ボクシングレヴュー

「TM」はタイトルマッチ、階級名につく「S」はスーパー、「L」はライトの略です。

日本フェザー級TM 粟生隆寛vs秋葉慶介

2007年07月07日 | 国内試合(日本・東洋タイトル)
粟生が3-0の判定で初防衛に成功
しかし秋葉の乱戦ペースに巻き込まれ、苦しい内容だった。


今年3月、梅津宏治からベルトを奪った時と同様、今回も会場は満員。
粟生というのは、それだけ期待値の高い選手なのだ。

しかし粟生は、その満場の観客を満足させるような試合をすることが
出来なかった。試合後のインタビューでは、反省の弁ばかりが聞かれた。


その原因の一端は、挑戦者・秋葉の戦い振りにもある。ひたすら強引に
前進してくる秋葉は、誰にとってもやりにくいタイプだろう。
しかし、そのことは粟生陣営も織り込み済みだったはずだ。にもかかわらず
それに充分に対処できなかったのだから、チャンピオンとして、あるいは
期待されるホープとして、いい試合をしたとは言えない。

粟生は、全くと言っていいほど接近戦をしなかった。秋葉が近づいてくれば
クリンチ、中間距離で1~2発パンチを打ってはクリンチ。
綺麗なボクシングにこだわりがあるのだろうが、綺麗なボクシングだけでは
綺麗な勝ち方は出来ないのだ。

試合はずっと煮え切らないまま進み、結局判定へ。パンチの正確さで
上回る粟生の勝利は間違いないところだが、微妙なラウンドも多かった。


終わってみれば、秋葉には粟生を脅かすような要素はなかった。
梅津戦でも似たようなことを書いたような気がするが、粟生を
苦しめることには成功したものの、勝利にはほど遠かった。

粟生とすれば、意を決して乱打戦に応じることも必要だったのでは
ないだろうか。ラフファイトを嫌がる素振りを見せれば、相手は当然
そこに付け込んでくる。クリンチに逃げるばかりではなく、時には
自分から接近戦を仕掛け、逆に相手をひるませることが出来れば、
その後の展開を有利に進められるだろう。

クリーンなボクシングを身上とすることは悪くないのだが、
それだけでは心許ない。粟生は「世界」を目指す選手。世界戦は
12ラウンドもあるのだ。常に自分の思うように試合が展開するとは
限らない。例え自分にとってあまり好ましくない展開になっても、
歯を食いしばって対抗する。それをやって世界チャンピオンになったのが、
粟生が兄貴と慕う長谷川穂積である。


梅津戦、そしてこの秋葉戦で、「粟生はラフファイトに弱い」と
いうのが定評となってしまいそうだが、これを克服しないことには
(精神的な意味で)上へは行けない。このままでは、パンチ力のある
ラフファイター、例えば元日本王者の渡邊一久のような選手と戦えば
KO負けする可能性すらある。ここを正念場として頑張ってもらいたい。

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