6月24日(晴れ)~25日 (曇り)
ついにスカイランナーワールドシリーズ第4戦 第1回OSJおんたけスカイレースが開催となった。「スカイランナーへの道」を小さな声で公言する私も、この記念すべき国内第1回大会に参加した。以下24日~25日の情況を「おじさんスカイランナー」としてこのブログで報告したい。写真も色々撮ったのでブログのフォトアルバムに掲載します。
24日土曜日 朝から天気は良好。午前中はいつもの陸上クラブの練習会。これに半分参加して10時半に三島市を旅立つ。車で御殿場~大月~塩尻ICを降り国道19号線を走り大滝村に3時過ぎに到着。走行距離は270kmを越えていた。山々が迫る谷間、(私の田舎ののようで)何処となく懐かしく心が落ち着く風情の村だ。今日は晴天で山の緑もとにかく美しい。大滝村公民館前はキナバルで見た懐かしいBUFFののぼりが2本立って、ここが受け付けだよ~ン!と教えてくれていた。 この「のぼり」がなかったら車は通り過ぎていたと思う。
駐車場に車をとめて受け付けに向かう。ランナーと思われる数名とすれ違うとき、「こんにちは」との声。嬉しいじゃないか!明日は「くるたのしい境地」をともにする仲間たちだ。長く一人で車を運転してきた今の私にはこの挨拶が一番のカンフル剤。この挨拶のマナーは山屋さんならではだなあ!と思う。普段の海の仲間も良いけど山の方々もまたいいもんだ!!ウンウン!
受付は大会スポンサー「パワーバー」の独特のオレンジ色のテントの中。 ここでも挨拶!ノーティスボードにはコース変更の案内。この情報は既に知っていたが「距離が短くなる」って、気弱な参加者としては気持ちの面ではかなり楽になる!
受付を事に済ませて公民館横の観光案内所を表敬訪問。早速山の情況や明日の天気予想を尋ねる。「山は雪が残って大変!」みたいなことを話してくれた。御岳山の登山ガイド(パンフ)をもらって、しばし説明を受けるが地名がよくわからず結局話が上手く理解できなかった。(ごめんなさい)
宿は大又のスタート場所近くの民宿せおと。こじんまりして一人旅には静かでよかった。
宿ではキナバルクライマソンに一緒に行った方と合流。ほぼ10ヶ月ぶりだ!HPでは彼の活躍をいつも確認済なのだが、ご対面ということで、まあなんと懐かしいことか・・・!!
2人で早々にスタートの場所のチェック。スタート付近は既に意外とこじんまりした鉄パイプの特設ゲートがあり、その先林道入り口には横断幕でそれとわかる。数名がジョグ、コースのチェックで走っていた。またまた挨拶! コースはスタートから数百メートルの舗装道後林道へ。私はナイキカタナ4で走ろうと思っていたが、コースはガレ場が多いとの情報があって、シューズの選択で悩み始める。8割の人は流行りのトレイルラン用シューズなんだと思う。重いシューズが嫌いという理由、未だに履いたことないシューズへの不安もあって、私はどの山もナイキカタナ。これでいつもOKなので今回も多分なんの問題はないとは思うのだが、ランニングシューズで5時間以上のガレ場のノンストップランで足裏への突き上げストレスはいささか心配になってきた。宿に帰った後、手持ちの幾つかの中敷を組み合わせて走ってナイキカタナの中敷2枚入りと最終決定。シューズは新品なので足裏のチップの状態もよくグリップもOK。しかしレース本番で判ったが中敷は1枚でOKだった。中敷2枚では、結局かかとの浮き(遊び)ができて、コース前半のスキー場の草原を登るときにサンダルで坂を登るような感覚で、これが脹脛に余分な緊張をかけてしまい足の痙攣発生という事態になった。その他の装備:ヘッドランプはLED小3灯+大1灯のもの。水1Lは走りながら給水できるハイドレーションタイプに、ゲータレード1Lを入れる。その他パワージェル5つ(3つ食べました)、パワーバー(チョコ味)1つ、ウメ味飴5つ。ウエアーはニシスポーツの陸上競技用Tシャツ。ナイキのロングタイツ。キナバルで最高のパフフォーマンスだった「ひざかんたん」と、今回捻挫防止のための「あしくびかんたん」も装着。 キャップはかぶらず、お気に入りのキナバルクライマソンでもらった参加賞のバンダナみたいなものをかぶった。腰には小さなウエストポーチにいつものデジカメ。完全防水のペンタックスWP。
宿の食事はボリューム満点でGood。その後皆で6:30にウエルカムパーティー会場へGO。
会場の公民館は多くのスカイランナーが既に終結。キナバルでお見かけした各国のスカイランナー、昨年の女子ワールドチャンピョンもいた! 大滝村住人は1000名。しかし今回選手関係者で300名以上が集い、この村にとって世界大会開催がまさに一大イベントのようだ。大滝村の皆さんのボランティアも沢山いて、地域を上げての大会運営には暖かい歓迎の気持ちを感じた。会場には日本人スカイランナーのパイオニアの鏑木さんもいた。私には全く雲の上の人だけど、シャイだけど気さくな方で、鏑木さんともキナバル以来に会えて色々話せて懐かしくもあった。ここではコースは別の意味でキナバルよりキツく厳しいので覚悟しようというアドバイスも頂いたが、その意味は明日まさに身に染みて知ることとなる。
6月25日 曇り
夜中に大きな地震が発生したけど、十分に睡眠はとれ、緊張とともに朝を迎えた。
いよいよ「おんたけスカイマラソン」スタート。装備チェックを早々に済ませて、スタートゲートに1番のり。 ウルトラマラソンのように長丁場のレースの常として、スタート時はポジション取りなどの緊張感はなく意外と和やか。10分前には招待選手が最前列に入る。レースの成功とランナーの安全を祈願してお払いも受ける。 この神主さんの祝詞は外人プレスらには相当珍しいようで取材のカメラ&ビデオカメラが大集合。
7時、大滝村村長さんのフォーン1発で一斉にスタート!(転倒者などなし)
林道の入り口からトップのスカイランナーは軽快にガンガンと飛ばす。林道の斜度は意外とあるのだが、トップは軽快に駆け上る。入りのペースは4分/kmほどのペースか。私ではオーバーペースなので苦しくなる前にズルズルと後退。丁寧に熊笹を払った獣道を駆け上るあたり、この時点で2kmの表示。時計を確認、9分/km程度のスピードで駆け上ることとなる。その後おんたけスキー場に出てひたすらゲレンデの苔むした芝生を一直線に駆け上るというかもう歩く。 これが予想以上につらい。スキー場ってこんなに斜度があったの?踝まで埋まる草原を走ることって、蹴る力が草に吸収されて、全く私のタータントラック仕立ての今のランニングフォームは全く不向きなことが判る。これがロードと違うトレイルランの難しさの一片なのだろう。スキー場の半ばからこれから挑む御嶽山が見えた。御嶽山との初めての対面だ!左右の裾野も綺麗に臨め、雪渓を何本も纏った姿は雄大で綺麗だ。富士山のように頂上を見上げるほどでない高さを目測して勝手に一安心。 (しかしそんな半端な山じゃなかったことを、山頂を過ぎて身にしみるほどに思い知らされることとなる!)
ゲレンデ中腹、登山道入り口前など十分な間隔でしっかりエイドステーションがある。コップ2杯約180mLづつの給水を受ける。レースを振り返ると、天候は曇り、山頂は暑くなく給水ポイントでしっかり水を取れば給水OK。結局背負った水の1Lはほとんど手着かずに残した。
登山口からは以外と整備されていない丸太階段からガレ場石の登りとなる。地元伊豆城山の登りをしっかり練習したのでガレ場の登りは得意のはずだったが、先のスキーゲレンデ走りからのダメージで腿の表が吊り始めた。シューズの中敷2枚入りの選択がシューズ踵のホールド性を損なったことをこの時悔やむ。この時点でキナバル仲間にもやっぱり抜かれていく。 (「あんなに練習したのにどうしたの?」っていう心遣いの言葉が結構重く感じた。そう、あんなに練習したのに・・・)セガールもどきの外人選手にも抜かれた。頂上過ぎからこのセガールさんとの抜きつ抜かれつのレース展開となる。
山頂を抜けると視界がグワーンと開けて雄大な山頂の景色を堪能できる。ほぼ360度、雪を被った南アルプスの山々を見ることができた。走りやすい場所で猛スピードのトップランナー2名とすれ違う。 2時間40分ほど。先日のパーティーで一緒に写真を撮った女性ランナーにもすれ違った。驚くべきはここから先のコースだった。まさにスカイマラソンの名に恥じない極限コースが展開されていくのだ。 拙い私の文章では上手くコースを表現できないが、兎に角これがレースで、前方に人が走り、後ろから追われる情況じゃない限りこんなところを走ろうなんて思えないところだ。お鉢周りの頂きは足場が30cmの幅もない両側が崖が雪渓の尾根の岩の背をピョンピヨンとびながら走ったり、崖の斜面をサルのように駆け下りたりするのだから・・・。コースの(安全な所で)写真を撮ってるのでフォトアルバムを展開してコースを見てもらいたい。コース設定には危険個所やガスが出たりした場合に絶対に迷わないよう矢印看板やサロモンのテープを千切ってコース上に配置してある。高山で酸素が薄く通常の思考能力の数分の1以下のボンヤリとした頭の中では、このテープ印がなかったらコースアウト、滑落もありえると思う。まさにヤバイほどの「くるたのしい」境地だ。 長いお鉢周りを半分ほど走破して、後半ガガガガガッツと火口中の池に下りていくダイナミックさ!雪と青い火口池、不思議なコントラストの辺の奇怪な景色を見上げて走る。そこを超えると40度以上の斜度の雪渓をロープ伝いに80M以上をほぼ垂直に登るコースは兎に角圧巻だった。「ふざけんなよ!冗談じゃないぜ・・・っ!」思わず誰もが口から言葉にするほどの究極のコース。腿はつるけど、そんなミミッチイことには構っていられないコースだ。 当に命がけの場面、緊張感と爽快感、恐怖と開放感の繰り返しは壮大なジェットコースターって感じだった。長いお鉢周りを回って山頂に着くとき、これからコースを回ろうとする方々とすれ違う。全くお互い様の情況なのだけど、今までのコースの厳しさを知ってしまったので思わず「頑張ってくださいネ」とか「気をつけてね!」なんて声をかけてしまう。
山頂からまたガレ場の下り。ここから転倒が危ないので写真撮影は止めて、給水&パワーバーでエネルギー補給して、集中力を高めて一気に下る。 今までのコースでの恐怖心が吹っ飛んでること、城山や沼津アルプスを攻めて走ってきたので下りの恐怖心はない。一人、一人と視界に捕らえて抜いていった。登山道後半はキナバル山のイメージ。兎に角狂ったように叫び声を上げて駆け下りる。意外と苦しかったのはスキー場の下り。直滑降で駆け下りる。腿や腰にはもう粘りが無くなってるので、一気にスピードが上がる。「うわわわわあア~ッ!」て感じで一直線。全く止まらない。止まれない。(とそのとき・・・)爪先がくぼみに嵌って一瞬体が宙に浮いて、飛び込み前転で草の斜面の宙を回った。漫画のように数メートル飛んだ感じ。飛んだ体は柔道受身のように肩口から入ってゴロゴロごろごろ・・・。なんとか止まった!飛んだ瞬間脹脛は痙攣したが怪我はしていなかった。体は動く。背中のハイドレーションタンクを背負っていたので背中を強打することもなかった。ビックリした。そこからは8分(=80%)のスピードをコントロールしてとにかく足元だけを見て一気に下った。草の中には穴や大きな石もあって走るスピードとあいまってかなり危険だ。それでもガンガンと数人すつ抜いていった。ナイキのカタナの選択はここで本領発揮。靴裏全体のスリップ感と爪先部分の強烈なグリップ感はこの下りにはよかった。スキー場だけでも8名は抜いた。
やっとゴール手前。ゴールか?っと思った所から丸太の階段を20Mほど上ったところがなんとゴール。最後までこれか!とあきれさせるほどのコース設定。この階段は辛かった。ゴール手前はポーチに潜めていた日本国国旗を頭にかざして(TVでマルコがゴールを切ったように)ゴールを切った。これはキナバルでもやって受けたけど、日本でもまあ受けた!手元時計で5時間54分。タイムは気にするものじゃないけど、最後に捲くってガンガン走って、なんとか6時間を切った自分に満足だった。
当然だけど、キナバルクライマソン仲間も同じ宿の方々も、セガールさんもゴールしていた。第1回のスカイマラソン無事完走!無事故怪我なしでよかった。来年は・・・まだ体がきつくて考える余裕はない。本当に「くるたのしい」スカイマラソンだった。