったおまつの言葉が、十四郎の脳裏を過ぎった。

「第三話 東風よ吹け」
▢主な登場人物
 お春・茂作、作造・お才・忠吉、お妙・辰平
 上総屋儀兵衛、利助、おりつ、
 弥蔵、佐吉、
 マムシの以三(岡っ引き)、木村乙一郎(南町奉行所見習い同心)
▢あらすじ等
 10才で養子に出した我が子利助の幸せをひらすら願う老母お春が、殺人の疑いで
 捕縛されるが、不審だらけの事件・・・、
 お登勢が、十四郎が、藤七が、賢明に真相究明し、
   夕暮れが迫っていたが、冬には珍しく暖かい風が吹いていた。
   「おっかさん」、「利助、・・・利助、お前、こんなところにきちゃ駄目だ、早くお帰り」
   じわりと十四郎は、いわれぬ感慨を覚えていた。


「第四話 残る雁」
▢主な登場人物
 お光、半之助、お浜、
 惣二(惣次郎)、徳兵衛、
 柳庵、
▢あらすじ等
 凶暴な亭主半之助との離縁話で、橘屋に駆け込んできたお光だったが、
 突然お登勢に反感、恨み?、
何故?、十四郎、藤七がその真相を究明していくと、
 そこには、兄惣二のお登勢に対する隠された想いが有った。 

  「私たち二人は残る雁だって・・・」、哀しい言葉が蘇った。
  「そんな筈があるものか、お前の人生はこれからだ」

 お登勢の胸に深く刻まれた亡夫徳兵衛への愛の深さを垣間見た十四郎は、落ち込んでしまうが、
 お登勢は、大切な亡夫の遺品「撥(ばち)」を、富岡八幡宮に納める決意をし、
 十四郎の胸には、新たな灯が灯るのだった。


 


藤原緋沙子著 「夏の霧」

2024年08月30日 20時51分50秒 | 読書記

図書館から借りていた、藤原緋沙子著 「夏の霧」(廣済堂文庫)を、読み終えた。
本書は、著者の長編時代小説、「隅田川御用帳(すみだがわごようちょう)シリーズ」第8弾の作品で、「第一話 雨上がり」「第二話 ひぐらし」「第三話 凧の糸」「第四話 母恋草」の連作短編4篇が収録されている。
「隅田川御用帳シリーズ」は、縁切り寺「慶光寺」の御用宿「橘屋」の女主人お登勢(おとせ)に雇われた、元築山藩藩士の浪人塙十四郎(はなわじゅうしろう)が、「慶光寺」の寺役人近藤金吾や、橘屋の番頭藤七等と共に、縁切りを求めて「橘屋」に駆け込んでくるいろいろな女達の様々な事情を探り、絡み合う悪事や謎を解明、愛憎乱れる 女と男の深い闇を、人情と剣とで見事に解決していく、悲喜こもごもの物語である。


読んでも読んでも、そのそばから忘れてしまう老脳。
読んだことの有る本を、うっかりまた借りてくるような失態を繰り返さないためにも、
その都度、備忘録として、ブログ・カテゴリー「読書記」に、書き留め置くことにしている。


「第一話 雨上がり」
▢主な登場人物
 段七、お勝、お菊、長治、
 石黒左仲・松乃、おえい、伊佐次、
 仙石屋儀兵衛、

▢あらすじ等
 牡丹栽培が大当たりでしていた段七の女房お勝が、段七が稼いた金五十両、百両全部を
 持ち出しており、離縁したいと橘屋に駆け込んできたが・・・・。
 お勝の娘お菊が何者かに拐かされ、脅迫状が・・・・。
  「お勝、ここに金がある。この金を長治さんに」
  「すべて俺が松乃さまのことを内緒にしたのが始まりだ。責任は俺にある。
  それにお菊は俺にとっても大事な娘だ」
  「だっておまえさん、そのお金は」
  お勝が包をつかんだ時、お菊が泣き出した。

「第二話 ひぐらし」
▢主な登場人物
 甲州屋政右衛門(鬼政)・初太郎、五助、お梶、文治、
 法雲、大野又兵衛、
 柳庵、楽翁、幽仙、
▢あらすじ等
 鬼政と忌み嫌われていた甲州屋政右衛門は、女房を亡くとすぐ隠居したが、最近 多額の使途
 不明金を要求され困っていると、息子初太郎が橘屋へ相談にやってきた。
 鬼政とは、過去に、駆け込んだお梶を救ってもらった恩義が有るお登勢、体を張って、
 真相究明に乗り出し・・・、
  「お登勢さん、これがお梶さんが返済してくれたお金です。この六両は私の支えになります。
  この歳になって初めて。金もただの金じゃないということが分かりました。・・・・」
  政右衛門は少年のような眼をして言った。
  「十四郎様、あの二人、きっと先々一緒になるかも知れませんね」
  お登勢は、根岸の隠居所を振り返って言った。

「第三話 凧の糸」
▢主な登場人物
 竹次郎、松太郎、三国屋梅之助・お信、
 与助・お兼、おとめ、
 お静、千太、八兵衛、
 土左ヱ門の伝・おまさ、
 松波孫一郎、
 もみじ屋伊助・お鈴

▢あらすじ等
 夫松太郎に殺されると、橘屋に駆け込んできた豊島屋のお兼が、投身自殺?、不審?
 お登勢、十四郎が、その真相究明に奔走、次第に、凧作りの名人竹次郎、松太郎の過去が
 明るみになり・・・、
 竹次郎が決意・・・、
  「それはそうと十四郎様、お静さんとは本当になんでもなかったのですか」
  お登勢は白い手を口にあてて、くすくす笑った。

「第四話 母恋草」
▢主な登場人物
 片岡慎之助、中井甚五郎、
 片岡庫之助・美佐、片岡市之丞(片岡市之助)、お夏、
▢あらすじ等
 橘屋の玄関に崩れ落ちるように入ってきた若侍片岡慎之助と病身の武士中井甚五郎、
 最愛の母親美佐を奪い、父親片岡庫之助を惨殺した男を、敵討ちするため、陸奥国中江藩から
 江戸に出てきたのだというが・・・・。
  「母上・・・・、母上・・・・、母上・・・・・」
  慎之助はむせび泣く。
  お登勢も側に座って、涙を押さえる。
  「泣けばいい・・・、慎之助、母のために存分に泣いてやれ」


 


葉室麟著 「冬姫」

2024年08月23日 06時23分51秒 | 読書記

図書館から借りていた、葉室麟著 「冬姫」(集英社文庫)を、読み終えた。本書は、乱世を生き抜き、自らの運命を切り開いた、織田信長の二女、冬姫の生涯を描いた長編時代小説だった。

▢目次
「橋姫の夜」「夜叉の笛」「まだら蜘蛛」「天女舞」「どくろ杯」
「紅蓮の城」「女人棋譜」「魔鏡の影」「独眼竜の恋」「花嵐」
 解説 村木嵐

▢主な登場人物
冬姫(織田信長の二女、蒲生忠三郎(氏郷)の妻)、いお(乳母)、
蒲生氏郷(がもううじさと、幼名鶴千代、蒲生忠三郎賦秀(やすひで))、
蒲生賢秀(がもうかたひで)、蒲生秀隆(幼名鶴千代、蒲生氏郷と冬姫の嫡男)、
鯰江又蔵、もず、
織田信長、帰蝶(織田信長の正室)、鍋の方(織田信長の側室興雲院)、
五徳(徳姫、織田信長の長女、徳川信康の妻)、築山殿、
お市(織田信長の妹、浅井長政の妻、柴田勝家の妻)茶々(淀の方)、初、江、
明智十兵衛光秀、玉子(明智光秀の娘細川忠興の妻、ガラシャ)、いと、
羽柴秀吉、徳川家康、前田利家、伊達政宗、柴田勝家、高山右近、石田三成、細川忠興
北政所(おね)、まつ(前田利家の妻)、
▢あらすじ等
織田信長の二女として生まれ、「武家の女は槍や刀ではなく、心の刃を研いでいくさをせねばならぬ」と言い聞かせられて育ち、長じて蒲生氏郷(蒲生忠三郎)の妻となった冬姫が、父親織田信長への敬慕の念と、名将と知られようになる夫蒲生氏郷へのひたむきな愛情を胸にして、多くの人間と巡り会い、渡り合い、乱世を生き抜き、自らの運命を切り開く、「女のいくさ」を描いている。
 蒲生家の行く末を見届けた冬姫は、寛永十八年、この世を去った。
 織田信長の娘として戦国の世を彩って生きた、紅い流星のような生涯だった。 
著者独特の時代考証、歴史解釈による、戦国時代の一女性にスポットを当てた作品と言えると思うが、歴史にも疎い人間、正直なところ、これまで、冬姫という存在すらも知らずで、「へー!、なるほど・・、そうだったのか・・・・」、
目から鱗、・・・・、である。
さらには、蒲生氏郷、羽柴秀吉、伊達政宗、徳川家康、等に対する人物観までもが、微妙に変わってくるから不思議なことだと思う。
 淑き人の良しとよく見て好しと言ひし吉野よく見よ良き人よく見(天武天皇の和歌)
 限りあれば吹かねど花は散るものを心みじかき春の山嵐 (蒲生氏郷、享年40歳、辞世の歌)

 


藤原緋沙子著 「春雷」

2024年08月05日 16時44分47秒 | 読書記

図書館から借りていた、藤原緋沙子著 「春雷」(廣済堂文庫)を、読み終えた。
本書は、著者の長編時代小説、「隅田川御用帳(すみだがわごようちょう)シリーズ」第7弾の作品。
「第一話 風呂屋船」「第二話 蕗味噌(ふきみそ)」「第三話 畦火(あぜび)」「第四話 花の雨」の連作短編4篇が、収録されている。
「隅田川御用帳シリーズ」は、縁切り寺「慶光寺」の御用宿「橘屋」の女主人お登勢(おとせ)に雇われた、元築山藩藩士の浪人塙十四郎(はなわじゅうしろう)が、「慶光寺」の寺役人近藤金吾や、橘屋の番頭藤七等と共に、縁切りを求めて「橘屋」に駆け込んでくるいろいろな女達の様々な事情を探り、絡み合う悪事や謎を解明、愛憎乱れる 女と男の深い闇を、人情と剣とで見事に解決していく、悲喜こもごもの物語である。


読んでも読んでも、そのそばから忘れてしまう老脳。
読んだことの有る本を、うっかりまた借りてくるような失態を繰り返さないためにも、
その都度、備忘録として、ブログ・カテゴリー「読書記」に、書き留め置くことにしている。


「第一話 風呂屋船」
▢主な登場人物
 秀吉(ひできち)・お初、文吉、
 城市(検校?、深川材木商三国屋次男坊勘当)、鮫蔵、おきん、
 野江、 
 野田の旦那(南町奉行所定町回り同心
▢あらすじ等
 船風呂屋秀吉に裏切られたお初は、生まれたばかりの赤子文吉を捨て、死を選ぼうとするが
 死に切れず、慶光寺に駆け込む。秀吉は、鮫蔵殺しの疑いで南町奉行所同心野田に捕縛される。
 十四郎、藤七が、探索開始、次第に明るみになってくる事実、検校?城市の企みが?
   「秀吉さんを、鮫蔵と思ってさ」、
   おきんは、風呂屋船を顎でさした。
   「婆さんが・・・・、そうか、文吉の子守をするのか」
   「いえいえ、むかしとった杵柄ですよ旦那。小町と呼ばれていた頃、あたしゃ、
   踊りの名人だって
言われていたんですから」「何、婆さんが踊る?・・・・、
   踊って客寄せを刷るというのか」・・・・、
十四郎は吹き出した。
 


「第二話 蕗味噌」
▢主な登場人物
 山崎与五郎(旗本200石)・喜野、未緒、
 力弥、お染(あやめ)、黒木忠兵衛、
 おたき・仙太郎、
 赤井源内(浪人、渡り用人
▢あらすじ等
 中間力弥との不義を疑われ、夫与五郎に殺されると慶光寺に駆けこんできた旗本の妻女喜野
 だったが、その裏には、したたかな悪女おたきの企てが・・・。力弥、お染の哀れ、

   源内が声を落として言う。
   「はい。女子(おなご)は恐ろしい生き物だということです。・・・・・、
   これは山崎様に限ったことではございませんが、若い頃に苦労ばかりかけたようなお人は、
   たいがい、老後は悲惨です・・・・」


「第三話 畦火」
▢主な登場人物
 為三(雷電為左衛門・天狗舞)・おかよ、利助・お袖、
 遠州屋、おつた、
 松蔵(利助の幼馴染)、
▢あらすじ等
 橘屋の主人お登勢を付け狙う初老の大男とは何者?、その理由は?、縁切り事件の逆恨み?、
 十四郎、藤七、金五、等が探索、そこに隠されていた真相は?、
 遠州屋の悪業が元凶だったとは・・・。

   配下を従えて与力松波孫一郎が馬で駆け付けて来た。
   「遠州屋、お前を召し捕る」、
   捕り方の後ろから利助が走り出してきて、為三にすがりついた。
   「再縁する?・・・・、お袖、本気なのか」と十四郎。
   「畦火・・、つまり為三は、灰になって新しい芽を育てる肥料になる覚悟だというのか」
   金五が目を白黒させた。


「第四話 花の雨」
▢主な登場人物
 辻国之助、遠山壱之丞、お栄、弁天屋喜左衛門、
 西尾数馬・松江・小太郎、
 楽翁、万寿院、春月尼、
▢あらすじ等
 お登勢の茶の湯の仲間の一人、辻国之助が、菊池藩上屋敷御賄方西尾数馬の妻女松江と不義の
 疑いをかけられ、遁走、5歳の小太郎を置き去り、その後を追った松江、女敵討ち?、
 苦悩する西尾数馬、
 目撃者お栄の証言、楽翁へ嘆願、お登勢、十四郎等が懸命に手を打つが・・・、
 果たして、その結末は?
   「お登勢様、十四郎様、ご恩は一生・・・」、
   松江は手をついた。十四郎は、松江のはかなげな襟足を見て、はっとした。


 


葉室麟著 「無双の花」

2024年07月26日 14時43分04秒 | 読書記

図書館から借りていた、葉室麟著 「無双の花」(文藝春秋)を、読み終えた。本書は、九州戦国史を代表する武将の一人、立花宗茂(たちばなむねしげ)の半生と、その妻誾千代(ぎんちよ)を題材にして描いた、長編時代小説だった。


読んでも読んでも、そのそばから忘れてしまう老脳。
読んだことの有る本を、うっかりまた借りてくるような失態を繰り返さないためにも、
その都度、備忘録として、ブログ・カテゴリー「読書記」に、書き留め置くことにしている。


▢目次
(一)~(十七)

▢主な登場人物
立花左近将監宗茂(豊後大友宗麟の家臣筑前宝満城城主高橋紹運の嫡子、立花誾千代の婿養子となり立花城城主、柳川城城主、赤館城城主、再び柳川城城主、立斎
誾千代(豊後大友宗麟の重心立花(戸吹)道雪の娘、立花城女城主、立花宗茂の正室)、かの、由ゑ
八千子(立花宗茂の側室、矢島石見の姉)、菊子(公家葉室家の姫、後に、立花宗茂の妻となる
立花(戸吹)道雪(誾千代の父、筑前立花城城主
由布雪下(ゆふせっか)、矢島石見(やじまいわみ)、十時摂津(とときせっつ
黒田如水、加藤清正、田中忠政
豊臣秀吉、本田平八郎忠勝、
真田左衛門佐信繁(幸村)、利世、大八(後に、伊達忠宗の家臣片倉守信となる)、阿梅(後に、片倉小十郎の妻となる)、阿菖蒲、おかね、
長宗我部盛親、
徳川家康、徳川秀忠、徳川家光、本田正信、本田正純、
伊達政宗、片倉小十郎重綱、

▢あらすじ等

筑前宝満城城主高橋紹運の嫡男として生まれた宗茂だったが、15歳で大友宗麟の重臣、立花城城主戸次(立花)道雪の娘誾千代の婿養子となり、立花山城主となった。城主になってまもなく、九州の雄、島津勢の猛攻を受けるが、これに耐え切り、駆け付けた豊臣秀吉から、「西国無双の武将」と褒め称えられ、戦功により筑後柳川十三万石の大名に抜擢された。
その恩義が有り、関ヶ原の戦いでは、西軍に加担、敗軍の大名となり、徳川家康の時代になり、当然、改易、浪人となる。家臣を引き連れて、京、江戸へ。耐えに耐え、窮乏の日々を送ることになるが、人を裏切らず、生き抜き、「立花の義」を貫き、大名に返り咲く望みを捨てず、家康をも動かし、伊達政宗とも渡り合い、改易から20年後、家康の意を受け継いだ2代将軍秀忠により、ついに、旧領筑後柳川の大名に再封される。関ヶ原の戦いで西軍に加担し改易になり、浪人となった大名で、徳川家からも絶大な信頼を得て、旧領地を再封されたただ一人の武将立花宗茂の半生、生き様を描いた作品である。
  「待たせたな、誾千代。ようやく戻って参ったぞ」
  (中略)
  「関ヶ原の戦で負けた時、かような日が来るとは思いも寄らなんだぞ。二十年前、
  京に出ようと
意を固めた折、必ず無双の花を咲かせて戻って参ると誓うたが、
  いまにして思えば、わしにとって、
無双の花とは、そなたのことであった・・・・」


(参考・参照)
👇️
福岡県観光WEBクロスロードふくおか
「立花宗茂、誾千代 ー 戦乱の世に生きたヒーロー&ヒロイン」


歴史にも疎く、無知無学な爺さん、正直なところ、「立花宗茂」、「誾千代」の名も、その史実も、これまで、ほとんど知らず分からずの類だったが、本書を読み、初めて詳しく知り、「へー!、そうだったのか」、目から鱗・・・・、である。
本書の舞台は、九州豊後、筑前、筑後、肥後、朝鮮半島、京、大阪、江戸、奥州南郷、と広いが、中心にしているのは、柳川。
福岡県筑後地方南西部に位置している「柳川市」は、若い頃から一度は訪ねてみたいと思っていた地のひとつだったが、結局、念願叶わず、一度も訪れたことは無く、今となっては、映像や画像で、その風情等を楽しんでいる風だが、本書により、一層、興味、関心が高まってきたような気がしている。


葉室麟著 「鬼神の如く・黒田叛臣伝」

2024年07月13日 07時59分08秒 | 読書記

図書館から借りていた、葉室麟著「鬼神の如く・黒田叛臣伝」(新潮社)を、読み終えた。本書は、有名な筑前黒田藩の「黒田騒動」を題材にした長編時代小説で、第20回司馬遼太郎賞受賞作品だった。


読んでも読んでも、そのそばから忘れてしまう老脳。
読んだことの有る本を、うっかりまた借りてくるような失態を繰り返さないためにも、
その都度、備忘録として、ブログ・カテゴリー「読書記」に、書き留め置くことにしている。


▢目次
(一)~(三十六)

▢主な登場人物
栗山大膳(筑前黒田藩家老)、赤西源八、梅津龍翁、
黒田忠之(筑前黒田藩藩主)、倉八十太夫、井上周防、
深草卓馬、舞、夢想権之助、
宮本武蔵、宮本伊織、
竹中采女正(豊後府内藩藩主・長崎奉行)
末次平蔵茂貞(長崎代官)、
徳川家光(三代将軍)、柳生但馬守宗矩、柳生十兵衛三厳、土井利勝(老中)、
井伊掃部直孝(彦根藩藩主・夜叉掃部)、松平伊豆守信綱(老中、知恵伊豆)、
大矢野四郎(天草四郎)、フェレイラ(宣教師・ポルトガル人)

▢あらすじ等
「わが主君に謀反の疑いあり」・・・、自藩黒田藩が幕府の大名家取り潰しの標的となったことを悟りながら、黒田藩家老・栗山大膳は、あえて主君である藩主黒田忠之を幕府に訴え出る。その真意は?、
そこには、九州の覇権を求める細川家や竹中家、海外出兵を目指す将軍家光、等々の、様々な思惑が絡み合っており・・・、
藩主に疎まれ、対立しながらも、鬼となって、策謀を巡らす大膳に、次々と刺客が押し寄せるが、
泰然自若として動じない大膳、叛臣なのか、本当の忠義とは何かを、見事に描いている作品である。
命を掛けて幕閣と渡り合う大膳の迫力、果たして、黒田藩は、救われるのか?、
何事にも恐れること無く、堂々と、揺るぎなく、信じる道を突き進み、その果、自らは、陸奥南部藩、盛岡藩お預けの身となり、影山四郎兵衛と名乗り、62歳で没した大膳の生き様、
黒田騒動、キリシタン弾圧、お家取り潰し、等々と史実に対する著者独自の解釈と、
宮本武蔵、天草四郎 等々、実在した人物や架空の人物を絡ませ、
小説としての面白さを堪能出来る作品だと思う。


(参考・参照)
👇️
福岡県朝倉市ホーム・ページ・ふるさと人物伝「栗山大膳」


 


藤原緋沙子著 「冬桜」

2024年06月30日 19時23分37秒 | 読書記

図書館から借りていた、藤原緋沙子著 「冬桜」(廣済堂文庫)を、読み終えた。
本書は、著者の長編時代小説、「隅田川御用帳(すみだがわごようちょう)シリーズ」第6弾
「第一話 桐一葉」「第二話 冬の鶯」「第三話 風凍つる」「第四話 寒梅」の連作短編4篇が、収録されている。
「隅田川御用帳シリーズ」は、縁切り寺「慶光寺」の御用宿「橘屋」の女主人お登勢(おとせ)に雇われた、元築山藩藩士の浪人塙十四郎(はなわじゅうしろう)が、「慶光寺」の寺役人近藤金吾や、橘屋の番頭藤七等と共に、縁切りを求めて「橘屋」に駆け込んでくるいろいろな女達の様々な事情を探り、絡み合う悪事や謎を解明、愛憎乱れる 女と男の深い闇を、人情と剣とで見事に解決していく、悲喜こもごもの物語である。


「第一話 桐一葉」
▢主な登場人物
 小田島右近(元備後国美山藩岩見銀警護方)・織江、幸太郎、
 市岡玄之進(大御番衆、元岩見大森代官所役人)、野呂、大原、
 稲富武一郎・稲富十太夫(美山藩お側衆)、
▢あらすじ等
 十四郎は、5年前の銀の道の騒動の諍いで幼馴染稲富武一郎を斬ってしまい出奔、
 流浪の浪人の身となり、愛深く辛苦の暮らしを続ける小田島右近、織江、幸太郎親子と
 出合い、橘屋に連れてくる。

 その小田島右近が惨殺された。・・・・、「許せぬ・・・」、
 焼き芋か・・・・、十四郎の脳裏に、枯れ葉の散り敷いた街道を踏み締め踏み締め、
 西に向かう織江親子の姿が浮かんできた。


「第二話 冬の鶯」
▢主な登場人物
 半次郎(元女衒)・おきよ(希代)、
 仙次、
 平山九郎(元原田伸吾、原田作左ェ門の三男
▢あらすじ等
 亭主半次郎と別れたいと慶光寺に駆け込んで半月足らずのおきよ、半次郎が何者かに殺され、
 「あんた・・・・、かんにん」、ぽろっと涙?、なにか深い事情が隠されている?、
 十四郎、藤七が、真相究明に・・・、

 思いもよらない真実が明るみに・・・、
 「希代・・・」、平山は、叫びをあげると手を伸ばして何かを掴むようにして開き、
 どたりと倒れ伏した。

 「おきよ、これでなにもかも終わったのだ・・・」


「第三話 風凍つる」
▢主な登場人物
 寺沢庄五郎(触次名主、ふれつぎなぬし)・与吉・お梶、おさよ、
 佐太郎(船頭)、粂吉、
 鬼頭又之助(お鳥見方役人)、菅野(お鳥見方役人
▢あらすじ等
 将軍家の鷹狩の獲物保護場御留場で、鶴が弓矢で殺害され、無実の罪を着せられた与吉、
 与吉の幼馴染佐太郎が大活躍、その裏の真実が明るみになる。
 悪行を繰り返すお鳥見方役人と、触次名主の癒着?、妻お梶の不義密通?

 果たして、その結末は・・・。


「第四話 寒梅」
▢主な登場人物
 留次(桶職人)・お栄、お久、
 岩井野江(岩井市左衛門の娘)、
 江口鉄之助、
 天竺屋総五郎(廻船問屋、物産問屋、諸藩御用達)、和兵衛(天竺屋番頭)、
 才次郎、喜久蔵、おさよ、

▢あらすじ等
 留次の女房お栄が慶光寺に駆け込んできたが、飲み屋のお久に一人狂いした留吉の目を覚まさせ
 1件落着させた十四郎だったが、一方で、「噂の女」、美貌の岩井野江と出合い、
 自殺を思い留まらせ、橘屋に連れてくる。

 野江は、仕官の話に乗って、肥後国熊本藩へ旅立ったまま帰ってこない許嫁の江口鉄之助を
 待ち続けている武家女だったが、父親を亡くし、労咳にかかり、借金のかたに妾奉公を
 強要され、絶望のふちにあった。駆け込み事件外のことだったが、十四郎は探索・・・・、

 その裏には、悪辣な天竺屋の存在が有り・・・、「許せない!」。
 十四郎のかっての許嫁雪乃によく似た野江の出現に、お登勢は、微妙に嫉妬。
 お登勢に、縁談?、

 十四郎は、言いようのない寂しさに襲われ・・・・。どうなる?、どうする?


 

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葉室麟著 「山月庵茶会記」

2024年06月23日 14時05分06秒 | 読書記

図書館から借りていた、葉室麟著「山月庵茶会記(さんげつあんちゃかいき)」(講談社)を、読み終えた。
本書は、伊予来島水軍の勇将黒島興正を藩祖とする、九州豊後鶴ヶ江に六万石を領するという架空の小藩「黒島藩」を舞台にした長編時代小説「黒島藩シリーズ」の第3弾の作品である。

▢目次
(一)~(二十六)

▢主な登場人物
柏木靫負(かしわぎゆきえ、孤雲、52歳)・藤尾(亡妻)、卯之助、
柏木精三郎(黒島藩奥祐筆、34歳)・千佳(33歳)・市太郎(12歳)・春(9歳)、
白根又兵衛(黒島藩屋祐筆頭、千佳の父親)、
浮島(元黒島藩江戸藩邸奥女中頭
土屋左太夫(黒島藩家老)、和久藤内(黒島藩勘定組頭)、佐々小十郎(小普請組)、溝渕半四郎
駒井石見守(黒島藩前家老)・駒井久右衛門・駒井省吾(明慶)
篠沢民部(椿斎)・波津、
丹波承安(黒島藩藩主の一門)・丹波正之進、
松平乗邑(前老中)、

▢あらすじ等
かつて黒島藩勘定奉行として辣腕を奮っていた柏木靫負、16年前、政争に敗れ、千利休の流れを汲む高名な茶人(孤雲)となって江戸から国に帰ってきた。その目的は、派閥抗争の最中に、自害した妻藤尾の真相を探ること。孤狼の心を胸に秘め、山裾の庵山月庵で、客人を招きながら情報を分析していく筋立て。
次第に、藩の大事に関わっていたことが明らかになっていくが、茶室という狭い空間で、刀を用いぬ茶人の戦は、静かではあるが、鋭く、熱い。
著者の、色、匂い、情景、の描写も冴え渡っている。
 「藤尾、結構な点前であったぞ」
 縁側の又兵衛が、靫負のつぶやきを聞いて振り向いた。
 「誰と話しておるのだ」
 靫負は笑いながら・・・、
 「馬鹿者め・・・」
 と愉快そうに言葉を継いだ。
 又兵衛は言われた意味がわからず、目を白黒させたが・・・、
 「すまぬ・・・」
 と、厳かに言った。
 青空を白い雲が流れていく。
で、終わっている。



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