<雲南市・釜石周辺>
一説に、ヤマタノオロチの物語とは、
異国人の襲来を示すだけでなく、
鉱山の鉱毒、噴火に伴う火砕流、水害による土石流など、
様々な「災害」を表しているとも言われております。
オロチ伝承にたびたび登場する「八」重垣が、
災害を防ぐための「碑」であったように、
「八」塩折の酒と呼ばれる醸造物も、
災害を防ぐための「武器」だったのでしょうか……。
ちなみに、八塩折の酒の「塩折」とは、
「日本酒を使って日本酒を仕込む」という、
非常に手の込んだ酒造りの製法を指しますが、
実は、八塩折の酒に用いられたとされる材料は、
「衆菓(もろもろのこのみ)」という果物で、
「米」ではなかったという話があります。
考えてみますと、神事に日本酒を使用するという慣習は、
「天照太御神」の世になってからのことだと思われますし、
それ以前は、他の植物を原材料とする「醸造酒」が
用いられていた可能性もあるのでしょう。
それらの根拠を示すかのように、
八塩折の酒を醸造したとされる釜石の付近には、
古くから「山葡萄」などの果樹が野生しているそうです。
オロチとの戦いを前に、御室山に籠ったスサノオは、
かつてイザナギが、黄泉の国から追ってきた鬼に、
エビカズラ(ぶどうの一種)を投げつけたように、
このあたり一帯に植生していた「ぶどうの木」に、
何らかの霊力を見出したのかもしれません。