狼魔人日記

沖縄在住の沖縄県民の視点で綴る政治、経済、歴史、文化、随想、提言、創作等。 何でも思いついた事を記録する。

「沖縄語講座」  80はサラワラビ

2007-01-26 14:27:25 | 沖縄語講座

 

東京新聞 筆洗  (2007/1/14)

沖縄本島の北西部に位置する大宜味村は「日本一長寿宣言」の村…

 沖縄本島の北西部に位置する大宜味村は「日本一長寿宣言」の村で知られる。記念碑には「80はサラワラビ、90となって迎えに来たら、100まで待てと追い返せ。我らは老いてますます意気盛んなり」とある。八十歳が子どもなら九十歳はまさに意気盛んだろう▼評論家の秋山ちえ子さんは十二日、九十歳の誕生日を迎え、NHKのラジオ番組に生出演した。元気な声に安心したファンも多かろう。五十七年に及ぶ「ラジオ職人」の第一線から八十八歳で身を引いた。でも職人の魂が許さなかったのか、昨春から一年に五、六回の約束で現場復帰している▼元気の秘訣(ひけつ)は種まきの楽しさがあるから。番組を聴いた人が誰かに内容を伝えることで、秋山さんのまいた種が二粒、三粒…と増えて、やがて芽を出し花を咲かせる▼誕生日にまいた種は、戦争に関する本だけを集めた図書館、図書室をあちこちにつくり、戦争のむごさを伝え続けること。「近所の子に本を読むなど、小さいことでいいから始めて」と呼びかける。秋山さんは名誉村長を務める盛岡市の障害者福祉施設「いきいき牧場」での実現を目指す▼番組では土家由岐雄さん作の「かわいそうなぞう」も朗読した。上野動物園で戦争中に象が殺された実話に基づく絵本。秋山さんは「子どもの戦争はごめんだと思う心を育てたい」と毎年八月十五日に朗読してきた▼「みなさま、ごきげんよう」。秋山さんはいつもの通り番組を終えた。二百件を超える反響があったという。やがてどんな花が咲くのか、楽しみになる。

                   ◇

 

≪「80はサラワラビ、90となって迎えに来たら、100まで待てと追い返せ。我らは老いてますます意気盛んなり」≫

「サラワラビ」の言葉が面白い。

「サラ」は「サラブレッド」のサラで、「サラ新品」のサラでもある。

「サラワラビ」はチャンプルー文化の面目躍如たる、「沖縄語」。

これは上記コラムにお国言葉を書かれ、喜びの余りにインスピレーションだけで間違いの迷路にはまり込んだ話。

                    ◇


おらが国の話題が大手の新聞に載る事は嬉しいもの。

当日記で「沖縄語講座」を連載している者としてはこれをネタに使わない手はない。

サラは沖縄語で≪新しい、とか言葉の意味を強める語≫で、

ワラビは童と書いて子供の事なので、

サラワラビは「まだまだ子供」といったニュアンスになる。

そこで語源は何かと考えたら何故か「サラブレッド」が脳裏をよぎった。

ディープ・インパクトの強烈な印象のせいか。

サラブレッド「thoroughbred」を新グローバル英和辞典でも検索してみたら 
 
1 ((T-))サラブレッド.

2 純血種の動物.

3 ((略式))天性の素質を持った人;育ちのよい[教養のある]人;最高級車.

とある。

さらに「thorough 」には、

【まったくの, 完全な, 根っからの】という意味がある。

これだ! と思わず手を打ったのが運の尽き。

そこで何の躊躇いもなく独断の迷路に迷い込んだ。

≪沖縄語は素晴らしいチャンプルー文化語だ。≫

≪サラブレッドのサラを方言の強調の接頭語に使っているとは!≫

 

だが、その新発見の、・・・いや珍発見の夢は一瞬にして砕け散った。

沖縄語のサラは戦後の米軍占領下に初めて出来た新語ではなく、戦前もあったという。 

調べて見たら残念ながら?サラは日本語由来であった。
 
「さら」は新とも更とも書く。

「さら」をさらに大辞林でも検索すると、
 
≪まだ一度も使っていないこと。新しいこと。また、そのもの。〔接頭〕名詞に付いて、そのものが新しいことを表す。≫とあった。

他の例として「さら湯」「さら地」「さらのゆかた」」があった。


かくしてサラワラビのサラブレッド説は一気に霧散して、

「成りたての未だ未だ子供」くらいで一件落着した。

改めて冒頭の沖縄は大宜味村の「日本一長寿宣言」の碑文に戻ろう。

「80はサラワラビ、90となって迎えに来たら、100まで待てと追い返せ。我らは老いてますます意気盛んなり」

訳文:80歳なんてまだまだガキ、・・・以下略・・・
 
 

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