「普天間飛行場代替施設建設事業に係る環境影響評価方法書に対する追加・修正資料」(沖縄防衛局、2008年2月)がひっそりと縦覧されている(→リンク)。「方法書」の際と同様に、沖縄県内5箇所とウェブサイトのみである(この大部資料の配布・貸出・コピーが前回同様に認められなかったかどうかは不明)。いずれにしても、ジュゴンやサンゴに代表される自然環境は、本土の私たちを含めた全国民の共有財産、コモンズであり、また事業が米軍再編の一環を担っている以上、やはり全国民マターであることは確かなのだから、説明責任を著しく欠いたものだということができる。
では「方法書」に対してどのような「追加・修正」が説明されているのか。
●航空機の種類
「方法書」では、「米軍回転翼機及び短距離で離発着できる航空機」という、環境アセス法上不十分な記述だった。背景としては、墜落事故が多発したヘリ・オスプレイ(V-22)の配備について、日米で同意した経緯があるにも関わらず、批判を回避するため、日本でのみそれが隠され続けたという状況がある。今回の「追加・修正資料」では、以下のように具体的に記載されている。
「普天間飛行場代替施設に配備される航空機の種類は、現時点において、基本的には普天間飛行場に現在配備されている航空機のうち、平成18年5月1日の「米軍再編のための日米ロードマップ」において岩国飛行場を拠点とすることとされているKC-130以外のものを想定しており、具体的には、回転翼機としてCH-53、CH-46、UH-1及びAH-1を、短距離で離発着できる航空機として、C-35及びC-12を想定しています。
また、この他に、他の飛行場から飛来する航空機(例えばC-20等)の使用もあり得るものと考えています。」
最後の1文が気になるが、要は、普天間に配備されているヘリから、岩国を想定した空中給油機を除いたものということだ。
沖縄国際大学に墜落したCH-53、劣化ウランによる部品が使われているとの指摘があるCH-46(「しんぶん赤旗」2006年11月7日→リンク)など、通常の訓練以外の怖さがあるうえ、そのCH-46については、オスプレイこそが後継機と目されているようだ(「沖縄タイムス」2007年10月19日→リンク)。つまり、引用した文章の最初のあたり、「現時点において」がエクスキューズに見えてくる。
●滑走路の長さや幅
これは具体的に示された。
●弾薬装弾場、洗機場、燃料桟橋など
「普天間飛行場代替施設建設事業に係る環境影響評価方法書に対する追加・修正資料」より
「方法書」にはまったく記載がなかった設備である。普天間には弾薬装弾場がないため、基地機能としては劣っているものだったことを鑑みれば、辺野古が「代替」ではなく「新基地」であることが見えてくる。
また、ここでは説明の前に、以下のような但し書きを付けている。環境影響について調査するための方法の妥当性を問うためのプロセスにあって、本末転倒というほかはない。
「これら施設の規模等については、米側と協議中であり、また、現有施設の規模、米軍の所要・基準、関係国内法令等に基づき精査する必要があるため、現時点において具体的に提示することは困難ですが、今後変更があり得ることを前提に現時点での検討内容の概要をお示しすれば、次のとおりです。」
●ジュゴンについての影響評価
どうも「方法書」と同じようだ。「ジュゴンの不在証明にする」とも評される、調査方法の不適切さはもとより、調査の一部が、環境アセス法には存在しない「事前調査」としてなされ、その部分については調査済ということにする方法こそが問題だ。
「普天間飛行場代替施設建設事業に係る環境影響評価方法書に対する追加・修正資料」より
●埋立の土砂
広大な面積の埋立を行うための土砂(2,100万m3)を必要とする。「追加・修正資料」には、次のようにある。
1) 辺野古ダム周辺の埋立土砂 200万m3
2) 飛行場陸域の整地により発生 200万m3
3) その他 1,700万m3
1)については、約70 haであり、沖縄県条例で環境アセス実施が求められている。また、3)「その他」の量については、真喜志好一さん(沖縄ジュゴン環境アセスメント監視団運営委員)によると、次のような試算になるようだ。
「1,700万m3を海から採る場合、いったいどれくらいの海岸線が無くなるか? 海外線から沖合いに170 m、砂の高さが1 m無くなるとしたら、延長100 kmになります。沖縄周辺の砂がある海岸の全部が消えてしまう!」(「JANJAN」記事、『ダンプ340万台分の県内海砂で埋立を計画 普天間代替・辺野古アセス』、2008年1月14日→リンク)
これに対し、「追加・修正」では、以下のような説明をしている。このようなエクスキューズは、新たな陸域での環境アセスを実施せざるをえなくなることを回避しようとしている、とみるのが自然だろう。
「埋立土砂を採取する区域を必要とした理由については、普天間飛行場の移設・返還を一日でも早く実現するためには、代替施設の規模を踏まえ大量・急速な埋立工事を行うことが必要であることを前提として、飛行場施設(飛行場支援施設及び格納庫施設等)の建設も含めた全体工程を考慮すると、出来るだけ早期に飛行場施設に係る工事を開始するため、その建設の基盤となる区域については、埋立工事に速やかに着手しなければならないと考えており」
「これを踏まえ、埋立計画を立案するにあたっては、全量を海上から搬入する購入土砂とした場合には、土砂の調達が土砂供給者の事情や海象条件等に左右されるおそれがあることから、事業者として必要な量の土砂を必要な時期に確実、かつ、安定的に調達できる手段を確保する必要があるため、事業実施区域の近傍にあり、一般の交通に出来るだけ影響を与えない場所から採取するとしたところです。」
「埋立土砂発生区域は概ね70ha程度ですが、具体的な採取場所、採取方法などについては、今後、土砂採取計画の詳細な検討を行ったうえで決定したいと考えており、必ずしも当該区域全てを改変するものではありません。
また、埋立土砂採取の計画の検討にあたっては、現在、この区域が水源涵養林としての機能を有していることも踏まえ、赤土流出防止対策や採取後の緑化計画などの検討を十分に行うなど、環境への影響を出来る限り低減できるような計画とします。
なお、埋立土砂については、現段階において確定的なことを申し上げることは出来ませんが、沖縄県内の海砂等の購入のほか、県内における海砂の年間採取量や採取場所等を調査し、また、浚渫土を含む建設残土の受け入れや、県外からの調達等も含め、具体的に検討を行うこととしています。
また、埋立土砂の購入については、供給元における土砂の採取による環境への影響に配慮されていることを確認するなど、埋立土砂の調達に伴う環境への著しい影響がないよう慎重に判断していくこととします。」
●沖縄防衛局への意見
以上により、基地建設ありきの環境アセスは、環境面からも、意思決定という民主主義のプロセスからも、米国の軍事行動に加担しないという意味でも、本来の姿からかけはなれている。
以前(2007年9月15日)に提出した「方法書」に対する意見に照らし合わせてみても、「方法書」における記載という表面上の点のみ、体裁をととのえたにすぎない(以下の「4.」だけ「追加・修正」している)。
1.方法書の位置付けが、環境影響評価法に則っていない
2.方法書の告知・縦覧が、国民の意見を取り入れるためには不十分
3.事前調査の手法に問題がある
4.方法書に記載すべき内容が不十分
今回、その点に加え、次の点についても追加して提出するつもりだ。
●航空機の種類、弾薬装弾場、洗機場、燃料桟橋、土砂採取については「方法書」に記載がなかったのであるから、「追加・修正」によって次の「現地調査」、「準備書」といった段階に進むのではなく、「方法書」そのものを再作成・縦覧したうえで、国民や知事の意見をあらためて取り入れるべき。
●土砂の採取は影響が甚大であるから、その計画を確定したうえで、陸域の環境アセスを行うべき。
●普天間基地のヘリ体制を基本的に継承するというだけでなく、今後の後継機の計画についても、議論段階であっても公表すべき。
《追記》 沖縄県文化環境部環境政策課(FAX 098-866-2240)に送付した。受け手にとってはわかり切ったことであっても、1人の声を届けることが大事である。
確認したところ、
-縦覧期間は2008年2年18日(月)までだが、意見はその後も受け付ける
-集まった意見は、次回の沖縄県環境影響評価審査会に用いる(開催日未定)
-沖縄防衛局と県環境政策課との間で情報共有するので、どちらに送っても可
●参考
○ジュゴンの棲む辺野古に基地がつくられる 環境アセスへの意見を出す前に(1) 環境アセスが正当に行われていない
○ジュゴンの棲む辺野古に基地がつくられる 環境アセスへの意見を出す前に(2) 「事前調査」の問題点
○ジュゴンの棲む辺野古に基地がつくられる 環境アセスへの意見を出す前に(3) 「方法書」の問題点
○ジュゴンの棲む辺野古に基地がつくられる 環境アセスへの意見
○ジュゴンの棲む辺野古に基地がつくられる 環境アセスへの意見(2)
○「方法書」への国民等の意見
○沖縄県環境影響評価審査会の質問に対する沖縄防衛局のひどい回答
○安次富浩さん(ヘリ基地反対協議会)の最近の発言(すでに洗機場などのことについて指摘している)
政府の意味をもたない言い逃れの説明、あくまでも強行しようという意図が、あまりに明白で、なにか気力が失せてしまいます・・。何か良い方法はないのでしょうか。
たしかに、ならず者国家(米)と結託する大きな存在に対してどれほどの効果があるのか、気力がなくなりますね。しかし10年も20年も行動し続けている方々がいて、それにより、かろうじて社会が保たれているのだと考えれば、微力ながら言い続けることが重要なのだと思います。短期的には、法律違反(それから広くは憲法違反)に対する訴訟でしょうか。