冒頭に大河に一人舟を漕ぐ姿。色はくすみ、たゆとう流れる。静かでしかし何かはらみそうな予感を感じさせるファーストシーン。でも静かなシーンはこれのみ。
それからカップルのセックスシーンが森に。しかしここでカメラは、驚愕しそこを離れるカップルをほほえましく映す。そこから一転し、問題の団地解体闘争シーンとなり、カメラが主役の映画となり、唸り、吠える。2時間強、観客はカメラの蠢き、うねりをずっと感ずることになる。
中国の政治的汚点は少々垣間見えるが、政府当局が目を見張らして規制するほどの代物ではないように思える。その中国という国の恐るべきバイタリティをミステリータッチでぼかし、一編の太い動脈に仕立て、映像にマグマを奔出させた作品である。
映画とは、映像とは、国家とは、人間とは、それらがジェットコースターのごとく奔出する映画です。そのバイタリティたるや、映画としてのこれからの在り方まで考えてしまうほど。
ロウ・イエは現代のカメラ魔術師ですなあ。すごい映画です。
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