趣味の園芸

庭で育てている季節の草花や庭木、蘭など

池井戸潤著 「最終退行 」 を読む

2015-06-26 | 読書


<解説>
  都市銀行のなかでも「負け組」といわれる東京第一銀行の副支店長・蓮沼鶏二は、
締め付けを図る本部と、 不況に苦しむ取引先や現場行員との板挟みに遭っていた。
 一方、かつての頭取はバブル期の放漫経営の責任も取らず会長として院政を敷き、
なおも私腹を肥やそうとしている。 リストラされた行員が意趣返しに罠を仕掛けるが、
蓮沼はその攻防から大がかりな不正のにおいをかぎつけ、ついに反旗をひるがえす。
 正義感溢れる主人公・蓮沼が、冷酷にも貸し剥がしを命じる谷支店長に追い落とさ
れるありさまは、 改革が額面通りには進まない現実の理不尽さを的確に示している。
 日本型金融システムの崩壊を背景に、 サラリーマン社会の構造的欠陥を浮き彫り
にする長編ミステリー。       

<読後感>
池井戸潤の銀行を舞台にした作品を続けて3冊読み終わったが、この「最終退行」は
第1章から最終章(=第8章)まで銀行と銀行員が登場して、かなりユニークな作品だ。
著者は三菱銀行に7年間在職した経歴の持ち主だが、銀行と銀行員の実態をよくここ
まで微細にわたり掌握されていることに驚く。
<組織にはまやかしがある。
本当は出世なんかできない人間に、出世できるかもしれないと期待を持たせる。
この仕事はやりがいがある。自分にしかできないのだ、という夢を抱かせる。
銀行という組織では、「夢」という言葉は「錯覚」と同義である。そこに組織の統率が
生まれ、働く意欲を掻き立てる動機が生まれるが、保証はどこにもない。>
この抜粋は第1章67ページの記事であるが、全巻に流れる共通の思潮と思われる。





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池井戸潤著 「架空通貨」

2015-06-17 | 読書



 <あらすじ>
 女子高生・麻紀の父が経営する会社が破綻した----。かつて商社マンだった
 社会科教師の辛島は、その真相を確かめるべく 麻紀とともに動きだした。
 やがて、二人がたどりついたのは、「円」以上に力を持った闇のカネによって、
 人や企業、銀行までもが支配された街だった。

 <読後感>
 文庫版455ページに及ぶ長編であるが、中だるみすることなく一気に読み終えた。
 黒沢麻紀という高校2年の女生徒がこの小説の最初から最後まで中心的な役割を
 与えられているが、その役割を果たすためには、もっと成熟した女性かせめて
 大学生くらいがふさわしいと感じた。
 さて、<あらすじ>で、二人がたどりついたのは、---支配された街だったと
 書いたが、その町とは東京から400キロも離れた田神町ーーー田神亜鉛株式会社
 の企業城下町である。 田神亜鉛が田神町を支配している手段とは、通貨である。
 続く


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池井戸潤著 「ようこそ、わが家へ 」 を読む

2015-06-11 | 読書
 <あらすじ解説>
  真面目なだけが取り柄の会社員倉田太一は、ある夏の日、
 駅のホームで割り込み男を注意した。
 すると、その日から倉田家に対する嫌がらせが相次ぐようになる。
 花壇は踏み荒らされ、 郵便ポストには瀕死の猫が投げ込まれた。
 さらに、 車は傷つけられ、 部屋からは盗聴器まで見つかった。
 執拗に続く攻撃から穏やかな日常を取り戻すべく、一家はストーカー
 との対決を決意する。
  一方、出向先のナカノ電子部品でも、倉田は営業部長に不正の
 疑惑を抱いたことから窮地に追い込まれていく。
 直木賞作家が、 ”身近に潜む恐怖” を描く文庫オリジナル長編。


<読後の感想>
 88ページの以下の一節は、私も永年銀行で働いてきただけに同感である。
「銀行員というのは数字を見ているようでいて、結局は人を見る商売なのだ。
 それは染みついた習性となって、異業種に転じたいまも健在である。」

 倉田は出向先の職場ではよい部下を、自分の家庭ではよい妻子に恵まれて、
 おおむね堅実な生活を送っており、共感を持てた。
 推理小説としても読みごたえがあり、肩のこらない読物だった。
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[土漠の花」を読んで。

2015-06-01 | 読書
  感激したわけではないが、この小説を続けて2回読んだ。
  小説の題名「土漠の花」は耳なれない言葉で冒頭から躓いた。
  小説の舞台は北アフリカ一帯を占める「サハラ砂漠」の
  東部に連なるソマリア周辺であるが、小説の第1行で
 「一面の土漠と佇立する岩山 」からは、私が生まれ育った
、 鳥取市の北部に広がる鳥取砂丘とは、その規模の大小は
  別にして、まったくイメージの異なる情景であろう。
 
  現地氏族間の抗争を避けて保護を求めてきた女性アスキラ
  を救出したことから、追い打ちを仕掛ける現地人兵士と
  陸上自衛隊の激しい銃撃戦が、小説の全ページをつうじて
  間断なく展開される。
  現地人兵士の銃弾に直撃されて次々と倒れる当方隊員の
  生い立ちや生き様は克明に描写され、生き生きとした人間
  像が読者に伝わる。
  その反面、「土漠の花」であるアスキラを前面に出す描写が
  乏しいと思ったのは、私の読みが浅いからかもしれない。
  
  
コメント (2)
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