(きのう3月30日付の続きです。写真は、本文と関係ありません)
またまた、横山秀夫さん(58)の短編ミステリーの舞台となった地方新聞社に注目してみた。
「ネタ元」(2000年9月発表。文春文庫『動機』に収録)に登場する新聞社は、とある地方の「県民新聞社」。
主人公は、横山さん作品としては珍しく女性社会部記者・水島真知子(29)=太字部分は、本文から引用しました。
世界が一変した。
(中略)
引き抜き。他社からの引き抜き。八百万部の発行部数を誇る全国紙からの引き抜き。
真知子は浮く足で冷蔵庫から缶ビールを持ち出した。
あおる。喉が鳴る。はらわたに染み渡る。心地よかった。
あなたを我が社に欲しい。そう言われたのだ。業界に名だたる大新聞社が、水島真知子という地方紙の一記者の力量を認めた。
県民新聞がただの一度として真知子に与えなかった記者としての評価を、あろうことか、敵対する東洋新聞が、引き抜きという究極の形で示してくれたのだ。
引き抜きの行為そのものは珍しいことではない。
出来上がった地方紙の記者を掠め取って欠員を埋める。
それは全国紙の常套手段といっていい。
(後略)=206ページから引用。
【よけいな解説】
▽八百万部の……全国紙からの引き抜き。
いよいよ、クライマックス!
新聞社に勤める記者(出稿、整理、校閲含む)なら舞い上がってしまう麻薬の言葉「引き抜き」(→新聞社勤めじゃなくても舞い上がるよね、笑)。
実は、僕も舞い上がりました。かなり舞い上がりました。超・舞い上がりました。
とある日。
僕たち整理部員はほとんどネクタイなど締めないけど、相手社の部長に会うため出勤前こっそり打ち合わせに行ったりした。
面談してから夕方、社に戻ると、妙に勘のいいヤツがいて、
「お、どーした?ネクタイ締めて、おまけにスーツじゃん。
……………ハハァーン、俺も連れてってくれよ。なぁ、他のやつには言わないからさ」
と小声で言われた。
「ん?なんのことでしょうか?(ウフフ)
スーツ着てるのは、病院にお見舞いに行ったからだよ(ウフフ)」
と言いながらも、スキップしながら社を闊歩したのでございました。
(「引き抜き」は新聞社編集にはけっこうある話なので、後日書こうかな、と)
▽はらわたに染み渡る。
何回も読み返した個所。
女性が缶ビールを飲むシーンとはいえ、
「はらわたに染み渡る」
とは、ちょっと違和感を感じた。
▽出来上がった地方紙の記者を………欠員を埋める。
よくある!
よくある!!
よくある!!!
ただ………………引き抜き途中入社してイイコトがある事例もあれば、ムニャムニャな事例もあるのを見たし、聞いたし………後日書こうっと(たぶん)。