( 12月30日付の続きです。写真は本文と関係ありません。
京都市中京区三条通のランドマーク「1928ビル」は元・毎日新聞京都支局。1928年に武田五一氏設計により大阪毎日新聞社会館として建てられ、その後1998年まで京都支局として使用されていた。バルコニーなどに、大阪毎日の社章・星形マークが残っている。
支局の移転に伴い売却され改修、現在はカフェやギャラリーなどが入る商業ビルになった。京都市登録有形文化財に登録されている )
——ということは、さておき。
小説新潮に、増田俊也さん(50)の「北海タイムス物語」が連載されている。
僕は以前、北海タイムスと提携していた「日刊スポーツ北海道」に知人デスクがいたので、札幌の北海タイムスに何回か行ったことがあった。
というわけで、増田さんの青春物語@新聞記者編ともいえる同小説に注目した——の第26回。
( 小説新潮2015年11月号 289~290ページから )
「そうだよな。俺たち書くために入ったんだよな」
他の誰かが小声で言った。まったくそのとおりだった。
僕たちがやろうと思っているのは黒塗りのハイヤーに乗って事件取材に行く社会部の記者であり、スーツを着て要人たちと渡り合う政治部の記者❶だった。
「整理とか校閲になったら続けるの無理❷……」
僕が言うと、横から腕をはたかれた。いつから隣にいたのか桐島さんだった。
「ちょっとあなたたち、いい加減にしなさいよ。あなた野々村君ていったかしら?」
( 中略。僕註=「桐島さん」は北海タイムス社長秘書、「野々村」は小説主人公で平成2年新入社員 )
「そう。いま言ったこと。整理や校閲は嫌って言ったわよね」
「はあ……」
「そっちに座る人も、あそこに座る人も整理部のデスク❸よ。そもそも萬田さんだって整理部長よ。
あっちの人たちは校閲部。
みんなあなたたちを歓迎しようと思って来てるのよ。そのあなたが整理や校閲なんて嫌って言ったらどんな思いすると思う?」
「でも僕はもともと政治問題やりたくて記者になったわけだし、言わないとまわされちゃう可能性がある❹し……」
「なるほどね、政治問題ね。たいしたもんだわ」と桐島さんが皮肉っぽい笑みを浮かべて「そのためには人の気持ちは考えないのね」と言った。
❶僕たちがやろうと思って……政治部の記者
うーむ。
小説の主人公・野々村くん、よく言えば素直で草食系な青年だけど、悪く言えば幼い!子どもっぽい!テレビドラマの見過ぎ!デスクとしては扱いにくい!
思わず「!」(アマダレ)連発になっちゃったけど、作者・増田さんは、こんな野々村くんの成長物語にしたいのだろう。
❷整理とか校閲になったら続けるの無理
整理部、校閲部を敵にまわしたら怖いよ。
君の書いた原稿、小さく扱うし、確認の電話バンバンかけちゃうよぉ(笑)。
❸そっちに座る人も……整理部のデスク
北海タイムス平成2年度(1990年)入社式のあとに、居酒屋で行われている歓迎会。
時刻はだいたい午後7時30分過ぎ。
タイムス紙の降版ダイヤは不明だけど、朝刊編集中のはずだから、複数の整理部デスクが居酒屋に来ているのは……
①仕事を終えた夕刊デスクが参集
②仕事中だけど、朝刊デスクがちょっと顔を出して、すぐ社に戻る
③休刊日出勤
なのかもしれない。
❹言わないとまわされちゃう可能性がある
政治問題をやりたいのかぁ……そうかぁ、野々村くんは。
同席している萬田編集局次長兼整理部長や木佐木社会部長のほか、整理部デスクら面々の前での〝所信表明〟を、彼らはどう思っただろう。
小説とはいえ、心配になっちゃう。
親と上司と配属先は、選べないのだよ。
———というわけで、2016年に続く。