降版時間だ!原稿を早goo!

新聞編集者の、見た、行った、聞いた。
「降版時間」は新聞社整理部の一番イヤな言葉。

★「ネタ元」新聞社を読む③

2015年03月31日 | 新聞

(きのう3月30日付の続きです。写真は、本文と関係ありません)

またまた、横山秀夫さん(58)の短編ミステリーの舞台となった地方新聞社に注目してみた。
「ネタ元」(2000年9月発表。文春文庫『動機』に収録)に登場する新聞社は、とある地方の「県民新聞社」。
主人公は、横山さん作品としては珍しく女性社会部記者・水島真知子(29)=太字部分は、本文から引用しました。


世界が一変した。

(中略)
引き抜き。他社からの引き抜き。八百万部の発行部数を誇る全国紙からの引き抜き。
真知子は浮く足で冷蔵庫から缶ビールを持ち出した。
あおる。喉が鳴る。はらわたに染み渡る。心地よかった。
あなたを我が社に欲しい。そう言われたのだ。業界に名だたる大新聞社が、水島真知子という地方紙の一記者の力量を認めた。
県民新聞がただの一度として真知子に与えなかった記者としての評価を、あろうことか、敵対する東洋新聞が、引き抜きという究極の形で示してくれたのだ。
引き抜きの行為そのものは珍しいことではない。
出来上がった地方紙の記者を掠め取って欠員を埋める。
それは全国紙の常套手段といっていい。

(後略)=206ページから引用。


【よけいな解説】
▽八百万部の……全国紙からの引き抜き。
いよいよ、クライマックス!
新聞社に勤める記者(出稿、整理、校閲含む)なら舞い上がってしまう麻薬の言葉「引き抜き」(→新聞社勤めじゃなくても舞い上がるよね、笑)。

実は、僕も舞い上がりました。かなり舞い上がりました。超・舞い上がりました。
とある日。
僕たち整理部員はほとんどネクタイなど締めないけど、相手社の部長に会うため出勤前こっそり打ち合わせに行ったりした。
面談してから夕方、社に戻ると、妙に勘のいいヤツがいて、
「お、どーした?ネクタイ締めて、おまけにスーツじゃん。
……………ハハァーン、俺も連れてってくれよ。なぁ、他のやつには言わないからさ」
と小声で言われた。
「ん?なんのことでしょうか?(ウフフ)
スーツ着てるのは、病院にお見舞いに行ったからだよ(ウフフ)」
と言いながらも、スキップしながら社を闊歩したのでございました。
(「引き抜き」は新聞社編集にはけっこうある話なので、後日書こうかな、と)

▽はらわたに染み渡る。
何回も読み返した個所。
女性が缶ビールを飲むシーンとはいえ、
「はらわたに染み渡る」
とは、ちょっと違和感を感じた。

▽出来上がった地方紙の記者を………欠員を埋める。
よくある!
よくある!!
よくある!!!
ただ………………引き抜き途中入社してイイコトがある事例もあれば、ムニャムニャな事例もあるのを見たし、聞いたし………後日書こうっと(たぶん)。

★「ネタ元」新聞社を読む②

2015年03月30日 | 新聞

(3月26日付の続きです)

またまた、横山秀夫さん(58)の短編ミステリーの舞台となった地方新聞社に注目してみた。
「ネタ元」(2000年9月発表。文春文庫『動機』に収録=写真中央)に登場する新聞社は、とある地方の「県民新聞社」。
主人公は、横山さん作品としては珍しく女性社会部記者・水島真知子(29)=太字部分は、本文から引用しました。


(26日付ストーリー参照してね!)
敵は全国紙ばかりではなかった。県友タイムスが動いた。
県民新聞と県内のシェアを食い合う有力地元紙が、この局地戦に参戦したのだ。
鷹見支局の記者を増員し、『たかみ版』と称するページを新設。
ゴミのように小さな街ネタまで拾って紙面に詰め込み、それを連日、県民新聞の顧客の郵便受けに無料で放り込んだ。
無論、紙面より目立つ立派な購読申し込み用紙をつけてだ。
県民新聞は防戦すらままならなかった。
豪華な景品を出せる資力もなければ、記者を増員する人的余裕もない。
ノーガードで打たれっ放し。
そんな無様でやる瀬ない状態が続き、この三カ月で失った紙はゆうに五千部を超えていた。

(後略)=192ページから。


【よけいな解説】
▽『たかみ版』と称するページを新設。
「さすがぁ~横山さん。細かいなぁ!」
と思った。
地域面が複数ページある場合、県央版、県北版、県南版などと漢字表記の版名に対し、
比較的狭いエリアではひらがな表記の版名にすることがよくあるので。

▽顧客の郵便受けに無料で放り込んだ
何回も読み返した個所。
購読者宅郵便受けに「放り込んだ」のだから、「無料で」は不要ではないかしらん、と。

▽この三カ月で………五千部を超えていた。
5000部減は痛い。かなり痛い。
5000部増やすのは難しいが、減らすのは簡単アッという間だよねぇ……。
「さすがぁ~横山さん。あり得るリアルな数字だよねぇ!」
と感じた。
小説内では朝日、読売、毎日、産経、東洋、県友タイムスと6紙が競合、
県民新聞は第2県紙に設定されているから、広告収益を痛撃したはず。痛い、痛い、かなり痛い。
………長くなったので、続く。

★どっちの校閲がいいのだろう。

2015年03月29日 | 新聞

(きのう3月28日付の続きです。写真は、本文と関係ありません)

新聞社ごとに、校閲部の仕事の仕方がある(と思う)。
どちらが、ミスを少なくできるのだろうか。

❶「最終版まで完全面担」型
初校から再校、大刷りゲラまで、すべて1人の校閲マンがチェックする方式。

▽いい点=用字・用語や文字遣いが、担当した紙面で統一される。
インフォグラ(インフォメーショングラフィック)や表も、記事データを知っているから照合しやすい。

▽マイナス点=1人の眼でデータ確認・照合するから、見落としが最後まで通ってしまうことがあり得る。
さ・ら・に(勤務ローテだから、デスクに苦情や不満はいかがなものかと思うのだけど)、
担当した紙面によって校閲者間に、記事量の差が出ること。
仕事量が全然違うこと。

例えば、同じ広告5段紙面でも、中面と運動面ではデータの量と集中時間が全然違うし、版を取る回数も違う。
早い話、内政面を担当した校閲マンの場合、事件がなければそれほど記事が動かないけど(→割とヒマ。ゆえに、整理マンも同じ、笑)、
プロ野球ナイターを抱えた運動面の校閲マンは夜9時以降、次から次とデータが変わるからてんてこ舞いになっちゃう。
仕事量が、もうほんとに全然違う(→重ねて書くけど、整理マンも同じ)。

❷「初校は全員→降版迫れば面担」型
出てきたゲラは、内政でも、外電でも、社会面決まりものでも、なんでもかんでも、ズバッと丸ごとすべて、まず校閲スタッフ全員で初校する。
そして、降版時間が迫ってくると、全員仕事はやめて、自分の担当面ゲラをあらためてチェックする方式。
(朝夕刊ある新聞は、この方式はなじまないと感じる。朝刊だけの新聞なら、いいかもね)

▽いい点=複数の眼が入るから、見落としが少なくなる。

▽マイナス点=校閲マンには得意な分野、あまり得意でない分野があるから、スポーツを知らない人が運動面ゲラを見ても、あまりチェックが働かない、というか分からない。
さらに、
A校閲マンは
「去る28日………」
とするけど、B校閲マンは
「さる28日………」
と赤字直しをしてしまうので(→けっこう、文字遣いに好みがある人がいる)、紙面の用語統一がしにくい。



❶、❷どちらが、ミスが出にくい型なのだろうか………なんとも言えないなぁ、が結論でございます(←長々と書いて、これだけかーい!)。

★この訂正には何も言えません………。

2015年03月28日 | 新聞

3月25日付の続きのような、続きでないような。

ブーメランのごとく自分に戻ってくる「訂正」。
明日は我が身なのだけど、築地新聞の「なぜ我々は、ミスっちゃったか」理由つき訂正記事(以下、新型訂正)を見ると、ドキッとする。
だいたい、なぜミスったかの理由は2つ。
①データの確認が不十分でした。おわびして訂正します。
②思い込みによる間違いでした。おわびして訂正します。

出稿部→編集センター(整理・校閲)でチェックがきかず、
ミスが数版素通り(途中版から記事が入った場合もあるけど)して最終版まで通ってしまったのが痛い、本当に痛い。

3月26日付東京本社版の新型訂正(写真)は、
▽西暦と年号を間違え、
▽税制にも理解が不十分でした。

………〝理解不足でした〟と書かれては何も言えません。
(おっとぉ~明日は我が身・明日は我が身・明日は我が身!)
校閲部の仕事の仕方には2つあると思うので、後日書こうかな、と。

★「ネタ元」新聞社を読む①

2015年03月26日 | 新聞

またまた、横山秀夫さん(58)の短編ミステリー小説に出てきた地方新聞社に注目してみた。
「ネタ元」(2000年発表=文春文庫『動機』に収録=写真)の舞台となる新聞社は、とある地方の「県民新聞社」。
主人公は、横山さん作品としては珍しく女性社会部記者・水島真知子(29)=太字部分は、本文から引用しました。


(邪魔にならない程度のストーリー=3カ月前、3歳男児が、母親を探しながら農業用水路に落ちて溺死した。
そのとき男児は商店街など泣きながら歩いていたが、住人たちは声をかけなかったという。
水島は「地域社会の崩壊」「悲劇は防げた」と記事にした………)

パソコンを叩く指に自然と力が入ったのを覚えている。
『ああ、無情………』。
真知子の書いたトップ記事にそんな見出しがついた。

他社は揃って単なる水死事故の扱いだったから、特ダネとは言わないまでも、してやったりの空気が県民新聞の編集局内にあった。
が、数日後、その空気は一変する。記事を書かれた地元住民が一致団結し、県民新聞の不買運動に立ち上がったのだ。

(中略)
騒ぎは十五万市民の知るところとなった。真知子の記事に誤りはない。
だが、経営状態の思わしくない県民新聞は読者離れを放置できなかった。

(中略)
県民新聞にとっての悪夢はその先にあった。
騒ぎにつけ込まれたのだ。全国有数の発行部数を誇る東洋新聞が、鷹見市内に大量の拡張団を送り込んできた。

(後略)=文庫190~191ページ


【よけいな解説】
『ああ、無情』………そんな見出しがついた。
小説だからだろう、あえての「無情」見出し。
リアル新聞ではつけないし、たとえ面担がつけても整理部デスクがバッテンにするはず。

全国有数の発行部数を誇る東洋新聞
後述に
「八百万部の発行部数を誇る全国紙」
とあるから、朝日新聞(のことではないだろーか)。
ちなみに「AERA」3月30日号では、

ランキング低下と新聞への信頼の低下はあきらかに相関している。
読売新聞は過去1年間で部数を987万部から926万部まで約60万部減らした。
同時期、朝日新聞は754万部から710万部まで約44万部の減。
(内田樹さん)が朝日新聞の紙面審議会委員をしていた3年前、朝日は毎年5万部ベースで部数を減らしていると教えられた。
(内田樹さん寄稿「eyes」から引用しました)
というから、朝日は142年後には部数ゼロになってしまう計算………。

★新型「訂正」いいかもね。

2015年03月25日 | 新聞

(3月21日付の関連のような、関連ではないような………写真は、本文と関係ありません。絶対に関係ありません、本当に関係ありません)

朝日新聞型の、
なぜ我々はミスったか理由つき長文「訂正」
が増えてきたので、(一見、低姿勢を装っているようなので)いいものは真似したい、いーや、すべきではないだろうか。


【新型訂正】
▼訂正=20日付「女性役員製造業でも次々」の記事で、4月に富士通常務理事に昇格する梶原ゆみ子さんについて「同社では4人目の女性役員」の誤りでした。確認が不十分でした。訂正しておわびします。(3月21日付@朝日新聞東京本社版)
▼訂正=11日付「しつもん!ドラえもん1833くまもと編」で、熊本県の郷土料理「ひともじぐるぐる」の材料の野菜を問う質問の答えを「ネギ」としましたが、「ワケギ」の誤りでした。ワケギは「ヒトモジ」と言われ、「ひともじぐるぐる」の材料として使われています。同じネギ属のネギとワケギを区別せず、正確ではありませんでした。訂正しておわびします。(同日付@朝日新聞東京本社版)
▼訂正・おわび=2月21日付【解説】コラム「『ウ』の目鷹の目」の記事で、「(次回は3月19日掲載です)」とあるのは3月21日の誤りでした。思い込みによるミスです。(3月20日付@読売新聞東京本社版)


下線部分が「なぜ我々はミスったか」。
①確認が不十分でした。
②思い込みでした。
この2つがパターン。
(………でもさぁ、ミスはほとんど「確認不十分」だよなぁ、と知人とコソコソ話したことは、さておき)
今までの「訂正」を新・訂正にしてみた。

【従来型訂正】
訂正=22日付朝刊31面「世界一の捕手職人」でサンフランシスコ・ジャイアンツのメモに「田中健介」とあるのは「田中賢介」の誤りでした。
(3月23日付@中日新聞東京本社発行・東京新聞)→余計なことだけど、この「22日付」って間違っていないかなぁ。
【勝手に、新型訂正にしてみた】
訂正=22日付朝刊31面「世界一の捕手職人」でサンフランシスコ・ジャイアンツのメモに「田中健介」とあるのは「田中賢介」の誤りでした。人名確認が不十分でした。
訂正しておわびします。


おっとぉ~、明日は我が身明日は我が身。( ̄▽ ̄)

★横山秀夫さんの「整理部」を読む(24)終

2015年03月24日 | 新聞

(3月20日付の続きです。
写真は、本文と関係ありません )

上毛新聞社出身の横山秀夫さん(58)の短編ミステリー「静かな家」(新潮文庫『看守眼』収録)に登場する「県民新報」整理部。
3カ月前、整理部に異動してきたばかりの39歳「高梨」紙面担当者の記述に注目してみた、の最終回(太字部分は、同文庫本文から引用しました)。


( 日付誤認した記事を掲載してしまった高梨面担は、「訂正」回避の隠蔽工作までバレたうえ、ある殺人事件の容疑者となってしまった。所轄署に任意同行を求められ、ようやく取り調べから解放されたが………)

あの日から十日間、仕事場は針の筵だった。
ミスをしたうえ、そのミスを隠蔽しようとしたことまで局内に知れ渡った。それは仕方ない。身から出た錆だ。
だが蒲地
(僕注=整理部デスク)の言葉がどうにも耳から離れない。
社歴十六年の高梨をつかまえて、入社二年目の手塚理恵より能力が劣ると切って捨てた。

(後略)=279ページから引用。


【よけいな解説】
あの日から………針の筵
針の筵………分かります、分かります、分かります、痛いほど分かります。ミスった翌日勤務つらいよねぇ、ホント。
僕は(小説内の高梨面担のような)日付誤認ミス経験はないけれど、他人には言えない(笑)訂正&おわびを出してキツかった。
で・も!
新聞は毎日毎朝〝新発売〟なので、訂正を出して小さくなっているのは1日だけ………いや、夕方から翌日付編集に入るから(下を向いての反省ポーズは)数時間でいいのだ。
だははははははははははは。
だから、週刊誌・月刊誌の編集者は大変だろうと思う。

社歴十六年………切って捨てた。
また、分かります、分かります、分かります、痛いほど分かりますとも。
でも(新聞社の勤務年数なんかより)整理部はセンスが大切と思うから、この高梨面担の憤りはいかがなものか、と思ってしまうのだ。

重ねて書くけど、
このミステリーにも、名作『クライマーズ・ハイ』にも、まったく校閲部が出てこなかった。
(うーむ。地方紙には専門部署としての校閲がいないのかしらん?)
出稿部、整理部のミスは、たいがい校閲でチェックしてくれるし、チェックするのが普通。
校閲マンの力は、かなりデカいと思っている(←プロの校閲マンのことね。用字用語の照合ばかりで、木を見て森を見ずのアマ校閲もいるので困っちゃうリンダ)。

★伊集院さんは、いらっしゃらなかった。

2015年03月23日 | 新聞


伊集院静さん(64)初の新書『無頼のススメ』(新潮新書、本体700円=*1)を読んで行きたくなった。確認したくなった。
「間違いないと思うんだけど、ご同行願う!」
と、出版の知人と山の上ホテル(東京・千代田区神田駿河台=*2)に足を運んだ。

同ホテル本館1階にある「バー・ノンノン」。
ドアを開けると、バーンと各種ウイスキーが。
カウンターには4人の人生の大先輩がたがいらっしゃって、紫煙を燻らせていた(バー内のみ全面喫煙可。いと嬉し)。
皆さん、静かに雑談されていた。
大人のクラシック・バーである。

「確認」したかったのは、新書オビの写真は同バーで撮影したのではないか、ということ(→なんとなくオッカケみたいだなぁ)。
伊集院さんは仙台から上京された折、同ホテルを定宿にされているのは聞いていた。
知人とカウンターの奥に座って周囲を確認。
壁に四角い額絵が飾られている。
やはり、この席で撮影されたものだった(→で、それがどうしたのだ?と言われても困るのだけど)。
知人はビール、僕は山崎12年水割りと、チーズ盛り合わせ(*3)を頼み、静かに飲んだ。

「今夜は伊集院さん、来られました?」
と、バーテンダーにさりげなく聞いたら、
「もう少し遅くなってからではないでしょうか……」
時計を見ると、午後10時過ぎ。
無頼派作家は、深夜に現れるのであった(たぶん)。



(*1)『無頼のススメ』
伊集院さん初めての新書。
国や組織、知識や情報、他人の意見や評価に安易に頼ってはいけない。自分の頭と身体で考えろ、と説く〝逆張り〟人生論。

(*2)山の上ホテル
1954(昭和9)年開業のクラシックホテル。
2014年6月に新館を閉鎖、現在は本館35室のみ営業。

(*3)チーズ盛り合わせ
『大人の男の遊び方』(双葉社、本体 926円)の中で、
「酒を飲む前には、胃壁に粘膜がかかる程度の食事は入れておいた方が長く、量も飲める。
バーなどで酒の前にスープをひと口出したりするのはそれが目的である。
飲みはじめて、酒ばかりが入っていると思えば少しチーズ系とかを口にした方がよろしい。」

と記されていたので(笑)。
ちなみに、同バーでは税別2,000円なり。

★トンデモ校閲者、いるよね。

2015年03月21日 | 新聞

知人が、あのトマ・ピケティ4cm本(『21世紀の資本』みすず書房、本体5,500円)の校閲者だった。
728ページ校閲作業期間がなんと十数日だったということを聞いて仰天したが、
ギャラが◯◯だったと聞いて、さらに仰天した。
………ということは、さておき。

日刊ゲンダイ3月21日付「流されゆく日々」(写真)で、五木寛之さん(82)が珍しく憤っていた。

(前略)
校閲がしっかりしていると、書くほうは助かる。昔は出版社にはそれぞれ学者のようなベテランの校閲者がいらした。
(中略)
先日も、ある本の中で、白隠禅師の『夜船閑話』に「ヤセンカン」とわざわざルビをふっておいたら、「ヤセンカン」と直されて返ってきた。
あらためて「カン」と訂正して送ったら、再校でまた「カンワ」になっている。

(後略)=太字部分、連載9644回から引用しました。
(今は恩顧な5木さんだけど、30年前の五木さんだったら、きっとムニャムニャなコトになったのではないかしらん………)


校閲・校正者に対する不満を読んだり、聞いたりすることが多い。
例えば、
『本の雑誌』2013年9月号「いま校正・校閲はどうなっておるのか!」
特集では、椎名誠さん(70)や坪内祐三さん(56)が、最近の出版校正者に対し、激おこプンプン丸(←古い?)で、
▽編集者でもないのに、文字使いだけでなく、言葉そのものまで勝手に変えてしまうことがある。
▽さらに、文章指導も行おうとする。
▽彼ら(校正者)の偉そうな指摘することがらにいらだつことが多くなった。
だった(→2013年8月12~15日付みてね)。

新聞社編集でも博覧強記な校閲者もいらっしゃるのだけど、
思わず首を傾げてしまう外部校正マンがいるのも事実なのだ。
以前にも書いたけど、
「二人三脚」
と書かれた記事を、横組みハコにしたら
「2人3脚」
と赤字直しされたのにはビックリした。

◆訂正=上の文中「恩顧な5木さん」は、「温厚な五木さん」の謝りでした。
◆訂正の訂正=上の文中「謝り」は「誤り」の誤りでした。
( ̄▽ ̄)

★「おわび」を書いてみた=横山秀夫さんの「整理部」を読む(23)

2015年03月20日 | 新聞

(きのう3月19日付の続きです。
写真は、本文と関係ありません。
絶対に、関係ありません。本当に、まったく関係ありません )

上毛新聞社出身の横山秀夫さん(58)の短編ミステリー「静かな家」(新潮文庫『看守眼』収録)に登場する「県民新報」整理部。
3カ月前、整理部に異動してきたばかりの39歳「高梨」紙面担当者の記述に注目してみた。


というわけで、
小説内の記事に則って「おわび」を書いてみた。
小説では「訂正」とあるけれど、実際は
「訂正とおわび」
「おわび」
のレベルではないかしらん。

記事の見出しは、
「きょうまで須貝さんの写真個展」
(これ、2倍明朝体7本折りだと、
きょうまで須貝(改行)
さんの写真個展(見出しエンド)
と、あまり好ましい折り方にはならないということと、新聞記事ではあまり
「きょう」「あす」「あした」
は使わないと思うけど、ということは右においといて………)

記事は、
「二十五日まで写真展やってるって書いてあるんですよ。明けて今日は二十六日です。
つまり写真展は昨日までで、今日はもう終わってるってことでしょう?」
(文庫本文250ページ、整理部同僚・手塚女史の指摘)

まず、27日付に掲載されるであろう通常型(→訂正・おわびフォームは各社定型がある。以下は、よく見られるフォーム)。
◆おわび 二十六日付◯面の見出し「きょうまで須貝さんの写真個展」記事は、二十五日に終了していました。訂正しておわびします。

そして、
あの事件以来、「訂正記事の改革」として低姿勢を装い、やたら長くなったA新聞フォーム。
◆おわび 二十六日付◯面の「きょうまで須貝さんの写真個展」記事は、すでに終了していました。開催期間と掲載日の確認が不十分でした。訂正しておわびします。



2倍=倍は、1段1行15字づめ時代の1倍活字の縦サイズ。現在でも、人事面で使用されている、小さな活字。
1倍=88ミルス=8U
(Uはユニットの略で、新聞編集で用いる単位。コンピューター組み版・編集になり、11ミルスを1Uとした)
1.5倍=倍半(ばいはん)132ミルス=12U
1.8倍=158.4ミルス=14.4U
2倍=176ミルス=16U
2.5倍=220ミルス=20U
3倍=264ミルス=24U