チケットは当日券まで完売、後楽園ホールは超満員。
試合前から、ここまで盛り上がった日本タイトルマッチは、
一体いつ以来だろう。
まずは挑戦者から入場。控え室から、粟生の表情は一貫して固い。
そしてチャンピオンが、たっぷり時間をかけて入場。梅津は満面の
笑みをたたえているが、それは必死に緊張を打ち消そうとしている
表情にも見えた。リングに上がった梅津に、大きな歓声。それに負けじと、
粟生も腕を振り上げてファンを煽る。尋常でない熱気だ。
異様な雰囲気の中、ついにゴングが鳴った。
両者とも動きが硬い。当然だ。こんな空気の中に放り込まれて、
緊張しない選手などいないだろう。観客さえ緊張しているように見える。
ただ違うのは、粟生は手を出し、梅津は手を出さなかったこと。
ガードを固め、体勢を低くして粟生に接近しようとする。予想通り、
乱戦に持ち込むつもりなのだろう。
しかし、それはままならない。出鼻に粟生の右ジャブ、左ストレートが
ビシビシ決まり、なかなか近づくことが出来ない。2ラウンドに入ると
お互い緊張もほぐれてきたようだ。梅津は手数を増やすが、なかなか
綺麗には当たらない。
梅津が頭から飛び込んでくるため、再三バッティングが起こる。
第4ラウンドには、激しいバッティングで粟生の鼻から出血。
梅津も徐々にプレスを強め、いよいよ乱戦の様相を呈してくる。
粟生がKOを予告した中盤。KOを意識してか、粟生も接近戦で
強いパンチを打ち込もうとするが、逆に梅津のパンチも当たる
ようになる。と同時に、距離が近すぎて上手くパンチを出せなくなる
場面が多くなり、押し合いや揉み合いも増えてきた。
7ラウンドに入った。粟生は足を使って、リングを回るようになった。
「4回から6回までにKOする」と言っていた粟生だが、そのラウンドを
過ぎたため、KOを狙うよりも、確実に勝つスタイルに切り替えようという
ことなのだろうか。
しかし、KOチャンスというものは得てしてそういう時に訪れるものだ。
9ラウンド、粟生の強打がついに王者の動きを止めた。一気に襲い掛かる
粟生。しかし梅津も驚異の粘りを見せ、ダウンは免れた。
最終ラウンドは粟生も無理をせず、結局勝負は判定へ。3-0。
まず文句のない粟生の勝利だと思ったが、1ポイント差のジャッジが
いたことには驚いた。
昨年のフランシスコ・ディアンソ戦で、精神、技術の両面でラフファイトへの
脆さを露呈した粟生。今回、梅津の突進に対する動揺は見られず、精神的な
部分では成長を見せたが、それを上手く捌き切ることが出来なかったという
点においては、まだまだ課題を残したとも言える。
一方の梅津。粟生をかく乱するという作戦はある程度成功したものの、
その先の手を打つまでには至らなかった。お互いに消化不良の部分は
あっただろう。
周囲の期待感に見合うだけの試合内容だったかどうかは疑問だが、
お互いの「負けられない」という気持ちが激しくぶつかり合う
試合においては、こうしたことは往々にして起こるものだ。
どんな形にせよ、勝った粟生には未来が開けた。負けた梅津も、
まだ引退はしないという。それも当然だろう。お互い、持っているものを
出し切れなかった。そんな試合を経て、ボクサーはまた一つ
強くなっていくものなのだろう。
試合前から、ここまで盛り上がった日本タイトルマッチは、
一体いつ以来だろう。
まずは挑戦者から入場。控え室から、粟生の表情は一貫して固い。
そしてチャンピオンが、たっぷり時間をかけて入場。梅津は満面の
笑みをたたえているが、それは必死に緊張を打ち消そうとしている
表情にも見えた。リングに上がった梅津に、大きな歓声。それに負けじと、
粟生も腕を振り上げてファンを煽る。尋常でない熱気だ。
異様な雰囲気の中、ついにゴングが鳴った。
両者とも動きが硬い。当然だ。こんな空気の中に放り込まれて、
緊張しない選手などいないだろう。観客さえ緊張しているように見える。
ただ違うのは、粟生は手を出し、梅津は手を出さなかったこと。
ガードを固め、体勢を低くして粟生に接近しようとする。予想通り、
乱戦に持ち込むつもりなのだろう。
しかし、それはままならない。出鼻に粟生の右ジャブ、左ストレートが
ビシビシ決まり、なかなか近づくことが出来ない。2ラウンドに入ると
お互い緊張もほぐれてきたようだ。梅津は手数を増やすが、なかなか
綺麗には当たらない。
梅津が頭から飛び込んでくるため、再三バッティングが起こる。
第4ラウンドには、激しいバッティングで粟生の鼻から出血。
梅津も徐々にプレスを強め、いよいよ乱戦の様相を呈してくる。
粟生がKOを予告した中盤。KOを意識してか、粟生も接近戦で
強いパンチを打ち込もうとするが、逆に梅津のパンチも当たる
ようになる。と同時に、距離が近すぎて上手くパンチを出せなくなる
場面が多くなり、押し合いや揉み合いも増えてきた。
7ラウンドに入った。粟生は足を使って、リングを回るようになった。
「4回から6回までにKOする」と言っていた粟生だが、そのラウンドを
過ぎたため、KOを狙うよりも、確実に勝つスタイルに切り替えようという
ことなのだろうか。
しかし、KOチャンスというものは得てしてそういう時に訪れるものだ。
9ラウンド、粟生の強打がついに王者の動きを止めた。一気に襲い掛かる
粟生。しかし梅津も驚異の粘りを見せ、ダウンは免れた。
最終ラウンドは粟生も無理をせず、結局勝負は判定へ。3-0。
まず文句のない粟生の勝利だと思ったが、1ポイント差のジャッジが
いたことには驚いた。
昨年のフランシスコ・ディアンソ戦で、精神、技術の両面でラフファイトへの
脆さを露呈した粟生。今回、梅津の突進に対する動揺は見られず、精神的な
部分では成長を見せたが、それを上手く捌き切ることが出来なかったという
点においては、まだまだ課題を残したとも言える。
一方の梅津。粟生をかく乱するという作戦はある程度成功したものの、
その先の手を打つまでには至らなかった。お互いに消化不良の部分は
あっただろう。
周囲の期待感に見合うだけの試合内容だったかどうかは疑問だが、
お互いの「負けられない」という気持ちが激しくぶつかり合う
試合においては、こうしたことは往々にして起こるものだ。
どんな形にせよ、勝った粟生には未来が開けた。負けた梅津も、
まだ引退はしないという。それも当然だろう。お互い、持っているものを
出し切れなかった。そんな試合を経て、ボクサーはまた一つ
強くなっていくものなのだろう。