「旅の坊主」の道中記:常葉大学社会環境学部・小村隆史の防災・危機管理ブログ

日本唯一の防災学部はなくなっても、DIGと防災・危機管理を伝える旅は今日も続いています。

東京消防庁採用試験を前に:防災を仕事にすること

2015-06-06 23:57:37 | 小村ゼミ
防災を仕事にすることは、簡単ではない。

2000年4月、富士常葉大学環境防災学部が開学、専任講師として着任した「旅の坊主」だが、
率直に言えば、就職活動への取り組みには、今とは雲泥の差があった。

学部の4年間(+α)は、しっかり学ばせる自信はあった。
しかし、そこから先の就職口は、自分で探してもらうしかない、という思いだった。
今から思えば、それは大きな大きな、取り返しのつかない判断ミスだった。

大学の評価は、すべてではないにせよ、そのかなりの部分は、どこに就職させるかで決まってしまう。
そのことはわかっていたが、新設地方私大の専任講師に何ができる訳もない、という思いがあった。
もっと偉い人の仕事だろうと思っていたし、学生本人の責任の範囲だろう、という思いもあった。

今から思えば、考えが足らなかった。経営者はそんなことに関心はなかった!
「出口論」(就職先)の貧弱さゆえに、「入り口論」(募集人数)未達を非難され、
日本最初の防災学部は、理事長の極めて強い業務命令により、防災の名を下ろすことを強いられた。
(無能経営者には、名前を変える、程度の知恵しかないようだ。)

1年間の中米での生活と、その間に起こった東日本大震災を経て、新生小村ゼミがスタートする。
社会人に求められているもの(その基本は対人コミュニケーション能力と社会常識)が何かをしっかり見つめつつ、
「防災というぶれない軸」を持った学生を社会に送り出すこと、
それは可能なのだ、ということを、経験の中で得ることが出来た。

その基本は、「出前講座で冷汗をかくこと」であり、その前段階の「天声人語の書き取り」や
「人の目を5秒みて話をすること」等々の基礎的な訓練の積み重ね。

建設コンサルタント業界に職を得るべくがんばっている4年生U君の努力も素晴らしいが、
「地侍」として、自治体職員や消防職員になるべく、がんばる学生も応援したい。

Fラン地方大学の学生の平均的な力からすれば、ダブルスクールの力をかりなければ公務員試験突破は至難の業。
その公務員予備校に通わせることの必要性を学生に認識させることは、
(ある意味では悲しく情けないことではあるのだが)大学教員の仕事なのだろう、と思っている。

ただ、そこに、自己目的化した公務員志望、ではなく、
「防災というぶれない軸」をしっかりと持った上での、「地侍」としての生き方を目指すという、
そこへのこだわりがあってほしい。

明日6月7日、東京消防庁の大卒相当の採用試験(一次)がある。
ゼミからはS君とH君の2人が受験予定。
(2人とももう明日に備えて就寝しているとは思うが。)

「防災というぶれない軸」を持ちつつ、それを仕事にすること。
消防の世界のトップである東京消防庁に、過去2人、ゼミ生を送り込むことが出来た。
S君H君がそれに続いてくれることを願っている。
富士宮出身のS君、静岡出身のH君、東京消防庁で10年なり20年なりキャリアを積んで、
地元に戻ってくるということもありだろう。
でも、まずは一次試験をパスすること。それが達成できなければ次はない。

2人が、持つ力を十分発揮してくれることを願っている。