夢幻泡影

「ゆめの世にかつもどろみて夢をまたかたるも夢よそれがまにまに」

言問はぬ木すら紫陽花 

2009年05月19日 18時30分03秒 |  気になる詩、言葉

そろそろ紫陽花の季節ですね。
あの五月の雨に濡れながら咲いている紫陽花は周りのよどんだ空気すら浄化してしまうような、そこだけきっぱりとした空間を作ってくれますね、大好きな花です。

トップの紫陽花は何週間か前に花屋で求めたもの。
それからずっと目を楽しませていてくれますけど、花が終わりになりかけていましたので、切って、花瓶に入れてみました。
やはりベランダではちょっと場違い。岬の庭の露地に移したいのですけど、何度も書いているように、紫陽花や梔子は虫にやられてしまって、いくら植えても駄目なのですね。
家のすぐ上にはいろんな色の紫陽花を畑の際に植えてあるところがあって、毎年この日記に使わせてもらっています。
手入れをちゃんとやれば、家でも大丈夫なはずなのですけど、、、
それと、もう一つ、いすみ市の近郊では、茂原から国吉方向へ広域農道を来ますと、紫陽花で有名な館があります。これも去年もアップしていたと思います。



ところで問題の紫陽花。
シーボルトがオランダに持ち帰った何種類かの紫陽花の一つには、奥さんの名前をつけて「オタクサ」(学名は長くって、シーボルトと共同研究者とオタクサの名前が入っています)って紹介していますけど、もともと日本は紫陽花の多い国ですね。でも、このオタクサは、シーボルトの前に日本に来ていたツンベルクがすでに発表していたので、学術的には認められていません。ところが、牧野博士がシーボルトは学術名に自分の恋人だった花柳界の人の名前を使ったって怒られており、逆にそのことで、日本ではあたかもオタクサが学術名として正式になっているように思われている節があります。



ところが不思議なことに大和詩にはあまり出てこない。

万葉集には大伴家持が坂上大嬢に送った戯れの詩とか橘諸兄の祝賀の詩くらいかな。

家持のは

言問はぬ木すら紫陽花諸茅等(もろちら)が
   練(ねり)の村戸にあざむかえけり
           4-773

実を言うと、この詩、よく分からないんですよ。

物を言わない木にすら紫陽花のように移ろうものがある
(まして、私はあなたの手練手管に)欺かれてしまった

珍しく、解説を加えておきます。。。っていうのか、解釈に自信がないので、間違いを指摘していただきやすいようにってことですけど。
諸茅、、、変化しやすい植物、移ろう、、、移ろう心
茅のところでも、茅の葉の色が変わるように、、、、って詩がありましたよね。
練りの村戸、、、練りは、今でも作戦を練るって使う「練る」ですね。練った、考えた心、作戦、方策、、、、、
そんな風な解釈しかできないんですけど、細かい点では間違っているかもしれませんけど、意外と心は掴んでいるかな?

とにかく、大伴家持と坂上大嬢の歌合戦。万葉集にはいくつかでてきますよね。結局、坂上大嬢は家持の正妻になるんですよね。めでたしめでたし、、、そして、それから1000年もこの二人の惚気に付き合わされる日本人にはご愁傷様。(もっとも家持のラブレター代わりの詩は坂上大嬢だけに贈られているわけじゃないけど)


橘諸兄のは

紫陽花の八重咲く如く弥つ代にを
   いませわが背子見つつ偲ばむ
          20-4448

紫陽花の八重に咲いているが如く、八代までも
   栄えてください そのような我が君を偲びましょう、、、

唐詩でもよくありますけど、この手のおべんちゃらの祝い詩って好きじゃないんですけど、どうもうつろう、心変わりをする、誠実じゃない、、、、って、紫陽花に対しての評価がその辺に集中しているときに、紫陽花を勢いのあるもの、盛んなものに例えているこの詩はとても珍しいので、あえてご紹介しました。
それにもう一つ、この時代の紫陽花は山紫陽花、額紫陽花だって言われているのですけど、こちらでは八重って言っていますよね。もう八重の紫陽花があったのですね。
ただし、紫陽花の花びらのように見えるのは花弁ではなくて額です。花はあの花弁状の物の中にある豆粒見たいのものです。ですから、正確には八重とは言えないのかもしれませんね。


古今集や新古今集では思い出せないのです。心変わりを恨む詩なんてのが多い古今集や新古今集ではありそうなのですけど、、、、私の見落としかもしれませんね。もし、ご存知の方がおられましたら教えてくださいね。





蛇の足ですけど、
白居易の紫陽花を2007年6月19日にアップしています。
この詩が入っている詩集は日本でももてはやされて紫陽花という漢字が日本に定着しました。でも中国では結局紫陽花の名前は定着しなかったのですね。
ただこの中で書いていますように、この紫陽花が、今の紫陽花かどうかは疑問視されています。 


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8 コメント

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Unknown (AKI)
2009-05-20 11:20:36
カワセミ風邪で会社を定時にあがったら本当に発熱しちゃってました。ご無沙汰です。
紫陽花って一斉に咲いている状態しか見たことなかったんですが外堀を埋めていくように外から咲いていくんですね。カメラを持つようになって花をまじまじと見るようになりました^^;
博識広くびっくりです。本日はお勉強もさせていただきありがとうです。
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風邪 (赤い風車)
2009-05-20 13:06:15
いや、サボリーマンがほんとの病人になっちゃったんですか。お大事に。
私も、この数ヶ月、風邪気味(?)
いつもではないんですけど、夕方くらいからとか、軽い頭痛と微熱が続いています。
病院にいくほどじゃないやって思っていましたら、新型が流行りだし、今行くと大事になりそうだからって、病院にもいけません。
それに腰がまた痛くなって、散歩を諦めています。
さらに、昨日は歯の一部が欠けて冠がとれちゃいまして、こちらはこれから歯医者通いです。

この紫陽花は、温室で育てたものですから、花が早いのですね。買ってからはそのまま露地においていますけど、もう大丈夫みたいです。
公園などの紫陽花も、もう数日で咲き始めそうですよ。

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昔の (さち)
2009-05-20 20:34:39
紫陽花はガクアジサイがルーツだと思っていました。

今の紫陽花は品種改良された物で、しかも外国から入ってきたものだとばかり・・・

紫陽花の季節も楽しみですね。 今年も紫陽花屋敷の花達に会えるとうれしいのですけれど
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Unknown (赤い風車)
2009-05-20 20:42:55
額紫陽花が古いらしいです。この詩の八重の紫陽花というのは古来のものではなく、中国から入ってきたかしたのだと思います。
紫陽花屋敷ももうそろそろだとは思いますけど、私は、自分のうちの周りをぐるっと回るだけで、堪能できます、、、、シアワセ
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6月の声 (mog)
2009-05-21 12:30:28
 紫陽花は6月の声。

 これからも、傘をさして長靴はいた子どもと紫陽花にカタツムリ、という構図、ずっと使えると良いな。

 温暖化。
 ちょっと心配。
 
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Unknown (赤い風車)
2009-05-21 14:08:41
>傘をさして長靴はいた子どもと紫陽花にカタツムリ
誰の絵だったかな、
いわさきちひろだったのかと思いましたけど、たぶん違うな~
左に大きな長靴を履いた半ズボンの男の子。
手には傘。 右に雨脚と、カタツムリ、、、
絵が浮かぶのですけど、、、、、
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家持のヤキモチ (竹の風音)
2009-05-22 13:52:58
言問はぬ木すら紫陽花諸茅等(もろちら)が
   練(ねり)の村戸にあざむかえけり

家持が伏木の国府に赴任していたときに詠んだ歌が、万葉集に数多く載っています。
それにちなんで、高岡に万葉博物館があります。
いつも誠実に応対してくれる副館長がいて、雛にはまれな活動をしています。

私のほうは「紫陽花や 昨日の誠 今日の嘘」という魔性にさんざん騙されていますが…。

先週、高崎→六本木→木場→佐倉と美術館を駆け巡ったのですが、連絡できなくてゴメンナサイ。
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竹の風音さん (赤い風車)
2009-05-22 16:57:44
>家持のヤキモチ
座布団 三枚!

それにしても、そうですか、、、
風音さんも、子規さんも、、、
騙されて、、、、棄てられて(?)
おろおろ、、、、

でも、色々あっても、、、末一色になっちゃったからいいではないですか、
めでたしめでたし。

紫陽花の 末一色となりにけり

東京の紫陽花の名所 白山神社は歯の神様。
紫陽花が咲いてきたと思ったら、私は歯医者がよいです。

群馬県立、新美術館、森美術館、都美、(まさか相撲博物館じゃないですよね)、民博、川村、市立美、、、、これじゃ、大変ですね~

今度はちゃんと連絡を入れましょう、、、
こちらはてぐすねを引いて赤のカーペットを質屋から出して、待っておりますので、
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