イギリス/ストックポート日報 《England/ Daily Stockport》

イギリス北西部の歴史ある街、ストックポート Stockportから(ほぼ)日替わりでお送りする、イギリス生活のあれこれ。

バーミンガムの名物美術館 1、呼びもののコレクションが一挙に国外流出、帰国は2年後それでも行った価値はあり

2019年05月13日 09時00分00秒 | イングランド中部

バーミンガム Birmingham 、続きです。


バーミンガム博物館/美術館 Birmingham Museum & Aet Gallery に行きました。
入り口はバーミンガム・カウンシル Birmingham Council 評議会堂(?上の写真)の左横にあります。



入り口正面写真を撮るのを忘れました。

入り口ホールから外の写真を撮りまあした。


階段を上がって.....


丸い部屋を通り抜けて....


各展示室を順番にめぐる配置になっています。

暑がりの私は屋内で上着(綿のコートですが)を着たまま歩き回ることができません。
有料ロッカーに荷物と上着を置いてから見学を開始しました。
投入した1ポンド硬貨が使用後戻ってくる「デポジット」システムではなく、有料というのは珍しいです。

イギリスの他のほとんどの公立美術館や博物館と同様、入館は無料です。
まあ、ロッカー使用料は維持費の寄付と考えれば納得です。

ひとつの展示室を抜けて次の展示室へ移るようになったレイアウトです。



(どちらかというと国際的にはマイナーな)イギリス美術が好きな人たちにとってバーミンガム美術館といえば.....

19世紀半ばイギリスに発生した独自のアート、ラファエロ前派同盟 Pre-Raphaelite Brotherhood の作品の収集で知られる、いわば巡礼の聖地ともいうべき場所なのです。

バーミンガムのラファエロ前派のコレクションは マンチェスター、リバプール、(それともちろんロンドンのテート美術館)と並ぶ充実ぶりです。
いずれも新興の近代工業都市。近代産業ビジネスで蓄積した資産で買い集めた個人のコレクションが美術館の収集のもとになっています。

ビクトリア時代の革新的でおしゃれな美術作品、お金持ちが買い集めて居間などに飾るにはうってつけだったんでしょうね。

当時の画壇の主流であるアカデミズムに反した革新的な作風と、詩や文芸作品の物語をテーマにしたロマンチックな主題で知られています。

日本で書いた卒論にかなりのスペースを割いたラファエロ前派。
バーミンガムのそばに来たからには見ていかなきゃ!...期待にワクワクです。

ラファエロ前派の展示室にあった印象的な作品、みたことがありません。


ジョン・バイアム・ショー作、「Boer War ボーア戦争」。
ショーはラファエロ前派が廃れた後にも画風を継承し続けたただの「フォロアー」で、厳密にはラファエロ前派のメンバーではなかったはずです。
「後期ラファエロ前派」にすら属さなかったはずですが....

戦争未亡人を美しい風景画の中にとらえた感傷的な作品です。
テーマといい、どこもかしこも ちまちま繊細に描きこんである技法といいラファエロ前派そのもの!

ラファエロ前派発生から50年以上たった1901年にはさぞ古臭く見えたことでしょう。

ラファエロ前派のちまちま繊細技法をすぐそばでじっと見るチャンスでした。




展示されていた、もっとも有名なラファエロ前派作品がこれです。


「Last of England (よく知られたこの和訳はどうかと思うのですが...)英国の見納め」。
マンチェスターにゆかりの深いフォード・マードックス・ブラウン Ford Madox Brown のアメリカに移民する若い夫婦の悲哀と誇りを描いた傑作といわれている作品です。

スケッチや小品を含むとラファエロ前派の作品を3,000点ほど所有しているらしい!バーミンガムコレクションの「見ておきたかった!」という高名な作品が見当たりません!!

何ごとか!?と販売されている絵葉書を示して売店の店員にききました。

めぼしい作品はすべて!現在アメリカを巡回しているのだそうです。
バーミンガム美術館は間もなく大改装のため2年間 閉館するとのこと、再開館を待って帰国するらしいです。

う!う~ん、
開館時間等を調べるためにアクセスしたウェッブサイトにはそんなこと書かれていなかった(と思います、確かではありません)!!

イギリスに住んでいて、見に行こうと思えば行けたにもかかわらず、機会を作る努力を怠って30年近く!
重い腰を上げてとうとう行ったら めぼしい作品の大半が消えていました。(とほほ)

2年後戻ってきてみることにします。

他にも(それほど有名ではないにしろ)十分見ごたえのあるラファエロ前派作品がありましたよ。


「この日見たベスト」私も夫も意見が一致したのがこれ。


「The Rest on the Flight into Egypt エジプトへの逃避途上の休息」。

オラッツイオ・ジェンティールッチ Orazio Gentileschi という16~17世紀のイタリアの画家の大作です。

ベツレヘムの嬰児虐殺を逃れた幼子キリスト、聖母マリアと聖ヨゼフの聖家族トリオ(とロバ)がくつろいでいるのんきな光景なのですが....

登場人物の服装が作品が描かれた当時のものなのは昔の絵画の常識なので まあ いいとして.....

聖ヨセフのこのお疲れぶり!
生後数日の幼子キリストがめちゃめちゃ大きい!首もちゃんと座っているし。
聖母マリアのいさぎよくないおっぱいの出し方...包帯のようなうすもののショールで隠して授乳。
ロバが塀の向こうにいるのはなぜ?(ロバの体を描くのがめんどくさかったのでしょうか)

....背景もぞっとするほどショボい。

なんだか何もかも変な作品!
何が描きたかったんだろう?

思わぬ出会いのあるアート体験!
「マニュエリスム」という当時主流だったアート分野にはあまり興味がなかったのですがこれはウケました。

バーミンガム博物館/美術館、続きます。





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2 コメント

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Unknown (kakowaka)
2019-05-14 17:44:50
ラファエロ前派!!
そーでしたか、卒論テーマ!!
そーでしたね!

その単語を聞いただけで、なつかし〜感じが…
返信する
卒論 (江里)
2019-05-15 06:23:37
kakowakaさんが私の卒論のテーマを覚えていてくれたとは.....!感激です。
厳密にはラファエロ前派についてではなくイギリス19世紀の生活規範や道徳観、産業革命がらみの社会不正といった社会学の出来損ないみたいな内容でした。ラファエロ前派を含む当時の絵をさし絵みたいに使っただけで、美術史論文とはいいがたかったような...?
子安先生、けっこう良い評価をくださいました。
イギリスに住みたい!と思ったきっかけの一つですし、kakowakaさんも来てくれた絵のように美しいウィンチェスターから雑然とした19世紀の産業都市、マンチェスターに移って定住することになったのもこの論文の不思議な力のお導きでしょう。
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