イギリス/ストックポート日報 《England/ Daily Stockport》

イギリス北西部の歴史ある街、ストックポート Stockportから(ほぼ)日替わりでお送りする、イギリス生活のあれこれ。

窓もどき!天下の悪法、窓税が作り出したへんてこりんな建物の数々  バース  10

2017年07月30日 09時00分00秒 | ロンドンとイングランド南部
バース Bath に限らず、イギリスの古い町に行かれたことのある方は、お気づきかもしれません。

古い建築物の「ふさがれた」窓が実に多いのです。


イギリスでは昔、窓の数に応じて税金を毎年徴収されたらしいのです。
天下の悪法「窓税 Window Tax」です。
たくさんのイギリス人が知っている事実です。

帰宅してから、調べました。

1696年、国王ウィリアム三世の時代の議会で制定されたこの法律で、1851年に廃止されるまで155年間も施行され続けたそうです。
.....あれ、私が何人かのイギリス人に聞いた話と違う!

たいていの物知りのイギリス人は「ナポレオン戦争(あるいはクリミア戦争)の戦費ねん出のために窓に課税されることになったため、多くの窓がふさがれた」と思っているらしいのですが、どうやらかんちがいしているみたいですよ。

だって、多くのイギリスの古い町に残っている、「窓がふさがれたあと」のある古い建築物は 窓税が制定された1696年より後に建てられていますから。

バースでたくさん見かけた、この現象はどう説明する?


極端な例。


うちの夫は、「これらは窓税とは関係なさそうだぞ」と決めつけました。

そばによって、いくつかよく見てみましたが夫の言う通り、税金逃れのために後からふさがれたわけではなく、最初からわざわざ開いてない窓を外壁につけて、建てたみたいなのです。

たしかにプライバシーとか、壁際に家具を配置するうえで厄介だとかいろいろと大きな窓がいっぱいあったら困ることがありそうです。

でも、のっぺらぼうの外壁は見栄えがわるい(?)ので、美観を考慮してわざわざ開いてない窓「窓もどき」を配置したのだろう、ということに(勝手に)結論付けました。

でもやっぱり、ヘン....ほんとうにそうでしょうか?納得いきません。

調べて納得!

バースの「謎の窓もどき症候群」は、やっぱり その時代の「窓税逃れの好例」だそうです!
ただし、ふさいだのではなく最初から、窓の少ない建物をわざわざたてたみたいですよ。(みみっちい)



窓もどきを探せ!


もちろん、後からふさがれた窓もあるかもしれません。

( 奥に見えているのは、ホーバーン・ミュージアム The Holburn Museum )


ホーバーン・ミュージアムについて書いた記事のリンクを貼りました。↓最初に投稿した時と写真が少し変わっています。
いっぺん読んで下さった方も、ぜひ見てくださいな。

ルネッサンス風の橋のこちらとあちら側、無料で入れる美術館2軒  バース3





BTPの看板がでているこの角ビルは、紅茶の美味しかったカフェ、ボストン・ティー・パーティBoston Tea Party です。


記事のリンクを貼りました。↓
バースで朝食、紅茶がおいしい環境にやさしいカフェ・レストラン・・・バース 6 番外編


課税の対象だったのは、窓が一戸当たり10個以上ある家だけだったそうです。
窓の数が増えるたびに窓1個当たりの税率が上がっていきます。

だから本来は裕福な人々から徴税し、小さな家に住む貧しい人々には課税されない民主的な課税法...のはずだったのです。

しかし実際は、窓税のせいで都市の貧民街などの通気が悪く採光が全くない窓無しの小さな居住スペースに押し込められたたくさんの貧民が健康を害して、長いこと社会問題になっていたそうです。

多くのごうつくばり大家が窓税を払いたくないばかりに、もとからあった窓までふさいじゃったから、らしいのです。

1851年に窓税が廃止された後、窓のあるべき位置(窓もどき)の壁を抜いて後から窓を穿つのはそれほど難しそうにも思えないのですが、あまり実行されていないようですね。

これは、後からふさいだように見えます。


たしかにこのたてものは古そうでした!バースでいちばん古い家 The Oldest House in Bath のすぐそばです。

窓税制定前に建てられたのかもしれません。

バースでいちばん古い家に関しては、前回の記事を読んで下さい。リンクを下に貼りました。↓

興味深い建物が多い、やっぱりバースは古い町!  バース  9

バースの代表的ジョージアン建築、サーカス The Circus の「窓もどき」も見てください。写真を増やしました。
記事のリンクを貼りました↓

250年以上前の都市計画!第一級保存指定建築に今も普通に人が住む、世界遺産都市バース・・・その7



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6 コメント

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町並みの保存 (Chun)
2017-07-31 09:48:29
日本では相続に関する税金が改正されて、これまで相続した土地に建物が建っていれば税金の優遇があったのが、誰かが住んでいなくてはだめ、ということになったためか、うちのあたりでは相続税や固定資産税が払えず土地を手放す地主さんが増えています。
そのため、ちょっとした新築ラッシュ。
これまでアパートだったところに大き目の家が2軒建ったのですが、別の業者が建てたのに流行りなのかどちらも黒い外壁。いやでも目に入ります。
もともと住宅地で我が家も含めみなさん好き勝手に家を建てているのだから、文句は言えません。

今、京都では町屋を改築したエルメスやスターバックスが話題です。町屋を利用するのはとてもいいことだと思います。でも、なぜエルメス?なぜスタバ?それ目当てに観光客は増えるのでいいのかなぁ。

こういうことがあると、一軒一軒の個性はないけど、建物の色味がそろっていたイギリスの住宅地や、頑として大手チェーンのカフェに入らなかった近所のおばちゃんたちが懐かしくなります。
返信する
窓税 (八幡@やんやーやマクビティーズ)
2017-07-31 18:10:13
これは有名ですよね。
しかし、窓もどきを作っていたとは知りませんでした。
人頭税にせよ、イギリスは税金で色々実験的な試みをしますねぇ…。
返信する
日本の税制、イギリスの税制 (江里)
2017-07-31 19:51:23
日本では相続税法が払えず土地を売ってマンションが建つのは昔からですよね。イギリスでは相続者が複数だとやっぱり売ってお金を分割しますが、家が取り壊されることはほとんど ありません。中古でも価値は下がらないから。
それと、配偶者だけが100パーセント相続するので、生き残った妻や夫が住み続けることが多いのです。(彼らが死んだら子供に相続権が行きます) 日本と違い古い建物が残りやすいわけですよね。
20年前はまだずっと連なっていた京都の 観光名所の町屋通りが、次々と取り壊され、残り少なくなっているというニュースを数年前日本で見て、びっくり呆れていたものです。
大手企業が利用し始めるまで、保存の動きがなかったのが不思議。スターバックスとエルメス、よくやった!もう、私がいつも糾弾してる、コッツウォルズ顔負けの「形骸化した古い町並み」利用もいいとこですが、日本ではそうでもしないと残らないのでしょう。スターバックスは良い利用法だけどエルメスはどうかな〜?町屋に入ってみたい人はいっぱいいそうだけど、それが売上につながるか?
イギリスで周りとの調和のない個人住宅が建ちにくいのは、景観が損なわれるとエリアごとの不動産の想定価値が下落するからです。
窓税のこと、日本でも知られてたんですか?ビックリ。昔は所得税が徴収しにくかったので取れるものはなんでも、だったんです。窓税はゴマカシが効かないので便利。驚異的に長続きしました。窓の定義が曖昧で揉めた地域もあったようですが。
人頭税(ポールタックス)は日本語訳のせいか日本では感じ悪く響きますが日本の住民税と同じ機能です。学生にまで課税され猛反対は起きましたが、歴史上悪名高い 窓税、ヒゲ税(帝政ロシア)、壁紙税(イギリス) のようなマヌケな税制とはまったく違います。
返信する
世界初 (Chun)
2017-08-01 23:33:18
畳に座れるスタバ、だそうです。
返信する
世界初? (江里)
2017-08-02 07:51:51
お座敷スターバックス、行きたい!
返信する
画像利用について (TBSテレビの吉田です)
2019-05-22 19:05:45
突然のご連絡失礼いたします。
TBSテレビの吉田と申します。

「window tax」について当番組で
紹介したいと考えており、
掲載されていらっしゃいます写真を
使用させていただきたくご連絡いたしました。

ご連絡いただけますと幸いです。
メールアドレス:yoshida.hisako@tbs.co.jp

何卒宜しくお願いいたします。
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