中国の強硬派といえば、かっては「日本と米国を大量破壊兵器により全滅させるべき」と主張した遅浩田元中国国防長官や元中国国防大学院長の朱成虎少将がいた。おそらくはその流れを汲むと思われる若手強硬派が習近平の登場にともなって力を増しているようだ。以下に紹介する刘明福は若手(といっても64歳だが)強硬派の最右翼と見られる。その恐るべき好戦的な言動を聞いてもなお「憲法9条が日本を守ってくれる」と言いはる左翼は、ほとんど痴呆状態 idiot と見てもいいだろう。
Chinese Colonel’s Hard-Line Views Seep Into the Mainstream
OCT. 2, 2015 By EDWARD WONG (翻訳:stopchina)
http://www.nytimes.com/2015/10/03/world/asia/chinese-colonels-hard-line-views-seep-into-the-mainstream.html?_r=0

北京―先月の晴れ渡った日、退役大佐のLiu Mingfu (刘明福)は自宅のテレビで戦車、兵員輸送車、弾道ミサイルが天安門広場で習近平主席の前を行進する様子を見ていた。共産党は、党の歴史で最大とされる、70年前の対日戦争の勝利を記念する軍事パレードを実施した。
「私は心が奮い立ち誇らしく思った。パレードは平和への大国の決意と力を示すものだったから」と大佐はインタビューで話した。「日本の軍国主義、世界覇権国家および世界に蔓延するテロが平和を脅かしている」
世界覇権国家とは、いうまでもなく、米国を指しており、大佐が長年研究してきた対象だ。多くの中国人にとって、Liu大佐(64歳)は人民解放軍における最も著名な軍事専門家である。
彼の名声は2010年に出版されてベストセラーになった
「中国夢 The China Dream」によるものだ。
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The China Dream: Great Power Thinking and Strategic Posture in the Post-American Era
Hardcover – May 5, 2015
by Liu Mingfu (Author)

ポスト・アメリカ時代における米中の避けがたい争いと、世界における経済的、軍事的、文化的な「世紀の決闘」の到来について検証する。著者は中国軍の退役軍事専門家であり、国家の究極の目標は歴史上の栄光を回復するとともに、世界の指導者として米国にとって代わることであると規定する。2010年に北京で出版された本書は中国に支配される世界という視点が国際的な論争を巻き起こした。英語に翻訳された本書は、中国の国家目標に関するタカ派の見解と、21世紀における中国の戦略目標を理解する上で重要である。
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その本では米国の世界覇権について分析し、地域だけでなく世界の平和を守るには
中国がそれを覆すことが必要であると主張した。「世界最強の国家になることが21世紀における中国の目標である」と大佐は書いた。
その当時、大佐や他の強硬派軍事専門家は、多くの海外専門家により、少数派として無視された。しかし、本の出版から2年後、習近平が権力の座に就き、偉大な国家を回復するという彼自身の「中国夢」を宣言したが、その要点はアジアにおける中国の軍事プレゼンスを拡大するというものだった。今では、軍事強硬派が主流派のように見える。
Liu大佐の著書「中国夢」の英語版の初版が5月に
CN Times Booksから出版されたのはその点で適切だった。同出版社は北京市宣伝局の元職員により設立され、ニューヨークに拠点を置く。本の表紙にはキッシンジャーの著書 “On China” からの引用がある。同書にはLiu大佐の本を紹介する記述があり、「Liuの見解によれば、中国の平和的な勃興がどのようなものであれ、米中関係の対立は必然である」。
ある日の午後の北京の中心部に近いレストランでの記者との会見で、Liu大佐は今世紀最大の地政学的敵対関係について見解を述べた。
「アジアのいたるところで火の手が上がっており、どこであろうが戦場になる可能性がある」と彼は話した。「それらすべてが米国の見えざる手によってもたらされたものだ。米国の黒い手がなければ、アジアはもっと平和で安定しているはずだ」。
「ワシントンのアジア政策は”カニ政策”だ」と彼は付け加えた。「大きな竹カゴがあり、カゴの中のカニのように、すべての国々がたがいに噛み付き合うことを米国は望んでいるのだ」。
大佐の見解によれば、米国に逆らう大胆不敵な指導者を中国はついに獲得した。
「中国はかって東の眠れるライオンと呼ばれていた。しかし、今や我々は目覚めたのであり、習近平はライオンの群れの指導者であり、どんな時にも戦うことをためらわない」と大佐は言った。
「習主席が権力の座について以来、軍に厳格な規則を課した」と彼は付け加えた。「今では、兵士は毎日訓練にはげみ、戦争以外のことは何も考えない。私の同僚の将軍や大佐たちは、かっては肥満で青白かったが、今では強制的な訓練のおかげで日焼けして筋肉質になっている」。
大佐自身は筋肉質で、角ばった顔と短い髪の毛が特徴だ。彼が話している時、彼の妻は隣でスマホに文章を打ち込んでいた。彼は大きなスーツケースを持ち込んでおり、中には10冊の本が入っていた。彼はそれをテーブルの上に並べた。9冊は「中国夢」の様々な版であり、10冊目は
“The Hundred-Year Marathon” だった。これはLiu大佐への米国の反撃であり、中国ウオッチャーでレーガン時代のペンタゴンの官僚だったMichael Pillsburyの著書である。この本でPillsburyは世界支配への中国の戦略について見解を述べている。
「今日、中国が直面している最大の脅威は軍事的危機だ」とLiu大佐は言う。「中国と米国の軍事力には大きな格差がある」。
その意見は、近年習氏が表明した見解と一致する。習氏は先月ワシントンを公式訪問してオバマ大統領と安全保障問題について議論した。習氏は、軍を近代化して戦闘可能な体制にすることが必要であり、軍を弱体化させている腐敗を一掃しなければならないと述べた。
「腐敗はかなりひどい状態でPLA(人民解放軍)を痛めつけている」とLiu大佐は言い、中でも、官職の売買が広く行われていることを指摘した。
Liu大佐は中国東部の山東省で育ち、1969年に入隊した。10年後に済南軍区の政治部門に配属され、後に同部門の長になった。1998年から2011年の退役まで、中国人民解放军国防大学で政治と軍事戦略を教え、同校の战略研究所所長になった。大佐は自分の知的関心はマルクス理論と毛沢東思想にあるが、同時に、中国軍の「政治工作political work」にもあると話した。
Liu大佐は今年の初夏に米国に渡り、12日間の出版関連の旅をした。ワシントンでは、Liu大佐を1990年台後半から知るPillsbury氏がジョージータウンの自宅での夕食会に招待した。120人の出席者の中には二人の国会議員、著名なネオコン知識人であるPaul D. Wolfowitz、および2003年のイラク侵攻を推進したブッシュ政権の国防当局者などがいた。Pillsbury氏は大佐をペンタゴンにも案内した。
「新時代のヒッピーという文脈で見ると、互いに知り合うことがますます大切になっている」とPillsbury氏は言う。同氏は保守系シンクタンクであるハドソン研究所において中国戦略センターを率いている。「強硬派に語らせることで、アメリカ人は彼らがどう考えるのか、どう主張するのかを知ることができる」。
Pillsbury氏は、Liu大佐は戦略を立案する50人の中国軍タカ派の一人だと指摘したうえで、「強硬派は習が彼らの仕事に興味を示したことに興奮しているようだ」と電話取材に答えた。
会話の中で、西側や他のアジア諸国を怒らせた習氏の政策をLiu大佐はやすやすと正当化した。
領有権が争われている南シナ海における中国の軍事力増強と人工島の造成について:「中国は主権の完全性を守るために滑走路を建設し、不法に中国の領土を占領しようとする国家を排除できるようにしなければならない。我々はそれらの国家による状況のさらなるエスカレーションを阻止しなければならない」。
米国と日本の軍事同盟について:「両国は近隣諸国を扇動して我々を挑発してきた」
中国における外国NGOの活動を制限するための法案について:「中国内の多くのNGOは、実際には、中国の安定を乱そうとする米国政府のために働いている。彼らは中国で活動する第五列*だ。共産党と政府に対する不満をかきたて、国家の安全を危険にさらしている」。
*第五列:本来味方であるはずの集団の中で敵方に味方する人々、つまり「スパイ」などの存在を指す。
宋国友Song Guoyou(上海の復旦大学の国際関係論教授)は“The China Dream”を見て、次のように語った。「彼が強硬なのは、「中国夢」および中国―米国関係を彼の職業上の立場から説明しようとしているからであり、理解できる」。しかし、宋教授は次のように付け加えた。「軍は非常に重要な勢力であり、他にも多様な勢力が中国には存在するが、どの勢力も最高責任者と話をすることができない」
Liu大佐は、彼の考えを今後出版する3冊の本でさらに詳しく説明するつもりだと語った。そのうちの2冊は中国主席にとっての未来展望に関するもので、習主席の「強力な軍事力の夢」についても触れる。3冊目は米国大統領のための教科書になるよう計画しているが、その本の仮題は「覇権のたそがれThe Twilight of Hegemony」。
「米国の中国政策は破綻しており、ワシントンは13億の人々を敵とみなしている。ワシントンは中国を敵国と見ており、それにより米国の敵になるように中国を押し出すことになるだろう」とLiu大佐は言う。
<2015年11月4日>
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「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」
平成27年(2015)11月5日(木曜日)
通算第4717号 <前日発行>
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「いまさら遅すぎる」とも言いたいが
親中ハト派のピルスベリー氏も「中国に騙された」と悔恨の書
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「わたしは中国に騙されていました。中国は本気でアメリカを打倒する夢に取り憑かれ次々と国際金融機関を騙し、アメリカから技術を盗み取り、日々、その百年の目標に向かって、実行しているのです」というのが、彼が書いた話題の書『百年マラソン』の骨子である。
本が出版されたことは原書の段階で知っていたが、翻訳がでても読もうという気力がなかった。
ある日、勉強会で多くの保守系論客が、この本を話題にしたのは意外だった。中国の野望に関しては百万言を費やしてもまだ足りないことを同時に痛感した。
ピルスベリー氏が言っていることはこうである。
『中国の軍事拡張は平和を目ざすゆえになされる』と中国は西側に信じ込ませることに成功した。
これに一役買った中国宣伝のラウドスピーカー役を演じたのが、キッシンジャー、ブレジンスキー、スコウクラフト、ディブ・シャンボー、エズラ・ヴォーゲルらの「パンダハガー」だった。
日本でもごろごろと名前を挙げるいとまもないくらいにいる、いる。
政治論客はおおよその人は知っているだろうが、たちが悪いのは経済畑の論客等で、中国経済は破綻しない、崩壊論を言っている人たちはあまたがおかしいなどという言説を展開している。
『アメリカの多数は中国の本当の狙いに気がつかず、貧しい中国を助けるのは良いことだ』と信じてきた。
貧困中国をなんとか救出しようと、日米欧は支援を尽くした。
だが中国の指導者は本音をふせて、芝居を演じてきたのだ。
しかし本当の中国の夢とは習近平のいう「愛国主義による中華民族の復興」の言葉の浦に隠されている。革命から百年後の2049年に、中国がアメリカを打倒し、世界の覇者となる」という野望を。これが中国の『百年マラソン』である。
この発想の基本は中国春秋時代の古典の教訓にある、とピルスベリー氏は言う。
「才能と野心を隠し旧体制を油断させて打倒し、復讐を果たす」(養光韜晦)。
しかし西側は中国に民主主義を教え、資本主義メカニズムを教えれば、やがて中国は民主化すると無邪気にも信じてきた。
結果は西側から巨費を借金して軍拡を果たし、貿易では模造品と海賊版がGDPの8%をしめるほどの悪辣さをみせて外貨を稼ぎ、西側の経済を脅かすうえ、ついには覇権の野望を剥き出しにして、南シナ海の岩礁をつぎつぎと埋め立てて人口島を造成し、3000メートルの滑走路を参本もつくり、おおきな軍事的脅威としてアメリカの前に立ちはだかる。
『騙したものが勝つ』というのは中国古来の諺、実践訓令だ。ピルスベリー氏も、気がつくのが遅かった。だが日本の左翼知識人等と異なって気がつくと悔恨するところは正直である。
<2015年12月17日>
China 2049 単行本 – 2015/9/3
マイケル・ピルズベリー (著), 森本 敏 (解説), 野中 香方子 (翻訳)
本書はCIAのエクセプショナル・パフォーマンス賞を受賞した
マイケル・ピルズベリーの経験に基づいて書かれたものだ。
「パンダハガー(親中派)」のひとりだった著者が、中国の軍事
戦略研究の第一人者となり、親中派と袂を分かち、世界の覇権
を目指す中国の長期的戦略に警鐘を鳴らすようになるまでの
驚くべき記録である。 本書が明かす中国の真の姿は、孫子の
教えを守って如才なく野心を隠し、アメリカのアキレス腱を射抜
く最善の方法を探しつづける極めて聡明な仮想敵国だ。
我々は早急に強い行動をとらなければならない。
──R・ジェームズ・ウールジー(元CIA長官、民主主義防衛財団会長)
ピルスベリーの当該書籍ですが、率直に言って読むに値しないと思います。パンダハガーの繰り言、日本にもごろごろといるじゃありませんか。親中派、転じて反中派。
(宮崎正弘氏コメント)