独断偏見妄言録 China's Threat

中国は人類の命運を左右する21世紀最大の不安定要因

ロシアの第三世代戦車

2015年03月31日 17時02分27秒 | 軍事
戦車の内部はどうなっているんだろうという素朴な疑問に答えてくれる図面を見つけた。乗員3人の居住空間がものすごく狭いのには驚く。まさに「走る棺桶」だ。エアコンはあるんだろうか、とか、トイレはどうなんだろう、とか素朴な疑問が湧き出てくる。

These are the plans for Russia's new third-generation tank
Mar. 30, 2015
http://www.businessinsider.com/plans-for-russias-t-14-armata-tank-2015-3


ロシアの第三世代戦車 (T-14 tank またの名は Armata) の構想図が公表されたが、これは一種のプロパガンダであり、実際の戦車がどうであるかは不明ということだ。

最重要技術は Afganit active protection complex だそうだ。これはドップラー・レーダーにより、向かってくる飛翔体(ロケット推進手榴弾、対戦車ミサイルなど)を検知し、迎撃ロケットを発射して破壊する、というもの。
その他、360度が見渡せる高解像度ビデオカメラを備える。
特筆すべきは、Armata のシャシーは他の軍用車両と共用できるように設計されており、
ロケット推進火炎放射器、自走砲、回収車、水陸両用車両などへの使用が計画されているという。
T-14 の試用は2月か3月に始まり、2017~2018年に量産される予定。

その他の画像
http://in.rbth.com/articles/2012/02/29/armata_instead_of_t-90_15001.html



長ったらしいビデオがある
https://www.youtube.com/watch?v=PsAePLKmBfY


<2015年5月10日>

Russia shows off new high-tech tank
ロシアが新型ハイテク戦車を誇示

May 6, 2015
http://edition.cnn.com/2015/05/05/world/russia-new-tank/index.html

Russia marks 70 years since victory over Nazi Germany with huge parade
ロシアがナチスドイツへの勝利70週年を記念する大掛かりなパレードを実施

May 9, 2015
http://edition.cnn.com/2015/05/09/europe/russia-victory-day-celebration/index.html?eref=edition
対独戦勝70周年記念式典(5月9日)に出現したArmata T-14。

リハーサルでは故障で動けなくなり物笑いに。
Russia’s High-Tech Battle Tank Stalls at Parade
www.bloomberg.com/news/videos/2015-05-11/russia-s-high-tech-battle-tank-stalls-at-parade?cmpid=yhoo

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中国崩壊に備えよ

2015年03月05日 15時00分08秒 | 中国
Doomsday: Preparing for China's Collapse
最後の日: 中国崩壊に備えよ

http://nationalinterest.org/feature/doomsday-preparing-chinas-collapse-12343
China could be on the brink of collapse. Here's how Washington can leverage that to its advantage.
中国は崩壊の瀬戸際にあるようだ。ここではワシントンがそれを自己に有利なように利用する方策について述べる
Peter Mattis (stopchina訳)
March 2, 2015


数週間前のことだが、ワシントンの静かな夕食会での話として、著名な中国ウオッチャーが中国共産党CCPは崩壊への最終段階にあると述べたことをAEIの研究者Michael AuslinがWall Street Journalのコラムで紹介した。
http://www.wsj.com/articles/michael-auslin-the-twilight-of-chinas-communist-party-1422551788
世界第二位の経済大国で核保有国の政治的な崩壊は決して小さな話ではない。ワシントンはどう対応すべきか?
非主流派中国人との人脈を構築すること、および中国人民に対して、米国が「中国の発展に道徳的に関与」することを示すために、中国人の人権について明確な主張をすること、この2つが重要である。仮にCCPが長期間崩壊しないとしても、このような手法により米国は「歴史的に正しい道を歩む」ことになるだろう。

このような手法は、中国の政治的混乱と統治機構の崩壊という巨大な問題を前にして、ささいなことに見える。Auslinによれば、その著名な中国ウオッチャーと彼に賛成する人びとは、このような第一段階はワシントンが中国人民の側について立ち上がることを示す有効なシグナルだと考えている。言葉だけの支持では、CCPを打ち倒す中国人民の目には米国が信頼に足る存在とは映らないだろう。天安門動乱を上回る規模での危機に直面した場合、言葉よりも行動こそが中国の将来に対するワシントンの道徳的な関与の尺度になるはずだ。

CCPを倒す可能性がある政治危機に備えるには、研究と計画の両方を含む、ずっと真剣な努力を必要とする。
それはCCPが存在しない中国と、その後どう展開するか、を想像する能力を危機が来る前に身につけておくことが必要ということだ。何万ものデモンストレーションは、中国の国際的な地位向上にもかかわらず、同国が地震の源となる政治的な活断層を持つことを思い起こさせる。この種の警告において、体制変革をもたらしかねない政治的不安定と、北京がそれに逆らってやるであろうこと、を無視することは道徳的に問題がある。

これらの作業の目的は、中国の危機が出現し拡大する時、政策立案者が直面する不確実性を減らすとともに、ワシントンがCCPの選択に影響を及ぼす方策を指し示すことである。
不確実性低減の努力がなされないなら、未知への恐怖が米国の政策立案者を中国政府支持という決定に追いやりかねない。それは無知によるものであり、情報に基づく計算をできなくしてしまう恐れがある。

第一の研究課題は、中国内部での求心力と遠心力を特定することである。
CCPは66年の統治において市民社会の解体と政治勢力の中での自らの地位の確立を達成した。法輪功のように共存できないグループをのけ者にし、排除した。中国の複雑な官僚機構の盲点のおかげで、初期の市民社会と活動家のグループは生き延びた。
ワシントンが「道徳的な取り分」を望むなら、党を越えた中国流の政治文化を理解しなければならない。

2003年のイラク侵攻に先立って、サダム・フセインなきあとのイラク政治の展望について国家情報会議NICが分析していた。その内容は定期的に更新され、サダム後の米国管理下において顕在化した派閥抗争と国内の分裂を正確に予測するものだった。今日の中国について同様の分析を正確に行うことが可能かどうか明らかではない。そのような分析は、ウイグル人とチベット人についてではなく、12億4千万の漢族について行われなければならない。独裁的であるにせよ民主的であるにせよ、中国の未来を支配するのは必然的に漢族だからだ。

第二に、指導層(およびその家族)の個人情報をデータベース化し絶えず更新することが必要である。個人情報には、電子メールや電話番号などの連絡先と共に、凍結可能な海外資産などが含まれる。アメリカ政府はこの種の情報を捜し出すことにおいてブルームバーグやニューヨークタイムズと同じくらい有能だ。
CCPが内部分裂しているなら、緊張した状況のもとで、多くの幹部が、党よりも彼ら自身と家族の安全のために動き始めるだろう。生き残りがかかっているとき、各々が自分の安全をはかり、脱出用ハッチを確保しようとするので、CCPの組織的求心力はゆらぐだろう。
このような状況下では、北京の決定に影響をおよぼす能力は非常に個人的なものになる。そして、ワシントンが成果を得たいなら、中南海ならびに地方のリーダーや保安担当者など個々の意思決定者と交信し、動機付けをする能力は極めて重要である。

会社や非政府組織のデータベースと同様に、このプロジェクトでも、米政府当局者や他の著名なアメリカ人との会談の議事録を伴わなければならない。
このようにして、必要に応じて、誰が既存の人脈から中国の当局者に接触できるかをワシントンは知ることができる。そして、日常的な接触により中国側の関係者が米国側の対応者と意思疎通をはかることが望ましい。これまでの米中関係では必ずしも十分ではなかったことだが、北京との交渉において、少なくとも米国官僚の段階では、誠実でなければならない。

第三に、中国内部の治安部隊(国内諜報と準軍事的な能力を含む)の能力を知ることは、動乱が臨界点に近づいているかどうかを知る上で極めて重要だ。中国の将来についての研究の多くは、体制保護能力が市民活動家やテクノロジーを含む変化に依存しているという理解がないまま、国内治安機能が効果を発揮すると仮定する。大規模な民衆デモによって中国に政治変革が押し寄せるなら、それは忠実で有能な治安機構という仮定が成り立たなかったことを意味する。(中略)

第四に、米国政策立案者とアナリストは、個々の暴動がより大きな危機に拡大し始める時に北京が直面する決断を予測する必要がある。首謀者を買収するか、捕らえることによって暴動を抑えることができるかどうか、または、暴動を孤立させ局在させることで拡大を防ぐことができるかどうか、の判断を中国首脳はせまられるだろう。北京が直面するその次の重大な決断は、地方当局が中央の指示なしに危機を解決するのを許すべきかどうかである。各管轄区相互の連携が不可能なほどに入り組んだ仕組みを考慮すると、管轄区の境界をまたいで広がった暴動に対しては中央による協調的な介入が必要になるだろう。今後どうなるか、そして、それぞれのレベルで誰が決断するかを知ることは、事態に影響を及ぼす上で決定的に重要である。(中略)

第五に、たとえ北京が国際的な通信網を切断しようとしても、米国政府は中国民衆とのコミュニケーションを維持する手段を手に入れる必要がある。
金盾Great Firewallは不浸透性でないだろうし、中国のインターネットを遮断するのは困難だと思われる。しかし、VPNに対する最近の干渉によって証明されるように、中国はインターネットを通じた情報のやりとりを極度に困難にする力を持っている。アメリカの宣伝活動を代替手段なしにオンラインだけに依存するのは無謀である。代替手段により検閲を避けることができないならば、次善の策は緊急時には中国にラジオ放送する能力を保持することだろう。

最後に、この種の緊急対応の情報活動が必要な事態は起きないかもしれない。
現在の米国の情報収集と分析のための機関(海外駐在機関を含む)がこれらの仕事に不向きであるならば、専門知識を集積し、情報を集め、分析し、中国内で政治危機に関与する方法について再考する必要がある。
(後略)




中国の崩壊は10年以上も前から予想されていたが、それは、市場経済と共産党一党独裁が同居する奇妙な体制はやがて矛盾があらわになり、長続きしないだろうという抽象的な考察を根拠とするものであった。
しかし、ここにきて共産党独裁政権CCPが崩壊しかねないと思わせる具体的な事象が次々と出てきたのである。

その第一が、中国経済の減速が明確になってきたことである。量から質への転換が思うように進まず、GDP伸び率が公称7%台に低下し、今後さらに低下すると見られている。賃金の上昇などにより世界の工場としての魅力が失われ、進出した外国企業が撤退を始めている。

第二に、不動産バブルの崩壊である。ゴーストタウンなどの不良資産が積み上がり、価格が下がり始めている。それにともなってシャドーバンキングなどの金融システムが揺らいでいる。
http://www.molihua.org/2015/02/24.html

貧富の格差、汚職、地方政府の横暴な土地政策、公害など従来の諸問題に加えて、金融崩壊により資産を失った大衆の不満が爆発しつつあり、暴動件数が増加し社会不安が深刻化しているように見受けられる。
http://www.molihua.org/2015/02/80-36.html
http://www.molihua.org/2015/02/11.html
http://www.molihua.org/2015/02/7.html
http://www.molihua.org/2015/02/18.html

第三に、習近平の汚職摘発が権力基盤である共産党と人民解放軍を動揺させ、クーデターの噂が絶えないなど、政治の不安定さが一段と進んだ。
http://www.molihua.org/2015/03/33-10.html

第四に、ウイグル人との紛争激化など多民族国家の弱点があらわになりつつある。

CCPは反体制の芽を初期段階で摘み取ることに全力をあげてきたが、そろそろ限界に近づいている可能性が濃厚だ。
ソ連崩壊は比較的平和裏に進んだが、果たしてCCPは素直に、平和的に崩壊してくれるだろうか?
たぶんそうはならないだろう。
崖っぷちに追い詰められたCCPは、おそらくナショナリズムを高揚させることで切り抜けようとするのではないかという深刻な懸念が消えない。

ナショナリズムの高揚とは、つまり外国と戦争をすることと同義である。
中国はほぼすべての周辺国と紛争を抱えている。特にインド、ベトナム、ミャンマー、フイリッピン、台湾、および日本との軋轢が深刻である。このうち最もナショナリズム高揚に効果的な相手を選ぶことになるだろう。
すなわち、相手として日本が選ばれる可能性が一番高いのである。

CCPは、今年の9月に戦後70年を記念する大規模な軍事パレードを計画していると伝えられている。その狙いは「日本を震え上がらせる」ことだそうだ。
http://www.afpbb.com/articles/-/3038002

これは日本としても歓迎すべきことだ。日本人を蝕む平和ボケ病の治療には最適な薬になるだろう。左翼が発言力を失い、憲法九条改正が一気に進むかもしれない。



<2015年3月8日>

The Coming Chinese Crackup
The endgame of communist rule in China has begun, and Xi Jinping’s ruthless measures are only bringing the country closer to a breaking point
By David Shambaugh
March 6, 2015

http://www.wsj.com/articles/the-coming-chinese-crack-up-1425659198?mod=asia_home

近づく中国の崩壊
中国における共産党支配の終わりが始まり、習近平の強硬策は国家を破断点に近づけただけだった
(抄訳)
中国の弱点を示す5つの指標:
(1)経済エリートは、実際に崩壊が始まれば、すぐに逃げ出せるように準備している。外国籍の取得、海外資産の購入、資産の海外(タックス・ヘブン)移転など。これらは国家の将来への信頼の欠如をあらわしている。

(2)2012年に習近平が政権の座に就いてから、2009年以来中国を覆っていた政治的抑圧を著しく強化した。ターゲットは新聞、ソーシャルメディア、映画、芸術、文学、宗教団体、インターネット、知識人、チベット人とウイグル人、反体制派、弁護士、NGO,大学生および教科書である。西側の普遍的価値観である立憲民主主義、市民社会、出版の自由、および新自由主義経済の締め出しが狙いである。政権の奥深い不安を反映している。

(3)政権に忠実な者もただ運動をやり過ごしているだけ。面従腹背が浸透している。

(4)党と軍を蝕む腐敗は中国社会全体にしみ渡っているため、習近平の反腐敗運動は問題を解決できない。

(5)中国経済は構造的な罠にはまり、容易には抜け出せない。


<2015年3月10日>

Sorry, America: China Is NOT Going to Collapse
アメリカさん、お気の毒だが中国は崩壊しないよ

Chen Dingding
March 10, 2015
http://nationalinterest.org/feature/sorry-america-china-not-going-collapse-12389


上記 Shambaugh の中国崩壊論に対して中国の若手研究者が真っ向から反論した。しかし、私が見るところ、あまり説得力はなく、中国人に特有の強がりのように思える。


<2015年3月11日>

Why David Shambaugh's 'Coming Chinese Crackup' Case Is Wrong
David Shambaugh の「中国の崩壊が近い」という意見が間違っている理由

Stephen Harner
3/10/2015
http://www.forbes.com/sites/stephenharner/2015/03/10/why-david-shambaughs-coming-chinese-crackup-case-is-wrong/

上記 Shambaugh の中国崩壊論に対する中国側の反撃の一環だろうか。連続して崩壊説を否定する論説が出てきた。
崩壊説は中国にとってよほど都合が悪いのだろう。
それにしても、素早い反撃ぶりは見事であり、日本も見習うべきだ。



<2015年3月19日>

~~~~~
「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」 
平成27年(2015)3月19日(木曜日)
   通巻第4492号  
~~~~~~~~~~~~~より


(読者の声2)先般『ウォールストリート・ジャーナル』にでたディビッド・シャンボーの『中国共産党崩壊論』ですが、読んでいて、「えっ? まるで宮崎先生の所論(とくに『中国共産党 三年以内に崩壊する』、海流社)をそっくり英訳したような」類似でした。
シャンバーは中国共産党が崩壊すると予測していて、中国側は猛烈に反論しています。貴誌でも是非、取り上げて欲しいです。
  (IY生、千代田区)


(宮崎正弘のコメント)或る雑誌に書く予定ですので、小誌ではいまのところ、取り上げる予定はありませんが、小生もシャンバー論文を読んでびっくりです。
なぜなら彼は『トウ小平伝記』などを書いて何度も北京に招かれた中国学者ですから、この論文で北京が立腹するのも当然、2013年頃まで中国側にはっきりと立つ論客でしたから、大胆な「転向」と言えなくもないでしょう。


<2015年3月24日>

China’s government seems to have a clear long-term vision
中国政府は明確な長期ビジョンを持っているようだ

Xiao Geng and Andrew Sheng, World Economic Forum
Mar. 23, 2015
http://www.businessinsider.com/chinas-government-seems-to-have-a-clear-long-term-vision-2015-3

著者は中国人。Shambaughの中国崩壊論への経済面からの反論。

<2015年4月1日>

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「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」 
平成27年(2015)4月1日(水曜日)
    通巻第4502号 
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 米国の親中派もそろそろ中国評価の矛を収め、批判に乗り出した。
  キッシンジャー、アイキャンベリーにつづきシャンボー教授も
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 ▼「中国共産党は崩壊する」と予測する有名教授はハト派の親中派だった

親中派の論客として知られ『トウ小平伝』も書いたデーヴィッド・シャンボー(ジョージワシントン大学教授)は大胆にも中国共産党の崩壊を予測し、「ウォール・ストリート・ジャーナル」(3月6日)に寄稿した。小誌でも真っ先に伝えたが、その詳細を紹介する。

中国に衝撃と反発を運び、「環球時報」は、痛烈にシャンボーを批判した。中国はキッシンジャー、ブレジンスキー、エズラ・ボーゲルらとともに、シャンバーを親中派学者として優遇し、北京の国際シンポジウムにも何回か招待してきただけに、裏切り、あるいは変節と受け取ったからだ。

彼の「中国共産党崩壊」論の概要次の通りで、中国共産党が統治の破綻を示す五つの予兆をシャンポーは指摘している。

 第一は体質的な腐敗である。絶対的権力は絶対的に腐敗するというのは歴史の真理、はじめから予測されてきた。
 くわえて中国は秦の始皇帝以来、汚職はDNAである。

 党幹部ならびに富裕層が海外へ資金持ち逃げ、子弟等の海外逃避が続いている。賄賂で得た不正資金を香港やマカオで、あるいは上海経済特区などで資金洗浄(マネーロンダリング)して、海外へ逃し、「外国籍」の資金に化かして中国に還流させる。これが熱銭と呼ばれ、株式、不動産投機に熱中する。
 子女を海外へ留学させ、家人を送り込み、あるいは愛人に海外で出産させ、たとえば米国の国籍を取得させる。万一の逃亡先をこうして長期的計画のもとに、多くが工作している。
愛国を強調する人たちにこの傾向が強い。

 このことが意味するのは、共産党の将来が不安でたまらないからだ。つまり、党独裁体制はそろそろ終わりだぞ、という認識が普遍的になっている証拠だとシャンバー教授は示唆するのである(そんなこと、拙著で過去二十年、筆者は口すっぱく言ってきたが、アメリカ人学者はいまごろになって気がついたのかな?)。


 ▼ゴルバチョフとは対極の路線を走る習近平だが、終着駅は同じ「崩壊」

 第二に習近平のゴルバチョフとは対極の路線が結果的に同じ地点(つまり党の崩壊)へ向かわせるとソ連崩壊との対比と類似である。いやシャンボー教授の「崩壊論」の特色はこのポイントにあると言って良いかもしれない。

習は「ソ連の崩壊は政治改革と情報公開が元凶で、中国はそうした愚策を採らない」として政治改革を徹底的に拒否し、情報管理の強化に乗り出した。
 政治的抑圧を強化し、メディアを規制し、ネット監視を強め、知識人への締め付けなど多角的な言論統制を展開した。

2013年4月に中国共産党中央弁公庁は「現在のイデオロギー領域の状況に関する通報」(いわゆる「9号文件」)を通達したが、これは西側の「普遍的価値」の否定だった。「憲政民主主義」「市民社会」「報道の自由」「新自由主義経済」などを論じてはならないとして、天安門事件後に西側が仕掛けた「中国に民主化」を促したキャンペーンに対して、江沢民政権が「和平演変」(社会主義体制を切り崩す陰謀)として警戒したように、西側の価値観が中国で普及することを極度に懼れている。


▼習語録はうずたかく積まれ、無料なのに党幹部学校の書店でも誰も持ち帰らない

 第三に中国共産党の「宣伝工作」(プロパガンダ)が中国国内にあってさえ効果を失っている事実をシャンボ―教授があげている(そんなこと、言わなくても、反日のはずの中国人観光客が蝗の大群のごとく日本にやってきて爆買いする様を目撃すれば、中国の宣伝は効果を挙げていない現実は子どもでも諒解できる)

 習近平が唱える「愛国主義による中華民族の復興が中国の夢である」という虚ろなスローガンを無邪気に受け入れ、信奉する人々はもはや存在しない。
追従組がいくら宣伝しても、本気で宣伝しているわけではなく、聞く側もまったくしらけている。そうした状況をシャンボー教授は「裸の王様」と揶揄した。

というのも、彼は北京の中央党校校内の書店で山積みとなっていた習近平「大衆路線」を宣伝する無料の冊子を誰も持ち帰らない風景を目撃したからだ。

 第四に習近平政権が力点をおく「反腐敗キャンペーン」だが、従来の教訓が示すように、成功する見込みは殆どない。
一党独裁体制の弊害、透明性を欠いた経済運営や、会社情報操作、政府が統制するメディアや、法治の欠如が原因だが、それだけではない。

反腐敗キャンペーンと喧伝しながらも、その標的が偏っている。
すなわち習の権力闘争が密接にからむ反腐敗キャンペーンは江沢民元主席に連なる人々を選択的に追及しているため、かえって政治的軍事的なリスクが高まるという危険性がある。

中国のゴッドファーザーでもある江沢民元主席は胡錦涛政権の十年間「院政」を敷いたが、いまだに健在である。

他方、習が自派閥を持たず、権力基盤を強固としていない段階で守旧派、最大利権集団の上海派を標的としたことは、無謀ともいえる。
江沢民に習近平が挑むのは危険を増大させる(シャンバー教授は明言していないが、軍クーデタ、暗殺というシナリオがある)

 第五に経済構造の歪みである。
国有企業再編は遅々として進捗せず、改革の進展を阻む党機構と利益集団、すなわち国有企業や地方の党幹部が妨害にでてくるだろう。

鉄鋼、セメント、電解アルミなどの在庫がしめすように、余剰生産能力の効率的再編が進まず、三月の全人代がはじめて言及したのは「銀行とて倒産することがある」として銀行の預金者保護のペイオフを導入する政策変更があった。これから中国の銀行の倒産も開始されるだろう。
 
これらが、いまの中国情勢をさらに複雑にさせ、状況は混交し、やがて共産党の支配体制を終焉に導くことになる

 「共産党の統治に対して中国の民心がすでに離れつつあることを考えれば、中国共産党の終盤は近い」と同教授はウォールストリート・ジャーナルに寄稿したのだった。
            ○○○○ ◇ ○○
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<2015年4月8日>

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「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」 
平成27年(2015)4月8日(水曜日)
   通算第4511号  (前日発行)
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 人民元高が逆に中国経済のとどめを刺しかねない
  輸出低迷から壊滅、失業膨張、新卒の就労先は激減
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  中国経済の近未来展望はますます暗くなった。
 アジアインフラ投資銀行などと他国の面倒をみる余裕をなくすのは時間の問題ではないのか。

理由を七つ列挙してみる。
 第一は通貨為替レートによる通貨戦争で、中国は負けが込んできたという意外な事実だ。
 通貨戦争という視点に立てば、中国人民元は三年前の日本円の立ち位置である。
 列強が通貨安競争を演じているときに日本だけがQEを実行しなかったため円高が続き、日本企業は陸続と海外へ工場を移転させて国内景気を悪化させ、失業者を増やした。白川日銀総裁は判断を間違えていたと批判が凄まじくあった。

 いま、米ドル高に引きつられて人民元も独歩高。1人民元は12円から、いまや20円。だから日本に旅行に来ても中国人が割安感を感じるという奇妙な景観も出現したのだ。
 しかし元高は同時に輸出競争力を失う。
 これにより外国企業は採算が合わなくなって「チャイナプラスワン」をスローガンに中国から撤退する。

 ますます中国は不況となり、失業が増える。2015年大学新卒は748万人、このうち150万人がいまだに就労先がない。北京の友人に聞くと、何のコネもない日本企業にも親が飛び込みで「息子を雇ってくれまいか」と聞きに来るそうな。

 国家統計局の発表する「失業率」は3-4%台である。これほどの出鱈目はない。農村から都会へ流れ込んだ流民は数千万人とされるが、みごとに失業統計に反映されていないのだ。
 
 第二に地方政府の債務が膨張してきたが、いっこうに解決のメドが立っていない。そればかりか、地方政府の一部に地方債権の起債を許可する有様である。地方債務の合計は320兆円、たぶん半分が不良債権化するだろう。
 くわえてシャドーバンキングならびに理財商品の償還期を迎えており、中国の債務総額はGDPの282%で、日本より悪いのだ。

 
 ▼中国国内の銀行が経営状態が悪化しているのに?

 第三に銀行の機構的再編の遅れ、機能不全、銀行倒産という悲惨な状態が出現した。銀行取り付け騒ぎが起きないのは「国家総動員法」により軍が出動できるからだ。
中国国内の銀行が経営状態が悪化しているにもかかわらず、対外的にAIIB設立してカネを貸しますとうのは整合性のある話ではない。

 第四に不動産バブルの破裂がいまや誰の目にも明らか、中国語の新聞は連日、こちらの深刻さを取り上げている。
  「庶民の夢」だったマンション購入は高嶺の花となり、もはや手が出ないというのに、他方でも豪華マンションが林立し、しかも誰も住まないゴーストタウン(鬼城)化している矛盾、これこそが一党独裁の社会主義国家が唱える「社会主義的市場経済」のなれの果てなのだが、その惨状を素直に直視できない(不忍直視)、夜は漆黒の闇と化け(夜晩黒漆漆)、これまでGDPの48%が投資、とくに12%が不動産といわれたのだが、その高度成長の牽引車が壊滅状態にある。

 第五に富の偏在、技術の偏在、沿岸部への工業偏重による人口動態に異様な動きが出ていることである。
 英BBC中国語サイト(4月4日)に拠れば、 中国の資産5億元(約100億円)以上の富裕層はおよそ1万7000人いる。総資産額は31兆元(約620兆円)。この数字は中国の国内総生産(GDP)63兆6500億元(約1273兆円)の半分に相当する。
 民生銀行と胡潤研究院が発表した「2014~2015年中国超富裕層の需要調査研究報告書」に従うと、中国の超富裕層の84%は男性で、平均年齢は51歳である。
 地域別では北京市、広東省、上海市、浙江省に集中し、所有する企業は製造業が全体の25%近くを占め、次いで不動産業、TMT(科学技術、メディア、通信産業)、サービス業、投資、重工業、製薬業、エネルギーの順番という。
 しかし超富裕層は汚職や横領の代名詞でもあり、「大富豪ランキング」に登場したとたんに逮捕され、死刑になった富豪もいる。大富豪ランキングは「死のランキング」とも呼ばれている。


 ▼庶民は社会福祉、生活保護、医療保険とまったく無縁である

 第六にこれほどの金満国家となっているのに社会福祉、生活保護、医療制度は問題だらけ、特権階級のみが社会福祉制度の恩恵にもあずかれるが庶民は蚊帳の外である。
 したがって民衆の党幹部への恨みは深く、こうした所得格差をすこしでも少なくしない限り、庶民、農民の一揆、暴力的抗議運動が収まることはないだろう。

第七に根絶できない腐敗の問題である。
 習近平が贅沢を禁止したため、ホテルやレストラン、豪華リゾートなど客足が途絶えた。有名レストランでも従業員の給与が支払えず休店に追い込まれ、豪華ホテルでも首切りが横行しはじめた。有名ブランド品も売れ行きはばったりと止まり、撤退か店舗縮小に踏み切ったところもでてきた。

 習近平の「虎も蠅も」という反腐敗キャンペーンは、かなりの大物を血祭りに上げ、庶民の拍手喝采をあびたものの、本物の「大虎」は野放しであり、結局の所、江沢民、李鵬、曽慶紅などを逮捕しないと、庶民の不満は収まらないだろう。

 それでなくともPPIは連続35ヶ月も下落しており、「住宅ローンを組んだ人の99%は破産するだろう」と預言して香港の著名エコノミストの朗喊平は「いかなる政策を断続的に維持し、かろうじて低成長を持続させることは不可能である」とし、市場の改革とは政治改革がなければ実現しない。習近平の唱える「新常態」は新しい南巡講話として機能しなければ意味がない」と獅子吼している。

 庶民レベルの経済感覚と見通しを聞いても、希望に満ちた明るい展望が聞かれることはなくなった。

 こうした惨状の中国へ周回遅れで投資を拡大するドイツって、やっぱり神経がおかしいか、別の思惑が動機であろう。
    ○○◎ □◎□ ◎◇◇ ○○◇
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