夢職で 高貴高齢者の 叫び

          

だしなしの だし巻きたまご

2016年01月17日 | 俺の料理

俺は女房という師匠のもとで、厚焼き卵の作り方を教わってきた。

ボールに卵を割って入れ、ミリン、砂糖、醤油を適当に加えてかき混ぜる。

ミリンや醤油などは計量スプーンを使わずにビンから適当にそそぐのだ。

俺はこの適当というのが、いまだに理解できない。

それから、四角いフライパンにそそいで焼くのだ。

 

このあいだ、スーパーでだし巻きを買って食べたらおいしかったので、俺はこれを作ることにした。

師匠はネットの動画だ。

まず、調味料を合わせる。

だし汁大さじ3、砂糖大さじ1、塩ふたつまみ、薄口醤油小さじ2分の1。

スプーンで量るところが、女房師匠の「適当」と違うところなのだ。

調味料を合わせた小鉢を大切にわきによせた。

次は卵を3個割る。

俺はネットで見た、片手で卵を割るのを真似してみたくなった。

片手で卵を持ち、ボールのふちにたたく。  それから指で卵のからを開くのだ。

俺は慎重に片手で卵を割ろうとしたら、卵がぐしゃっとつぶれて親指が中に突きささった。

割った卵の白身の中に、こまかいからが散らばっている。

からをさい箸でつまもうとしたが、なかなか出来ない。

スプーンですくおうとしても、小さなからは逃げていく。

俺はスプーンとさい箸で、はさみうちにして、からをつかまえた。

白身と黄身がよく混ざるように、さい箸でかき混ぜた。

これを四角いフライパンに流した。

3回に分けて、卵を巻いていく。

上手に出来たような気がした。


女房がおせっかいに来た

うまく卵を巻いて、上機嫌になっている俺に女房は尋ねた。

「小鉢に入っているのは何ですか?」

あれ! 卵にだしの調味料を入れるのを忘れていた。

どうしよう、だしなしのだし巻き卵なんて、まずいだろうなあ。

俺はだしの入っていないだし巻き卵に穴をたくさんあけた。

そして調味料を流したが、しみこまないのだ。


(穴をたくさんあけた)

それで、フライパンに戻して、この調味料で煮込んでみた。

汁がなくなるまで煮込んだ。

さて、出来たか。  俺は卵を包丁でふたつに切った。

黄身と白身が離れている。  卵がよくとけていないのだ。

食べてみた。

まずい。  だしの味がない。

煮込んだとき、だしが蒸発して中にしみこんでいなかったのだ。

俺はショックを受けた。

いつもは卵と調味料をいっしょにかきまぜたら、すぐフライパンに流す動作をしていた。

今回は最初に調味料を合わせおいてから、卵をとく。

それから、調味料を入れる。

俺は女房師匠から教わったように、最初から卵と調味料を合わせてかき混ぜたら、すぐにフライパンに流す動作を身につけていたのだ。

今回のネットの師匠は調味料を合わせておいてから、卵をとく。

それに調味料を加えるのだ。 順序が違うのだ。

俺は女房師匠から訓練されたように、卵をといてから、すぐフライパンに流すことを身体で覚えていた。

だから、つい、卵をかき混ぜたら調味料を入れないでフライパンに流したのだ。

俺は頭の切り替えが出来なくなり、手順を間違えたのだ。

なんだか悲しくなった。


俺は、「だしなしだし巻き卵」をモサモサと食べた。