11月23日(土)に放送されたNHK「SWITCHインタビュー達人たち 内田樹×観世清和」には感動しました。
NHK番組紹介サイトでは、
<概要>
日本の未来と伝統が響きあう、刺激的なトーク! 現代を代表する思想家・内田樹と、世阿弥の子孫、650年の芸を受け継ぐ能楽師・観世清和。日本が世界に誇る英知とは?
<詳細>
政治経済からマンガまで、驚くほど幅広いテーマを掘り下げて分かりやすく論じる、注目の思想家・内田樹。めったにテレビに出ないが、特別に出演したのは、能楽師・観世清和からの依頼があったから。世阿弥の子孫で、650年の芸を受け継ぐ観世は、能に深い関心を寄せる内田と、伝統が持つ力について語り合いたいと思っていた。日本の文化の根っこについての話から、未来への希望まで、2人の熱いトークがつながっていく!
【出演】思想家…内田樹,【出演】能楽師…観世清和,武田鉄矢,堺雅人,【語り】吉田羊,六角精児
と解説されています。今朝書く内容はこの番組解説ではなく番組内で強く引かれた点について書いていきます。
650年の伝統の能。哲学者梅原猛先生のわかり易い現代能とは別次元からの視点で「己の舞(まい)・身体化された心」とでも表現したくなる幽玄能の世界を見たような気がします。
「時間」という視点から見るならば、過去・現在・未来が観世清和さんには「体現的に在る」ように感じた。装束は今も現役、世阿弥の世界が連綿と伝わり、それは650年の歴史を経過し後の年650年まで視野に置いている。
個人的になぜか「能」というもの興味を持ち、
ワキ(僧)の役割 <前段>[2009年08月29日]
http://blog.goo.ne.jp/sinanodaimon/e/6f06f10b8c6a41dbc92217560f19cdbd
ワキ(僧)の役割<後段>[2009年08月31日]
http://blog.goo.ne.jp/sinanodaimon/e/5f47145e0d65abc1e654ac489bbed16d
伝統芸としての視点からは、
「伝統芸能」から学ぶ[2009年11月24日]
http://blog.goo.ne.jp/sinanodaimon/e/c47d5709cce43ccce7782da37e8a0408
を書いています。専門家ではなくあくまでも素人で、しかしなぜか心ひかれて時々言及しています。『羽衣』という能については、
嘘偽りのない世界・羽衣[2011年07月18日]
http://blog.goo.ne.jp/sinanodaimon/e/9798c7c298b8f680c69591e4c0fc1f98
でその魅力には「天女と人間」の「偽り」という言葉の視点の中に置いていました。
次に『羽衣』を間接的に引用し書いたのが、
「己の舞い・身体化された心」[2011年07月24日]
http://blog.goo.ne.jp/sinanodaimon/e/361e927ae2497db2dce87c2c16259d4a
でした。あまりにも『羽衣』という能が魂を打ったのでしょう、1週間後に自分だけが納得する書き方で書いています。
見えないものは見えないものなりに。
語れないものは語れないものなりに。
など表現の世界には眼前として生るのですが、表現のしようのないものがあります。能の静なる動き・・・・。
今回の対談の中で天女の足の動きがありました。あったというよりも見せられ、魅せられました。時計時間ではない幽玄な時の流れが、仕手の語らいとともにある仕手の身体の動静に現れています。複式夢幻能の仕手の表現に組みこまれ、舞台側も観客側もいつの間にか幽玄の世界に引き込まれて行きます。
うつろふ(移ろう)・無常・もののあわれも・やまと言葉の世界[2010年09月30日]
http://blog.goo.ne.jp/sinanodaimon/e/ddf7bedb0de51a55f8020e8bd4b85b2d
現世もあの世も境がなく個人的な感覚から表現するならば、「滑り込んで」ゆきます。
なぜ仕手の足のはこびに「時間」を感じるのか。
直感と反省の中で創造的な働きが出てきます。西田哲学のフィヒテの「直感と反省」における「直感と反省の統一としての自覚の創造性」における西田哲学の独得の見方と重なる話です。
私が私の居る場所、能の舞台と観客席の一体化された建物内に於いて、時間は時計時間で進むのですが、自覚の創造性においては時計時間を超越します。
全関連が主体の自覚であって、それは場において主客未分に引き込まれ、生(あ)る世界。
不自然性という感覚は生まれない無分別の分離無き一体感のうちに舞があります。
あの足のほこびは何ものか?
(以上NHK「SWITCHインタビュー達人たち 内田樹×観世清和」から)
天女の手の舞は何ものか?
観世清和さんは、「魂の弔い」にも言及されていました。死者の語らいを引き出す複式夢幻能・・・・これは「私が私の居る場所、能の舞台と観客席の一体化された建物内に於いて」なされる。・・・・無限に創造的な働きを感じます。
(以上NHK「SWITCHインタビュー達人たち 内田樹×観世清和」から)
NHK「SWITCHインタビュー達人たち 内田樹×観世清和」
光が射しこめるような番組でした。
【観世清和】「650年経たんだったら、もう650年続けていく、つなげていく」
この言葉が冒頭で語られるのですが、NHKの構成には驚きました(感激をこめて)。
この言葉が番組最後で、思想家内田樹先生は、この言葉を受けて、
(NHK「SWITCHインタビュー達人たち 内田樹×観世清和」から)
と「今現在の振舞いを考える人」観世清和さんを語られおられました。