鼠喰いのひとりごと

DL系フリーゲームや本や映画などの感想を徒然に

アントールの犬

2018-05-16 00:08:23 | フリーゲーム(ノベル)
「アントールの犬」
無言劇・字の無いノベル・犬好きの犬好きによる犬好きのための作品
制作者:3色ぱん様(公式サイト

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「狂い月」と同じ作者さん(というか、サークルメンバーの一人の方)の作品になりますー。
ほぼ一年くらい前にアップされていたんですが、こちら、公式サイト内だけでひっそり公開されていたため、私が気付いたのはかなり後…半年以上経ってからでした。

何かタイミングを外してレビューしていなかったのですが、今回、過去DLゲームの入ったファイルを整理していて、目に付いたのでご紹介ー

モノは一本道のADV…ノベル?…ドラマ?
特に分岐や選択肢があるわけじゃないので、とりあえずノベルに突っ込んでありますが、いやコレ、ジャンルに迷いますねえ…
むしろイメージが近いのは無声映画…かな。
状況と細かな動作…パントマイムで、とある人物の一生を追っていく形の作品です。


些細な日常生活の一コマの中で、彼の隣に常によりそうのは忠実な愛犬。
子供が生まれ、少年になり、青年になり、恋人ができ、結婚して、また子供が生まれて…
一人のヒトの長い長い一生の中、種類を変え姿を変え、何頭も何頭も。
ただ、一緒に過ごす時間、一緒に歩いていく日々を繰り返し…愛情と思い出だけを残して、やがて去っていく…

「ただ、一緒に歩いただけ」っていうモノローグがカッコイイ!
ヒトと犬とは、種族も寿命も違うけれど…それでも、一時、同じ時間を共有することはできるのですね。
プレイして、なんともいえない余韻を残すゲームでした。
いやぁ、これは犬好きにはたまるまい!
私自身は、犬は好きでも嫌いでもないんですが、それでもじわ~っと来たものね。
主人公?と愛犬の、なんともいえない距離感というか、空気感がすごくイイんですよ。

…つみきのいえ、ってあったじゃないです?
水に沈んだ家が積み重なって、その時々の家族の姿や思い出がそこに残されているやつ。
形は違うけれど、アレと同じようなノスタルジックな気分になってしまう作品でした。

時の流れは、不思議と、物理的な「距離」に近い感覚を呼び起こしますね~
ときに振り返って「ああ、いつのまにか、こんなところまで歩いてきた」って気分になるの。
まあ、距離と違って、戻ることはできないんだけど。


で、シナリオの良さに負けないくらい、スゴイのがグラフィック!
三色ぱんさんは、狂い月でも美麗なグラフィックやマップを魅せてくれていましたが、ドットの表現力も群を抜いていますね~
たぶん、背景から何から、全部これ自作でしょう?
登場人物や、いろんな種類の犬たちのドットの作りの細やかさと、生き生きした動きは必見です。
また、キャラクターだけにとどまらず、彼らの過ごす「家」や、周囲の景色が、時代に合わせて移り変わってゆくのも良い!


小品ながら、全てにおいて手がかかっている…作者様の想いがこもった良作品でした。
どうして、もっといろんなところにアップしないんだろう?勿体ないなぁ…


それなりに大人な年齢の人…そして犬好きな人におすすめしたいゲームです。
じっくり、ゆっくり、大切に…味わいつつプレイしてみてくださいまし。


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