降版時間だ!原稿を早goo!

新聞編集者の、見た、行った、聞いた。
「降版時間」は新聞社整理部の一番イヤな言葉。

★新聞を、活版ではこう組んだ(17)

2014年07月31日 | 新聞

【きのう7月30日付の続きです。
写真は、本文と関係ありません。一般紙に夕刊紙の半5段広告が載っていたのでビックリしました】

新聞社で〝つい最近〟1990年代初頭まで行われていた、鉛活字を使った活版組み版( →いわゆる「ホット」。対して、コンピューター組み版編集CTSを「コールド」と呼んだ )。
活版大組みで、僕たち整理部はこう組んでいた、忘れないうちに書き遺しておこう、の第17回。
*CTS=シー・ティー・エス。Computerized Type-setting System。
1960~80年代、朝日新聞社、日本経済新聞社の2社がそれぞれ独自に研究、米IBMと日本IBMが技術協力して開発した。
日本経済新聞社東京本社は1978年にアネックスを、朝日新聞社東京本社は1980年にネルソンを、それぞれ全面稼動した。
その時つくられたソフトの一部は、パソコンの文字訂正などに転用された。
*お断り=新聞社によって、作業工程の名称やシステムは異なります。また、新聞製作や編集で使われる用語は繰り返し補足説明していきます(←僕が忘れないよーに、です笑)。


● 降版時間まで8分だぞ!……とある夜、とある新聞社の、製作局活版部大組み(主な登場人物は7月5日付参照してね)

エア・シューターの故障で、校閲さんの初校直しが滞るというトラブルがあったが、
製作局総動員でなんとか最悪事態は切り抜けられそう。
だけど、集中降版ラッシュで騒然としている製作局大組み。

大刷りゲラを刷っている約1分の間に、製作局休憩室で一服していた僕に、庶務さん(→学生バイトくん)のSくんが
「大刷りできましたぁ。ここ置いときまーす」
と大ゲラ(*❶)を持ってきてくれた。
「うほっ、サンキュー。
あっち(大組みのところ)は、まだドタバタ?」
Sくん「はい、大組みデスクが怒鳴りまくっていますよ、まだ」
「じゃあ、僕は降ろすかぁ。(大ゲラ持ってきてくれて)サンキューな、あとで何か飲む?」
Sくん「チース。んでは、食券あまっていませんかぁ(*❷)
「オッケー。あとでね。
んじゃ、出稿部から赤字があれば持ってきてね」

● 降版時間まで、あと7分@製作局

大ゲラを持って製作局大組みに戻ると、
大組み担当の池さんは、インクに塗れたハンコをふき、活字組みのところに軽く水をかけていた(*❸)
担当の校閲さんは、専用の台で初校小ゲラと大ゲラとを照合していた。
で、整理の僕は、記事の流れ、見出し、写真とエトキ(=写真説明・キャプション)、記事のシリ切れ有無などを急ぎチェックした。
製作局の田島(←仮名です、笑)当夜デスクは、大ゲラに赤鉛筆を滑らせながら、欄外の題字と日付(←信じられないかもだけど、日付が違っていたり、ページノンブル位置が間違っていたりすることがあったのだ)、
広告照合(←指定された社の広告かどうか)、記事の流れをチェックしていた。

あとは、出稿部からの直しを確認して、と。
故障トラブルがあったけど、降版いまのところ順調じゃーん、
と僕は思っていたが、ところがどっこい................長くなったので、続く。


(*❶)大ゲラ
庶務さん(=学生バイトくん)は大ゲラを15枚刷ったが、ゲラ配布先などは下記のとおり(←とある新聞社の一例で、版によっても紙面によっても異なります)
▽編集局12枚=編集局長・局次長・編集部長各1のほか出稿部7枚、整理部長・整理デスク各1枚
▽製作局デスク1枚
▽校閲1枚
▽整理の僕1枚
以上のセクションに配ったが、編集局長はなぜか早版には不在なことが多々あったので、席には大ゲラがあふれかえっていた(笑)

(*❷)食券
社員食堂のみで使える食事補助券。
社員には30枚のほか、バイトくんたちにも20枚以上支給された(←とある新聞社の一例ですからね、笑)。
社員食堂は地下階にあり、夕方から深夜1時30分ごろまで営業していた。
夜11時を過ぎると、メニューは夜食の残り煮物が多くなったよーな気がしたけど、たぶん気のせい(笑)
................と同じよーなことを、元読売新聞にいらっしゃった堂場瞬一さん(51)も『虚報』(文春文庫)で書いていた。

(*❸)軽く水をかけていた
鉛活字についたインク油を拭き取る意味のほかに、
次版組み替えのときに、組んだ活字がこぼれないように水で軽く湿らせた(と大組み工員に聞いた)。
また、きれいに紙型をとる効果もあるとか。
うーん、先人の知恵なり。

★新聞を、活版ではこう組んだ(16)

2014年07月30日 | 新聞

【きのう7月29日付の続きです。写真は、本文と関係ありません】

新聞社で〝つい最近〟1990年代初頭まで行われていた、鉛活字を使った活版組み版( →いわゆる「ホット」。対して、コンピューター組み版編集CTSを「コールド」と呼んだ )。
活版大組みで、僕たち整理部はこう組んでいた、忘れないうちに書き遺しておこう、の第16回。
*CTS=シー・ティー・エス。Computerized Type-setting System。
1960~80年代、朝日新聞社、日本経済新聞社の2社がそれぞれ独自に研究、米IBMと日本IBMが技術協力して開発した。
日本経済新聞社東京本社は1978年にアネックスを、朝日新聞社東京本社は1980年にネルソンを、それぞれ全面稼動した。
その時つくられたソフトの一部は、パソコンの文字訂正などに転用された。
*お断り=新聞社によって、作業工程の名称やシステムは異なります。また、新聞製作や編集で使われる用語は繰り返し補足説明していきます(←僕が忘れないよーに、です笑)。


● 降版時間まで9分だぞ!……とある夜、とある新聞社の、製作局活版部大組み(主な登場人物は7月5日付参照してね)

「早く降ろせよ!△面の整理っ」
「うっせいっ、今『OK用紙』書いてんだよっ」
怒声が飛び交い、騒然としている製作局。
てな、いつもの降版風景を横目に、大組み者の池さんが大ゲラ刷り機にハンコをセットした。
「(庶務さん=学生バイト)Sくん、僕は『あっち』にいるから大ゲラ(*1)頼むねぇ~」
と言って、僕は「あっち」に向かった。
ローラーにインクをつけ、大ゲラを15枚刷るには約1分ほどかかるので、その間「あっち」に行って、次版の組みを考えるのだ。

● 降版時間まで8分!......製作局休憩室

「あっち」は、製作局活版部の休憩室。
フロア内で唯一灰皿があるので、一服なのだ。
普段の製作局休憩室は、活版部工員たちがテレビを観たり(→主に、運動・スポーツ面向けナイター中継や、ニュース番組が流れていた)、
寝転がったり、他紙を読んだり、たばこを吸ったりしている部屋。
1990年代でも禁煙は意識されていたが、局内まだ全面禁煙までにはいっていなかった。
当然、大組みや文選の作業場は全面禁煙なのだけど(*2)

スイングドアを開けると、文選スタッフ数人が休憩していた。
「お邪魔しまーすっ。一本吸わせてくださーい」
文選Nさん「おぅ。今日は早版たいへんだったなぁ。まだ、田島(大組みの当夜デスク)ギャアギャア言ってんのか?」
「そうですねぇ、怒鳴ってますよ、今夜も」
Nさん「あいつ、あんなに元気いっぱいで、今夜最終版までもつのかねぇ.......もうすぐ定年だろうが、あいつ」
「........はぁ」

田島デスクは日ごろから
「鉛活字、活版組み版の最後は、俺が看取る!」
と言っていたのだ。
社のコンピューター組み版(CTS)計画は本決まりになり、労組側にもスケジュールが提示されていた。
社側は、印刷局・製作局で大量の定年退職者が出ることも見込んでCTS計画を進めていたのだった。

................長くなったので、続く。


(*1)大ゲラ=おおげら
大刷りゲラ(おおずりげら)とも。新聞紙面1ページ大の、大きなゲラ。
凸版広告や見出し、凸版見出しなどを載せたハンコに、インクをつけてわら半紙に刷った。
対して、記事1本を刷ったものは「小ゲラ」と言った。

(*2)作業場は全面禁煙=さぎょうばはぜんめんきんえん
1990年代当時(コンピューター端末などが入ってない、活版で新聞をつくっていた)新聞社編集局フロアは、禁煙ではなかった。
僕たち整理部も、部長・デスクらは当然のごとくプカプカ吸っていたっけ(←なんておおらかでステキな職場環境だったのでしょう!……今かんがえると、笑)。
編集局長、局次長、編集部長、出稿部長もガンガン吸っていたし!

部員の机には、ぺらぺらのアルミ製灰皿があり、柱や資料棚の横には、火消し用水が入った大型金属缶がドーンと置いてあった(←ただ、誰が掃除していたのか1度も見たことがなかった。僕は夕方出社の朝刊担当だったから、ということもあるのだろーけど)。

「たばこの火は、ちゃんと消しとけよ。
昔、大組み作業で整理部員が製作局に降りて全員いないとき、
灰皿に残っていたたばこの火が小ゲラに移り、煙が出て編集局内大騒ぎになったことがあったんだぁ。わはははははははは」
と整理部の先輩が言っていた。
ゲラやモニター用紙が風で飛んでしまうということもあるのだろーけど、
編集局では扇風機は、ほとんど使われなかった。

★新聞を、活版ではこう組んだ(15)

2014年07月29日 | 新聞

【7月25日付の続きです。
写真は本文と関係ありません】

新聞社で〝つい最近〟1990年代初頭まで行われていた、鉛活字を使った活版組み版( →いわゆる「ホット」。対して、コンピューター組み版編集CTSを「コールド」と呼んだ )。
活版大組みで、僕たち整理部はこう組んでいた、忘れないうちに書き遺しておこう、の第15回。
*CTS=シー・ティー・エス。Computerized Type-setting System。
1960~80年代、朝日新聞社、日本経済新聞社の2社がそれぞれ独自に研究、米IBMと日本IBMが技術協力して開発した。
日本経済新聞社東京本社は1978年にアネックスを、朝日新聞社東京本社は1980年にネルソンを、それぞれ全面稼動した。
その時つくられたソフトの一部は、パソコンの文字訂正などに転用された。
*お断り=新聞社によって、作業工程の名称やシステムは異なります。また、新聞製作や編集で使われる用語は繰り返し補足説明しています(←僕が忘れないよーに、です笑)。


▼降版時間まで9分だぞ!……とある夜、とある新聞社の、製作局活版部大組み(主な登場人物は7月5日付参照してくださいね)

編集と製作局を結ぶシュータートラブルから校閲初校直しが滞っていたが、
製作局の必死の赤字直しで、なんとか降版遅れが「数分」で済みそうだ(*1)
ところが、紙型どりプレスで降版OK紙面が大渋滞。
製作局当夜デスクと、プレス・スタッフの間で怒声も聞こえた(*2)ので覗きこもうとしたけど、
おっとぉ~、僕はまだ大ゲラも刷っていなかったんだっけ(笑)。

大組み担当の池さんが組み上がったハンコ(*3)を台車に乗せて大ゲラ刷り機に運んだ。
僕は大声を上げて
「庶務さーん(学生バイトくん)、校閲さん、呼んでくれたぁ?」
庶務Sくん
「(大組みを)見ていました(*4)から大丈夫っす。(校閲部には)電話済みでーす!」
僕「サンキュー!じゃあ、大ゲラ頼むねぇ~。僕、あっち行ってるから」
庶務Sくん「了解でーす。大ゲラ、持っていきますから」
僕「いいコだなぁ~Sくんは。あとでコーヒーおごるからね!」
庶務Sくん「ゴチでーす!」

製作局いたるところに置いてあるわら半紙(*5)で、インクに塗れた手を拭きながら、僕は「あっち」に向かった。
「あっち」とは、どこだ?
いいのか? 降版時間接近、大ゲラを刷る前「あっち」に行って?
................長くなったので、続く。


(*1)降版遅れが数分で済みそうだ
新聞社によって違うのだけど、降版遅れがひと桁(9分以内)と、ふた桁(10分以上)では、製作工程管理委員会から整理部へのペナルティーが異なった。
ひと桁(9分以内)→お咎めなし
ふた桁(10分以上)→お咎めあり!
お咎めといっても、たいしたことないのだけど、さすがに度重なると、製作局から〝要注意な整理〟としてマークされた。

(*2)製作局デスクと、プレス・スタッフ
これも新聞社によって違うのだけど、紙型どりプレスは製作局ではなく、印刷局の管轄。
だから、プレス・スタッフは別局の印刷局から来ていた。

(*3)ハンコ
鉛活字は凸型なので、印鑑(=ハンコ)と同じだから(と先輩整理に聞いた)。

(*4)大組みを見ていた
庶務さん(学生バイトくん)は、整理部の各面担が大組み開始約20分後に編集局から降りてきて、各紙面の大組み進行状況をチェックしていた。
組み上がった頃、校閲部に
「△面が組みあがりました。担当者降りてきてくださーい」
と直通電話を入れた。

(*5)わら半紙
製作局の活版部には、小ゲラ刷り用わら半紙があちこちに置いてあった。
僕たち整理部員はインクで汚れた手を拭く紙に使ったり
〝いい見出し〟がパッと閃いたときに伝票代わりにチョコチョコと書いて、文選デスクに持っていったりしていた。
活版時代は「△版△面」さえ記入してあれば、わら半紙だろーが、試し刷り新聞紙余白だろーが、給料袋の裏だろーが、
文選では文字を拾ってくれた。

★古市憲寿さんは40円だった=7月のブックオフ編❷止

2014年07月28日 | 新聞/小説

【きのう7月27日付の続きです】
読み終えた本がたまったので、近所のブック・オフに持っていった。
単行本『かもめのジョナサン完成版』(リチャード・バック、五木寛之さん(81)創訳、新潮社、本体1,300円)は、まだ新刊書店で好評発売中でも、買い取り価格は290円!
では新書、文庫本、雑誌は、どーなのだ。

お断り=ブック・オフの買い取り価格は地域や店舗特性で多少変動があるそーです。
また、僕が持って行った本・雑誌は、いずれも汚れナシ、書き込みナシ、ページ折りナシの〝3ナシ美本〟のつもりでした、笑。

【新書部門】買い取り価格が大幅にダウンしていた!

● 新潮新書『だから日本はズレている』古市憲寿さん(29)、本体740円
→買い取り価格は40円!.......40円!わずか40円!40円!わずか40円!40円!(←頭の中でエコー状態)=写真

「ノマドとはただの脱サラである」
「やっぱり学歴は大切だ」
「ポエムじゃ国は変えられない」.........
平易な文章で、沈みゆく日本を痛快辛口批評。思わず、ひざを叩いたことが多々あり。
続編書いてほしいけど、古市さん30歳になっちゃうかも。

● 文春新書『生きる悪知恵/正しくないけど役に立つ60のヒント』
● 同『家族の悪知恵/身もフタもないけど役に立つ49のヒント』西原理恵子さん(50)、本体各800円
→買い取り価格は40円!40円!40円!40円!
(再びエコー状態)
新書は、ほか7冊持ち込み。

寅さんなら
「さくらっ、それを言っちゃあおしまいよっ」
的な、本音勝負の西原理恵子さん本は、いずれも面白かった。

新書の、先月6月までのブック・オフ買い取り価格は70円だった(→6月19日付みてね)から、
大幅ダウンの一律40円だった。
でも、膨大な新書在庫棚を見上げると、まぁ仕方ないよねぇ108円でも売れていないもんねぇ、と思ってしまった。

【文庫本部門】買い取り価格は50円なり→つまり、新書より文庫本買い取り強化なのか

● 幻冬舎文庫『55歳からのハローライフ』村上龍さん(62)、本体600円
● 講談社文庫『盤上のアルファ』塩田武士さん(35)、本体640円
文庫は、ほかに11冊持ち込み。

『盤上の』は塩田さんデビュー作。
2010年の小説現代長編新人賞受賞作。
同賞選考会は、わずか15分で終わりそうになったという伝説的作品なのだ................ということは、さておき。
なにも塩田さん、神戸新聞社を退社(2012年)しなくてもいいのにねぇ、と思ったけど(←余計なお世話)。

【雑誌部門】発売1カ月以内なら、買い取り30~50円なり

● 「BRUTUS」喫茶店特集号
● 「東京人」ガロとコムの時代特集号
雑誌は、ほかに2冊持ち込み。


なぜ突然、新書だけが買い取り価格40円になったのかがナゾだったが、
メビウススーパーライト6mgが2箱と文庫本が1冊買えて、喫茶店でコーヒーフロートが飲めたから、まぁいいかぁ、でございました。

★ジョナサンは290円だった=7月のブックオフ編❶

2014年07月27日 | 新聞/小説

【写真は、本文と直接関係ありません】
本がたまったので、近所のブック・オフに持ち込んだ。
まさか、まさか、まさか連発の驚くべき買い取り価格であった………かな。

お断り=ブック・オフは地域などによって買い取り価格、販売価格が多少異なるそーです。
また、僕が持ち込んだ本はいずれもオビ付き、カバー汚れなし、本文書き込みなし、ページ折りなし、の〝美本〟のつもり、笑。

【単行本部門】買い取り価格=290~最高470円
●『流転の細胞』仙川環さん(46)新潮社、本体1,600円→買い取り価格は380円

仙川さんは元日経記者。デビューした小学館文庫時代からの医療ミステリーは読んでいる。
でも、なにも日経を辞めなくてもいいのに……と思った(→関係ないか)。

●『神秘』白石一文さん(55)毎日新聞社、本体1,900円→買い取り価格は470円
固定ファンが多くいるためか(←僕をはじめ、ね)意外と高額な買い取り価だった。
同作は、講談社百周年記念出版『この胸に深々と突き刺さる矢を抜け』のような人物設定。
余命1年と宣告された、総合出版社の50代編集局長は〝ある人物〟に会うため、神戸に向かった。彼はナニを見たのか………最近、白石さんはスピリチュアル系が多くなっているよーだ。

●『失踪都市』笹本稜平さん(62)徳間書店、本体1,600円→買い取り価格 380円
所轄刑事と警視庁捜査本部との確執描く『所轄魂』第2弾。
面倒くさそうな事件を、警視庁が握り潰すなんてこと…………あるかもしれないな。
いや、ありそうだな。
いやいや、きっとあるな。
これぞ、ネオ警察小説。
福祉と高齢者問題がメーンテーマなので、途中でやりきれなくなった………。

●『男ともだち』千早茜さん(34)文藝春秋、本体1,550円→買い取り価格 380円
同作で直木賞受賞と思ったが、残念本(→7月12日付みてね)。大人の男女間の友情を描く、考えさせられた一冊。
でも、読み終えちゃったからね……。

●『かもめのジョナサン完成版』五木寛之さん(81)新潮社、本体1,300円→買い取り価格 290円
40年ぶりのジョナサンが朝日新聞をはじめ各メディアに取り上げられたからか、発売10日ほどで重版。
(ちなみに、五木さんファンの僕は3冊買い、2冊を知人に渡しましたが、
本のプレゼントって迷惑な場合が多々あることを自分でも知っていただけに、ありがた迷惑でしたね m(__)m でした)
人気本と思われたけど、
意外に買い取り価格が低いのにビックリ。
たぶん、これから大量に中古本市場に流れ込むからかなぁ。

【新書部門】
買い取り価格…………仰天したので、続く。

★新聞を、活版ではこう組んだ(14)

2014年07月25日 | 新聞

【7月6日付の続きです。
写真は本文と関係ありません】

新聞社で〝つい最近〟1990年代初頭まで行われていた、鉛活字を使った活版組み版( →いわゆる「ホット」。対して、コンピューター組み版編集CTSを「コールド」と呼んだ )。
活版大組みで、僕たち整理部はこう組んでいた、忘れないうちに書き遺しておこう、の第14回。
*CTS=シー・ティー・エス。Computerized Type-setting System。
1960~80年代、朝日新聞社、日本経済新聞社の2社がそれぞれ独自に研究、米IBMと日本IBMが技術協力して開発した。
日本経済新聞社東京本社は1978年にアネックスを、朝日新聞社東京本社は1980年にネルソンをそれぞれ全面稼動した。
その時つくられたソフトの一部は、パソコンの文字訂正などに転用された。
*お断り=新聞社によって、作業工程の名称やシステムは異なります。


▼降版時間まで10分……@とある夜、とある新聞社の製作局活版部大組み(主な登場人物は7月4日付みてね)

編集局と製作局をつなぐシューター故障が発生。たまっていた校閲さんの赤字ゲラを、製作局総がかりで大組みしたばかりのハンコにさしていた。
僕たち整理部から見て〝怖い〟のは、この赤字直しは、あくまで初校ということ。
記事ゲラによっては、
①データや表記の赤字直しが少ない
②データに誤りがあるうえ、文字表記もおかしい→たくさんの赤字直しがある

①の場合は、まぁそれほど心配しなくていいのだけど(→つまり、大刷りで照合すればいい)
②の直し多数アリの場合は、校閲さんは普通「要再校」(*1)という赤スタンプをゲラ脇にドーンと押して、直し確認用再校をとるのだ。

もう降版時間に入っている面もあるから、校閲直し「一発勝負!」状態なのだ。
も、も、もし、赤字さし違え(*2)があったら…………。

▼降版時間まで9分!

騒然としている製作局。
田島当夜デスクと、工程管理委員会(*3)のオジサン(←だって、本当にオジサンばかりなんだもん)は怒鳴っていた。
「多少の赤字直し漏れは構わないからなっ。とにかく降版時間遅れを最小限にしろっ」

赤字を直したそばから、再校小ゲラを照合した校閲面担は
「はいっ、◯面オッケー!」
校閲OKが出たので、整理面担も
「はいっ、◯面降版オッケー!」
田島デスク
「よしっ(整理面担に向かって)◯面OK用紙出せっ」
「おいっ(プレス機の部員に向かって)降ろせ!降ろせ!」
という声があちこちで聞こえた。

僕の面は大刷り機に入り、急いで大ゲラを15枚刷った。
ま、ま、間に合うのか、僕は…………長くなったので続く。


(*1)要再校=ようさいこう
「要再校」の威力は絶大である。
この赤スタンプが押してあるゲラは、直し処理後もう一度インクをつけて刷り、
校閲面担に確認用小ゲラを戻さなくてはいけなかった。
活版時代は「直しましたよぉ」という意味で、小ゲラにピンセットで穴を開けた(→新聞社によっては、直した担当者の印をゲラに押したところもあったが、僕は「何もそこまでやらなくてもねぇ……」と思った)

(*2)赤字さし違え=あかじさしちがえ
文選が拾った鉛活字を、赤字直し箇所とは違うところにさしてしまうこと。

(*3)工程管理委員会=こうていかんりいいんかい
正式には、製作工程管理委員会。
製作局や編集局の元デスククラスで構成し、各版の降版状況をチェックしている。
台風や大雪・大雨、自然災害などで輸送・専売店配達に障害が出る場合、
あるいは大規模集中工事などで輸送道路が使えなくなる場合に、
「本日、降版30分繰り上げ!」
「降版時間、厳守!厳守!厳守!」
と新聞社全体&サテライト印刷センターに指令を出す。
ふだんは別室でお茶をのんだり煎餅食べているけど(←だって本当だもん、笑)
何かトラブル発生時に製作局・編集局に駆け込んできやがる………ではなく、駆け込んでいらっしゃる(笑)。

★東野圭吾さん新刊文庫は、かなりお得だった❷止

2014年07月24日 | 新聞/小説

【きのう7月23日付の続きです】
初版いったいどのぐらい刷ったのだろう、と書店で唸ってしまった=写真
東野圭吾さん(56)の新刊文庫『マスカレード・ホテル』(集英社文庫、本体 760円)は一気読みの面白さで〝タメ〟にもなった。
(邪魔にならない程度のストーリーは、きのう23日付みてね)

【なるほどねぇ…❸】
小説の舞台「ホテル・コルテシア東京」は、日本橋の「ロイヤルパークホテル東京」をイメージモデルにしている。
ホテル・フロントには、実にいろいろな「お客様」が訪れるのだなぁ(東野さんは取材されたので、たぶん実際に来られたトンデモな方々なのでしょう!)。

▽俺は常連だぞ、チェックイン手続きを優先させろっと怒声をあげる中年男性客
▽「この部屋には霊がいるわ」と部屋を変えさせる女性客
▽「私の言うことを聞きなさいっ」とフロントで命令する女性客
▽ホテルの公式サイトを見せ「この夜景と違うじゃないか。部屋を替えろよっ」とクレームつけまくり客

いやはや………………〝タメ〟になりました!
僕も、気をつけます!

【なるほどねぇ…❹】
ほとんどの人は、謎の羅列数字はだいたいアレだろーと早い段階で分かるはず。
3つの連続殺人事件犯人探しに加え、第4の殺人予告が加わるから、ストーリー展開のテンポがいい。
捜査本部、所轄刑事、同僚捜査員の思惑が入り乱れる警察小説でもあるし、
ホテル業務のリアルが分かるお仕事小説でもあるし、
新田刑事と山岸フロントの仲も気になるヒューヒュー小説でもあるし(笑)。
中盤からページめくりが止まらなくなった………なぜかはムニャムニャで言えません。
まさかっ!そんなっ!の衝撃ラスト。
以上、謎解き4つ+警察小説+お仕事小説+ほか、の、かなりお得なノン・ストップミステリーでした。

★東野圭吾さん新刊文庫、面白かった❶

2014年07月23日 | 新聞/小説

東野圭吾さん(56)の文庫新刊『マスカレード・ホテル』(集英社文庫、本体760円=写真中央)を読んだ。
文章が硬いので、僕は今まで東野さんミステリーは食指が動かなかったけれど、
この『マスカレード・ホテル』はノン・ストップだった。
来8月も2カ月連続刊行『マスカレード・イブ』(いきなり文庫!)だから、集英社スゴイぞ、大盤振る舞いじゃん、買うぞ(←連続刊行記念キャンペーンプレゼント付きだし、笑)。

【バレない程度のストーリー】
東京・品川、千住新橋、葛西ジャンクションで、連続殺人事件が発生した。
いずれの事件現場にも、謎の羅列数字が残されていた。
警視庁は、次の第4の殺人事件は一流都市ホテル「コルテシア東京」で行われる可能性があるとし、捜査員数人をホテル従業員として潜入捜査を開始した。
フロントクラークには、外国語に精通している新田浩介刑事。
そして、彼の指導担当に山岸尚美スタッフがついた。
現職エリート刑事でありながら身元をあかせぬ急造フロントマン新田とベテラン尚美の前に、次から次と怪しげな「お客さま」が現れた………(あとは言えませぬ)。

【なるほどねぇ…❶】
小説の舞台、超一流ホテル「コルテシア東京」のイメージモデルは、東京・日本橋のロイヤルパークホテルズ(←日本橋を舞台にした『麒麟の翼』のとき、東野さんが利用されたホテルでしょうか?)。
業界特有の用語などが参考になった(←何の参考?)。

▽スキッパー
料金を支払わずに立ち去る人。
ホテルは基本的に「客はルールブック」とする立場だが、
「料金を支払わない方はお客様ではありません。まず支払っていただけるよう説得し、それが叶わない場合には警察に通報します」(フロント・山岸尚美)
フロントクラークは経験上の勘で、スキッパーか、デポジット(保証金)を要求すべき客か分かるという。
また、都内ホテルから寄せられたスキッパーに関する情報を集めたファイルがあり、
性別・推定年齢・顔や身体の特徴・どんな偽名、どんな住所を使ったか、どんなものを注文したか、
などが細かく記録されているという。
………へぇ~。

▽クレーマー・リスト
ホテル公式ホームページに載っている内容や景色と違うとトンデモ苦情を言う客は
「時々いる」
ので、他ホテルと協力して「クレーマー・リスト」ファイルを作製しているという。
「東京タワーが見えないじゃないか!」という客には、空室があれば見える客室を用意することもある、とか。
…………へぇ~。

▽備品を持ち帰る客→問題ある客
「先月そのお客様が宿泊された際、チェックアウト後にバスローブが紛失していることが判明しました。
当ホテルのバスローブは一着2万円近くするんです。宿泊のたびに持ち帰れたらたまりません」(同・山岸尚美)
度重なる備品持ち帰り客は
「問題ある客」
として、ホテルは必ず記録してあるとか。
………ドキッ。す、すみません!誤って、ボールペンが荷物に紛れ込んでいたことがありました。「問題ある客」なんですね、僕は。

【なるほどねぇ…❷】
ホテルものミステリー先駆といえば、森村誠一さん(81)。
集英社PR誌「青春と読書」に、
「『マスカレード・ホテル』を読む」
と題した文を寄稿されているが、タイトルは
「異界の夜景」
………お好きだなぁ「異界」とか「異形」って言葉。
さらに、
「理念/ビジョン」
「商業的/ビジネス」
「ホスピタリティ/おもてなし」
「技術/テクニック」
と、なんともいえない独特のルビが数多く振られていて、お変わりないですよねぇ、と思ってしまった。
というか、同誌に作者インタビューがないのが「あれ?」だった。

…………長くなったので続く(かな⁈)。

★米林監督原画展は美少女だらけだった。

2014年07月22日 | 新聞/小説

公開中のスタジオジブリ最新作「思い出のマーニー」(→7月9、11日付みてね)の米林宏昌監督(40)による映画公開記念原画展に行った(東京・池袋の西武本店別館2階の西武ギャラリーで7月28日まで)=写真

第1作「借りぐらしのアリエッティ」(2010年)もそうだったけど、米林監督の描く少女は実に上手い&愛くるしい(ジブリで一番ではないかしらん)。
宮崎駿監督(73)が
「麻呂(米林監督の愛称=物腰が平安貴族のよーだから、とか)は、暇さえあれば美少女ばかり描いている。それも、外国のコ」
とコボしてしたという。
ちなみに、鈴木敏夫さん(65)は
「宮さん(宮崎駿監督)は、戦闘機などの〝兵器〟ばかり描いているくせに」
と心の中でつぶやいていた、と会場のボードに寄せていた。

「マーニー」の絵コンテが圧巻。1枚欲しいぞ。
ノートのいたずら書き風でも、表現力のある人は、何を描いてもアートになるのだなぁ。
ラフスケッチや下絵を、親子連れが一枚一枚見入っていた。
中学生らしいメガネをかけた女のコが
「ふーん、アニメ映画ってこんなにすごいんだぁ。あたしも勉強しなきゃ」
将来のジブリ・アニメーターになるかもしれないね。
こういうプロの技を間近で見ると、子どもたちは真剣になるのだねぇ。
技あり、ジブリ夏休み企画。

原画展には多くの人が詰めかけていたけど、併設のジブリ・ショップも混雑。
知人に、「マーニー」映画サントラ盤CDとポストカードを土産に買ったのでございました。

★最終版で「馬棚」が消えていた。

2014年07月20日 | 新聞


「おーーい、19日付の朝日新聞夕刊(東京本社版)見たかぁ?
『活版印刷じわり再評価』(←これは3版の見出し)の記事」=写真左
と知人3人からLINEトークが来た。
LINEで連絡、ありがとうございまーす!
(→ただ、同夕刊、配達エリアによってアタマを替えていたので、
「左カタの特集?」
「ん?トップだろ」
と3人と話が噛み合わないことも、笑)。
持つべきものは、活版仲間だよねぇ。

同記事にも出ていた凸版印刷の「印刷博物館」(東京・文京区)。
僕も行った。
実際に鉛活字を手拾いし、インテル(行間をつくる金属片)を挟んで、手作りカードを印刷する体験ができるのだ。
新聞社の活版で編集整理をしていた割には、僕は文選の活字棚から文字をうまく拾えなかった。
まあ、
同博物館は雑誌や書籍で使った「ポイント活字」、
僕たち新聞社組み版は「倍数活字(*1)」だから、多少大きさが違うのだけど。

「へぇー、細かいねぇ」と感じたのは、同夕刊の写真とエトキ(写真説明=キャプション)を一部差し替えていたこと。
最終版では「馬棚」がなくなっている。
朝日活版製作局にいらした年配者からのレクチャーかしらん。

3版=(上)「馬棚(うまだな)」から一つ一つ活字を選ぶワークショップの参加者=東京都文京区(右下)活版で印刷した名刺やカードは人気が高い(左下)「馬棚」に並んだ活字

4版=(上)4本足で支え馬の背のように見えることなどから、通称「馬(うま)」と呼ばれる棚。ワークショップの参加者は活字拾いを楽しんだ=東京都文京区(右下)印刷所で働き始めた石井裕美さん(左下)築地活字が考案した新・活字ホルダー


(*1)倍数活字=ばいすうかつじ
新聞社では活版組み版時代、「倍」という単位を使い、地紋・見出し・写真・組み版などを製作した。
現在でも人事欄などで使っている、小さな扁平活字の縦サイズが
1倍=88ミルス
1980年代以降に登場したコンピューター組み版CTSでは、11ミルスを1Uと換算し、8U(ユー=ユニットの略)とした。
つまり、1倍=88ミルス=8U。