降版時間だ!原稿を早goo!

新聞編集者の、見た、行った、聞いた。
「降版時間」は新聞社整理部の一番イヤな言葉。

★新聞を、活版ではこう組んだ(14)

2014年07月25日 | 新聞

【7月6日付の続きです。
写真は本文と関係ありません】

新聞社で〝つい最近〟1990年代初頭まで行われていた、鉛活字を使った活版組み版( →いわゆる「ホット」。対して、コンピューター組み版編集CTSを「コールド」と呼んだ )。
活版大組みで、僕たち整理部はこう組んでいた、忘れないうちに書き遺しておこう、の第14回。
*CTS=シー・ティー・エス。Computerized Type-setting System。
1960~80年代、朝日新聞社、日本経済新聞社の2社がそれぞれ独自に研究、米IBMと日本IBMが技術協力して開発した。
日本経済新聞社東京本社は1978年にアネックスを、朝日新聞社東京本社は1980年にネルソンをそれぞれ全面稼動した。
その時つくられたソフトの一部は、パソコンの文字訂正などに転用された。
*お断り=新聞社によって、作業工程の名称やシステムは異なります。


▼降版時間まで10分……@とある夜、とある新聞社の製作局活版部大組み(主な登場人物は7月4日付みてね)

編集局と製作局をつなぐシューター故障が発生。たまっていた校閲さんの赤字ゲラを、製作局総がかりで大組みしたばかりのハンコにさしていた。
僕たち整理部から見て〝怖い〟のは、この赤字直しは、あくまで初校ということ。
記事ゲラによっては、
①データや表記の赤字直しが少ない
②データに誤りがあるうえ、文字表記もおかしい→たくさんの赤字直しがある

①の場合は、まぁそれほど心配しなくていいのだけど(→つまり、大刷りで照合すればいい)
②の直し多数アリの場合は、校閲さんは普通「要再校」(*1)という赤スタンプをゲラ脇にドーンと押して、直し確認用再校をとるのだ。

もう降版時間に入っている面もあるから、校閲直し「一発勝負!」状態なのだ。
も、も、もし、赤字さし違え(*2)があったら…………。

▼降版時間まで9分!

騒然としている製作局。
田島当夜デスクと、工程管理委員会(*3)のオジサン(←だって、本当にオジサンばかりなんだもん)は怒鳴っていた。
「多少の赤字直し漏れは構わないからなっ。とにかく降版時間遅れを最小限にしろっ」

赤字を直したそばから、再校小ゲラを照合した校閲面担は
「はいっ、◯面オッケー!」
校閲OKが出たので、整理面担も
「はいっ、◯面降版オッケー!」
田島デスク
「よしっ(整理面担に向かって)◯面OK用紙出せっ」
「おいっ(プレス機の部員に向かって)降ろせ!降ろせ!」
という声があちこちで聞こえた。

僕の面は大刷り機に入り、急いで大ゲラを15枚刷った。
ま、ま、間に合うのか、僕は…………長くなったので続く。


(*1)要再校=ようさいこう
「要再校」の威力は絶大である。
この赤スタンプが押してあるゲラは、直し処理後もう一度インクをつけて刷り、
校閲面担に確認用小ゲラを戻さなくてはいけなかった。
活版時代は「直しましたよぉ」という意味で、小ゲラにピンセットで穴を開けた(→新聞社によっては、直した担当者の印をゲラに押したところもあったが、僕は「何もそこまでやらなくてもねぇ……」と思った)

(*2)赤字さし違え=あかじさしちがえ
文選が拾った鉛活字を、赤字直し箇所とは違うところにさしてしまうこと。

(*3)工程管理委員会=こうていかんりいいんかい
正式には、製作工程管理委員会。
製作局や編集局の元デスククラスで構成し、各版の降版状況をチェックしている。
台風や大雪・大雨、自然災害などで輸送・専売店配達に障害が出る場合、
あるいは大規模集中工事などで輸送道路が使えなくなる場合に、
「本日、降版30分繰り上げ!」
「降版時間、厳守!厳守!厳守!」
と新聞社全体&サテライト印刷センターに指令を出す。
ふだんは別室でお茶をのんだり煎餅食べているけど(←だって本当だもん、笑)
何かトラブル発生時に製作局・編集局に駆け込んできやがる………ではなく、駆け込んでいらっしゃる(笑)。