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藤原緋沙子著 「おぼろ舟」

2024年06月17日 09時09分45秒 | 読書記

図書館から借りていた、藤原緋沙子著 「おぼろ舟」(廣済堂文庫)を、読み終えた。本書は、著者の長編時代小説、「隅田川御用帳(すみだがわごようちょう)シリーズ」の第5弾。
「第一話 鹿鳴の声(はぎのこえ)」「第二話 赤い糸」「第三話 砧(きぬた)」「第四話 月の弓」の連作短編4篇が、収録されている。
「隅田川御用帳シリーズ」は、縁切り寺「慶光寺」の御用宿「橘屋」の女主人お登勢(おとせ)に雇われた、元築山藩藩士の浪人塙十四郎(はなわじゅうしろう)が、「慶光寺」の寺役人近藤金吾や、橘屋の番頭藤七等と共に、縁切りを求めて「橘屋」に駆け込んでくるいろいろな女達の様々な事情を探り、絡み合う悪事や謎を解明、愛憎乱れる 女と男の深い闇を、人情と剣とで見事に解決していく、悲喜こもごもの物語である。


「第一話 鹿鳴の声(はぎのこえ)」

▢主な登場人物
丑松(うしまつ、松太郎
天野屋熊五郎(材木商)・おるい、千蔵(木挽師)。お常、
おむら(材木問屋相模屋隠居)、おくみ、
▢あらすじ等
小伝馬町から囚人達が「切放し」になり、人っ気が消えている町中で、十四郎は、飲み屋の男達に殴る蹴るされていた丑松を救ったが・・・。「切放し」とは、牢内や近隣で火事が有った場合、3日間の期限付きで、因人が牢外に解き放されることをいうが、刻限内に戻らない場合は、どんな軽罪でも死罪になる定め。その丑松が、戻らず、身代金要求、立て籠もり事件?、慶光寺の駆け込んでいる天野屋熊五郎の妻おるいは、実は、丑松の・・・、材木問屋相模屋の隠居おむらと遭遇したことが丑松の運命を変え、死罪覚悟して・・・。
 「おむら・・・」、十四郎は、おむらの太っ腹に度肝を抜かれていた。・・・・・・、
 おむらの顔には、七十近いとは思えない精気が漲っていた。
 「このばばもまだまだ死ねません。松太郎・・・・」


「第二話 赤い糸」

▢主な登場人物
お朝・常次郎(錺(かざり)職人)・お種、
おすみ、おりき、
春永梅之助(人情本作家、元滝沢藩藩士
お紋、いたちの鮫蔵
与助、
▢あらすじ等

凄まじい性格の姑お種との折り合いが悪く、2年前慶光寺に駆け込み、常太郎と離縁したお朝、その後裏店で一人暮らしていたが、行方不明になり?・・・・、お登勢、十四郎、藤七が、探索開始。そこに見えてきたものは、元の鞘には戻れなくても、悪の道へ突き進んでいた別れた夫常太郎を、踏み止まらせたい一念が有った。忘れ得ぬ一筋の赤い糸。
いたちの鮫蔵一味は、北町奉行所によって捕縛され・・・、

  「別れて、はじめて分かったのね。相手のいいところが・・・・、そういうものなんですね。
  夫婦というのは・・・」、お登勢は、しみじみと言い、十四郎に優しい視線を投げてきた。


第三話 砧(きぬた)」

▢主な登場人物、
お増(夜鷹)、おみつ(夜鷹)、秀次(男妓夫)、
半次郎(京の指物師)、
柳庵、
大鳥六三郎(南町奉行所同心)、百蔵(岡っ引き)、
▢あらすじ等
子供の頃、母親に捨てられ恨んで育った京の指物師半次郎が、その母親の消息を知り、商用で来た江戸で、母親を探しているという話に共感した十四郎は、酔った勢いで橘屋に連れてきた。一方で、捨てた我が子を想いながら、夜鷹を束ねながら、気丈に生きる老女お増は重病で柳庵の治療を受け・・・・、
夜鷹おみつを殺し、金品を奪い、その罪を半次郎になすりつけた男・・・、「許せぬ」。

  秋の夜の、きぬたの音や哀しきや
  ほろほろほろと鳴く鳥か、いや枕辺のなみだなり、
  ひかりはひとつ、この稚児の
  幸せ願う多賀さま、届けよ届けや、母ごころ、
  きぬたの音や、ねんころろん、ねんころろん、
目を閉じている半次郎の瞼から、一筋、涙が落ちた。
「十四郎様・・・・」、お登勢は、袖で目元を押さえると、外に出た。
「お登勢殿」

十四郎は肩を並べ、お登勢の視線の先を追った。
そこには、月の光を浴びた川の面が、きらきら光を放ちながら流れていた。
感涙の物語である。


「第四話 月の弓」

▢主な登場人物
清兵衛(米問屋福田屋の主、元山名藩藩士杉江清之助)・お美濃(清兵衛の妻、元山名藩藩主片桐右京亮の三番目側室)、
周助(福田屋の番頭

相沢頼母(山名藩江戸家老)、神谷欣左衛門(山名藩江戸藩邸目付)、竹中弥十郎、中根久蔵、
片桐吉央(山名藩新藩主、幼名吉三郎)、
万寿院、楽翁(元老中松平定信)、柳庵、

近藤金五・波江(金五の母親)、秋月千草
▢あらすじ等
米問屋福田屋清兵衛の女房お美濃が、慶光寺に駆け込んできたが、原因は、夫婦の不仲ではなく、何か切迫した事情が有りそう?、お登勢、十四郎、藤七、金吾達が、調査を開始するが・・・・。山名藩2万石存亡の危機と福田屋の関わりとは?、お美濃駆け込みとの繋がりは?、謎だらけ・・、清兵衛に刺客が向けられ、あわや・・・。清兵衛が全てを打ち明け、真相が明らかになり、金吾、十四郎は、山名藩藩邸へ乗り込み・・・、
お登勢、万寿院、幕政影の実力者楽翁の図らいで、山名藩は救われ、楽翁は、若き新藩主片岡吉央を招き、お美濃を引き合わせる。
 「美濃と申したな・・・」、「はい」・・・・、二人は見詰め合ったまま時が止まる、
感動的な場面である。

そして、金吾千草の婚礼を迎え、それまで、いちゃもんを付け、取り越し苦労していた母親の波江は大はしゃぎ・・。
 「今度はあなたですからね。十四郎殿、わたくしが母上様の変わりになって三国一の嫁御を
 お世話してさしあげます」・・・、「いえ、それは・・・・」・・・、
 お登勢からは、きゅっと睨まれてしまい・・・、
 「お登勢殿も、勘弁してくれ」、

十四郎は、大慌て、波江を見てぞっとするのだった。


 


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