鼠喰いのひとりごと

DL系フリーゲームや本や映画などの感想を徒然に

夢の話

2006-08-12 02:22:03 | 雑事

薄暗い、コンクリート打ちっぱなしの、半地下の部屋。
そこに、カーキ色の制服を着た数人の男性が、思いつめた顔で座っている。
そのうち一人の顔はまだ若い…まだ、18にもならない、私の息子。

彼らは、これからここで、自決するのだ。
いまや失われつつある…いや、既に失われたであろう、故国の誇りのために。 

息子にかける言葉は無い。口を開けば、奇麗事しか出ないことはわかっていた。
立派に勤めを果たしなさい、そんな言葉が、今、一体なんになるだろう。

つかの間の、最後の別れのあと、鉄製の重い扉が閉められる。
薄明かりの中、最後に浮かび上がった息子の手には、
毒物で満たされたコップがすでに握られていた。

その場を離れると、遠くから、鈍い振動が地面を伝わってきた。
また爆撃が始まったのだ。
頭を抱えるように逃げ、奥の部屋に逃げ込む。
この建物は、とても頑強にできているし、狙われるような需要な設備も無い。
何より、私はそれ以上避難する気にはなれなかったのだ。
私の一人息子が、あの暗い場所で自ら命を絶とうとしているこの時に、
自らの命など到底惜しむ気にはなれなかった。

振動は収まらない。爆撃はまだ続いている。
いや、むしろ爆音は近づいているようだ。

私は、堪えきれなくなって立ち上がった。
もしかしたら次の瞬間にも死ぬかもしれない、こんなときに、
何を好き好んで自分で命を捨てなければならないのか。
これは違う。こんなことが、許されるはずはない。

廊下を祈るような気持ちで駆け戻り、さきほど閉じられた扉の前に立つ。
どうか、間に合って。生きていて。
そう願いながら扉を開けると、うずくまった男が、
涙にくれてくしゃくしゃになった顔で振り返った。

…生きていてくれた。

ほっとする傍らで、息子は泣きながら謝った。
見事に死ぬはずだった、死のうと思った、
しかし、怖くてどうしてもできなかったと。

顔を歪めて、感じる必要も無い恥辱に耳を赤くして。
それを見て、親としてなんて残酷なことを私は息子に課したのか、という後悔の念が湧く。、
私はいつしか涙しながら、ただただ、いいんだ、生きていていいんだ、と呟いて、
その身体を抱きしめていた。
例え、周囲が息子を裏切り者扱いしようとも、
自分は一緒に歩いていくのだ、と心に決めながら。


***

先日見た夢の内容です。多分、終戦記念日かお盆が近いせいでしょうかねぇ。
何にせよ、こんな内容は夢のままであってほしい。未来永劫。



コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。