「旅の坊主」の道中記:常葉大学社会環境学部・小村隆史の防災・危機管理ブログ

日本唯一の防災学部はなくなっても、DIGと防災・危機管理を伝える旅は今日も続いています。

震災20年を迎える神戸の防災関係者が書いた災害復興本、これは素晴らしい!

2015-01-15 22:11:04 | 地域防災
一昨日13日夜の話。
拙ブログに書いたNEXCO東日本の方々とのブレストの後、新幹線で西に向かった。

翌日のJICA関西での活動を控えての前泊であり、またこの機会に、
日弁連災害復興支援委員会などでご活躍の、旧知のN弁護士らと一献、と思ってのこと。
折り良くこの夜、N先生らによる新刊書の拡大編集委員会があるとのことで、
「誰でも参加可能だから顔を出さないか」と言われ、初めて出席させていただく。

塩崎賢明・西川營一・出口俊一・兵庫県震災復興研究センター編
『大震災20年と復興災害』(クリエイツかもがわ)
http://www.creates-k.co.jp/books/book.php?searchbk=1419641151

お名前だけは存じ上げている方が何人も出席されていて、なかなか壮観であった。
アフターも含めて、初参加ながらいろいろと思うところを述べさせてもらったが、
そのことを改めて整理して、ここで示しておきたい、と思う。

日本で防災と言う時、「災害を防ぐのだから予防」と単純に解釈している人も多いが、
本来は、「予防」「応急対応」「復旧復興」の、少なくても3つの段階を含む概念と理解すべきである。
(ちなみにこのような「旅の坊主」の考えは、
日本の防災の基本を定めた災害対策基本法における防災の定義に基づいてのもの。)

で、災害対応から防災の世界に入った「旅の坊主」であったが、
「災害対応に防災の本質なし」「予防に勝る防災なし」との理解に至った訳で、
今は「災害を織り込んだまちづくり・ひとづくりこそが求められる」との論陣を張っているつもり。

しかしながら、三本柱の最後の一つ、復旧・復興には、
恥ずかしながらほとんど手が出せないまま今に至っている。

『大震災20年と復興災害』は、27人の筆者が50近い論点についてまとめたもの。
いずれもハッとさせられる論点ばかり、ということは、一読すればすぐわかる。

防災研究者を自称する「旅の坊主」なれど、
ここに書いてある中身を十分理解出来ているか、また、
背景や周辺情報も含めてそれぞれの論点を噛み砕いて説明出来るか、と問われると、
恥ずかしながら、何とか太刀打ちできるのは1/3というところか……。

語られている論点は、どれも大変重要なものながら、
それらがなぜ重要なのか、そして、それらが持つ意味がどういうものなのか、
素人さんは言うに及ばず、自治体の防災担当者も5年生以上ではないと、
ピンと来てもらえないのではないだろうか、とも思う。

それゆえ、この本は、どう考えても、一般受けする本とは思われなかった。

とすれば……。
執筆者がやさしい言葉で語りかけ、その場での質疑応答にも対応するプログラムをつけて、
いわば「読者を育てつつ」普及啓発を測っていかなければならない本&テーマ、と観た。
で、そのようなことを提案させていただいた。

「旅の坊主」にとっても、同じことが問われている、と思う。
この本で書かれている50近い論点のそれぞれについて、
中学生以上であれば理解してもらえるような、
そんな解説が出来るようにならなければ、防災研究者を自称する資格に欠ける、と。

この本は本当に素晴らしい本である。
取り上げられている論点の重要性と必要性は、
防災についての理解が深まれば深まるほど、良くわかるもの、だと思う。

だからこそ、しっかりと、解説者になれるような「旅の坊主」にならなくては。
今年の目標が一つできたような、それほどまでに、
「インスパイアされるような」素晴らしい本である。

拙ブログをご覧いただいているみなさま、ぜひ、ご購入の上ご一読を!
(そして解説者として「旅の坊主」が必要であれば、ぜひお声掛けを!)