「旅の坊主」の道中記:常葉大学社会環境学部・小村隆史の防災・危機管理ブログ

日本唯一の防災学部はなくなっても、DIGと防災・危機管理を伝える旅は今日も続いています。

防災のプロはどこに???

2014-10-04 23:29:56 | 災害
あの日刊Gダイですら、したり顔で火山防災を語っている。
でも……。どう考えても、本質を見抜いた記事には思えないのが悲しい。

御嶽で予知が出来なかったことを、有珠で予知が出来た事例を引き合いに出すこと自体、
不勉強さを物語っていると思う。

そもそも、普通の山に登ろうにもリスクがあるのだから、
「火の山」に登ろうというのだから、リスクがない訳がない。
リスクを恐れるなら、火山への登山は「するな・させるな」にしかならないはず。

*観測網を密にしても予知はできない:素直じゃない山って多いものね。
(有珠山の噴火プロセスが予知できたのは、素直な有珠山ゆえじゃなかったっけ?)

*シェルターを多くしても山腹噴火に対応できない:
(辛い思いをして山に登ったらシェルターだらけ、なんて、興ざめ!)

*警戒情報伝達システムを整備しても皆避難するとは限らない:というか、避難しない人が大多数だろうに……。
(青空の下、数分後に噴火するから逃げろと言われて、ピンとくる人が何人いる?)

防災の知恵って、そんなに知られていないのだろうか……。

御嶽山噴火災害、「避けられたはずの死」はどこかにあったのか

2014-10-03 23:40:14 | 災害
後期の金曜2限は「災害医療システム」なる科目。
災害時の医療救護活動を支える社会のあり方について考えよう、というのが全体テーマ。
受講生は3年ゼミの2名のみというさみしい科目であるが、
1年生の時から面倒を見てきた学生だけあるので、
刺激的な話も手加減なくぶつけられるのが楽しい。

災害医療の大きなテーマの一つが「避けられた死」。
より詳しくは「避けられたはずの外傷死(Preventable Trauma Death)」と呼ばれるもの。
で、最初の30分をこのテーマに費やす。

普賢岳の場合は火砕流という現象についての理解不足&甘さがあった。

有珠山は素直な火山で、ホームドクターの「診たて」もドンピシャで、
危なくなる前に避難を終えられた。

三宅島は受け入れに難があったが、それはそれで課題は明白。
たとえ実施が難しいとしても、少なくても何を目指すべきかは明らかであった。

では、今回の御嶽山噴火による犠牲者を減らすために何か出来たのか。

「登山者への情報提供等にスピード感を持って取り組む」と政治指導者が言う。
恥ずかしげもなく、よくそういうことを言えるなぁ、と。
聞けば聞くだけ腹立たしくなるのみ。

当方、防災・危機管理分野のプロの端くれのつもりなるも、後知恵一つ思い浮かばない。
ただ……。

自然の前では謙虚であろう、と。
大自然の裾野で、ちっぽけな人間が遊ばせてもらっているのだから、
その自然は時に荒れ狂うこともある訳だし、そうなれば人なんぞ無事では済まない。
そのことくらいは覚悟しておくように、ということ、なのだと思うが……。

でも、こういうことを言うようでは「プロではない」と扱われるのかもしれないね。
したり顔でわかったようなことを言うよりも誠実だ、と、当方は思っているのだが……。

NHKの「防災の日」特別番組にも、にこチャンあり困ったチャンあり、か

2012-09-01 23:29:09 | 災害
9月1日、防災の日。
幸いにも仕事のない土曜日、夕方まで仕事場で雑事。

翌早朝からの静岡県総合防災訓練(於:富士山静岡空港)に備え、
夕方から愛車プラドで、東名経由、吉田IC近くのホテルへ移動。
途中、静岡ICで降りて、盟友、パシフィック・コンサルタンツのYさんと合流、
静鉄日吉町駅近くの、いかにもの洋食屋「キッチンうち山」にて夕食。

結局この日は、NHKの防災番組を3本見ることになった。

率直に言って、「釜石の“奇跡” いのちを守る特別授業」
これはひどかった。少なくても、玄人受けするものではなかった。

http://www.nhk.or.jp/special/detail/2012/0901/index.html#hosogo

http://www.nhk.or.jp/special/eyes/13/index.html

「避難で命は守れるかもしれない。
しかし、避難で人生は守れない。まちも救えない。」

この番組を見て、この厳然たる事実を改めて確認した。

片田先生は、口癖のように、
「10年経ったら大人になる。20年経ったら親になる。」
そう言っておられたはず。
であれば、この番組の中で、
「大人になったら、何ができるおとなになるか。」
それを問うて欲しかった。

番組の中に、
避難しようとしない祖父母を必死になって説得しているシーンが出てきた。
静岡の地震・津波防災を考える上では、そんな時間的余裕はない。
そもそも、東日本大震災では、「ダブルパンチ」、
つまりは、「家がつぶれるような揺れの直後の津波」はなかった。
見ている人に、
揺れが収まってから津波の襲来まで(避難の是非を議論するくらいの)時間的余裕がある、
と思わせてしまいかねない「メタ情報」もあった。
静岡で防災教育をやっている身としては、勘弁してくれ、であったが……。

12月、例の高知県黒潮町でワークショップを行う。
メインテーマは、
「執行猶予の25年をどう使い、災害に強い黒潮町へと変えていくか」
にするつもりである。
子どもたちには、「避難で人生は守れない。まちも救えない。」ということを
徹底的に教え込みたい。

「でも、大きな地震は今すぐ来る訳ではない。
平均すれば20年以上の時間の余裕がある。
だから、その時間をかけて、地震と津波に耐えられるまちに変えて行こう。
そのためのアイディアを、これから一緒に議論しよう。
そして、大人になったら、それを形にしてほしい。」

そんな話をしたいと思っている。

長くなった。
他の2つの番組については、稿を改めて。

(9月13日 さかのぼって記す)

講義「災害と人間社会」から

2008-01-22 23:26:22 | 災害
 大学は補講期間。

 ほとんどすべてが国や自治体の依頼とはいえ、出張が多く勢い休講も
多い「旅の坊主」。補講(つまりは日程変更)制度に助けられているが、
ともかく半期15コマ(うち1回は試験)はノルマ。という訳で、今週は補講の
連続。今日は「災害と人間社会」の講義が1コマ。

 「災害と人間社会」
 2000年春、大学教員になって初めて担当した科目がこれだった。今年度で
8シーズン目。1、2年生向けの防災への導入科目であり、学生にいろいろな
ボールを投げているが、はてさてどう思われていることやら。

 過去2週にわたり、「9・11 NY同時多発テロ 衝撃の真実」を見せてきた。
 ニューヨーク市消防本部の新人消防士の成長の物語を取材中のビデオ・
ジャーナリストの兄弟が、偶然にも9・11NY同時多発テロの歴史の証人と
なり、残してくれた極めて貴重な映像資料である。ただ、これを見せて感想を
言わせる(書かせる)だけでは大学の講義としては面白くない。そこで「国際
司法裁判所でテロリスト国家として判決を受けた国はどこか」を調べさせ、
それと絡ませた上で、このDVDの感想を求めたのだが書かせたのだが、
レポートの出来は……。

 ネットでテロリスト(支援)国家を検索してみると、やはり、ブッシュ政権の
言う幾つかの国が出てきてしまうのだろう。まぁ、それはそれとして仕方が
ないことなのだろうが、わざわざ「国際司法裁判所で判決を受けた」と言及
していたことを完全に無視してレポートを書いているのだから、おいおい、では
ある。

 知る人ぞ知る話ではあるが、国際司法裁判所でテロ国家として有罪判決を
受けた唯一の国は、アメリカ合衆国である。(対ニカラグア)

 学生達には、その事実を受けとめた上で、9・11を考えてもらいたいと常々
思っているのだが……。

 これまた知る人ぞ知る話ではあるが……。選挙によって合法的に成立した
政権をアメリカが支援する軍事クーデターで転覆させた事例がある。その日が
よりによって9月11日。同時多発テロの28年前の話であるが。

 「セプテンバー11」という映画がある。DVDの帯に曰く、

 「9・11はなぜ起きたのか?!11カ国、11人の名匠が世界に問う空前
絶後のプロジェクト!」
 「世界中を震撼させたアメリカ同時多発テロ事件をテーマに、世界各国から
11人の監督が結集。11作品に共通するのは『9月11日』に関し、『11分9秒
1フレーム』の長さで作品を完成させること。」

 このDVDに収録されているケン・ローチ監督による亡命チリ人のエピソードを
見せる。講義のテーマは「物事の表面だけを見るな!」

 こんな講義を続けているのだから、変わり者の先生と思われているのだろう
なぁ……。

                                   (1月27日 記す)

静岡県社協さん、しっかりして下さいね

2008-01-08 23:07:55 | 災害
 朝から大学。
 1月19、20日の両日に予定されているセンター入試のリハーサルを
終え、静岡県ボランティア協会へ。2月23、24日の週末、恒例となって
いる「静岡県内外の災害ボランティアによる図上訓練」の企画会議。
 会議自体はうまくまとまった。まとまったのだが……。

 静岡県社会福祉協議会は、東海地震発生時に期待されている役割に、文字
通り全く気付いていないのではないか、と思わざるをえない事態あり。愕然と
言うべきか、驚愕と言うべきか……。

 どうも、某M部長は、「防災基本計画」に記述されている社会福祉協議会の
役割と、ボランティア関係者との付き合い方、その双方がまったく理解できて
いない模様。全く信じられない。まぁ、一朝事あれば、カメラの砲列の前で
頭を下げるのは、そのM部長ご本人。「旅の坊主」の知ったことではないが……。

 さはさりながら、静岡県社協の当事者意識の欠如によって静岡県民が被害を
こうむる事態は避けなくてはならない。

 防衛庁・自衛隊時代に言われたことを思い出す。
 「馬鹿な大将、敵より怖い」

 はてさてどうしたものか……。

                                     (1月10日 記す)