降版時間だ!原稿を早goo!

新聞編集者の、見た、行った、聞いた。
「降版時間」は新聞社整理部の一番イヤな言葉。

★新聞を、活版ではこう組んだ(15)

2014年07月29日 | 新聞

【7月25日付の続きです。
写真は本文と関係ありません】

新聞社で〝つい最近〟1990年代初頭まで行われていた、鉛活字を使った活版組み版( →いわゆる「ホット」。対して、コンピューター組み版編集CTSを「コールド」と呼んだ )。
活版大組みで、僕たち整理部はこう組んでいた、忘れないうちに書き遺しておこう、の第15回。
*CTS=シー・ティー・エス。Computerized Type-setting System。
1960~80年代、朝日新聞社、日本経済新聞社の2社がそれぞれ独自に研究、米IBMと日本IBMが技術協力して開発した。
日本経済新聞社東京本社は1978年にアネックスを、朝日新聞社東京本社は1980年にネルソンを、それぞれ全面稼動した。
その時つくられたソフトの一部は、パソコンの文字訂正などに転用された。
*お断り=新聞社によって、作業工程の名称やシステムは異なります。また、新聞製作や編集で使われる用語は繰り返し補足説明しています(←僕が忘れないよーに、です笑)。


▼降版時間まで9分だぞ!……とある夜、とある新聞社の、製作局活版部大組み(主な登場人物は7月5日付参照してくださいね)

編集と製作局を結ぶシュータートラブルから校閲初校直しが滞っていたが、
製作局の必死の赤字直しで、なんとか降版遅れが「数分」で済みそうだ(*1)
ところが、紙型どりプレスで降版OK紙面が大渋滞。
製作局当夜デスクと、プレス・スタッフの間で怒声も聞こえた(*2)ので覗きこもうとしたけど、
おっとぉ~、僕はまだ大ゲラも刷っていなかったんだっけ(笑)。

大組み担当の池さんが組み上がったハンコ(*3)を台車に乗せて大ゲラ刷り機に運んだ。
僕は大声を上げて
「庶務さーん(学生バイトくん)、校閲さん、呼んでくれたぁ?」
庶務Sくん
「(大組みを)見ていました(*4)から大丈夫っす。(校閲部には)電話済みでーす!」
僕「サンキュー!じゃあ、大ゲラ頼むねぇ~。僕、あっち行ってるから」
庶務Sくん「了解でーす。大ゲラ、持っていきますから」
僕「いいコだなぁ~Sくんは。あとでコーヒーおごるからね!」
庶務Sくん「ゴチでーす!」

製作局いたるところに置いてあるわら半紙(*5)で、インクに塗れた手を拭きながら、僕は「あっち」に向かった。
「あっち」とは、どこだ?
いいのか? 降版時間接近、大ゲラを刷る前「あっち」に行って?
................長くなったので、続く。


(*1)降版遅れが数分で済みそうだ
新聞社によって違うのだけど、降版遅れがひと桁(9分以内)と、ふた桁(10分以上)では、製作工程管理委員会から整理部へのペナルティーが異なった。
ひと桁(9分以内)→お咎めなし
ふた桁(10分以上)→お咎めあり!
お咎めといっても、たいしたことないのだけど、さすがに度重なると、製作局から〝要注意な整理〟としてマークされた。

(*2)製作局デスクと、プレス・スタッフ
これも新聞社によって違うのだけど、紙型どりプレスは製作局ではなく、印刷局の管轄。
だから、プレス・スタッフは別局の印刷局から来ていた。

(*3)ハンコ
鉛活字は凸型なので、印鑑(=ハンコ)と同じだから(と先輩整理に聞いた)。

(*4)大組みを見ていた
庶務さん(学生バイトくん)は、整理部の各面担が大組み開始約20分後に編集局から降りてきて、各紙面の大組み進行状況をチェックしていた。
組み上がった頃、校閲部に
「△面が組みあがりました。担当者降りてきてくださーい」
と直通電話を入れた。

(*5)わら半紙
製作局の活版部には、小ゲラ刷り用わら半紙があちこちに置いてあった。
僕たち整理部員はインクで汚れた手を拭く紙に使ったり
〝いい見出し〟がパッと閃いたときに伝票代わりにチョコチョコと書いて、文選デスクに持っていったりしていた。
活版時代は「△版△面」さえ記入してあれば、わら半紙だろーが、試し刷り新聞紙余白だろーが、給料袋の裏だろーが、
文選では文字を拾ってくれた。

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