書店で、僕を「呼んでいた」ので、ジャケ買いした本。
▽よしもとばなな『スウィート・ヒアアフター』(幻冬舎、1155円)=写真左
▽水谷竹秀『日本を捨てた男たち/フィリピンに生きる「困窮邦人」』(集英社、1575円)=同右
2冊とも、売れっ子「ブックデザイン・鈴木成一デザイン室」だった。どうりで、ジャケットが「いい感じ」なわけだ。
水谷さんの『日本を捨てた~』は第9回開高健ノンフィクション賞受賞作(同書はなぜ、スピンが赤白2本ついているのか分からないけど、まぁいいか)。
同氏は39歳の日刊マニラ新聞記者。
最近、フィリピンで急増している「困窮邦人」がテーマ。このノンフィクションのできるまでを記した作者の記事を集英社PR誌『青春と読書』で読んで、興味を持った。
東南アジア女性と籍を持って勇躍あちらに飛んだはいいが、
カネの切れ目が円(=縁)の切れ目
すべてを喪い、帰国もままならず現地でさ迷う男たち(中高年以上)が問題化しているという。
読んでいて胸を打たれたのは、
そんな堕ちた男たちでもフィリピンの人たちは見捨てず、貧しいながらも手を差しのべるという。
まず隣人を助ける――明るい相互扶助は国民性なのだ(国民の9割以上がキリスト教徒)。
【以下、引用】
「私たちは貧しいので、食べ物はみんなで分け合って食べるというのが根付いています。誰か家に来たら、その人にご飯を食べさせるというのが私たちの考えなんですね。食事については、家族以外の人に食べさせることは別に難しいことではありません」
貧困層の助け合い精神についてそう語る小太りの「お母さん」は、ミラグロス・デラクルスさん、47歳。
(中略)
フィリピンで生活している私自身も、住んでいるアパートの警備員や近所の住民が食事をしているところに出くわすと、必ずといっていいほど「一緒に食べよう」「ご飯食べた?」と声を掛けられる。
彼らはみんなで食べる。1人で食べるのではない。たとえ小さなパンでもみんなで分け合って食べる。
その心が困った人々には温かく感じられるのだろう。
【引用終わり】
むろん、異国で無縁仏として果てる高齢邦人も多いが、心優しい現地の人々に助けられる邦人もいる。
現地の日本大使館や領事館は、困窮邦人が多いため、
「一部の無軌道な人のために、税金を使うわけにはいかない」
と積極的に対応せず、せいぜい日本の関係者に電話連絡するぐらいだという。
「日本に捨てられた『困窮邦人』」もいる。
(o・・o)