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■マットベッド⇒3:23
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【随想】
【※この物語はフィクションであり、実在の人物・団体とは一切関係ありません。】
沖縄の中学生が、マッカ―サ元帥のことを、日本に自由と民主主義を伝授したヒーローとして尊敬の眼差しで仰ぎ見ていたころ、沖縄の中学生は、日本の戦争指導者東条英機元首相の事をどのように見ていたか。
東条英機は昭和21年(1946)5月3日、起訴され、23年(1948)11月に死刑判決を受け、翌月23日、巣鴨拘置所内で絞首刑に処された。65歳だった。
遺体は、横浜市西区の久保山火葬場で荼毘にふされたが、遺骨はただちに米軍がいずこかへ持ち去り、ほかのA級戦犯同様、遺族には返還されず、その行方も伝えられなかった。
自国の首相東条英機の絞首刑に対して、沖縄の中学生の脳裏に何の感情も浮かばなかた。 いや、処刑の事実を知る者すら少数派であった。
■遺骨は遺族に返還されず……
沖縄の中学生が五十代になった平成10年(1998)。その年に公開された伊藤俊也監督の作品『プライド 運命の瞬間(とき)』は、東条英機元首相を描いた映画である。
東条は戦後、太平洋戦争の遂行責任者としてA級戦犯容疑で起訴され、極東国際軍事裁判で死刑判決を受けた人物である。その東条を、この作品では英雄視しているのではないかという批判・反発が巻き起こり、かつて論争にまで発展した。それが本当かどうかは映画を観て個人が判断すればよいことであろう。
昨今、太平洋戦争をめぐってわが国では、さまざまな立場から激しい論争が展開されてきた。果たして何が正しいのか、偏することなくできるだけ多くの著作にあたり、自分なりの結論を出してゆくことが大切かと思う。
ただ、過去の怨念やさまざまな言い分もあるだろうが、これからアジア諸国は手を取り合って進むべきだということに関しては異論はないだろう。過去も大事だが、未来はもっと大事なのである。
戦勝国が一方的に敗戦国を裁くことは許されない。戦勝国が敗戦国を裁いて、戦争犯罪人として一方の将兵のみを処刑するのは復讐だ。
だが、マッカーサーの日本占領の重要な目的は復讐であった。
マッカーサーはフィリピンで、数では劣る日本軍の猛攻で、部下を残しオーストラリアへ敵前逃亡せざる得なかった。
誇り高き男マッカ―サ元帥にとって、日本占領は復讐そのものであった。
昭和二十年九月二日に降伏文書の調印式が、戦艦ミズーリ号の艦上で行われた。かくしてマッカーサーの日本の占領、復讐劇が始まった。
占領期間中、日本は主権を持っていなかった。
その中で、戦時捕虜にあたる東條英機をはじめとするいわゆる「A級戦犯」を、不当な裁判にかけ、絞首刑で殺した。
これはリンチであり、捕虜殺害というれっきとした戦時国際法違反である。処刑それ自体が戦争犯罪だった。
東京裁判は、数年に及んだ。 その全てが不法だった。
日本外国特派員協会の斜め向かいに、第一生命ビルがある。
マッカーサーは皇居を見下ろすこの建物に、総司令部を構えた。
マッカーサーは全てを、まるでドラマの場面のように演じた。自尊心の自家中毒によって、精神的に病んだ人間だった。この総司令部もマッカーサーの演出に一役買っていた。
ドイツのニュルンベルグ裁判はイギリスが主導した。そのために、アメリカには出番がなかった。マッカーサーは、日本人への復讐や、アジアへの見せしめに加えて、世界へアメリカの正義を発信しようと東京裁判という芝居を上演したのだ。
日本外国特派員協会は、マッカーサーの日本占領と同時に設立された。理由は、アメリカによる日本占領が、いかに正しく、人道的であり、歴史の偉業であるか、全世界へ報道させるためだった。
日本外国特派員協会の会旗にも、「一九四五年設立」と占領の年が、誇らしげに刻まれている。
いわば日本占領の、もっといえば、東京裁判史観を世界中に撒き散らした総本山が、日本外国特派員協会と言ってもいい。
マッカーサーは、メディアの力を精一杯に活用して、自らのエゴを美しく飾り立てた。現在も日本のメディアに巣食う「マッカーサーの置土産」は、現在でも力を失っていない。
連合国占領軍総司令部という公的な組織のような名称を冠しているが、GHQはマッカーサー一人のものだった。マッカーサーの意志が全てだった。だからそこには、マッカーサーのエゴが、演出を好む映画プロデューサーのような、ナルシストの性格が露わに映し出されていた。
■唾棄すべきマッカーサーの自己顕示欲(演技力)
日本の占領政策も、東京裁判も、マッカーサーの内面が、具体的な日本占領になって露出した姿そのものだ。
その傲慢さと不実は、唾棄すべきものがある。
マッカーサーは、日本の「将軍」を気取っていた。しかも実際の将軍と異なり、その権限はまさに「全能」で、神のようであった。神の御技の地上代行者と過信して、天皇も含めて、全ての被造物をまるで創造主であるかのように、国際法も一切遵守することもなく占領政策を策定し、推進した。
自ら全世界に向けて、アメリカの正義がどのようなものかを、発信しようとした。
さらにマッカーサーは、「日本人12歳論」を唱えた。正確に言えば議会での質問に答えて「アングロ・サクソンは(科学や文化において)45歳の壮年に達しているが、日本人は生徒の段階で、まだ十二歳の少年である」と言ったのだ。自分が自由と民主主主義を伝授する日本をまだ成人になっていない未開の民族と屈辱的罰姓を浴びせていた。
マッカーサー語録に「未開の人々に、文明とはどのようなものか、正義とはどのようなものか、全てのことはどのように解釈され、判断されるべきなのか、その基準をパフォーマンスとして、演出した。
おぞましい矛盾だ。正義を貫くというパフォーマンスに、正義の欠片もなかった。結果的に、まったく正義と公正を欠いたものとなった。文明も、正義も、公正も全て、アメリカが美徳と誇り掲げるものが、日本の占領には存在しなかった。
東京裁判は、アメリカが代表する文明や、正義、公正という美徳を信じた日本人の多くを失望させ、アメリカへの不信を深めさせた。
占領中にアメリカがしたことは悪だった。おぞましい復讐であり、リンチであった。完璧な欺瞞、ナンセンスだけがそこに残された。
マッカーサーは、白人の優越を示そうと意図した。古くはプラトンやソクラテスの活躍したギリシャ文明にまで遡る西洋の文化や文明、伝統と理想の優越を、小さな黄色い種族による未開で、野蛮な社会に見せつけようと試みた。文明の正義とはどのようなものか、思い知らせてやろうと思った。白人の西洋世界における規範とはどのようなものかを、法の支配とはどのようなものかを、未開な民族に教え込もうとした。
日本国民全員が、東京裁判の被告だった。その文明の崇高なる叡智を、ただただ素直に、無批判に受け入れれば良かったのだ。これが、マッカーサーの傲慢で、高飛車な姿勢だった。
今日、日本の大新聞、文部科学省、文化人をはじめ多くの日本国民が、東京裁判史観を信じている。今日の日本は、いまだにマッカーサーの呪縛の渦中にある。
裁かれるべきは、戦勝国側だった。そして公正という、アメリカが高らかに掲げてきた美徳を、規範を、原則を葬り去って、裁判という名に値しない茶番劇を続けた。フェア・プレーの精神を地に貶めて、欺瞞を貫いた。それが東京裁判だった。
西洋文明が為したことは、結果的に非文明の所作であり、正義の基準は、全く実践されなかった。悲しいことであり、また邪悪なことでもあった。
ウェッブ裁判長は、オーストラリアへ戻って退居した後に、「あの裁判は、誤っていた」と、語っている。
今年は、市ヶ谷で極東国際軍事法廷が行われてから七十四年の節目の年にあたる。
私は、日本国民が、東京裁判の虚妄に目覚め、史実と正義の声を上げてくれることに、期待している。日本人が、そう思わないことには、日本の名誉が回復されることはない。
【おまけ】
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