自由は善か?
WTO(世界貿易機関) の基本理念は自由貿易だが、「自由」という言葉には反対できない響きがある。少なくとも私たちはそのように洗脳されてきた。だから、深く考えず条件反射的に自由貿易に賛成する人が多い。
しかし、自由貿易はそんなに良いものなのだろうか。
ここ20年ほど、グローバル化とか新自由主義とか構造改革とか規制緩和とか金融ビッグバンといった耳あたりのいい掛け声のもとで貿易・金融の自由化が推進されたが、その結果日本は、そして世界は、どうなったか。
グローバル企業は自国の従業員をリストラする自由、途上国の労働者を低賃金でこき使う自由、途上国で公害を垂れ流す自由を享受して大儲けした。
企業の海外流出が自由化されて国内の産業空洞化が進み、製造業が衰退し、アメリカや日本で勤労者の平均賃金が年々下がり続け、大企業とそれに連なるエリートだけが肥え太り、格差が拡大した。
日本ではデフレが収まらない。これは円高のせいで海外の製品を安く輸入できるからであって、いわば海外に巨大な供給源があることを意味している。それによって需要と供給のバランスがくずれてデフレ状態に陥っているのである。海外からの供給に制限を加えなければデフレからの脱却は困難だろう。このように自由貿易は一国の経済政策を無力化する。
これらは「自由」がもたらした巨大な害悪である。
比較優位論の欺瞞
WTOが立脚する自由貿易の理論的基礎が比較優位論であるとするなら、WTOの存在意義には重大な疑念が生じる。
比較優位とは(by wikipedia)、
比較優位を持つ(相手より機会費用の少ない)財の生産に特化し、他の財は輸入する(自由貿易で)ことで、それぞれより多くの財を消費できるという国際分業の利益を説明する理論である。
これを裏返せば、比較劣位にある産業は壊滅するということであり、そこに従事する何百万、何千万の人々は失業するということである。現実問題として、転職はスムーズにはいかず、賃金の低下を伴う場合が多い。
現在日本、アメリカ、ヨーロッパなどの先進国で起きている失業率の高止まりと賃金低下は自由貿易によってもたらされたと言っても過言ではない。世界規模での激しい競争の結果、先進国と途上国間の賃金平準化が起きているのであり、これがリーマン・ショックの遠因であったとみなすことができる。
比較優位にある産業を伸ばすことで価格を低下させることが経済活動の主目的なのか?
そうではなかろう。
低価格の代償が失業と貧困である現実を直視するなら、比較優位論は有害であると断じざるを得ない。
そのような有害な理論に立脚するWTOは解体し、その後に新たな世界貿易の枠組み(仮に新WTOと呼ぶ)を構築すべきである。
他の先進国と協調して、WTOを解体して新たな貿易秩序を構築すべく務めるのが正しい外交というものである。
WTOの脱退という極論は危険であり、日本が単独で脱退すれば日本だけが袋叩きにあうのは自明だ。
新WTOの基本理念は旧WTOの自由貿易の理念を引き継ぎつつ、多くの制約を課すことで、比較劣位の産業を保護するものとなるだろう。人々の幸福度最大化を重視するものであり、それによる経済効率の低下はやむを得ないとみなす。
少子化
自由貿易は比較劣位にある産業を淘汰し、そこに従事する人々の職を奪うことは上述の通りである。
比較優位にある産業といえども、世界規模の競争に生き残るためには人件費を圧縮するほかなく、正社員が減少して非正規社員が増加する流れが生じた。
非正規社員は賃金が低いだけでなく、いつ首を切られるかわからないという不安定な状態に置かれている。
不安定な身分のもとでは結婚をあきらめざるを得ないのであり、それが少子化に直結している。
若者の意識の変化が結婚を妨げているという意見があるが、それはごく一部の原因にすぎない。というより、失業や貧困が若者を絶望させ、意識の変化をもたらしているということも考えられる。
為政者にとって、経済的要因が少子化の根本原因であることを認めることは自らの失政を認めることと同等であるから、意識の変化や保育施設の問題にすりかえているのである。
このような考察から導かれる少子化対策とは、言うまでもなく、WTOの解体と自由貿易の行き過ぎの是正である。
農業
TPPにより農業は壊滅するだろう。
TPPは経済ブロック的な要素があるものの、根底にある思想はグローバリズムであり、域内グローバル化である。関税の撤廃など自由貿易の理念を極端にまで押し広げたものであり、グローバリズムがもたらす害毒をたっぷりと含んでいる。
3.11により日本の農産物は海外での競争力を失い、ただでもいらない、というゴミになり下がった。
広範囲の国土が放射能に汚染された現状を考えれば、農産品の輸出で外に打って出るなどという話は悪い冗談に過ぎない。3.11により農業を取り巻く環境が激変したことを認識しなければならない。
米の輸入制限が撤廃されれば、関税が現行のまま据え置かれるとしても、国内市場における国産米は競争力を失うだろう。
カリフォルニア米はすでに品質で国産米と同等であり、タイ米の品種は日本人好みではないという意見があるが、日本への輸出が可能となれば品種の切り替えが進むだろう。日本の商社などが協力するはずだ。
消費者は放射能汚染の恐れがない外米を選択すると予想される。
こうしてTPPにより日本の農業は確実に壊滅する。
日本の農業が壊滅するということは、日本という国家が滅びることと同義なのだ。
世界は一つではなく、多様である。
生物の多様性が尊重されるように、国家および民族の多様性が尊重されなければならない。
WTO(世界貿易機関) の基本理念は自由貿易だが、「自由」という言葉には反対できない響きがある。少なくとも私たちはそのように洗脳されてきた。だから、深く考えず条件反射的に自由貿易に賛成する人が多い。
しかし、自由貿易はそんなに良いものなのだろうか。
ここ20年ほど、グローバル化とか新自由主義とか構造改革とか規制緩和とか金融ビッグバンといった耳あたりのいい掛け声のもとで貿易・金融の自由化が推進されたが、その結果日本は、そして世界は、どうなったか。
グローバル企業は自国の従業員をリストラする自由、途上国の労働者を低賃金でこき使う自由、途上国で公害を垂れ流す自由を享受して大儲けした。
企業の海外流出が自由化されて国内の産業空洞化が進み、製造業が衰退し、アメリカや日本で勤労者の平均賃金が年々下がり続け、大企業とそれに連なるエリートだけが肥え太り、格差が拡大した。
日本ではデフレが収まらない。これは円高のせいで海外の製品を安く輸入できるからであって、いわば海外に巨大な供給源があることを意味している。それによって需要と供給のバランスがくずれてデフレ状態に陥っているのである。海外からの供給に制限を加えなければデフレからの脱却は困難だろう。このように自由貿易は一国の経済政策を無力化する。
これらは「自由」がもたらした巨大な害悪である。
比較優位論の欺瞞
WTOが立脚する自由貿易の理論的基礎が比較優位論であるとするなら、WTOの存在意義には重大な疑念が生じる。
比較優位とは(by wikipedia)、
比較優位を持つ(相手より機会費用の少ない)財の生産に特化し、他の財は輸入する(自由貿易で)ことで、それぞれより多くの財を消費できるという国際分業の利益を説明する理論である。
これを裏返せば、比較劣位にある産業は壊滅するということであり、そこに従事する何百万、何千万の人々は失業するということである。現実問題として、転職はスムーズにはいかず、賃金の低下を伴う場合が多い。
現在日本、アメリカ、ヨーロッパなどの先進国で起きている失業率の高止まりと賃金低下は自由貿易によってもたらされたと言っても過言ではない。世界規模での激しい競争の結果、先進国と途上国間の賃金平準化が起きているのであり、これがリーマン・ショックの遠因であったとみなすことができる。
比較優位にある産業を伸ばすことで価格を低下させることが経済活動の主目的なのか?
そうではなかろう。
低価格の代償が失業と貧困である現実を直視するなら、比較優位論は有害であると断じざるを得ない。
そのような有害な理論に立脚するWTOは解体し、その後に新たな世界貿易の枠組み(仮に新WTOと呼ぶ)を構築すべきである。
他の先進国と協調して、WTOを解体して新たな貿易秩序を構築すべく務めるのが正しい外交というものである。
WTOの脱退という極論は危険であり、日本が単独で脱退すれば日本だけが袋叩きにあうのは自明だ。
新WTOの基本理念は旧WTOの自由貿易の理念を引き継ぎつつ、多くの制約を課すことで、比較劣位の産業を保護するものとなるだろう。人々の幸福度最大化を重視するものであり、それによる経済効率の低下はやむを得ないとみなす。
少子化
自由貿易は比較劣位にある産業を淘汰し、そこに従事する人々の職を奪うことは上述の通りである。
比較優位にある産業といえども、世界規模の競争に生き残るためには人件費を圧縮するほかなく、正社員が減少して非正規社員が増加する流れが生じた。
非正規社員は賃金が低いだけでなく、いつ首を切られるかわからないという不安定な状態に置かれている。
不安定な身分のもとでは結婚をあきらめざるを得ないのであり、それが少子化に直結している。
若者の意識の変化が結婚を妨げているという意見があるが、それはごく一部の原因にすぎない。というより、失業や貧困が若者を絶望させ、意識の変化をもたらしているということも考えられる。
為政者にとって、経済的要因が少子化の根本原因であることを認めることは自らの失政を認めることと同等であるから、意識の変化や保育施設の問題にすりかえているのである。
このような考察から導かれる少子化対策とは、言うまでもなく、WTOの解体と自由貿易の行き過ぎの是正である。
農業
TPPにより農業は壊滅するだろう。
TPPは経済ブロック的な要素があるものの、根底にある思想はグローバリズムであり、域内グローバル化である。関税の撤廃など自由貿易の理念を極端にまで押し広げたものであり、グローバリズムがもたらす害毒をたっぷりと含んでいる。
3.11により日本の農産物は海外での競争力を失い、ただでもいらない、というゴミになり下がった。
広範囲の国土が放射能に汚染された現状を考えれば、農産品の輸出で外に打って出るなどという話は悪い冗談に過ぎない。3.11により農業を取り巻く環境が激変したことを認識しなければならない。
米の輸入制限が撤廃されれば、関税が現行のまま据え置かれるとしても、国内市場における国産米は競争力を失うだろう。
カリフォルニア米はすでに品質で国産米と同等であり、タイ米の品種は日本人好みではないという意見があるが、日本への輸出が可能となれば品種の切り替えが進むだろう。日本の商社などが協力するはずだ。
消費者は放射能汚染の恐れがない外米を選択すると予想される。
こうしてTPPにより日本の農業は確実に壊滅する。
日本の農業が壊滅するということは、日本という国家が滅びることと同義なのだ。
世界は一つではなく、多様である。
生物の多様性が尊重されるように、国家および民族の多様性が尊重されなければならない。