ボクシングレヴュー

「TM」はタイトルマッチ、階級名につく「S」はスーパー、「L」はライトの略です。

日本ミニマム級TM 小熊坂諭vs高山勝成

2006年03月18日 | 国内試合(日本・東洋タイトル)
WBC世界ミニマム級王座の初防衛戦で、イーグル京和に敗れて
タイトルを失った高山だが、その試合でむしろ高山の評価は上がった
のではないだろうか。僕は高山をそのイーグル戦で初めて見たのだが、
ああいうタイプの選手は結構好きだ。

パンチ力には欠けるが、最軽量級らしいスピーディな動きは見ていて
心地良い。あれだけ動けるのは若さのおかげでもあるだろうし、
また普段の走り込みを相当やっているせいでもあるのだろう。

一方、ここまで日本タイトルを7度も守っている小熊坂だが、
その全てが判定決着だということを差し引いても、どうにも
試合振りがパッとしない。のらりくらりとした動きの中から、
唐突に大きなパンチを振るっていく。パンチ力はありそうだが、
KOで勝とうという意思があまり感じられない。さらに、苦戦した
試合ですら、どこか余力を残しているかのように見える。

接戦を常にモノにしていることからも、地力があるのは間違いない。
ただ、その力をフルに発揮しきれていないような印象を受けるのだ。
一言で言えば「歯がゆいボクサー」である。


そんなわけで、どちらかと言えば高山の勝利に期待して試合を見た
のだが、この日の小熊坂は従来にない気迫を見せ、好カードに
ふさわしい緊迫感を与えてくれた。内容としては高山が素早い動きと
多彩な連打でポイントを集め、負傷判定とはいえ文句ない勝利を
収めたのだが、小熊坂のパンチも危険なタイミングで放たれており、
その潜在能力を垣間見たような思いがした。

僕の中では小熊坂をちょっと見直した試合だったのだが、ボクシング
ファンの間では依然として彼の評価は低い。小熊坂が所属するジムの
会長も引退を勧めているほどだから、どうやら見る目がないのは僕の
方らしい。確かに29歳という年齢を考えれば今後を楽観は出来ないが、
その気になればもうひと踏ん張り出来ない年でもないと思う。


まあともかく、高山はこれで世界王座返り咲きへの大きな一歩を
踏み出したと言えるだろうし、逆に小熊坂は世界再挑戦のチャンスが
大きく遠ざかったと言わざるを得ない。