とんびの視点

まとはづれなことばかり

父のこと(1)

2022年08月14日 | 雑文
父のことを書こうと思い、1時間ばかりいろいろやったのだが、うまく書けなかった。
今日は、最低限のことだけ書いておく。
父は28年前に亡くなった。54歳で。2年間ほど中皮腫を患った末に。
そして、私も父と同じ年になった。とりあえず健康だが先のことはわからない。(父も病気が見つかったときには、治らないことははっきりしていた。)
亡くなったときに、父のことをあまり見ていなかったことに気付いた。いつも目の前にいたのに。
それから、時々、父のことを考えるようになった。自分が子どもをもってからはとくに。ああ、父はこんな風に自分を見ていたのかもしれない、と。
父は8歳の時に両親を亡くしている。5歳で父、8歳で母を。その後、埼玉の奥の方で親戚中をたらい回しにされ、中学卒業とともに東京の下町に出てくる。自分の意思ではない。遠い親戚の椅子職人に預けられるようにして。帰る場所もなく、鞄1つで。どんな気持ちだったのだろう。
その後、母と出会い、結婚。職人として独立し、何とか生活を確立する。自宅を借金で建て、子どもを2人育て、借金を返済し終わり、やっと一段落、というところで病気になり2年後に亡くなる。
どんな人生だったのだろう。父の両親は学校の教師だったと聞く。結核で亡くなっていなければ、父が椅子職人になることはなかっただろう。もちろん、私もこの世界には存在していない。
両親が結核で亡くなったことが、父が椅子職人になったこと、そして私が存在していることに、つながっている。不思議で、暴力的なものだ世界とは。(でも、父は優しい人だった)
父からは過去の話をあまり聞いていない。記憶も断片的になっている。書くことで、少しずつ思い出してくることがあるかもしれない。あるいは、父の過去を勝手に作ってしまうことになるかもしれない。
たぶん、私は父と話をしたいのだと思う。話を聞きたいのだと思う。聞けないから、父のことを書いてみようと思っている。この瞬間にも、父の笑顔が私の中にはある。