<国立民族学博物館>
「虫おくり」と呼ばれる行事は、
通常稲を食い荒らす害虫の駆除を
目的として行われますが、
その背景には中世の御霊信仰
の影響があると聞きます。
何でも虫害という凶事の大元には、
農作物を巡る不幸な死を迎えた怨霊の祟りがあり、
祟りを成す人間をかたどったワラ人形を、
海や村境の川に流したり焼き捨てたりすることで、
悪霊退散を祈願する意味合いがあるのだとか……。
地域によっては、「七夕行事」との
つながりも見られるそうですから、
「七夕」の概念を持ち込んだとされる「秦氏」の影が、
ここでもチラチラと見え隠れしてまいりますね。
ちなみに、「虫おくり」の「虫」という漢字は、
もともと「蛇」をかたどった象形文字で、
特にマムシに代表される「毒蛇」
を表す言葉だといいます。昔は蛇のことを
「ながむし」とも称したようですし、
ワラで造った「虫」という名の「人型」を、
「蛇」や「龍」と置き換えると、
またもや「民間祭祀」に隠された歴史の暗部が、
ぼんやりと透けて見えるのは気のせいでしょうか……。