鼠喰いのひとりごと

DL系フリーゲームや本や映画などの感想を徒然に

リカ 五十嵐貴久

2006-02-01 10:30:10 | 本(小説)

「リカ」 五十嵐貴久
幻冬舎文庫 平成15年

***

2001年に「第二回ホラーサスペンス大賞」の大賞を受賞した作品です。
怖い、これは怖い。ネットをやる身としては本当に怖い。
女性の私ですらそうなのだから、実際に身に覚えのある(笑)男性には、もっと怖いのでは~。

感覚としては「助平心を持ったオヤジに制裁を」ってな話なんですが、
ネットの文字の向こうにいる人間のことを、本当は何も知らない、という現実を考えると、
妙にうすら寒くなってしまうんだな。
文通相手が殺人鬼!とか…(ないと思うけど)あったら怖いぞー(笑)

===

幸せな家庭を持つごく普通の会社員、本間は、ある日友人に
「出会い系サイト」について教えられ、興味を抱く。
やがて些細な恋心やときめきを楽しむ、メールでの恋愛ゲームにすっかり嵌った本間は、
ある日「リカ」と名乗る女性と知り合った。
臆病で控えめで、感じの良い印象だったリカは、
メールの内容が親密になるにつれ、段々とその様子を変えていく。
その異常性に本間が気付いたときは、すでに遅かった。

異常な行動、ストーキング、そして…身の回りで起こる残虐な殺人。
警察の介入さえも、救いにならない怪物…それが「リカ」。

===

「もしもし、あたしリカちゃん。今、駅にいるの」
「もしもし、あたしリカちゃん。今、あなたのお家の前にいるの」
「もしもし、あたしリカちゃん。今、あなたの後ろにいるの」

そんな有名な都市伝説を髣髴とさせるこの作品。
というか、作者のかたはこれを踏まえたうえで、
新たな「インターネットの都市伝説」を生み出そうとしたんじゃないでしょうかね。
ネットの出会い系サイトに出没する「リカ」には、口裂け女や、
自宅のベッドの下に潜む男と同じ匂いを感じます。
実際にありそうで、それでいて非現実的な存在。ひとの心の闇がそのまま凝ったような。
存在も実体も、生死すらあやふやな、ひとのかたちをした、ひとではないもの。

物語の前半部分は「いかに出会い系で女性をナンパするか」が詳しーく述べられていて(笑)
これを読んだら、みんな出会い系のプロになれそうかも。
…って、やったことないから本当のところは判らないけどね。

ただ、女性の心理分析においては、ああー、そうかもそうかも、という部分が多くて、
信憑性がありましたね~。例えば
「自分のことが好きになれない、というような女性は、
実際にはその正反対で自己愛が強すぎるタイプが多い。
彼女たちが真に恐れているのは、自分自身が周りの人たちから嫌われること、
そして、それによって自我が崩壊することなのだ」
「嫌われるくらいなら、と自分だけの世界に閉じ篭もろうとするが、
それでは生活ができなくなる。
そのジレンマが、彼女達に自分のことが嫌いだ、という発言をさせてしまうのだ」
(本文103ページから引用)
なんて部分は、凄いと思いました。うん、なんか判るな。

一応ホラーなので、殺人方法とかが…まぁ、多少はグロ系?
でも、読みごたえがありましたー。

また系列として、同じかなーと思うのは、栗本薫の「仮面舞踏会」。
こっちは推理小説ですので、グロくない。
この雰囲気を見てみたいけど、ちょっとね、と思うかたにはこちらを。
これに出てくる、精神に難のある女性「ダフネ」は、リカほどでは無いにしろ、同じ系列。

しかし、このニ作品見てると「ネットをやってる女性像」に少々偏見があるような気も…(汗)



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